八幡「765プロ?」   作:N@NO

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すこし彼らの夏は変わっている。

 

 

海水浴場から10分ほどの所に今晩俺達が泊まる旅館があった。

海岸が近くにあり窓から東京湾が一望できるそうだ。

 

俺を除く14名は椿の間、そして俺は檜の間に泊まることになった。

ここでもぼっちなあたり俺はプロのぼっちらしい。というかこの状況でぼっちにならない方が問題であり、事件なのだが…。

 

音無さんの話だと夕飯を食べた後に砂浜にでて花火をやるらしい。

その間に俺は温泉にでも行くか。ここの温泉は疲労回復、肩凝り腰痛にきくらしいからな。

 

と予定を立てていたのだが…

 

春香「プロデューサーさん!行きますよー!」

 

八幡「いや、俺は別にい…」

 

小鳥「いいじゃないですか、プロデューサー。せっかくのお泊まりなんですから皆で楽しみましょうよ。」

 

律子「そうですよ、早く諦めた方がいいですよ、どうせいくことになるんですから。」

 

八幡「はぁ。それじゃあ、今から準備すんで、先いっててください。」

 

 

 

真「あ、プロデューサー!こっちですよ。」

 

伊織「あんなこといってたからあのまま来ないのかと思ってたわ。」

 

八幡「それも考えたんだがな。その後がより面倒な気がしたんでな。」

 

律子「それじゃあ、始めるわよー。」

 

ワーイ

コッチモヒヲクダサーイ

キャー

リョウテモチナノー

ジブンモー

 

 

小鳥「プロデューサーはやらないんですか?」

 

八幡「…俺にああいう派手なのは似合わないんで。音無さんこそいいんですか?」

 

小鳥「私こういうの見ている方が好きなんですよね。なんででしょうね。」

 

これはあれだな。おばあちゃんの、私は見ているだけで満足だよ、的なあれだな。音無さんそんな歳じゃないんだけどな。

 

日は完全に落ち、月明かりと僅かな街灯が照らしている海岸で花火をしている彼女達をしばらく音無さんと見ていた。

 

手持ち花火を持ち振り回したりしている彼女達の姿がこの暗い世界でひときわ輝いて見えたのはきっと周りが真っ暗だったせいなのだろう。

 

だけれど、その光は何処か俺の心を照らしいている、そんな気がした。

 

 

伊織「ねぇ、あんたはやらないの?」

 

八幡「俺には似合わないからな。」

 

伊織「ふぅん。じゃあ、これならいいわね。」

 

そういって伊織が取り出したのは線香花火。まだ誰もやっていなかったらしくセロハンテープで封をされている袋から少し苦戦して花火を取りだし俺に渡してきた。

 

伊織「はい。あと、小鳥さんも。」

 

小鳥「ありがとうございます。」

 

八幡「なんでこれならいいんだよ。」

 

伊織「別に。何となくそう思ったのよ。」

 

パチパチ。耳を澄ませないと周りの声や波の音でかきけされてしまいそうな儚い音を鳴らす線香花火の光が3人を照らしている。

 

小鳥「あ。私が、一番早く落ちちゃいましたね。それじゃあ私は少し社長へのお土産に皆の写真を撮ってきますね。」タッタッタッ

 

 

伊織「ねぇ。」

 

八幡「なんだ?」

 

伊織「さっきは文句言って悪かったわ。幾らあんたが悪いとは言っても仕事だったもの。それにステージに立てたことお客に喜んでもらえたこと嬉しかったわ。」

 

八幡「…そうか。俺もお客さんが盛り上がっていて良いステージになっていたと思う。」

 

伊織「ありがと…。」

 

八幡「…」

 

伊織「…あんたはどうしてプロデューサーになろうと思ったの?」

 

八幡「…何でだろうな。俺にもよくわからん。」

 

伊織「ふふっ、なによそれ。変なの。まぁ良いわ、これからもよろしく。」タッタッタッ

 

伊織が皆のところへと戻っていくのをその場から見送りながら残った線香花火に一人、火を付ける。

 

線香花火の火花の音がパチパチとどこかうるさく耳に残った。

 

 

 

亜美「温泉だよー、温泉!」

 

真美「いい湯だねぇー。」

 

春香「ここの温泉美容効果があるんだって!」

 

美希「社長に感謝なの~。」バイン

 

春香「千早ちゃん、どうかしたの?」

 

千早「い、いえ、何でもないわ。」

 

貴音「広いですね。」バイン

 

あずさ「ほんとねぇー。気持ち良さそうだわ。」バイン

 

千早「くっ」

 

春香「?」

 

カポン

 

 

真「良いお湯だったね。」

 

雪歩「私久しぶりの温泉だったなぁ。」

 

律子「そろそろ寝る準備しなさいよ。」

 

亜美「ちっち。りっちゃんまだだよ!」

 

律子「え?」

 

真美「夏の夜と言ったらあれをやるしかないでしょ!そう」

 

亜美 真美「「怪談だよ!!」」

 

真美「ってことで兄ちゃんを呼んでくるねー。」

 

春香「何でプロデューサーさんも?」

 

亜美「そりゃあ、怖い話沢山知ってそうじゃん?」

 

真「確かに…。理由は分からないけどそんな感じするね。」

 

 

八幡「…でここに連れてこられた訳か。」

 

亜美「うんうん。」

 

真美「とびきりのやつよろしくね!」

 

響「じ、自分全然怖くなんてないぞ!」

 

美希「怖い話ちょっと楽しみなの~。」

 

八幡「はぁ、それじゃあ。去年のこんくらいの時期だったかな。夏休みも折り返しだったから掃除を夜にしていたんだ。今思えばそのときどこかいつもと様子が違った気がするな。掃除がだいぶ終わってあとはベットの下だけになったんだ。そこで掃除をしようと下を覗き込んだら…」

 

「「「ゴクリ」」」

 

八幡「…TATSUYAのレンタルCDが出てきたんだよ。」

 

小鳥「イヤーー。怖い、怖すぎるわ。」

 

春香「なんか、違う意味の怖さですね。」

 

雪歩「今のなら大丈夫そう。」

 

真「まぁ、今のは特定の人にしか分からないしね。」

 

真美「兄ちゃん、真美はそういうのが聞きたいんじゃないよぉ。」

 

亜美「ホラーがいいよー、ホラー。」

 

八幡「いや、いまの充分怖いだろ。」

 

美希「全然怖くないよー。」

 

伊織「あんたたいしたことないじゃない。」

 

八幡「ほう。良いだろう。とっておきのやつを披露してやるよ。」

 

 

八幡「ここに来る途中の山道に歩道橋がかかっていたのに気づいた奴はいるか?」

 

律子「あ、私運転していたときに見ましたよ。なんでこんなとこにあるのかなって思ったけど。」

 

八幡「そう秋月さんの言う通りその歩道橋はとてもおかしなところにあるんだ。どこがおかしいのかというとガードレールの外と外をつなぐ歩道橋なんだ。」

 

美希「ん?よくわからないんだけど歩道橋って普通道路を渡るためにあるから別におかしなところはないんじゃないの?」

 

八幡「ああ。普通なら、な。だがそこの歩道橋のガードレールの外に歩道はなくましてや人が通る場所ですらないんだよ。」

 

律子「そういえばそうだったかも…。」

 

八幡「じゃあ、なんでそんなところに歩道橋があるのか、ってことになるがこれには深い訳がある。昔あそこで事故が多発していたんだ。しかも理由は全て同じで白い服を着た女の人が急に飛び出してきた、ということだ。だがどんなに警察が調べてもその引いてしまったという女の人は見つからず最初は単なる見間違えによる事故として処理された。しかし明らかにその付近で事故が多発していたためおかしいと思った一人の警官が知人のいわゆる霊媒師っていう人に頼んで現場を見てもらったんだ。その霊媒師が言うにはそこの場所は霊の通り道だったらしい。どうにかできないかその警官が聞いたら霊媒師は上手くいくか分からないが歩道橋を作ってみたらどうだ?と言った。まぁ、確かに霊が歩道橋をわざわざ使うのかっていう話になるがそれでもやらないよりはましだということであそこに歩道橋が建てられたんだ。以来あの場所では事故は起こっていない。」

 

真美「…い、意外に怖い…。」

 

亜美「あ、亜美達そこ通ってきたんだよね…。」

 

律子「…というかそこを通らないと明日帰れないんだけれど…。」

 

伊織「…べ、別に怖くないわ。こんなの作り話よ。」

 

雪歩「で、でも怖いよぉ。」

 

真「大丈夫だよ、雪歩。もう事故は起こっていないんだし。」

 

春香「そうだよね。」

 

八幡「この話には続きがあってな、その歩道橋のしたを通るときはじめは誰も見えないんだが通ったあと後ろを振り向くと白い服を着た人がその歩道橋を渡っているのが見えるらしい。今日来るから気になって昨日調べてみたんだがいまだに目撃情報が絶えないみたいだな。」

 

雪歩「はぅぅぅ。」

 

響「こ、こわくないぞ。怖くなんて…。」

 

やよい「うぅ。怖くてトイレにいけないですぅ。」

 

春香「やよい、一緒についてってあげるから行こ?」

 

やよい「春香さん、ありがとうございます。」

 

律子「ほ、ほら皆。そろそろ寝るわよ、プロデューサーも自分の部屋に戻って下さい。」

 

八幡「あ、はい。」

 

あずさ「怖かったわねぇ。」

 

美希「ミキ、ちょっと帰りに見てみたい気もするの。」

 

雪歩「や、やめなよぉ。見えたら大変だよ。」

 

響「そ、そうだぞ。やめた方がいいぞ。」

 

春香「千早ちゃんは怖くなかった?」

 

千早「少し怖かったけど伊織のいうように作り話だろうし…。」

 

春香「まぁ、そうだろうねー。」

 

千早「私、トイレに行ってくるわ。先に寝てて。」

 

春香「あ、うん。いってらっしゃい。」

 

 

ガチャ ジャーーー

 

千早(はぁ、プロデューサーの話を聞いたせいで一人だと少し怖いわね…。まぁ、別に幽霊なんて本当にいるわけないし…)

 

ガサッ

 

千早「ひっ。」バッ

 

千早「なにもいない…よね。」

 

トコトコ ガサッ

千早「ひっ」バッ

 

千早「…い、いやぁぁあ」ダッ

 

ガチャ

 

八幡「は、え?如月!?」

 

ギュウゥゥゥゥ

 

よし、落ち着け八幡。ゆっくりと三行で何が起こったか説明しよう。そうすれば何があったか理解できるぞ。

 

叫び声がしたと思ったら

千早が急に俺の部屋に入ってきて

抱きつかれた。

 

だめだ、全然わけわかんねぇよ。

 

八幡「おい。如月どした?」

 

千早「うぅ、プロデューサー。さっき後ろに黒い影が…。」ナミダメ ウワメヅカイ

 

八幡「うぐっ。お、落ち着け。大丈夫だから。」

 

如月に抱きつかれたままどれくらい時間がたったのだろうか。1分かもしれないし1時間かもしれない。

 

八幡「落ち着いたか?」

 

千早「はい。すみません、取り乱して。」

 

八幡「いや、俺が怖い話したあとだったしな。部屋に一緒にいってやるから。立てるか?」

 

千早「はい、ありがとうございます。」

 

 

 

 

律子「あ、千早戻ってきたわ。」

 

八幡「んじゃ、早く寝ろよ。」

 

千早「ありがとうございました。」

 

八幡「気にすんな。」

 

律子「何かあったの、千早?」

 

千早「///」

 

律子「?」

 

 

 

こうして俺たちの夏の長い夜が更けていった。




全然怖い話じゃなくてごめんなさい。知ってる話がこれくらいだったもので…。

意見、感想よろしくお願いします。

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