小鳥「なるほど。それじゃあプロデューサーさんは皆がこのまま練習していたらダメだ、って思っている、ということであってますか?」
八幡「まぁ、言い方に違いはあるかも知れませんが言いたいことはそういうことです。」
小鳥「そうですか。それじゃあ一緒に考えてみましょうか。あ、コーヒーでも入れますね。」
八幡「すみません。」
小鳥「はい、どうぞ。」コトッ
八幡「ありがとうございます。」
小鳥「それでは、プロデューサーさんはいつからそう思い始めたんですか?」
八幡「二、三日前くらいからすかね、多分。ライブが決まったってなったとき辺りの練習のときにはかんじてなかったです。」
小鳥「んー、皆は上手くなってないんですか?」
八幡「いや、そういうわけじゃないけど…。皆確かに少しずつ上達してます。だけど…。」
小鳥「何かがダメ。ってことですよね。」
八幡「只の俺の勘違いかもしれないって思ってるんですけど菊地に音無さんとか秋月さんとかに相談してみろって。…どうなんすかね。俺が感じていることが分からないことを相談したところでって思うんですけど。」
小鳥「プロデューサーさん、そんなことはないですよ。一人で考えてもわからないときっていうのは視野が狭くなっていることが多いんです。そういうときはどんなに考えても思い付きません。だけど誰かにその事を相談することで少し離れたところから問題を見つめることができるんです。そうしたときに、ふと答えが見つかったりするですよ。」
八幡「…。」
小鳥「じゃあ一人でやることは悪いことなのか。って思いましたか?」
八幡「は?」
小鳥「ふふっ、そんな感じの顔でしたよ。」
八幡「あー、すんません。俺今までそういう風なことを経験したことなかったんで。」ガシガシ
小鳥「私も一人で抱え込んじゃうこと、よくありましたよ。」フフッ
八幡「音無さんがですか?」
小鳥「そうですよ。私だって普通の人です。悩むことも分からないこともたくさんあります。大人も子どももその点に関してはそんなに違いはないんですよ。ただ、それに対処できる方法を知っているかどうかのちがいなんです。」
八幡「まぁ、それは分からなくもないですね。」
小鳥「私ね、困ってたときにアイドルの皆に相談したんです。そうしたら自分がとーっても悩んでいたことだったのにあっという間に解決しちゃったんですよ。あー、なんだこんなに簡単なことだったのか、って。その簡単なことが一人じゃ導けなかったんですよ。」
八幡「…。」
小鳥「一人でやることは悪いことじゃないです。一人で出来るのならそれに越したことはありません。でも、もし一人で行き詰まったなら時には誰かを頼ってもいいんじゃないですか。」
八幡「…。」
俺は音無さんの言うことに答えることが出来なかった。
音無さんの言っていることが間違っていると思っているとかそういうことではなく、その"誰か"を頼るということにどこか違和感を感じたのだ。
自分の悩みを自分のことをよく知らないやつに話して、協力する。そんなリア充みたいなことが想像できないのだ。
自分の事をよく知らないやつに話して、それで、たったそれだけで、俺の事を分かった気になられるのが嫌なのだ。
返事ができず、少しの間事務所に静寂が訪れた。
時計の秒針が振れる音だけが部屋に響き渡る。
クーラーの運転音が僅かに聞こえる。
セミの鳴き声が窓の外から聞こえてくる。
こうしているとまるで問題なんて無かったかのように時間が過ぎていく。
カチッ カチッ カチッ カチッ
そんな静寂の中、音無さんはもう一言俺にアドバイスをくれた。
小鳥「プロデューサーさん。頼るのはだれかじゃなくていいんですよ。プロデューサーさんが信頼してる人にすればいいんです。」
…カチッ…カチッ… ……
八幡「…音無さん、ありがとうございます。」
誰かじゃなくて、'' '' を頼る。
音無さんの言葉で何かが掴めそうな、何かに少し近づいたような、そんな気がした。
小鳥「なーんて、こんなかっこいいこといってますけど、結局プロデューサーさんの思ってるダメなことってのがわかってませんねー。」
八幡「あー、そういえばそれを相談してたんですよね。」
小鳥「もぅ、プロデューサーさん。しっかりしてくださいよ!」
八幡「す、すみません。」
小鳥「…あ、そうだ。この前行った夏のライブの動画みてみますか?何か分かるかもしれませんよ。」
八幡「そうですね、あ、俺がやります。」
音無さんからDVDを受け取りデッキにセットする。
しばらくするとDVDが再生され少し前のライブの映像が表示される。
テレビ「……水浴場にご来場の皆さん!これから765プロ、真夏のビーチライブを開催します!どうぞ最後までお楽しみ下さい。進行は音無小鳥が担当します。それでは、最初はサニー!」
小鳥「なんか、自分の声がテレビからするって恥ずかしいですね。」
八幡「え? あ、あぁ、そうですね。」
俺の声がテレビから聞こえてきたことがないので一瞬判断出来なかったわ。
つーか母ちゃん、なんで小町のときにはビデオカメラ持ってくのに俺の時には持ってこないんですかね。
いや、別にとってほしいとかそういう訳じゃねーんだけど。
そんなことを考えているとアイドル達が歌っているところが一人づつズームされる。
本当に楽しそうに歌ってるな。見てるこっちも元気がもらえる気がする。
あくまで気がするだけなんだけど。
小鳥「みんな楽しそうですねー。」
八幡「そうですね。…あ。」
小鳥「どうかしたんですか?プロデューサーさん。」
八幡「楽しそう…だ。」
小鳥「……はい?」
やめてください、音無さん。なんだこいつって目でこっちを見つめないで。
八幡「いや、変なわけとかじゃなくてですね。俺がずっと突っかかっていたことですよ。あいつら、今あまり楽しそうじゃないんだ、って。歌って踊れるようになるってことだけにしか目が向いてないんですよ。」
小鳥「なんだかよくわかりませんけど、けど、思い付いたんですよね。」
八幡「はい。どうするかは俺の方で考えてみます。」
小鳥「…そうですか、頑張ってください。」
八幡「…それから…困ったときは…ちゃんと誰がじゃなくて、… …相談します。」
小鳥「はい!そうしてくださいね。」
くそっ、慣れないことはするべきじゃねーな。
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はぁ、結局昨日一日中考えたがあまりいい案が思い付かなかった。
俺が感じていたつっかえの原因は分かった。
だが、それにどう対処したらよいのかというのはそれはそれでまた難しい問題なのだ。
考えすぎたせいか頭が冴えてしまい夜あまり寝付けず軽いオールみたいになっちゃったし…。
しかも今ごろになって程よい眠気が襲ってくるとか…。
眠気と疲労であまりさえない頭に糖分を送るため学校へ行く途中、赤いフォルムの自販機でMAXコーヒーを買い一気に飲む。喉に絡み付くような甘みが疲れた体に染み渡る。
さて、今日も頑張るか。
空になったアルミ缶をゴミ箱に捨て、再び学校へと向かう。
…徹夜あけで学校とか、最近社蓄精神が身に付いてきたする。
徹夜のせいか1限の途中辺りで寝落ちしてしまい気がつくと目の前に平塚先生。
はい、死亡フラグが立ちました!
凶器はバナナの皮かな…。
八幡「いや、あの、先生。これはちがくてですね…。」
平塚「そうか、違うのか。」
にっこりと笑みをつくったままそう告げる平塚先生。その少しも変わらない笑顔が逆に怖いです。
平塚「ぶっ壊すほどッ シュートッ!」ドシン
八幡「ぐはっ…。」ガクッ
ジョジョかよ。しかもこれシュートじゃなくてパンチだし。いや、おれもジョセフ好きだけどさ。
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平塚「さて、言い訳を聞こうか。」
平塚先生に授業終了後そのまま職員室に連行され、いつもの席につかされる。
というか職員室にいつもの席があるとかどんだけ俺は問題児なんだよ。
職員室で事情を知っている平塚先生に嘘をつく必要もないのでこれまでの事を伝える。
平塚「そうか、大変なんだな。」
八幡「はい、そうなんですよ。」
平塚「だけどそれは私の授業を寝てていい理由にはならないよ。」
八幡「…さーせん。」
平塚「…全く、1限から4限まで寝続けるとは…。今後気を付けるように。」
八幡「うす。」
平塚「あぁ、そうだ。それから昼食は奉仕部でとりたまえ。」
八幡「え、なんでですか?てか、あいつらいるし。」
平塚「私の授業を寝てた罰さ。ともかくちゃんと行くように。」
八幡「…はい。」
平塚先生にそういわれてしまい仕方なく教室に戻り、昼食のパンが入ったコンビニの袋を持ち奉仕部へと向かう。
…デモサーユキノン…
…ダケド…カシラ?
アーソーカモ…
奉仕部の近くに来るとうっすらと彼女らの声が聞こえてくる。
この空間に俺が入れと言うのか…。
いや、何もおかしいことはない。ただ自分の部活の部室に昼休みにいくだけだ。平気だ…。平気だよね?
どんどんドーナツどーんといこう。
よし。
彼女らのキャハハウフフでマリアさまが見てそうな空間の扉を自分で自分を励まし開くのだった。
うぅ、なんか八幡のキャラがぶれぶれだ…。難しいです…。
感想、意見よろしくお願いします。