八幡「765プロ?」   作:N@NO

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いつも彼の案は無謀である。

 

 

 

俺が教室に入るとピタリと音がやむ。

 

そして教室の中の生徒らの目線が俺に集まる。

いや、生徒らといっても部員である雪ノ下と由比ヶ浜二人の、なのだが。

 

少しして由比ヶ浜は驚いた様子で俺に話しかけてくる。

 

結衣「ひ、ヒッキー!?ど、どうしたの、急に部室に来て。」

 

八幡「平塚先生に部室にいけって言われたんだよ。なんでだか理由は知らんけど。」

 

雪乃「それは平塚先生の教室で浮いてしまっている比企谷君への気遣いなのではないかしら。」

 

八幡「うるせーよ。というか昼飯では教室で浮いてない。俺はいつもひとりでベストプレイスにいって飯を食うからな。」

 

雪乃「昼食では、ね。」フッ

 

含みのある笑顔をする雪ノ下。

 

結衣「い、いや、大丈夫だよ!全然大丈夫!ヒッキーのこと皆そんなに気にしてないよ!」

 

八幡「俺のことなんて興味ないですもんね。」

 

結衣「え、あ、いや、それは…。」

 

雪乃「優しさは時に残酷ね。」

 

そうそう、優しさは時に残酷。

 

でも、俺、雪ノ下さんに優しくしてもらった記憶がないんですけど。

というか残酷なことしかないような気がするんですけど。

全く、どうして残酷は時に優しさにならないのかね。

 

優しさは時に残酷ってのは必要条件なんでしょうか?

 

いや、数学出来ないから必要条件がなんだったのかよくわかんないんだけどな。

 

雪乃「それで、いつまでそこに突っ立っているつもりなのかしら?案山子谷くん。」クスッ

 

八幡「いや、別に俺カラスを追っ払ったりしねーから。」ガラッ

 

そう言いながらも雪ノ下に言われた通り、たちっぱなしもあれなので'いつもの'席に座る。

 

雪ノ下と由比ヶ浜も'いつもの'席に座って弁当を広げていた。さっき食べ始めたのか分からないがどちらの弁当も対して手をつけられていない。

 

二人の方をなんとなく見ていると雪ノ下がこちらをチラチラと見ているのに気がつく。

 

八幡「…どうかしたのか?」

 

雪乃「…そ、その、ひ、久しぶりね。」

 

八幡「…おう、久しぶり、だな。」

 

そういうのは最初に言うべきなんじゃないでしょうか。開口一番に罵倒はよくないと思います。

 

 

でも、少し恥ずかしがりながら言う雪ノ下は可愛かったです。

 

俺がそう返事を返してから、誰も口を開かず少し気まずい空間が出来上がる。

敢えて言わせてもらえば、教室が俺の一言で急に静かになるあれではなく、何を話したらいいかわからなくて黙ってしまう方のあれだ。

 

何もしないでただ黙っているのもあれなので、コンビニの袋からナイスなスティックを取りだし袋をあけて食べようとするとこの空気に耐えられなかったのか、由比ヶ浜が口を開く。

 

結衣「あ、あのさっ、ヒッキーは夏休みどうだったの?」

 

八幡「大体仕事だったな。レッスンとか撮影とかの同行で大変だった。」

 

結衣「へ、へぇー。それじゃあ、どっかに遊びに行ったりはしなかったの?」

 

八幡「いや、特には…、あー、一応海には行った。まぁ、それも仕事だったけど。」

 

結衣「へ、へぇー、海かぁー…。 …アイドルの女の子達と海とか、これはヤバイかも…。」ボソッ

 

由比ヶ浜が何か言っていたがあまり聞こえなかったが、特に問題はないだろう。

 

雪乃「アイドル達は無事だったのかしら?比企谷君に襲われたりしてないといいのだけれど。」

 

八幡「するかよ。プロデューサーがアイドルに手を出したらダメだろ。」

 

ふと、如月のことが頭に浮かんだがあれは手を出した訳じゃない。俺からはなにもしてない。うん。

 

 

雪乃「…そうよね。比企谷君にそんなことする甲斐性は無いものね。」

 

そう言われると反論したくなってしまうのが男なのだろう、何故か反論してしまった。

 

今思えばこのとき俺はどうかしていたに違いない。

 

…いや、一度いってみたかっただけだけだ。

 

八幡「まぁ、そのまま一泊したんだけどな。」

 

結衣「え、ちょ、ヒッキー!それどういうこと!?」

 

雪乃「詳しく説明してもらえるかしら。ひきがやくん?」ニッコリ

 

こ、怖いよ。目が笑ってないよ。

 

八幡「そ、そんなことよりお前らの方は夏休みどうだったんだよ。」

 

苦し紛れに話題を変えようとする。これ以上はまずい。主に俺の命が。

 

結衣「あー、話題変えないでよー。」ブー

 

雪乃「はぁ、後で詳しく聞かせてもらうわよ。」

 

八幡「あ、あぁ。」

 

適当な逃げだったが、なんとか延命出来たようだ。

そしてこのまま忘れてもらえるとうれしいです。

 

結衣「奉仕部でね、合宿に行ったんだ。千葉村に。」

 

八幡「千葉村に何しに行ったんだよ、合宿ったってそんなことするような内容の部活じゃねーじゃねーか。」

 

雪乃「平塚先生からの課題よ。小学生たちの林間学校のサポートをすること。」

 

八幡「へぇ、そーいうのも奉仕部の範疇なのか。二人だけか?」

 

結衣「ううん、葉山くん、優美子、ひな、それから戸部っちもいたかな。」

 

八幡「は?奉仕部の合宿じゃなかったのか?」

 

雪乃「これも平塚先生よ。私たちだけにやらせたら贔屓になるからと内申を餌に募集していたらしいわ。」

 

さすが平塚先生。おおかた自分に持ってこられた仕事を生徒に手伝わせてやろうっていう考えだろう。

 

結衣「でね、林間学校で皆からハブられちゃってた女の子がいたの。」

 

八幡「そーいうの小学生でもあるもんなんだな。」

 

雪乃「…小学生も高校生も変わらないわ。等しく人間なのだから。」

 

八幡「…確かにな。」

思い返せば俺も小学生のころからハブられてたわ。

 

結衣「それをなんとかしてあげよー、ってなったんだけど…。」

 

由比ヶ浜の顔から察するにあまり良い結果にはならなかったのだろう。

 

八幡「そっちも色々とあったんだな。」

 

結衣「…うん。」

 

その小学生の女の子が少しかわいそうに思えたのだが、俺がその場にいたとしてもきっとなにもでになかったであろうから、俺からは特にこれ以上はいわなかった。

 

暗い話をしたせいか再び教室に沈黙が訪れようとした。

 

そういや、もうひとつ聞きたいことがあったのだ。

 

沈黙となる前に俺はもうひとつ彼女らに質問をした。

 

八幡「…そういや、さっき俺が来る前になんの話してたんだ?やけに真剣そうだったけど。」

 

結衣「あー、えっとね、さっき話してたのは文化祭の話だよ。」

 

由比ヶ浜の顔がさっきより少し明るくなる。

 

八幡「文化祭?」

 

結衣「うん。ゆきのん副委員長やってるの。」

 

八幡「そういうのやらなそうだけどな。」チラッ

 

雪乃「…それは別にいいでしょう。それで、地域枠の参加が少なくてステージの時間に空きができてしまっててどうするか、由比ヶ浜さんと話してたのよ。」

 

八幡「ステージの…空き…。」

 

結衣「うん、あまり良い案が思い付かなくってさー。私はゆきのんとバンドやったらどうって言ったんだけどさ。ヒッキー何か案あったりする?」

 

雪乃「由比ヶ浜さん、その案が採用されることは永遠にないわ。」

 

そうピシャリと雪ノ下が由比ヶ浜の案を否定するが、俺的にはちょっと二人の出てるバンド見てみたい気もする。

 

八幡「それで、どのくらいの時間空いてるんだ?」

 

雪乃「30分位ね。予定していた団体数より3つ少ないの。」

 

八幡「…」

 

 

30分の文化祭のステージか。

 

多少の失敗してもノリでなんとかなるし何よりプレッシャーも少ないだろう。

 

もしかするとこれが問題の解決に繋がるかもしれない。これはライブをする楽しみをあいつらに思い出させるにはもってこいの機会だ。

 

でも、そんな簡単に出来るもんなのかな、手続きとか大変そうだな…。

 

 

八幡「なぁ、雪ノ下。その地域参加の日程っていつだ?」

 

雪乃「9月12日だけれど…何か案があるのかしら?」

 

9月12日か。

予定を確認するために手帳をとりだしスケジュールの確認する。

 

俺の担当するアイドル達はライブの為のレッスンしか入っていない。

 

よし。

 

八幡「あぁ、とびきりのやつを用意してやるよ。」

 

結衣「…うわぁ、ヒッキーすごい自信だね。」

 

雪乃「あ、あなたまさか…。」

 

結衣「ん?」キョトン

 

雪ノ下が不安そうにこちらを見つめ、由比ヶ浜は不思議そうにこちらを見つめる。

 

俺が何をしようとしてるか分かっていない由比ヶ浜のために俺はこう告げる。

 

 

 

 

 

 

八幡「あぁ、そのステージで765プロのミニライブをやる。」

 

俺はキメ顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 

こう言ったあとに言うのもあれだけど…これ、俺が決めてもいいのか?

 

あとで高木社長とか平塚先生とかに確認しないとな…。

 

 




残念ながらルミルミの出番は無さそうです…。ごめんねルミルミ…

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