八幡「765プロ?」   作:N@NO

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彼は彼女に語りかける。

放課後、由比ヶ浜に連れられ雪ノ下の家に向かう。

雪ノ下の住むマンションは付近でも高級ということで知られているタワーマンションだ。

セキュリティも厳重なので簡単に入ることは出来ない。

 

八幡「ここで呼び出しができるのか」

 

結衣「あたしに任せて」

 

そう言うと由比ヶ浜はエントランスから雪ノ下の部屋に呼び出しをかける。

二人きりのエントランスにインターホンを鳴らす音が二、三度響いた。

しかし、雪ノ下が出ることはなかった。

 

八幡「居留守…か」

 

結衣「なら、いいんだけれど…もし、本当に出られないくらい具合が悪かったら」

 

いつもなら馬鹿か、と笑い飛ばしていたところだが、とてもそんな気分にはなれなかった。

最後にもう一度、と俺が同じように呼び出しをかける。

四度目のベルが鳴る。

するとスピーカーからザッと音がし返事が返ってきた。

 

雪乃『…はい』

 

三度目の正直ならぬ四度目にして雪ノ下雪乃は俺達の呼び掛けに答えた。

 

× × ×

 

雪ノ下にエントランスを開けてもらいエレベーターで彼女の部屋の階まで上がった。

先ほどまで呼び出しをかけていた部屋の前にいき、由比ヶ浜がインターホンを鳴らした。

少しして遠慮がちに固そうな金属でできたドアが開く。

雪ノ下は少し大きめのセーターを着て髪をひとつに結わいていた。

 

雪乃「…どうぞ、あがって」

 

由比ヶ浜を先にいれ、後から雪ノ下の家に入る。

雪ノ下が一人ですんでいるらしいこの部屋は部屋が3つほどあり、廊下を進んだ先には間接照明のともるリビングダイニングがあった。

…ここに一人か。羨ましい

 

俺と由比ヶ浜は雪ノ下に案内されるままに廊下を進みリビングへと通された。

リビングには小さなガラスのテーブルの上にノートパソコンが置かれ、脇にはファイルなどの書類が重ねられている。

今日も仕事をしていたのだろうか。

 

雪乃「そこにかけてちょうだい」

 

二人掛のソファをすすめられ俺と由比ヶ浜はそれにしたがった。

雪ノ下はそっとかべによりかかった。

 

雪乃「それで、話ってなにかしら」

 

結衣「…ゆきのんが今日学校休んでるってヒッキーに聞いて大丈夫かなって」

 

雪乃「ええ、問題ないわ。少し具合が悪かっただけだから、しっかり進められるところは進めているわ」

 

それは具合が大丈夫なのか、文化祭の仕事が大丈夫なのか…どちらともとれるような…曖昧な返事だった。

 

結衣「ゆきのん、最近頑張りすぎじゃん?…えっとだからさ、もう少し休んだ方が…」

 

由比ヶ浜が言い切る前に雪ノ下が答える。

 

雪乃「別に大したことじゃないわ、私は自分が出来ることをできる範囲でやっているだけだもの。だから…」

 

八幡「だから、なんだ?」

 

まるで少し前の自分を見ているようで、あのときの情けない俺のようで、言いようもない思いが胸を詰まらせる。

 

八幡「だから、一人で大丈夫だっていうのか?」

 

雪ノ下の方は向かずに、高層からみえる千葉の夜景を見つめながらそう呟く。

 

雪乃「…そうよ、これまでもそうしてきたの。だからいつも通りにやっていくのよ」

 

八幡「これまではそれでなんとかなってきたかもな」

 

雪乃「ええ。…あなただって同じでしょ、あなたも私と同じように一人でやってきたのだから…」

 

少し焦ったような口調で俺に同意を求めてくる。

そうだな。もし、これが1ヶ月前の俺だったのならば一人で何が悪い、今まで一人だったやつを否定するんじゃねぇ。なんて言ったのだろう。

 

だけど……

 

 

八幡「同じだっただろうな。だけど…今は違う。プロデューサーになって分かったことがあるんだよ。一人で出来るのは素晴らしい。だけれど誰かを頼ることで、一度、自分を客観的に見ることで見えてくる別の"こたえ"があるってことだ」

 

恥ずかしさなんて今はどうでもいい。

前の俺と同じ状況になっている、コイツを何とかしてやりたかった。

 

雪乃「…もし、もしそれが正しいとしても、私には頼れる誰かなんて」

 

結衣「いるよ。誰かじゃなくていい。私たちを頼ってくれて、いいんだよ。私たちは同じ奉仕部で、友達でしょ?」

 

雪乃「…由比ヶ浜さん」

 

結衣「えへへっ」

 

雪乃「…その男は友達と認識してはいなかっつのだけれど」

 

結衣「ちがうんだ!?」

 

そういや、友達じゃねーな。初めに断られていたし。

でも、こうしてまた雪ノ下が微笑んで、由比ヶ浜がバカをする。そんな場所が戻ってきた気がする。

 

 

結衣「くしゅん」

 

雪乃「あ、ごめんなさい。お茶も出さずに。今出すわ」

 

結衣「あ、あたしやるよ!」

 

雪乃「いえ、本当に大丈夫よ。一日やすんで体調も良くなったから」

 

どうやら体調も大丈夫らしいな。

 

雪ノ下が淹れてくれた紅茶をフーフーしながら冷ましていると由比ヶ浜がこういい出した。

 

結衣「ヒッキー、なんだかゆきのんのプロデューサーみたいだったね」

 

八幡「そんなことねーだろ」

 

雪乃「そうよ、こんな男に私をプロデュースなんて出来ないわ」

 

八幡「へっ、言っとけ」

 

結衣「あたしも、いつかプロデュースしてほしいなぁ」

 

ふと先ほどのことを思い出すとかなり恥ずかしいことをいっていた気がする。

頑張って冷ましていた紅茶を一気に飲み干した。

 

八幡「じゃ、俺帰るから」

 

玄関へと行き靴を履いていると由比ヶ浜がかけてきた。

 

結衣「あ、あたしも帰るね」

 

靴を履こうとした由比ヶ浜の首筋を雪ノ下がそっと触れた。

 

雪乃「由比ヶ浜さん」

 

結衣「は、はい!?」

 

いきなりのことで思わず敬語になっている由比ヶ浜。

 

雪乃「その……。今すぐは難しいけれど……いつか、いつかきっとあなたを頼らせてもらうわ。だから、ありがとう」

 

結衣「ゆきのん…」

 

雪乃「比企谷くんも…その、ありがとう」

 

振り返ることはせず俺はそのまま重いドアを開けた。

 

八幡「おう」

 

別に顔が赤くなっていた訳なんかではない。

 

八幡「由比ヶ浜、あとよろしく」

 

そう言い残し俺は静かにドアを閉めた。

悪いがあとは任せた。

火照った頬を冷やす海からの夜風が気持ちよかった。

× × ×

時は流れ、今日は文化祭二日前だ。

体調不良もあのあと治り復帰した雪ノ下を筆頭に文化祭の準備は進んでいき、学校は文化祭ムード一色となっていた。

由比ヶ浜は三浦たちとクラスの準備に励んでいた。クラスにいても特にする事のなかった俺はライブの為の確認をするために体育館などを見て回っていた。

大体の確認が終わり自販機へ飲み物を買いに行くと、ちょうど休憩に入ったらしい戸塚と葉山が出てきた。

 

戸塚「あ、はちまん!」

 

八幡「おぉ、戸塚!…と葉山」

 

葉山「おまけみたいだな、まぁいいけど」

 

いや、みたいじゃなくおまけだ。

 

戸塚「はちまんも休憩?」

 

八幡「…まぁそんなとこだ」

 

戸塚「文化祭。頑張ろうね!」

 

満面の笑顔の戸塚。

この笑顔のためならいくらでも働ける。

× × ×

八幡「と言うわけで、以上が当日の動きだ。衣装の着替えは先に此方でしてから来てくれ」

 

春香「はい!わかりました」

 

文化祭のライブの手取りを全員に改めて説明した。

 

真「うー、もう文化祭かぁ。僕、もうわくわくしてきました!」

 

やよい「うっうー!私もですー!」

 

真美「真美も準備ばっちしだよ→」

 

八幡「それと音無さん、明日18時に体育館の方に機材の持ち込みお願いします」

 

小鳥「はい!任せてくださいね」

 

文化祭に向けての準備は出来た。

あとはライブを成功させてやるだけだ。

 

それが、こいつらのために必要なことで、俺にできる最大限の事だ。

 




更新が遅くなって大変申し訳ないです。
言い訳になるんですが夏休みもシルバーウィークも全然休みがなかった!…ごめんなさい、言い訳ですね。
最近やっと風邪も治り投稿させていただきました。
これからもよろしくお願いします。
意見、感想待っています。



アイドル出すとかいってちょろっとで申し訳ないです。

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