会場には、前回の議論の余韻が残っていた。
提示された二つの問い。
犯罪がほぼなくなった世界で、人々がキラを必要ないと考え始めたらどうするのか。
そして、人々自身が自由を手放してでも安全を求めたら、ルルーシュはそれを認められるのか。
どちらも、まだ答えは出ていない。
司会者「さて。次の議題に入る前に、今日はちょっと特別ゲストを呼ぼうと思う」
月「また新しい参加者ですか?」
司会者「ああ。今回はちょっと変わった相手だ。月、お前にとっても無関係じゃない」
月「……僕に?」
ルルーシュ「ほう。どういう意味だ?」
司会者「まあ、見てもらった方が早い」
司会者が指を鳴らす。
すると、会場の一角に一人の男が現れた。
その姿を見た者たちは、当然ながら驚きを隠せない。顔も、声も、立ち居振る舞いも、目の前にいる月とほとんど同じ。ただ一つ違うのは、その男が自らの理想を実現した世界からやってきたということだった。
司会者「さて、改めて紹介しよう。こちらは神ライト。便宜上そう呼ばせてもらうが、別の可能性を辿り、新世界の神となった夜神月だ」
月「……新世界の神、か」
月は自分と同じ顔をした男を見つめる。
神ライト「初めまして、と言うべきかな。もっとも、君のことはよく知っている。僕自身なのだから当然だろうけど」
月「そうだな。まさか、こんな形で自分自身と会うことになるとは思わなかったよ」
ルルーシュ「同じ人間でありながら、異なる結末に辿り着いた二人か。興味深いな」
C.C.「片方は敗北し、片方は勝利した。単純な話に聞こえるが、その過程には相当な違いがあったのだろう」
ロイド「いやぁ、これは実に興味深いですねぇ。まったく同じ出発点に立った人間が、異なる結果を得た。しかも片方は自分の理想を実現しているわけですから」
リューク「ククク……まさか人間が、自分自身と向かい合うことになるとはな。死神の俺でも、そうそう見られる光景じゃない」
司会者「神ライト。まずは一つ、確認しておきたいことがある。お前の世界で何が起きたのか、ここにいる連中にも説明しておこう」
神ライト「わかった」
司会者「原作の終盤、あの倉庫でのことだ。お前の世界では、あの場にいたSPKと日本捜査本部の人間は全員死亡した。生き残ったのは、お前とリュークだけだ」
月「……全員、だと?」
司会者「そうだ。俺が介入した。結果として、お前は生き残り、キラとしての活動を続けることになった」
ルルーシュ「つまり、あの場での決着そのものを変えたわけか」
司会者「まあな。俺がキラを世の中に必要だと考えた。それだけの話だ」
神ライト「あの時は本当にありがとうございました。あなたがいなければ、僕はあの場で死んでいた。今こうして自分の理想を実現できたのも、あなたのおかげです」
司会者「どういたしまして。必要な人間を、必要な時に生かした。それだけだよ」
リューク「あの時のことは俺もよく覚えているぜ。あの声は俺にも聞こえたが、姿は見えなかった。死神の俺にも正体がわからない存在なんて、そうそういるもんじゃない」
C.C.「死神にも見えない存在、か。まったく、司会者という肩書きが似合わないな」
司会者「余計なお世話だ」
神ライトは一度、会場を見渡した。
神ライト「僕の世界では、その後もキラとして活動を続けた。犯罪は大幅に減少し、世界各地で治安は改善された。キラを支持する人々も増え、やがてキラを神として崇める者まで現れた。各国政府もキラを無視できなくなり、僕を追うための捜査体制も崩壊していった」
ロイド「なるほど。単に敵を排除して終わりではなく、その後の社会も実際に変わったわけですねぇ」
神ライト「そうだ。僕は世界を変えたかった。そして、それを実現した」
月「……羨ましいよ」
月の口から、率直な言葉が漏れた。
月「僕が目指していたものを、君は実現した。僕は敗北し、理想を成し遂げることができなかった。だが君は違う。僕が望んだ世界を、その手で作り上げたんだ」
神ライト「君がそう思うのも無理はない。僕だって、君の立場なら同じことを考えたかもしれない」
月「一つ聞きたい。君は今でも、自分が正しいと思っているのか?」
神ライト「自分が絶対に正しいとは考えていないよ。ただ、僕がしていることは必要なことだという確信がある。それだけだ」
月「……なるほど」
司会者「ふむ。ここで一つ、今回の議題に戻ろうか。『理想の世界に、正解はあるのか』だ」
司会者は二人の月を交互に見た。
司会者「月も神ライトも、目指しているものは基本的に同じだ。犯罪のない世界、あるいは犯罪が限りなく少ない世界。キラという存在によって秩序を維持する。そこに大きな違いはない」
月「そうだ。犯罪者がいなくなれば、罪のない人々が犠牲になることも減る。キラの存在は、そのために必要なんだ」
神ライト「僕も同意見だよ。現実に犯罪が減り、人々が安心して暮らせるようになった。それが何よりの証拠だ」
ルルーシュ「だが、その世界がいつまでも同じ形で維持されるとは限らない。人々の価値観も、社会のあり方も変化する。今は必要とされているものが、未来も必要とされるとは限らない」
太公望「うむ。そこで一つ聞きたいのじゃが、月よ。おぬしらの作った世界で、人々がキラを必要としなくなったらどうする?」
月「必要としなくなった、というのは?」
太公望「犯罪が減り、治安が改善され、人々が平和に暮らせるようになった。その結果、キラなどいなくてもよい、もう自分たちで社会を維持できる、と考えるようになった場合じゃ」
月「それは理想的な状態だろう。だが、そこでキラが消えれば、再び犯罪が増える可能性がある」
太公望「つまり、必要とされなくなってもキラは残るということかのう?」
月「当然だ。人々が一時的に安心したからといって、犯罪がなくなったわけではない。キラがいなくなれば、再び犯罪者が好き勝手に振る舞うようになるかもしれない」
神ライト「僕も同じ考えだ。人々がキラを必要としなくなったということと、キラが必要なくなったということは、必ずしも同じではない」
シュナイゼル「興味深いですね。つまり、キラの必要性を判断する基準は、人々の実感や希望だけではないということですか」
神ライト「そうだ。目に見える犯罪が減ったからといって、それだけで問題が解決したとは言えない。犯罪を起こそうとする者がいなくなったわけではないのだから」
シュナイゼル「しかし、キラが存在する限り、人々はその力を恐れ続けることになる。犯罪を犯さないのは、善良だからなのか。それとも、殺されることを恐れているからなのか。そこは区別する必要があるでしょう」
月「結果として犯罪が減るのなら、それでいい。人間の内面まで変える必要はない」
ルルーシュ「だが、それは平和と呼べるのか? 恐怖によって犯罪を抑え込んでいるだけなら、キラという存在が消えた瞬間に崩壊する可能性もある」
月「だからこそ、キラは必要なんだ」
C.C.「堂々巡りだな。月はキラが必要だから存在し続けるべきだと言い、ルルーシュはキラがいなくても成り立つ社会でなければ本当の平和とは言えないと言っている」
ロイド「どちらの言い分にも理屈はありますねぇ。安全を維持するために必要な仕組みと、その仕組みに依存し続ける危険性。どちらを重視するかという話でしょうか」
司会者「まあ、そういうことだな。では、もう一つ聞こう。そもそも理想の世界は誰のためにある?」
月「人々のためだ」
神ライト「もちろん、人々のためだよ」
司会者「では、その人々が望まない世界になったらどうする?」
月「人々が望まないからといって、正しいことをやめる必要はない」
神ライト「僕もそう思う。人々の希望を尊重することは大切だが、目先の感情だけで判断していい問題ではない」
ルルーシュ「だが、統治される側の意思を無視し続けることもできない。どれほど優れた結果をもたらす制度であっても、それを受け入れるかどうかは人々自身が決めるべきことだ」
シュナイゼル「少し整理しましょう。ここで問題になっているのは、理想そのものの正しさというより、誰がその理想を認めるのか、という点ではありませんか?」
月「それは人々だろう。だからこそ、僕はキラを支持する者が増えることを望んでいた」
シュナイゼル「では、支持する者が多数であれば、それで十分なのでしょうか?」
月「……何が言いたい?」
シュナイゼル「多数派が支持しているという事実は、確かに重要です。しかし、それだけで少数派の意見を切り捨ててよいのか。あるいは、少数派が反対している限り、その制度は認められないのか。どちらにも問題があります」
その言葉を受け、司会者が口を開いた。
司会者「ちょっと待て。今の話で、俺は一つ思い出したことがある」
参加者たちの視線が司会者に集まる。
司会者「W月、俺は出目川が初めて代弁者としてさくらテレビに出た時の発言を思い出した。代弁なので発言者は当然キミ達だ。あいつはこういった。キラが必要かどうか、正義か悪か、そういう議論はどんどんしろ。それで否定派が多ければキラは自ら消滅します」
司会者はそこで一度、神ライトに視線を向けた。
司会者「月の独裁なんかじゃなく、ちゃんと世間にその是非を問うている。結果が神ライトの世界なんじゃないか? 少なくともこれで『誰が判断する』とやらの答えにはなってるんじゃないのか? それとも少数意見にも耳を傾けろとでも? 必要なケースもあるだろうが、そこまでいったら最早0か100かという問題になってしまうぞ。即ち満場一致じゃないと認めないというやつだ。……この意見は以上だ。さて、好きに発言してくれ」
シュナイゼル「なるほど。確かに、これは重要な指摘ですね」
ルルーシュ「世論に是非を問うた結果、キラを支持する者が多数だった。それが神ライトの世界だということか」
司会者「そういうことだ。少なくとも、神ライトの世界ではキラの存在を一方的に押しつけただけではない。反対する自由も、議論する余地も残していたわけだ」
月「そうだ。僕は自分の考えを世間に問うた。キラが必要かどうか、正義なのか悪なのか。それを議論することを禁じた覚えはない」
ルルーシュ「しかし、そこで多数派が支持したからといって、少数派の権利まで失われていいわけではない」
月「それはわかっている。だが、少数派の意見を尊重することと、少数派の意見によって多数派の意思を覆すことは違う」
シュナイゼル「その通りです。多数派の意見を尊重することと、少数派の意見を無視することは必ずしも同じではありません。問題は、その境界をどこに引くかでしょう」
太公望「ふむ。全員が納得するまで何も決められぬというのも困るが、数の多さだけで何でも決めてよいというのも危うい。難しいところじゃのう」
申公豹「ええ。多数決は一つの決定方法にすぎません。それ自体が正しさを保証するものではない。ですが、少数派の反対を理由に、多数派の意思をすべて無効にすることもまた、別の問題を生みます」
C.C.「全員の意見を聞くことと、全員の意見を採用することは違う。そこを混同すると、何も決められなくなる」
ロイド「なるほどぉ。全員一致を条件にしたら、どんな制度も成立しなくなる可能性がありますねぇ。反対する人が一人でもいれば、何も始められないわけですから」
神ライト「僕は、世論に問いかけた結果を尊重している。反対意見があること自体を否定するつもりはないよ。だが、反対意見があるからといって、支持する人々の意思まで無視するわけにはいかない」
ルルーシュ「それは理解できる。だが、キラの存在を認めるかどうかという問題は、単なる政策の選択とは違う。キラに反対する人間は、キラの判断によって命を奪われる可能性がある。そうした人間にとって、世論調査の結果は何の救いにもならない」
月「犯罪者なら仕方がないだろう」
ルルーシュ「犯罪者と一口に言っても、その中には冤罪の人間もいる。キラが誤った判断を下した場合、その人間はどうなる?」
月「……冤罪の可能性は否定しない。だが、司法制度だって間違いを犯す。キラだけを特別視する理由にはならない」
シュナイゼル「確かに、既存の司法制度も完全ではありません。冤罪もあれば、法の抜け穴を利用して逃げおおせる者もいる。キラの存在がそうした問題を解消したという実績は、無視できないでしょう」
C.C.「結局、どちらを選んでも犠牲は出る。キラを認めれば冤罪の危険があり、認めなければ裁けない犯罪者が野放しになる。完璧な答えなど最初からないのかもしれないな」
リューク「人間は面倒くさいな。どっちを選んでも文句を言う。まあ、そこが面白いんだが」
太公望「じゃが、神ライトよ。おぬしの世界では、キラを支持する者が多かった。それはわかった。では、今後その支持が減っていった場合はどうする?」
神ライト「それでも、すぐにキラをやめるつもりはない。支持が減った理由を考える必要がある。人々がキラを必要としなくなったのか、それともキラの存在に不満を持つようになったのか。そこは見極めなければならない」
太公望「なるほどのう。支持率だけを見て決めるわけではない、と」
神ライト「そうだ。僕は人々のために世界を変えた。だが、人々の反応をまったく気にしないという意味ではないよ」
月「僕も同じだ。キラを支持する人間が増えることは望ましい。だが、それがすべてではない。必要なことをする。それが僕の役目だ」
ルルーシュ「その『必要なこと』を決めるのは誰だ?」
月「僕だ」
ルルーシュ「結局、そこに戻るのか」
月「当然だ。キラが判断しなければ誰が判断する? 人々の意見を聞くことはできても、全員が納得するまで待つことなどできない。誰かが決断しなければならないんだ」
シュナイゼル「その点については、私も月の意見に賛成する部分があります。決断を先送りすることもまた、一つの選択です。そして、その結果として犠牲になる人間がいる。何もしないことが常に正しいとは限りません」
ルルーシュ「それはわかっている。俺も決断してきた人間だ。だが、決断する者が自分の判断を絶対視すれば、いずれ他者の声を聞かなくなる」
月「僕は自分の判断を絶対視しているわけではない。必要だからやっているんだ」
司会者「そこは何度も言ってるが、俺もお前らのやり方を全否定するつもりはない。結果として多くの人間が救われるなら、その手段が必要になる場合もあるだろう。ただし、自分の判断が正義だから何をしてもいい、という話にはならない。それだけは別問題だ」
月「……君は相変わらず、僕の思想を認めないんだな」
司会者「当たり前だろ。必要なことをするのと、自分が正義だと思い込むのは別だ。何度でも言うが、俺は正義だの悪だのという看板には興味がない。必要かどうか、それだけだ」
神ライト「その考え方は、あの時にあなたが僕を助けてくれた理由にも通じるのかな」
司会者「まあな。あの時はキラが必要だと判断した。それだけだ。お前が神になったから正しかった、という話でもない」
月「……なら、なぜ僕のところには来てくれなかったんだ?」
司会者「さあな。立場は逆になっていたかもしれない。そういうこともある」
月「ずいぶん適当な答えだな」
司会者「実際、適当だからな」
会場に小さな笑いが起きる。
シュナイゼル「しかし、ここまでの話を聞くと、理想の世界に正解があるかどうかという問いそのものが、少し違っているようにも思えますね」
ルルーシュ「どういう意味だ?」
シュナイゼル「理想というものは、誰かが望む世界です。ならば、誰にとっての理想なのかによって答えは変わる。月にとっての理想、ルルーシュにとっての理想、そしてそこに暮らす人々にとっての理想。それらが必ずしも一致するとは限りません」
C.C.「誰かにとっての理想が、別の誰かにとっての悪夢になることもある。そういうことだろう?」
シュナイゼル「ええ。だからこそ、理想の世界に唯一絶対の正解があると考えること自体が、間違いなのかもしれません」
太公望「じゃが、正解がないからといって、何も決めずにおるわけにもいかぬ。人は生きておるのじゃからな」
申公豹「ええ。正解が存在しないことと、選択する必要がないことは別です。どの道を選ぶにしても、その結果を引き受ける覚悟は必要でしょう」
神ライト「僕は自分の世界を理想だと思っている。少なくとも、僕が目指していたものは実現した。犯罪に怯える人々は減り、多くの人間が安心して暮らせるようになった。その結果を否定するつもりはない」
月「僕もそう思う。僕は君の世界を羨ましいと思うし、君が成し遂げたことを否定するつもりもない」
ルルーシュ「だが、それをもって他の世界にも同じ方法を適用すべきだとは言えない。世界によって事情は違う。人々が求めるものも違う。だからこそ、俺は話し合いのテーブルを残したかった」
シュナイゼル「話し合いが成立する相手ばかりなら、それが最善でしょう。しかし、話し合いを拒む者、他者の自由を踏みにじる者がいる場合はどうしますか?」
ルルーシュ「その時は戦うしかない。俺もそれを避けられなかった」
シュナイゼル「ならば、あなたもまた、理想を実現するために力を使ったということですね」
ルルーシュ「ああ。だからこそ、俺は自分の選択を正しかったと簡単に言い切るつもりはない」
月「それでは、君は自分の行動を否定するのか?」
ルルーシュ「否定はしない。だが、肯定もしない。俺がやったことによって救われた者もいれば、犠牲になった者もいる。その両方を背負う。それだけだ」
司会者「ふむ……」
司会者は、月と神ライト、そしてルルーシュを順番に見た。
司会者「結局のところ、理想の世界に正解があるかどうかなんて、簡単には決められないんだろうな。誰かが望むものを実現すれば、別の誰かが望まないものになる。全員が満足する世界なんて、そうそう作れるもんじゃない」
リューク「ククク……人間は本当に欲張りだな。自由も欲しい、安全も欲しい。自分の望みは叶えてほしいが、他人の望みは聞きたくない。まったく面白い生き物だ」
C.C.「お前に言われたくないな」
リューク「そうかい?」
司会者「ただ、俺は一つだけ言っておきたい。正解がないからといって、何をしてもいいわけじゃない。逆に、自分の考えが正しいと信じているからといって、他人の考えを否定していいわけでもない。結局、どんな世界を作るにしても、その世界で生きる人間のことを考えなきゃならないんだろう」
太公望「うむ。今の世代ができることをし、次の世代が選べる余地を残す。それもまた一つの答えじゃろうな」
申公豹「その余地を残すことも、また一つの選択です。何も決めないということではありません」
シュナイゼル「そして、その選択が正しかったかどうかは、後の世代が判断することになるのでしょう」
月「後の世代、か。僕はそこまで先のことを考えていなかったのかもしれないな」
神ライト「僕も、今の世界を維持することばかり考えていた。だが、未来の人々が何を望むかは、確かに僕だけで決められることではない」
ルルーシュ「そうだ。世界は一人の人間の所有物ではない。たとえ、その人間がどれほど優れた能力を持っていたとしてもな」
月「……君は最後まで、僕のやり方を認めないんだな」
ルルーシュ「認めないとは言っていない。お前のやり方によって救われる人間がいることは理解している。だが、それだけで全てを正当化することはできないと言っているんだ」
月「そうか。なら、僕も君の理想を全否定するつもりはない。だが、君の方法だけで世界を守れるとも思わない」
司会者「それでいいんじゃないか。無理に結論を一つにまとめる必要はない。違う考えがあるからこそ、こうして話し合う意味があるんだろう」
司会者は、会場を見渡す。
司会者「今回の議題はここまでにしよう。理想の世界に正解があるかどうか。答えは出なかったが、少なくとも、誰か一人の理想を絶対の正解にしてしまう危険性は見えたんじゃないか?」
リューク「ククク……さて、次はどんな話になるのかねぇ」
司会者「それは次回のお楽しみだ。……と言いたいところだが、まだ話していないこともある。神ライト、お前にはもう少し聞きたいことがあるからな」
神ライト「僕に?」
司会者「ああ。お前の世界がどうなったかはわかった。だが、そこに至るまでの話はまだ十分に聞いていない。それに、せっかくもう一人の月がいるんだ。お互いに聞きたいこともあるだろう?」
月「……確かにね」
神ライト「僕も、君と話してみたいことはあるよ」
二人の月が向かい合う。
同じ顔をした二人の男。しかし、一人は敗北し、もう一人は勝利した。
そして、二人が見ている世界もまた、同じではない。
司会者「さて、もう少し続けるとするか。せっかくの機会だ。遠慮はいらないぞ」
会場には、まだ語られていない問いが残されていた。