弁論会の終わりが近づいていた。
これまで幾度となく交わされてきた議論も、ようやく一つの区切りを迎えようとしている。
司会者は参加者たちを見渡し、満足そうにうなずいた。
司会者「さて、と。これで議論の方はひとまず終了だな。最後に、全体的な感想でも聞いて締めくくるとするか」
ルルーシュ「感想?」
司会者「ああ。せっかくこれだけの人数を集めたんだ。話しっぱなしで終わるのも味気ないだろう?」
ミレイ「それなら、ここは私に任せてもらえないかしら?」
司会者「お、頼めるか?」
ミレイ「もちろん。せっかく記者役として参加しているんですもの。最後くらい、きちんと仕切らせてもらうわ」
司会者「じゃあ頼んだ。参加者だけじゃなく、観客の方にも聞いてみてくれ。閑話でやったときと同じような感じでいい」
ミレイ「了解。それでは皆さん、順番に感想を伺っていきますね。まずは弁論に参加した方々から!」
ミレイは手元のメモを確認し、最初の人物に目を向けた。
ミレイ「まずは月さん。今回の弁論会はいかがでしたか?」
月「そうですね……。正直に言えば、納得できない意見も少なくありませんでした。特に、僕の理想やキラの活動については、何度も疑問を投げかけられましたから」
ミレイ「それでも、得るものはありましたか?」
月「ええ。自分とは異なる立場からの意見を聞くことには意味があったと思います。ただ、だからといって僕の考えが変わったわけではありません。僕は今でも、自分の理想を間違っていたとは思っていません」
ミレイ「なるほど。最後まで一貫していますね」
月「当然です」
ミレイ「では、神ライトさんは?」
神ライト「僕にとっては、自分の世界を改めて考える機会になりました。犯罪が減り、多くの人々がキラを支持するようになった。それは僕の世界で実際に起きたことです。しかし、その先の社会をどう維持していくのか、という点については、まだ考える余地があると感じました」
ミレイ「同じ月さんでも、こちらは少し違った感想ですね」
神ライト「そうですね。僕たちは同じ人物でありながら、違う道を歩んだ存在ですから」
月「……ふん」
ミレイ「では、ルルーシュさん」
ルルーシュ「興味深い議論だった。自分が過去に選んだ手段についても、改めて考えさせられた。特に、目的を達成した後の世界をどうするのかという話は、重要だと思う」
ミレイ「ご自身の経験と重なる部分もあったのでしょうか?」
ルルーシュ「ああ。世界を変えることだけが目的ではない。その後に生きる人々が何を選ぶのかまで考えなければ、結局は別の支配を生むだけかもしれない」
ミレイ「シュナイゼル殿下はいかがですか?」
シュナイゼル「各人の理想や価値観が、これほど異なるものだということを改めて認識しました。特に、同じ目的を持っていても、そこへ至る手段が違えば、結論も大きく変わる。非常に興味深いものでした」
ミレイ「殿下らしい冷静な分析ですね」
シュナイゼル「ただ、最後まで完全に意見が一致することはありませんでしたね。それでよかったのだと思います」
ミレイ「C.C.さんは?」
C.C.「退屈はしなかった。人間というのは、よくもまあ同じようなことを何度も考え、悩み、争うものだな」
ミレイ「それは褒めているんですか?」
C.C.「さあな。少なくとも、こうして眺めている分には面白かったよ」
ミレイ「ロイドさんは?」
ロイド「いやあ、実に興味深かったですよぉ。特に、人間が自分の理想を実現するために、どこまでのことを許容できるのかという点ですね。技術的な問題とは違って、明確な正解がありませんから」
セシル「ロイドさん、そういう話をしているときは本当に楽しそうですね」
ロイド「そうですかぁ?」
ミレイ「セシルさんも、今回は観客として参加されていましたね。いかがでしたか?」
セシル「それぞれの立場に理解できる部分がありました。だからこそ、誰か一人の意見だけで結論を出してはいけないのだと思いました」
ミレイ「リュークさんは?」
リューク「いやあ、面白かったぜ。人間ってのは本当に飽きねえな。正義だの悪だの、神だの自由だの。あれだけ話しても、結局全員が同じ答えにはならないんだからよ」
ミレイ「死神から見ても興味深いものだったんですね」
リューク「ああ。退屈しのぎには十分だったぜ」
ミレイ「太公望さんは?」
太公望「なかなか愉快な催しじゃった。意見の違う者同士が、こうして一堂に会して話すというのも悪くない。まあ、少々話が長かった気もするがのう」
司会者「おい、そこは言わなくていい(笑)」
太公望「事実じゃろう?」
ミレイ「申公豹さんはいかがですか?」
申公豹「それぞれの主張には、それぞれの背景があります。表面的な言葉だけでは理解できない部分も多くありました。私自身、興味深く聞かせていただきました」
ミレイ「女媧さんは?」
女媧「人間というものは、己の存在を正当化するために、実に多くの言葉を費やすものよ。だが、異なる考えを持つ者たちがこうして語り合う姿は、観察する価値があった」
ミレイ「かみさんは?」
かみ「なかなか楽しめましたよ。人間たちが自分の正義を語り、互いに反論する。やはり、世界というものは眺めているだけでも面白いものですね」
太公望「おぬしの場合、眺めるだけで済ませるとは思えんがのう」
かみ「さて、どうでしょう?」
ミレイ「怨み屋さんは?」
怨み屋「正義という言葉を、皆さん随分と大切にされているようですね。でも、私は相変わらず、正義を掲げる人間ほど信用できないと思っています」
ミレイ「今回の議論を聞いても、その考えは変わりませんでしたか?」
怨み屋「ええ。人間が自分の正しさを疑わなくなったとき、どれほど残酷になれるか。それを忘れてはいけないでしょうね」
ミレイ「最後に、アバンさん」
アバン「私にとっては、非常に貴重な経験でした。異なる世界の方々と、これほど多様な考えについて話し合う機会はありませんから」
ミレイ「特に印象に残ったことは?」
アバン「そうですね。正義や理想というものは、誰かにとっては救いであっても、別の誰かにとっては脅威になり得るということです。そして、どれほど正しいと信じていることでも、自分一人の考えだけで完結させてはいけない。改めてそう感じました」
ミレイ「ありがとうございました」
アバンは穏やかに一礼した。
ミレイ「それでは、続いて観客の皆さんにも伺っていきましょう!」
リヴァル「いやあ、すごかったな。正直、途中から頭が追いつかなくなったところもあったけどさ。でも、こういう話を聞く機会ってなかなかないよな」
シャーリー「私は、みんながそれぞれ自分の考えを持っているところが印象的だったな。誰かの意見を聞いて、すぐに全部を変えるわけじゃないけど、それでも考えるきっかけにはなるんだと思う」
天子「私は、みんなが争わずに話し合えることが素敵だと思いました。考えが違っても、こうして話せるのなら……」
ミレイ「ありがとうございます。では、デスノート側の皆さんも!」
L「興味深い議論でした。特に、犯罪抑止という結果と、その過程における正当性を分けて考える必要があるという点は、改めて重要だと感じました」
ニア「僕は、今回の議論では結論よりも、各人が何を前提にしているかが興味深かったです。同じ言葉を使っていても、その意味が異なっていることがありましたから」
メロ「俺は少し回りくどいと思ったけどな。もっと直接ぶつかり合ってもよかったんじゃないか?」
松田「いやいや、十分ぶつかり合ってたと思いますけど……。でも、こういう話を聞くと、正義って何なのか、改めて難しく感じますね」
ミサ「私は、月くんの考えも、ほかの人たちの考えも、それぞれ理由があるんだなって思った。だから、簡単に誰かを悪いって決めつけるのは違うのかもしれないね」
田中実「僕は……正直、途中で何度か混乱しました。でも、世界を変えようとすることの重さは、少しわかった気がします」
夜神さゆ「私は、こういう話を聞くのは初めてだったけど、みんな難しいことを考えているんだなって思いました。自分の考えを持つことも大事だけど、他の人の話を聞くことも大事なんですね」
ミレイは最後にメモを閉じた。
ミレイ「皆さん、ありがとうございました。意見は本当に様々でしたが、今回の弁論会が、それぞれにとって何かを考えるきっかけになったのなら、記者役としても嬉しく思います」
司会者「お疲れさん。いい締めになったな」
ミレイ「こちらこそ、貴重な機会をありがとうございました」
一通りの感想を聞き終えたところで、司会者が再び前に出た。
司会者「さて、最後に3つ聞いておきたいことがある」
ルルーシュ「まだ何かあるのか?」
司会者「まあ、そんなに身構えるな(笑)。単純な質問だ。もし次に同じような機会があったら、また来たいと思うか?」
C.C.「次があるのか?」
司会者「今のところ未定だな。今回は俺がとりあえず片っ端から読んで、面白そうな連中を呼んでみたわけだが、次があるなら参加は任意にしようと思っている」
シュナイゼル「つまり、希望者だけを招くということですか」
司会者「参加希望を出しておけば、俺の方で覚えておく。何に関して話したいか、議題の希望も受け付けるぞ。因みにこれが2つ目だ」
太公望「ほう。議題まで選べるのか」
司会者「ただし、いつになるかはわからん。そもそも、俺がまたやりたいと思わなければ開催されないからな(笑)」
月「随分と気まぐれですね」
司会者「最初からそう言ってるだろ?」
神ライト「僕は、また機会があるなら参加したいですね。今回のように、自分とは異なる世界の考えを聞くことは、得るものがあると思います」
ルルーシュ「俺も、議題次第では参加してみたい。今回のような話なら、まだ考える余地はあるだろう」
シュナイゼル「私も興味があります。異なる立場の人物が集まるのであれば、次回も有意義なものになるでしょう」
C.C.「まあ、暇つぶしにはなる。気が向けばな」
リューク「俺は呼ばれるなら行くぜ。面白い話が聞けそうだからな」
太公望「ワシも、面白そうな議題なら参加してやろう」
申公豹「私も、次の機会があれば参加を希望します」
かみ「私も参加しましょう。次はもっと面白い趣向を用意していただけると嬉しいですね」
司会者「お前の場合、趣向を凝らすと碌なことにならなそうだな(笑)」
かみ「おや、心外ですね」
女媧「我は、興味を引く議題であれば考えてやろう」
怨み屋「私は、議題によりますね。正義を掲げる人間の話なら、また聞いてみたいものです」
アバン「私も、機会があればぜひ。もっとも、元の世界での仕事がありますので、いつでもというわけにはいきませんが」
司会者「そこは問題ない。呼ぶときは時間を止めるなり、都合のいいタイミングを選ぶなり、どうにでもできる」
アバン「それなら安心ですね」
ミレイ「観客の皆さんはどうですか?」
リヴァル「俺は、また呼ばれるなら来たいね」
シャーリー「私も! 今度はもう少しわかりやすい議題だと嬉しいかな」
天子「私も、皆さんのお話を聞けるなら参加したいです」
L「私も、議題によっては参加を希望します」
ニア「私も同様です」
メロ「俺もだ。次はもっと刺激的な議論を期待する」
松田「僕も参加してみたいです!」
ミサ「私も! またみんなに会えるなら嬉しいな」
田中実「僕も、機会があれば」
夜神さゆ「私も、また来てみたいです」
司会者「なんと全員参加希望とは。開催した甲斐もあったというものだよ。まあ、これだけ話し尽くして、まだ何か議題があるとは思えないがな」
ルルーシュ「それを言ったらおしまいだろう」
司会者「ところでさゆちゃん。キミの名前だけひらがな表記なんだがやっぱり粧裕って打ちにく」
白湯「またそれですか! しりませんと言ったはずです!」
司会者「ははっ。まあ、メンバーを入れ替えてやってみるのも悪くないかな? と思ったが全員参加希望なら新メンバーの候補でも考えておくか」
司会者は、何かを思い出した。
司会者「特に自由に関しては、俺の知る限り、とびっきりのに心当たりがあるからな」
C.C.「ほう。どんな奴だ?」
司会者「自分の自由が奪われるくらいなら、相手から自由を奪う。結果的に八割以上の人類を殺し尽くした、やべー奴だ」
一瞬、会場の空気が止まった。
松田「えっ……八割以上!?」
ミレイ「それは、かなりの人数ですね……」
司会者「人間の殺害数ランキングを独自調査したら、そいつは第四位だった」
ルルーシュ「第四位……?」
司会者「しかも、こいつは超常の力によるものなのに、上の二人は本当に知略やら何やらで、それ以上のことを成し遂げている。宇宙規模とかだからな」
シュナイゼル「宇宙規模……。地球上の争いとは、比較にならないということですか」
司会者「所詮地球上のみの出来事だったデスノートやダモクレスが可愛く思えてくるだろう?」
月「……ずいぶんと物騒な比較ですね」
神ライト「そんな存在が、まだいるんですか」
司会者「いるんだよ。上には上がいるということだ」
C.C.「自由を求めて八割を殺した、か。皮肉な話だな」
太公望「自由を得るために、他者の自由を奪い尽くしたということかのう」
申公豹「その人物が何を自由と呼んでいたのか、興味深いですね」
司会者「そこはヤツの幼馴染な親友も言っていたよ。キミのどこが自由なのかってな」
女媧「ふっ……人間の自由への執着も、時として世界を壊すほどのものになるということか」
アバン「……その方の事情はわかりませんが、自由を求めることと、他者の命を奪うことは別の問題でしょうね」
司会者「安心しろ。俺は当然事情も知ってるがはっきり言ってそれでもイミフだから。というか理解できてるヤツの方が少ないんじゃないかな。まあ、そこも含めて面白い議題になるかもしれないな。実現するかは知らんけど」
ルルーシュ「まったく。最後まで君らしい話題を持ち出すものだ」
司会者「褒め言葉として受け取っておこう(笑)」
司会者「さて、話を戻そう。次回の議題の希望についてだ」
ミレイ「議題の希望ですね。今回も先ほどと同じ方たちのみでよろしいですか?」
司会者「ああ。観客は弁論には参加できないが、一応全員分の希望を聞いておきたい」
ルルーシュ「次回があるかどうかもわからないのに、ずいぶん気が早いな」
司会者「希望を聞いておく分にはいいだろ。実現するかどうかは別問題だ」
ミレイ「では、順番に聞いていきましょう。まず月さん」
月「そうですね……。今回の議論を踏まえるなら、法と正義の関係について、もう少し深く話してみたいですね。人間が人間を裁くことの正当性、そして既存の法律が本当に正しいのかどうか」
神ライト「僕は、理想の社会を維持するための仕組みについて話してみたいです。今回も少し触れましたが、個人の力に頼らずに社会を守る方法については、まだ議論の余地があると思います」
ルルーシュ「俺は、自由と平等の関係だな。自由を守るために、どこまで他者の自由を制限できるのか。今回の話ともつながるが、別の角度から考えてみたい」
シュナイゼル「私は、平和の実現と維持についてですね。戦争を終わらせることと、戦争のない状態を保つことは同じではありません。その違いを議論してみたい」
C.C.「私は……そうだな。人間が不老不死を望む理由でも話してみるか。永遠に生きることは、本当に幸福なのか。なかなか面白いテーマになるだろう」
リューク「俺は人間の欲望についてだな。金、権力、愛、寿命。人間が何を欲しがって、何のためにそれを求めるのか。見ていて飽きねえからな」
L「私は、真実を知ることと、それを公表することの是非について興味があります。真実を明らかにすることが、必ずしも人々の幸福につながるとは限りませんから」
ニア「僕は、正義を判断する基準についてですね。今回の議論でも何度か問題になりましたが、判断する側の価値観が異なる場合、何を基準にすればよいのかを考えてみたいです」
メロ「俺は、目的のためならどこまで犠牲を許せるのか、だな。今回も何度か出てきたが、もっと直接的に議論してみたい」
松田「僕は、普通の人間が社会を変えるにはどうすればいいのか、ですかね。大きな力を持つ人ばかりじゃないですし」
ミサ「私は、愛と正義の関係かな。誰かを大切に思うことと、正しいことをすることが食い違ったらどうするのか。そういう話を聞いてみたい」
太公望「ワシは、運命と自由意志についてじゃな。人は自らの意思で未来を選んでおるのか、それとも最初から決められた道を歩んでおるのか。面白い話になりそうじゃ」
申公豹「私は、知識と責任について考えてみたいですね。知っている者は、知らない者に対してどこまで責任を負うべきなのか。知識を持つことが、必ずしも正しい行動につながるとは限りませんから」
女媧「我は、人間が世界を変えることの是非を問いたい。人間は己の望む世界を作る権利を持つのか。それとも、世界の在り方を受け入れるべきなのか」
かみ「私は、神と人間の関係について話してみたいですね。神は人間に何を与えるべきなのか。あるいは、何も与えない方がよいのか」
怨み屋「私は、復讐と正義の境界についてですね。誰かを傷つけた人間が、法律によって裁かれなかった場合、被害者はどうすればいいのか。興味深い話になると思います」
アバン「私は、力を持つ者と持たざる者の関係について、もう少し考えてみたいですね。力を持つ者がどこまで責任を負うべきなのか。そして、力を持たない者が自分の意思で未来を選ぶためには、何が必要なのか」
ミレイ「皆さん、かなり多くの希望が出ましたね」
司会者「そうだな。どれもそれなりに面白そうだ」
ルルーシュ「全部やるつもりか?」
司会者「さあな。今回だけでも結構な時間を使ったからな。次があるとしても、いつになるかはわからん」
C.C.「気まぐれな主催者だからな」
司会者「ただ、希望は覚えておくよ。次にやるときの参考にさせてもらう」
司会者は、少しだけ表情を改めた。
司会者「さて。……最後の3つ目だが……、重要な話をしておこう。これで本当に最後だ…」
司会者は一呼吸置いた
司会者「実は元の世界に戻すとき、今回の記憶も消すつもりだったんだが…」
ミレイ「記憶を消す?」
司会者「ああ。元の世界に戻った後、ここでの出来事を覚えていない状態にするつもりだった。夢のようなものとして扱う予定だったんだよ」
ルルーシュ「それはまた、随分と勝手な話だな」
司会者「悪に卑怯と言うと喜んでしまうように、神々に身勝手は褒め言葉にしかならんよ(笑)。ただ、今回は思った以上に楽しませてもらったからな。大サービスだ。記憶を消すか、消さないか、本人が選んでいいことにする」
シュナイゼル「自分で選択できるということですか」
司会者「ここでの出来事を覚えたまま戻るか、それとも忘れて元の生活に戻るか。どちらでも構わない」
アバン「それは、ありがたい配慮ですね」
司会者「ただし、一つ条件がある。生者限定だ」
松田「生者限定?」
その言葉に、何人かが反応した。
松田「ということは……っ?」
司会者「そう。死者は対象外だ。死んだ人間が記憶を持ち帰っても、何にもならんからな」
L「なるほど。私たちは選択の対象ではないということですね」
司会者「今回、記憶を残すか消すか選べるのは、とりあえず感想を聞いた連中に絞るが、神ライト、ニア、C.C.、アバン、太公望、申公豹、怨み屋、リヴァル、ミレイ、ロイド、天子、さゆ。この12名だ」
ニア「明確ですね。死者と生者を分けているわけですか」
司会者「ああ。死者だからといって、ここでの記憶を消してから戻すという話ではない。そもそも、元の世界に戻った後の生活があるわけじゃないからな」
メロ「つまり、俺たちはここでの記憶を持ったまま、元の状態に戻ることもできないってわけか」
司会者「ああ、それ、メロナイス。禁断の質問しちゃっていいかな。結局死んだらどうなるんだ? あの世はあったのか? 無か?」
一瞬、会場が静まり返った。
リューク「おっ、そいつは面白い質問だな」
L「確かに。死神が存在する世界であっても、人間の死後については興味深い問題です」
月「……死んだ後のことか」
ニア「僕たちにとっては、他人事ではありませんね」
メロ「おいおい、今さらそんなことを聞くのかよ」
司会者「いや、今だからこそだろ。これだけ死者が集まってるんだ。実際に死んだ連中の意見を聞ける機会なんて、そうそうないぞ」
シュナイゼル「確かに、興味深い問いです。ただ、ここにいる死者たちが同じ状態にあるとは限りませんね」
司会者「そうなんだよな。死後の世界があるかどうか、そもそも死後というものをどう認識しているのか。せっかくだから聞いてみようじゃないか」
L「私からですか?」
司会者「そうだな。まずはLから聞いてみるか。死んだ後、何かあったか?」
L「……残念ながら、私自身が死後の世界を認識しているとは言えません。少なくとも、今ここにいるという事実だけでは、死後の世界が存在すると証明することにはならないでしょう」
ニア「僕も同じです。死後の世界が存在するという確証はありません。ただ、こうして会話ができている以上、少なくともこの場では、死者も意識を保っているようですね」
メロ「俺は、死んだらそれで終わりだと思っていたけどな。まさかこんな場所に呼ばれるとは思わなかった」
松田「でも、死んだ後もこうして話せるなら、無ではないってことなんでしょうか?」
司会者「そこは難しいな。ここは俺が用意した場所だ。死後の世界そのものとは別物だぞ」
月「つまり、ここにいるからといって、あの世が存在する証明にはならないということか」
司会者「そういうこと」
リューク「俺たち死神の世界はあるぜ。だが、人間が死んだ後にどこへ行くかって話とは別だな」
月「死神の世界があるのに、人間の死後についてはわからないのか?」
リューク「さあな。少なくとも、俺たちが人間の死後を全部見届けているわけじゃない。人間が死んだ後のことを、俺たちが何でも知ってると思うなよ」
太公望「ふむ。死後の世界があるかどうかは、ワシらの知るところではないというわけじゃな」
申公豹「少なくとも、今回の参加者の中に、死後の世界を明確に証明できる者はいないようですね」
女媧「我は世界の理を知る存在ではあるが、人間の死後について、そなたらが望むような答えを与えるつもりはない。死とは何か。それを人間がどう受け止めるかもまた、観測すべきものよ」
かみ「死後の世界ですか。なかなか面白い話題ですね。ですが、私も人間が死んだ後の行き先について、すべてを知っているわけではありませんよ」
司会者「なんだよ。神様連中も案外知らないんだな(笑)」
かみ「何でも知っていると思われても困りますね」
怨み屋「私も、死後の世界があるかどうかは知りません。ただ、死んだ人間が何を望んでいたのか、生きている人間にはわからないことも多いでしょうね」
アバン「私の世界でも、死後については様々な考えがあります。ただ、確かなこととして語れるほどのものではありません。少なくとも、私は死後の世界を自分の目で確かめたわけではありませんから」
司会者「なるほどな。結局、死者本人たちに聞いても、確実な答えは出ないか」
メロ「そもそも、死んだ後に何があるかなんて、死んでみないとわからないだろ」
月「その結果が今の僕たちというわけだが……」
神ライト「……」
月「何だ?」
神ライト「いや。僕は生きているから、死後のことはまだわからない。君とは違ってね」
月「……そうだったな」
リューク「クククッ。結局そこに戻るのかよ」
司会者「まあ、死後の世界については、答えを出すのが難しいテーマだったな。これはこれで面白かった」
月「……」
月は、何か言いたげに神ライトの方を見た。
神ライト「どうしたんだい?」
月「いや……。君は生きているから、こうして選択する権利もあるわけだ」
神ライト「そういうことになるね」
月「僕は死んでいるから、その選択すらできない、と」
神ライト「……そうなるね」
月「同じ僕なのに、ずいぶんな違いだな」
神ライト「それは、僕に言われても困るよ」
月「わかっている。わかっているが……」
月は深いため息をついた。
C.C.「ふっ。自分の別の可能性を羨ましがるとはな」
月「羨ましくもなるだろう。生きているだけでなく、自分の世界まで手に入れているんだからな」
神ライト「それについては、僕も複雑な気持ちだけどね」
リューク「クククッ。こりゃ面白いな。自分自身に嫉妬する人間なんて、そうそう見られるもんじゃないぜ」
月「黙っていろ、リューク」
司会者「まあまあ。こればかりはどうにもならん。生きているか死んでいるかの違いだからな」
月「……つくづく、君は恵まれているな」
神ライト「だから、僕に言われても困るって」
会場に小さな笑いが起きた。
司会者は改めて、選択できる12名へと目を向けた。
司会者「それと、どちらを選んでももしまたここに来ることがあれば、その時点で今回までの記憶はすべて戻るのは保証しておく」
ニア「つまり、今回の記憶を消すことを選んでも、次回参加した際には思い出せるということですね」
司会者「ああ」
神ライト「僕は、覚えておきたいと思います。今回の話を忘れたくありませんから」
ニア「私も残しておきます。弁論には参加できなかったですが、これだけの体験は早々に出来るものではありませんから」
C.C.「私も残しておくよ。なかなか退屈しなかったからな」
アバン「私も、覚えておきたいですね。今回の経験は、きっと今後の自分にとっても意味のあるものになると思います」
太公望「ワシも残しておくとするか。忘れるには惜しい、なかなか愉快な時間じゃった」
申公豹「私も残しておきます。今回の議論は、今後考えるうえでも参考になるでしょう」
怨み屋「私も残しておきます。こういう話は、後になってから思い返すこともありますからね」
リヴァル「俺も残しておくよ。なんだかんだで、こんな経験はそうそうできないしな」
ミレイ「私ももちろん。記者としても、参加者としても、忘れたくない時間でした」
ロイド「僕も残しておきましょう。実に興味深い観察対象がたくさんいましたからねぇ」
天子「私も、覚えていたいです。皆さんのお話を忘れたくありません」
さゆ「私も残します。難しい話も多かったけど、いろいろ考えることができましたから」
司会者「よし。では、今のところ12名全員が記憶を残す選択ということだな」
月「……全員か」
神ライト「月、まだ気にしているのかい?」
月「当然だろう。僕だって選べるなら残しておきたいさ」
司会者「まあ、そこは仕方ない。そもそも、死者の記憶を保持しても何もならんからな。死後の記憶がないなら尚更だ。悪く思うなよ」
月「別に、君を責めているわけじゃない」
リューク「クククッ。最後まで面白いな、人間ってのは」
司会者「クククッ。お前も最後まで結局それだったな。ったく死神ってのは」
リューク「クククッ。真似すんなし」
司会者「クククッ」
リューク「クククッ」
「お前ら最後にしつけーよ!」
誰かが叫んだ……
全員の意思を確認し終えた司会者は、会場を見渡した。
長い議論だった。
正義と悪。理想と現実。秩序と自由。力と責任。
同じ問いを何度も繰り返し、立場を変え、異なる世界の価値観をぶつけ合ってきた。
それでも、最後まで全員が納得する答えは出なかった。
しかし、それでいいのだろう。
司会者は軽く息を吐くと、全員に向けて口を開いた。
司会者「皆さん今回は本当にお疲れ様でした」
一度、言葉を区切る。
司会者「何度も何度も同じ話を繰り返してる気がしたので、ぶっちゃけ途中でダレましたが、なんとかやりきれたようで満足です」
C.C.「おい、主催者がそれを言うのか」
ルルーシュ「最後くらい、もう少し取り繕ったらどうだ」
司会者「主催者? 取り繕う? 何のことです?」
太公望「まあ、確かに少々長かったのう」
司会者「長~い時を生きてきたであろうあなたが言いますか(笑)。では、参加希望者、いつになるかわかりませんが次もよろしくお願いします」
司会者は全員を見渡した。
司会者「では解散!」
そう言って、サッと手を振る。
その瞬間――
会場にいた全員の姿が、一斉に消失した。
議論の舞台も、観客席も、司会者の前に並んでいた椅子も。
すべてが、最初から何もなかったかのように静まり返る。
それぞれは、それぞれの世界へ。
それぞれの時間へ。
生きている者たちは、自ら選んだ記憶を携えて。
死者たちもまた、それぞれの在り方のまま、弁論会の舞台から姿を消した。
そして、司会者だけが残された空間で、ひとり呟く。
司会者「……さて。次はいつになることやら」
正義に絶対の答えはあるのか。
理想のためなら、どこまで許されるのか。
自由とは何か。人が人を裁くとはどういうことなのか。
答えは出なかった。
けれど、異なる世界から集まった者たちが、互いの考えをぶつけ合った時間は、確かにそこにあった。
──弁論会、閉幕。
くぅ疲を発動したいところですが自重しておきます
司会者は作者のアバターとして描いてるので大半は自筆ですがチャッピー先生がうまいこと仕上げてくれましたのでよかったです
では読んでくれた方いたら、ありがとうございました
続きや外伝等をご希望でしたら「毎秒投稿しろ」とお書きください
では