新世界の神と、世界を壊す魔王   作:never learns

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第26話

番外編・自由をめぐる余興

第四幕「二度目の人生、その結末」

――845年、シガンシナ区。

 

少年エレン・イェーガーは、母カルラが死んだあの日へと戻っていた。

 

だが、彼の中身は違う。

 

巨人の正体も、壁の秘密も、仲間たちの未来も知っている。何より、自分がこれから何をしてしまうのかを知っていた。

 

今度こそ、違う未来を作る。

 

その決意を胸に、エレンは動き始めた。

 

第一章・母を救う

エレン「母さん! 逃げるんだ!」

 

カルラ「エレン? どうしたの、そんなに慌てて……」

 

エレン「いいから! ここにいたら死ぬんだ!」

 

当然、母親は困惑した。

 

幼い息子が突然、家から逃げろと叫んでいるのだ。しかも、壁が壊されるだの巨人が来るだの、到底信じられない話ばかり。

 

しかし、エレンは諦めなかった。

 

カルラだけでなく、ミカサやハンネスにも必死に訴えた。

 

エレン「頼む! 俺を信じてくれ!」

 

ハンネス「おいエレン、落ち着け! 何があったんだ!」

 

エレン「説明してる時間がないんだ!」

 

そこへ、あの巨大な影が現れる。

 

超大型巨人。

 

エレンの知っている歴史が、再び動き始めた。

 

しかし今回は違った。

 

カルラは事前に避難しており、瓦礫の下敷きになることはなかった。

 

エレン「……母さん」

 

カルラ「エレン……!」

 

エレンは母親を抱きしめた。

 

一度失ったものを、もう一度取り戻せた。

 

その実感に、彼はしばらく何も言えなかった。

 

第二章・変わり始める未来

エレンは、知っている情報を少しずつ周囲に伝えていった。

 

もちろん、すべてを一度に話したわけではない。

 

幼い子供の言葉を大人たちがすぐに信じるはずもない。だからこそ、確実に証明できることから伝え、少しずつ信頼を得ていった。

 

ミカサ「エレン、最近変だよ」

 

エレン「そうか?」

 

ミカサ「前より落ち着いている。でも、時々すごく悲しそうな顔をする」

 

エレン「……気のせいだ」

 

ミカサ「嘘」

 

エレン「お前には敵わないな」

 

アルミン「でも、エレンが言っていることが本当なら、壁の外には僕たちが知らないことがまだたくさんあるんだね」

 

エレン「ああ。だから、今度はちゃんと確かめたい」

 

アルミン「うん。一緒に行こう」

 

エレンは二人を見つめた。

 

以前は、二人を守るために戦い続けた。

 

今度は、二人と一緒に未来を選びたいと思った。

 

第三章・知識と選択

訓練兵団に入ってからも、エレンの行動は以前とは異なっていた。

 

巨人との戦い方、立体機動の扱い、仲間たちの性格や能力。知っていることは多い。

 

しかし、未来を知っているからといって、すべてが思い通りになるわけではなかった。

 

ミカサは相変わらず強く、アルミンは相変わらず頭が切れる。

 

ジャンはエレンと衝突し、ライナーやベルトルト、アニもそこにいた。

 

エレンは彼らを見て、何度も言葉を飲み込んだ。

 

エレン(心の声)「こいつらの正体を知っている。だが、今ここで何を言えばいい?」

 

エレン(心の声)「敵だと決めつけて、すべてを壊すのか。それとも、別の道を探すのか……」

 

彼は以前のように、ただ怒りに任せて突き進むことを避けた。

 

巨人の正体や壁の秘密についても、証拠を集めながら慎重に動く。

 

そして、仲間たちとの関係を大切にした。

 

第四章・海の向こう側

やがて、エレンたちは壁の秘密に近づいていく。

 

地下室の真実。

 

壁の外に広がる世界。

 

そして、マーレという国家と、そこに暮らす人々。

 

エレンは知っていた。

 

かつて自分が何をしたのか。

 

世界の大半を踏み潰し、多くの命を奪ったことを。

 

だが、今度は違う。

 

エレン「……俺は、もうあんなことはしない」

 

アルミン「エレン?」

 

エレン「いや、何でもない」

 

ミカサ「エレン、無理をしないで」

 

エレン「ああ。大丈夫だ」

 

彼はすぐに世界を変えられるわけではないと理解していた。

 

マーレ側の人間にも、家族がいて、友人がいて、それぞれの人生がある。

 

敵と味方という単純な区分だけでは、何も解決しない。

 

だからこそ、エレンは対話の可能性を探した。

 

当然、簡単ではなかった。

 

偏見も憎しみも、長い歴史の中で積み重なっている。

 

それでも、少しずつ変化は生まれていった。

 

第五章・自由の意味

時間が経つにつれ、エレンは自分の中にある「自由」という言葉を考え直すようになった。

 

自由とは、誰にも邪魔されずに好き勝手に生きることなのか。

 

自分の望みを叶えるためなら、他人の人生を奪ってもいいのか。

 

かつての自分なら、きっと答えを急いでいた。

 

しかし、今は違う。

 

エレン「……俺は自由になりたかった」

 

アルミン「うん」

 

エレン「でも、自由になろうとして、他の人間から自由を奪っていた」

 

アルミン「それに気づけたなら、今度は違う選択ができるかもしれない」

 

エレン「……そうだな」

 

ミカサ「私たちは一緒にいる。だから、一人で全部背負わなくていい」

 

エレン「ああ」

 

彼はもう、一人で世界のすべてを背負おうとはしなかった。

 

仲間と相談し、時には意見をぶつけ、間違えたら修正する。

 

それは、かつての彼が選べなかった道だった。

 

第六章・もう一つの結末

長い年月が過ぎた。

 

すべての問題が解決したわけではない。

 

国同士の対立も、差別も、憎しみも残っている。

 

しかし、かつてのような大虐殺は起こらなかった。

 

エレンは仲間たちとともに、世界を少しずつ変えていった。

 

ミカサやアルミン、かつて敵だった者たちとも、完全に分かり合えたわけではない。

 

それでも、互いを理解しようとする努力は続けられた。

 

そして、エレンは自分の人生を終える時を迎えた。

 

彼の胸にあったのは、かつてのような激しい怒りではなかった。

 

エレン「……今度は、少しは違う未来を作れたかな」

 

ミカサ「エレン……」

 

アルミン「うん。少なくとも、僕たちは一緒にここまで来られた」

 

エレン「そうか……」

 

エレンは穏やかに目を閉じた。

 

 

 

 

――そして。

 

どこからともなく、声が聞こえた。

 

 

 

司会者「お疲れさん」

 

 

 

その声を聞いた瞬間、エレンの意識はゆっくりと暗転していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

エレンが姿を現した。

 

 

だが、彼はすぐには動かなかった。

 

 

長い人生を終えたばかりのように、静かに立っている。

 

 

エレン「…………」

 

 

司会者「で? 戻ってよかったかい?」

 

 

エレン「……ああ」

 

 

 

――逆行編・完。

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