エレンの二度目の人生の記憶が全員に共有され、会場にはしばらく静かな余韻が残っていた。
そんな中、司会者が軽く手を叩く。
司会者「さて、と。そろそろ今後のことを決めようか」
ミレイ「今後のこと?」
司会者「まずはエレンだな。お前、ここに残るか? それとも元の世界に帰るか?」
エレン「……帰ることもできるのか?」
司会者「できるぞ。ただし、一つ問題がある」
エレン「問題?」
司会者「お前、元の世界では死人だからな。帰ったら、そのまま消えることになる」
エレン「……ああ、そうだったな」
司会者「まあ、ここに残るなら問題ない。ちなみに、もしまた何らかの形でここに来られた場合は、今回の記憶を復活させてやる。だから、ここでの経験が完全に失われるわけじゃない」
エレン「なるほどな……」
ルルーシュ「つまり、帰還すれば存在そのものが消滅する可能性がある。ここに残れば、少なくとも今の状態を維持できるということか」
司会者「可能性じゃなく死者は消滅するんだよ。あの世がある世界以外ではな。俺の知る限りではとりあえずあの世の方が楽しそうな世界や、そもそも主役が冒頭でいきなり死んだところから始まる世界もある。霊界に行って生き返ろうとするところからスタートだ。まあ、急いで決める必要はない。お前の意思を聞いているだけだ」
ルルーシュ「なるほど。世界によって死後の扱いそのものが違うわけか」
司会者「そういうこと。死んだら終わりの世界もあれば、死後の世界で第二の人生が始まるような世界もある。なかなか面白いもんだろ?」
リューク「ククク……人間の死後もずいぶんと多様なんだな」
司会者「まあな。だから一概には言えないってことだ。エレン、お前の世界がどっちなのか、俺にも断言はできない。少なくとも、帰れば今ここにいるお前は消える。それだけは確かだ」
エレン「……わかった。少し考えさせてくれ」
司会者「おう。ゆっくり考えろ」
エレンは少し考え込む。二度目の人生を終えたばかりだ。今すぐ何かを決めるには、まだ気持ちの整理が必要なのかもしれない。
司会者「それと、ついでにもう一つ」
尚文「……嫌な予感がするんだが」
司会者「尚文、お前は強制残留な。ついでに強制参加」
尚文「はあ!? なんで俺だけ決定事項なんだよ!」
司会者「せっかく呼んだんだし、いいだろ? お前、理不尽には慣れてるんだろ? あとお前のことが好きなんだよ。言わせんな恥ずかしい」
尚文「…………は?」
ラフタリアがいたら、きっと今の一言に何か反応していただろう。だが、ここにいるのは尚文本人だけだ。
尚文「いや、そういうことを真顔で言うな! 反応に困るだろ!」
司会者「照れるな照れるな」
尚文「照れてねえよ!」
ミレイ「ふふっ。これはなかなか珍しいものを見ましたね」
アバン「ええ。司会者が自分から好意を口にするとは」
司会者「おいおい、俺だって好きなものは好きと言うぞ」
尚文「だったらせめて、強制参加とセットにするな!」
司会者「それはそれ、これはこれだ」
ルルーシュ「相変わらず理屈が通っているようで通っていないな」
C.C.「本人が満足しているならいいんじゃないか?」
尚文「よくない!」
会場に笑いが広がる。
司会者「まあ、そんなわけで尚文は引き続き残留。強制参加も継続な」
尚文「結局そこは変わらないのかよ……」
司会者「変わらん」
司会者「さて、次の話だ。逆行を希望する者はいるか?」
ミレイ「えっ、また逆行をやるんですか?」
司会者「希望者がいるなら考えてやってもいい。まあ、実際に誰を戻すか決めるのは俺だけどな(笑)」
月「希望者を募るだけ募って、採用するかどうかは司会者次第……ということですね」
司会者「その通り。民主的な手続きに見せかけた独裁だな」
L「自分で言ってしまうんですね」
司会者「隠す必要もないしな」
太公望「ほう。逆行か。なかなか興味深い話ではあるのう」
司会者「実は今、俺の中に一つ案があるんだが……」
一同の視線が司会者に集まる。
司会者「太公望を一話に戻してみたいんだが、どうだろうか」
太公望「……ワシを?」
申公豹「これはまた、意外な人選ですね」
司会者「いや、単純に面白そうだと思ってな。お前なら、最初から女媧の存在や計画を知った状態で物語を始められるわけだ」
太公望「ふむ……確かに、それは面白そうじゃな」
司会者「例えばだ。第一話から女媧の計画を知っているわけだから、ソッコーで女媧をなんとかしようとするのか? それとも、別のことを優先するのか?」
女媧「ほう……我を最初から排除するつもりか、伏羲」
太公望「いやいや、まだ何も決めておらんぞ。そもそも、おぬしをどうにかするにしても、そう簡単にはいかんじゃろう」
女媧「ふふ……それはそうであろうな」
申公豹「太公望が最初から全てを知っているとなれば、物語の展開は大きく変わるでしょうね。仲間との出会いも、封神計画への向き合い方も」
太公望「それに、ワシが知っている未来が必ずしもそのまま起こるとは限らん。エレンの時と同じじゃな」
司会者「お、いいところに気づいたな。未来を知っているからといって、全部思い通りになるわけじゃない。むしろ、知っているからこそ悩むこともあるだろう」
女媧「では、伏羲。そなたは我をどうするつもりなのだ?」
太公望「さてのう。まずは一話に戻ってから考えるとするかの」
司会者「おいおい、まだ決定してないぞ(笑)」
太公望「おぬしが話を振ったのじゃろう?」
司会者「まあな。とりあえず、逆行希望者がいるなら言ってみてくれ。採用するかどうかは俺が決める」
ミレイ「なんだか、次の企画が始まりそうですね」
尚文「俺はもう巻き込まれてるけどな……」
司会者「お前は諦めろ。強制参加だから」
尚文「諦められるか!」
会場に笑いが起こる。
エレンはその様子を眺めながら、少しだけ表情を緩めた。
自分がここに残るのか、帰るのか。そして次に誰が過去へ戻るのか。
まだ決まっていないことは多い。
だが、少なくともこの場所では、もう一つの物語が始まろうとしていた。