本編の議論が一区切りつき、会場には休憩時間が告げられた。
参加者たちはそれぞれ席を立ち、飲み物を手に取ったり、近くの知人と話し始めたりしている。
そんな中、司会者は少し離れた場所で、リュークと並んで立っていた。
リュークがいつもの調子で、ぼそりと呟く。
「人間て……面白」
「お前いい加減他のこと喋れよ。オチ担当で呼んだんじゃねーんだぞ」
リュークは心底愉快そうに笑った。
「クックックッ……そりゃ失礼。善処するよ」
「あと面白いことは面白いが、弁論大会とはそうゆうもんだとはいえ俺はいい加減飽きてきたぞ。そろそろ〆に入ろっな~」
「ククッ……主催者がそれを言うのかい?」
「主催者だから言うんだよ。終わりを決める権利くらいあるだろ」
二人のやり取りは、周囲の誰にも聞こえていなかった。
リュークとの会話を終えた司会者は、会場の様子を眺めながら、ゆっくりと辺りを見回っていた。
すると、マオが司会者の方へ近づいてきた。
「ねえ……この大会終わったら……僕達どうなるの?」
司会者は振り返る。
「ん? そりゃ元通りだ。序に全員のここでの記憶も消すよ。そしてここに戻ってくれば思い出す。デスノ方式」
その言葉を聞いたリュークが、思わず吹き出した。
「ククッ……!」
しかし、マオは笑わなかった。
「……残して……くれないの……? またC.C.と離れ離れになるのイヤだよ……」
その言葉に、司会者は少しだけ表情を変えた。
「俺はあくまでイレギュラーだからねえ……そっち本来の世界にまで干渉する気はないよ。これが支配に興味ナシって言った根拠の一つでもある。
キミはもう死んだんだ。C.C.ではなくCの世界へおかえりボーヤ」
「……笑えないよ……」
マオは俯いた。
その様子を見ていたC.C.も、何も言えずにいる。
司会者は少し間を置いてから、ふと思い出したように口を開いた。
「しかし改めて思ったが月とルルーシュはほんっっとに似て非なる者て言葉が似合うなあ……。最終的には死んだとこまで同じだしね」
その場にいた何人かが、思わず二人の名前に反応した。
月とルルーシュ。
片や新世界の神を目指し、片や世界を壊して創り直そうとした男。
どちらも世界を変えようとし、どちらも最後には命を落とした。
だが、その道筋も、思想も、そして最後に残したものも同じではない。
その違いを、今まさに二人は議論している。
「……マオ」
C.C.が静かに声をかけた。
「大会が終わるまでは、ここにいる。だから今はそんな顔をするな」
「うん……」
マオは小さく頷いた。
そのやり取りを見ていた者たちの反応は様々だった。
ロイドは珍しく茶化さず、少し考え込んでいる。
シュナイゼルは司会者の言葉に含まれた「干渉する気はない」という部分を、興味深そうに受け止めていた。
一方、ルルーシュは少し離れたところからマオを見ていた。
死者を元の世界へ戻す。
そして、記憶を消す。
それは司会者にとって、単なる後片付けなのかもしれない。
だが、当事者にとってはそう簡単な話ではない。
「……司会者」
ルルーシュが口を開いた。
「お前は、死者を元の世界に戻すと言ったな」
「ああ」
「ならば、マオのように残された時間を惜しむ者がいることも理解しているはずだ」
「もちろん」
「それでも干渉しないのか?」
「しないね。俺ができることと、俺がやるべきことは別だから。大体神様助けて~なんてキミが最も嫌う要素のひとつでしょ?」
ルルーシュは少しだけ目を細めながら、皮肉げに苦笑した。
「……なるほどな」
司会者は肩をすくめる。
「それに、俺が何でもできるからって、何でもしていいわけじゃないだろ?」
その言葉に、シュナイゼルが小さく笑った。
「興味深いね。絶大な力を持ちながら、自らその行使を制限する。君の言う支配欲のなさは、そういうところにも表れているわけか」
「まあね。全知全能に近い存在が、いちいち他人の人生に口を出してたら、それこそ迷惑な神様だろ。君たちの世界に直接干渉する気なんて全くないよ多分。俺が好きなのは世界というより人だからね。だからちょっとこんな催しをしてみたんだ。
ところで興味深いって言ってる人ってほんとにそう思ってるのかな? 『興味深い』とか言ってる奴って絶対興味無いよな? ホントに関心あったらそんなコトあえて言わない気がすんだよ、なんて台詞もありますが」
シュナイゼルは一瞬だけ目を丸くした。
「おや、それは私に対する皮肉かな?」
「さあ? どうでしょうねえ」
「ふふ……そういうことにしておこうか」
そのやり取りを聞いていた月が、ふと口を開いた。
「神様、か……」
「……」
司会者はそれに気づいていたが、あえて何も言わなかった。
休憩時間は、まだ続いている。
そして、次の議論ではいよいよ、力を持つ者が判断を誤ったとき、その責任をどこまで負うべきなのかが問われることになる。
月とルルーシュ。
似て非なる二人が、互いの過去と選択を真正面からぶつけ合う時間が近づいていた。