「まあ、別にいいけどよ。俺は人間どもの観察を楽しんでるだけだ。神だの何だのと、そんな大層なものと一緒にされても困るね」
「お前はお前で、妙に謙虚だな。つかお前も仮にも神名乗ってんだからそこは堂々としろよ」
「ククッ。そうかい?」
司会者は三人に向き直った。
「まあ、そんなわけでよろしく頼むよ。あ、そうそう。一度言っとくけど俺は俺の在り方を肯定も否定もしてほしいわけじゃないよ。ぶっちゃけウザいんでしまいにゃ全部だから? で返すぞこのヤロウ。どこまで続くのか楽しみだ。まあ神ポジは下々の言うことなんていちいち気にしないもんね~ねえ? 似たような立ち位置だと思ってるかみさん? あ、そのとうり! て言ってね」
突然の無茶振りに、かみはしばらく司会者を見つめた。
そして、深々と息を吐く。
「ふう……。そのとうり! これでいいかな?」
「うんうん!」
「……まあ否定はしないでおくよ。というか十分過ぎるほど気にしてるようにしか思えないのは気の所為かな?」
「そこは突っ込まないのが優しさだろうが。人の心とかないんかお前」
「いえ、かみなのですが……」
司会者はスルーした。
そして、何故かいじけたように視線を落とす。
「もう一つ教えとくよ。全知全能なんて謳っちゃいるが中身はその辺のパンピーと変わんねえんだよ……。無論、月やルルーシュみたいな頭脳明晰でもない。言動や行動でわかんだろうが。だからガチ神勢のおめーらには理解されなくてあたりめーなんだよ。言ってみりゃ月と同じだ。普通の人間が特別な力を手に入れた。それだけなんだ。だから……あんまいじめるな」
司会者は小石を蹴るような仕草をした。
しばらく沈黙が流れる。
「……」
「……」
「……」
三人の視線が司会者に集まっていた。
最初に口を開いたのは申公豹だった。
「なるほど。あなたは、神に近い力を持ちながら、その本質は我々とは異なるということですか」
「まあ、そういうこと」
「ふむ……。確かに、力の大きさと存在の在り方は必ずしも一致しない。興味深いですね」
「おっと、また興味深いが出たぞ」
「これは失礼」
申公豹は楽しそうに笑った。
女媧は司会者を見下ろすように言う。
「力を得た人間、か。ならば、そなたが己の在り方を気にするのも道理よな。神の力を持つ者が、人の心を捨てきれぬということか」
「……まあ、そういう解釈でもいいよ」
「我には理解しがたい。力を得たならば、それに相応しい在り方をすればよいだけのこと」
「はいはい。そういうところだよ」
「何?」
「いや、別に」
かみはそんな二人のやり取りを眺め、静かに口を開いた。
「ですが、私は少し理解できますよ」
司会者が顔を上げる。
「お?」
「あなたは、我々のように生まれながらにして神であったわけではない。力を得た後も、元の自分の感覚を持ち続けている。だからこそ、他者からの言葉に反応するのでしょう」
「……」
「もっとも、それを気にしていないと言い張るのは、少々無理があるようですが」
「お前もそっち側かよ!」
「ふふ。これは失礼」
リュークが横から笑った。
「ククッ……いいじゃないか。神様だって、いじられることくらいあるだろう?」
「お前はもうリンゴ食ってろ!」
「はいはい」
リュークは再びリンゴをかじった。
ルルーシュはここまでのやり取りを聞きながら、少し考え込んでいた。
「……司会者」
「ん?」
「お前は自分を、月と同じだと言ったな」
「ああ。普通の人間が特別な力を手に入れた。それだけ、って意味ではね」
「だが、月とは違う部分もある」
「そりゃそうだろ。俺は新世界の神になろうとは思わないし、誰かを裁くつもりもない」
「力を得た後も、自分を特別な存在として扱わないということか」
「いや、特別ではあるだろ。できることは普通の人間と全然違うんだから。ただ、それと偉いかどうかは別の話だよ」
シュナイゼルが微笑んだ。
「力を持つことと、その力を持つ者が他者より優れていることは別、というわけだね」
「そうそう。まあ、そういう話をするために俺がここにいるわけじゃないんだけどね」
司会者は軽く手を叩いた。
「そろそろ休憩も終わりだ。三人とも、これからよろしく頼むよ」
申公豹は扇を閉じ、丁寧に一礼した。
「ええ。観測者として、そして時には一人の参加者として、この場を楽しませていただきましょう」
女媧は腕を組み、静かに告げる。
「我はそなたらの議論を見届けよう。人間どもが何を語り、どのような結論に至るのか……見定めてやろうぞ」
かみは微笑んだ。
「これもいきもののサガか…私も楽しみにしています。もっとも、あなたのように自ら舞台に立つ趣味はありませんが」
「おっ、さり気に名言いただきました。そこはいつか考えが変わるかもしれないよ?」
「遠慮しておきましょう」
「まあお好きに。神々に対して使うのは不敬な気しか知りませんがここは無礼講ということで」
司会者は軽くお辞儀した。
その横でリュークがリンゴをかじる。
「クックックッ……」
「お前、また笑ってるだけじゃねーか」
「いやなに。なかなか賑やかになってきたと思ってね」
「まあ、それは否定しないけどさ。ちょっと呼びすぎたかな?」
会場に、休憩終了を告げる時が響近づいてきた。
新たな特別ゲストを迎え、議論は再開されようとしていた。