俺の恋人は永遠に子ども   作:灰恵

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第15夜 待つのも、悪くない

 

 

 

ポツリ ポツリ と雨が降る。

 

アイツはいったい“誰”なんだ?

 

息を切らして、フラフラな体をベンチに預ける。

外は本格的に降り出した。雨が窓に打ち付ける。

 

「ユウ」

「・・・」

 

ラビは冷えたコーヒー缶を神田に渡すと、席を一つ空けて隣に座った。

ラビは服の袖を引っ張って、熱そうに缶を持ち直すと、プルタブを開ける。

コーヒーの香りが鼻をくすぐる。

 

「なんで俺のは、ホットじゃねぇんだよ」

 

寒い季節に、アイスコーヒーは堪える。

 

「頭を冷やすのに、あげたんさ」

 

そう言って、ラビはふーふー と息を吹きかけ、ホットコーヒーを飲む。

 

「チッ」

 

指先がカチカチになりながら、プルタブを開けて飲む。

 

「甘っ!」

「ユウ。糖分、足りてるさ?」

 

ラビは笑っている。

俺はアイスコーヒーのラベルをよく見ると、砂糖が入っていた。

隣で()まして飲むコイツを、一発殴ってやろうかと思った。

 

いい性格してるぜ、こいつは。

 

「遅くなったケド、お疲れ様、ユウ。残ったアクマ、全部、倒したんでしょ?」

「・・・いや、一体残ってる」

 

ラビに言われて思い出した。

(ふところ)から懐中時計を取り出し、(ふた)を開けて確認する。

 

――― 0時0分1秒 ―――

 

間違いではなかった。

 

「マジで? うそぉ。 アレンが起きたから、てっきり、全部、倒し終わったと思ったさ」

「(アレ? なら、記録してないアクマがいるさね)」

 

ムムムと(うな)るラビ。

 

「(やべぇ。 ジジィに怒られるさ)」

 

ラビは内心、冷や汗をかく。

 

「一番、厄介なアクマが残ったからな」

 

神田の缶を持つ手に力が入る。

 

「アイツがいねェと、たぶん、見つからないアクマだ」

「・・・アレンの左目さね」

 

ああ。と返事をして、コーヒーを飲む。

アレンの左目には、ヒトに紛れたアクマを見つけ出すことが出来る能力がある。

アレン自身は嫌がって使おうとはしないが・・・

 

――― はぁ? 食いモンの魂とか、いちいち見てられっか。

 

って、言ってたな。

 

「(記憶がねェなら、それも、覚えてないのか)」

 

 

神田の知っている(昔の)アレンと記憶がない(今の)アレンの違いに(いきどお)りを感じた。

考えながら飲んでいたら、中身が空になった。

 

「なぁ、アレンって、記憶をよく無くすんだろ?」

「は?」

 

ラビは思い出したように、神田に確認する。

 

「あれ? 違うんさ? 頭をアクマに潰されたら、記憶が混乱した。って記録してるんだけど?」

 

俺はハッと気が付いた。

 

「そいや、言ってたな」

「忘れてたんさ?」

 

ラビは顔を引きつらせた。

結構、大事なことだと思うんさ。ユウ・・・

 

「そうか。 それで記憶が・・・」

 

そこまで言って、同時に首を傾げた。

 

「だが、一度記憶が戻った後、アクマに頭を潰された記憶なんてないぞ?」

「そこは、ホラ。 14番目がアレンの体を使ってたワケだし。アレン自身も、死んだと思ってたから、14番目が居なくなった後も、ずっと眠ったままだったんだろ?」

 

それもそうかと、納得していく。

 

「ああ」

「なら、生活していくうちに、記憶が戻ってくると思うさ」

 

ラビもやっとホットコーヒーを飲み終わる。

 

「・・・それが幸せかどうかは、解らねぇがな」

 

缶をゴミ箱へ捨てる。

 

「ユウ・・・」

 

ラビも缶を捨てる。

 

 

 

「待ってみる」

 

 

 

先を歩く神田の背中をラビは見た。

 

「今まで、散々待ったんだ。 もう少し待っても、変わらねェよ」

 

俺が出した答えにラビは笑った。

 

 

病室のドアをノックすると、中からカギが開けられ、ドアが開く。

 

 

 

「あ、おかえり。ユウちゃん」

 

 

 

――― 今度はちゃんと、向き合おう。

 

初めてできた友達(アルマ)の顔が、脳裏をかすめる。

 

――― すれ違ったまま、別れるのは・・・もう、嫌だから。

 

 

 

 

***

 

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