「クロス様」
「アニタか」
美しい女性は、長い赤髪の男の
「本当に行かれるのですか?」
「ああ」
クロスは酒に
アニタはクロスがこれから行こうとしている場所が、曰くつきの場所だと言うことを知っていた。
だから、彼の事を心配するのだ。
「
クロスはアニタを見て、悲しい目を向けた。
ああ。連れてってはいただけないのね。
「本当に、母に似て来たな」
「クロス様」
連れて行って欲しい。なにより、大好きな方のお
だって、あそこは・・・
「ダメだ。 そうでなくとも、あそこは危険が
クロスは、くいっと
――― 分かっています。でも・・・
アニタはそっと、肩に寄り添う。
少しでも、この秘めた思いが届くように。
――― それでも、アニタは・・・
明朝、クロスを乗せた船は日本へ出発した。
アニタは船の影が無くなるまで見送った。
「・・・どうか。クロス様がご無事におかえりになられますように」
マホジャはそんな主を悲痛な思いで見守っていた。
***
クロスは船内の客室で
「・・・これでいなかったら怨むぞ
クロス・マリアンは中央庁から“アクマの魔導式ボディ
目を閉じれば夜になり、あの記憶を呼び起こす。
十年前、とある街で見かけた親子。ピエロの隣で、怒って泣いて笑った栗色髪の子ども。
マナは過去を忘れないようにと犬に“アレン”と名付けた。その犬が死に、まだ名前がなかった子どもに送られた。
最後にお前たちを見た日を記憶の底に隠した。
ドオォン!
爆発音が聞こえ、慌ただしく駆け回る足音にクロスはドアを見た。
『敵襲!! アクマです!!』
「・・・ったく、
クロスは室内から出る。
――― 爆撃は止まない
ドオォン! ドオォン!
船を囲み、撃ってくるアクマの群れ。
それらは全てレベル1かレベル2だ。
「チッ、舐められたもんだな」
クロスは煙草を捨て、ジャッジメントを構える。
「失せろ。雑魚が」
***
「・・・今、なんて・・・?」
「八日前、旅立たれたクロス様を乗せた船が、海上にて撃沈されたと申したのです」
「確証はおありか?」
「救援信号を受けた他の船が救助に向かいました。ですが、船も人もどこにも見当たらず。そこには、不気味な残骸と毒の海が広がっていたそうです」
「クロス元帥はどこへ向かったんですか? 沈んだ船の行き先は、どこだったんですか?」
リナリーは厳しい顔でアニタに聞いた。
「クロス元帥はそんなことで沈みません」
ハッキリと宣言するリナリーに、一同は注目した。
アニタは胸の奥に広がる温かさに、涙を流す。
この子たちは、信じているのだ。なら、私も答えなければ。
「マホジャ。私の船を出しておくれ」
傍で控えていたマホジャに声を掛ける。
アニタは立ち上がる。
「
クロス様。
貴方を追うことをお許しください。
***
――― 仮想19世紀末 ―――
東の果てに位置する島に、日本帝国と呼ばれる島国は存在する。
――― 日本は、もはや伯爵さまの国。江戸帝都は、その中枢。レベル3以上の高位アクマの巣だ。生きて出られる確率は低い ―――
進むか。
否か。
「進もう」
リナリーの言葉に、行き先は決まった。
「ここで戻るなんてできないよ」
夜が明け、船に光が差し込む。
「戻ったら、ここまで道をなってくれた人たちの命を、踏みつけることになる」
リナリーは立ち上がろうと、足に力を入れる。
「(足が・・・)」
ミランダのイノセンスでも回復してない。強制開放の影響なんだわ・・・
うまく動かせない・・・
先のレベル3との戦闘で負った傷は、思ったよりも深い。リナリーは動かない足にもどかしさを感じる。
ぐっと肩を掴まれ、リナリーは驚く。
「リナリーに賛成ぇー」
「である」
ラビとクロウリーにひょいっと持ち上げられて、立たされる。
ラビもクロウリーもミランダも、皆、笑顔だ。
「オレら、ボロボロだけどさ。でも、そこは曲げちゃイカンよな!」
船員たちも笑顔で頷く。
「行こう。江戸へ」
***