第2夜 見舞い
神田は慣れた道をまっすぐ歩く。
この国でも有数な国立大学病院へと足を向ける。
ここに入院している人に会いに行くためだ。
常連となっている俺は、ここのナースたちとも顔見知りなので、面倒な手続きを
「お変わりありませんか?」
カードを手渡される直前に、ナースに聞かれる。
「ああ」
カードしか見ていない俺は、そっけなく答える。
受け取ろうと、手を出せば、カードを持っていたナースが渡さないように、手を引っ込める。
何だコイツは。と顔を上げると、カードを持っていたのは、婦長だった。
「(ゲッ……)」
婦長は探るように、目をキョロキョロと動かし、俺を観察する。
以前、怪我をしたとき、大した治療もしないまま見舞いに来た。それが面会中にバレて、診察室に連行された記憶が新しい。おかげで、その後しばらく、物理的に耳が痛かった。
他は騙せても、この婦長だけは、昔からバレる。
「ねぇよ」
「そのようですね。この前のようなことがあれば、さっそく、別のご案内をするところでした」
連行するの間違いじゃねーのか?
「いいだろ」
俺は
婦長はカードを渡した。
受け取ると、早々に立ち去り、病室へ向かう。
病室には、キーロックが掛けられており、ごく限られた人間しか入れない。
このカードはそういうカードだった。
電子ロックにカードを近づける。
蒼いランプが灯り、ドアが開いた。
ドアからは直接ベッドが見えないようにカーテンが仕切られていた。
俺はカーテンをそっとめくり、中を覗く。
白いベッドの中で眠る。白い彼。
窓の外は晴れ。
外に居るよりも、空に近いこの病室から良く見えた。
「まだ寝てんのかよ。バカモヤシ」
アレンだ! と言って、起きないだろうか? と期待があったのはいつの頃だろう?
14番目がアレンの体の中から、消えてから早十数年の月日が流れていた。
それ以来、ずっと老いることもなく眠り続けている。
「空、晴れてるぞ」
アレンを挟んで空が見える位置に、椅子を引いて座る。
あくびを噛みしめ、ぼーっと眺めていると、後ろのドアからトントン、と叩く音が聞こえた直後、カギが開けられ、人が入ってくる。
「やあ、神田君。久しぶり、怪我はないかい?」
この病院の医院長で、アレンの主治医でもあるカムイ・リーが入って来た。
「ねーよ。つか、こんな所にいていいのか?」
確か、診察時間じゃなかったはず。
仕事はどうした? と冷ややかな目を向ける。
「やだなぁ。 これだって、立派な仕事だよ?」
ニコニコしながら、アレンの状態を確認していく。
「どーせ、押し付けて来たんだろ」
仕事しろーー!とカムイに怒鳴る風景が目に浮かぶ。
「ハ、ハ、ハ、ハ」
笑ってごまかしてんなら、そうなんだな。
「そうそう」
「あぁ?」
「婦長さん、心配してたよ~。神田君のこと」
「チッ」
余計な事を、と舌打ちする。
「この前なんて、大怪我してたのに、治療もしないまま、ここに直行したんだもん。大したもんだよ。褒められたものじゃないけどね?」
「チッ」
バツが悪そうに顔を背ける。
「フフフ・・・」
カムイは悪だくみをした面でニヤリと笑う。
「――― 今回は長かったね」
そして、からかうことをやめると、一瞬で真剣な表情に変化した。
「……まぁな」
仕事の事を聞いているんだなと、言葉の意味を理解した俺は、言い訳のように口を開く。
「仕事上、ここに長く居られるわけじゃねぇ」
「そうか」
カムイは、仕方がないのだと、肩を落す。
アレンはすやすやと眠っている。
「――― 僕はね。今でも思うんだ」
俺はカムイの横顔を見た。
「医者になるか、教師になるか、どっちになったら、君の役に立てるんだろう?って ―――」
カムイは窓に目を移す。遠くを見ていた。
「学生時代に、机を隣り合わせにして、君と僕が同じ勉強をしていた頃から、ずっとね」
「役に立ってる」
カムイは驚いたように俺を見る。
「少なくとも、アレンをお前に預けられる」
俺はまっすぐにカムイを見た。
カムイは、彼の優しさに触れて、笑った。
「本当に君は、優しいね」
「あ? ボケてんのか?」
んなわけねーだろ。と、そっぽを向く。
でもそれが、彼なりの照れ隠しなのだと、カムイは笑った。
カムイは眠っているアレンに話しかけた。
「ね? そう思うでしょ? アレン君」
アレンは答えない。
でも、「だな」と同意しているように思えた。
***
今回からあとがきスペースに、「書き始めたけど、最後まで書けずに、あれ?これってどんな設定で書いたんだっけ?」という、中途半端なものを、落書きのように載せていきます。時間軸などバラバラですので、ご注意ください。
***
「はじめまして、セレスちゃん」
此処は黒の教団。イノセンスの適合者に選ばれた私は、入団するためにここにいる。
「私は、室長助手のリナリー。よろしくね」
入団を許可されたは私の前にいるのは、ショートカットの女性。彼女はローズクロスが胸元で光る黒い服を着ていた。
「本日から入団する、セレス・シードです」
警官のようにびしっと敬礼する。
「よろしくお願いします」
その声から、緊張していることは容易に知れた。
「よろしく。室長の所まで案内するわ」
セレスはリナリーに付いて行った。
書室、談話室、食堂……―――
フードの付いた白いコートを着た人々にすれ違ったり、白衣を着た人とぶつかりそうになったり。
いろんな人が、私に声を掛けてくる。
「おかえり」と―――
私はそれに首を傾げながら、「ただいま?」と答える。
「教団ではここを、ホームって呼ぶ人もいるから」
どうして?と聞けば、リナリーはにっこりと笑って答えてくれた。
「アレン! ちょっと来てくれ!」
研究室を通った時、白衣を着た人が
金の刺繍が施された、黒い服を身に着けた少年に。
呼ばれた少年は「はーい」と返事をして、パタパタと行く。
「こっちよ」
私はリナリーに呼ばれて階段を下りて行く。
「どうもぉ。科学班室長のコムイ・リーです」
眼鏡をかけた傷心の男性に会った。
室長と聞いて、慌てて敬礼する。
リナリーやあの少年を同じローズクロスを胸に付けている変人に ―――。
「変人は、ひどいなぁ~」
笑いながら医務室のような薬品棚がある部屋へと連れてかれた。
「さ、君のイノセンスを見せてもらえるかな?」
私はイノセンスを発動させた。
「ふむ。キミは装備型だね」
イノセンスの事、その種類の事を教わった。
私のイノセンス ―――
『
『
対して、『
「デビルチェンジ。イノセンス発動」
刹那、その姿は死神。
冷たく冷え切った瞳に、大鎌を持った、空想上に存在する死神そのもの。
この時、私は『
「その鎌でアクマを・・・?」
リナリーは少し驚いていた。
ムリもない。
「はい」
コムイは眼鏡を光らせていた。
そして、イノセンスの番人。へブラスカの下へ。
「シンクロ率。76%」
End.