・赤腕のころ(マナとあった頃)の性格を元にしています。
・pixivにも投稿しています。
月の光が照らし、桜吹雪が舞う。
わずか数名を乗せた小舟は、改造アクマのちょめ助(ラビ命名)の手を借りて、日本の伊豆に到着した。
『着いたっちょ』
ちょめ助は小舟を島へつける。
「ここが・・・」
それぞれが日本の土地へと足を踏み入れた。
『ようこそ。日本へ!』
「日本国は、もう三百年近く他国との貿易・干渉を一切拒絶した『閉ざされた国』として東の果てに存在してきた。考えてみれば、うってつけの隠れ家だ。おそらく、三百年の歴史の裏には伯爵が潜んでいたのではないか?」
「そうだっちょ」
ブックマンが冷静に国の状態を分析する。
ちょめ助は人間の姿へコンバートする。
現れた女性に、ラビは驚く。
ラビ「は?」
クロウリー「だ、誰であるか?」
ちょめ助「なに言ってるちょ。オイラだっちょ」
クロウリー「『ちょ』っと言うことは」
ラビ「お前、ちょめ助か!?」
ちょめ助「アタリっちょ」
ラビはちょめ助を下から上まで観察する。
細身のボディにふっくらとした胸、そして、つぶらな瞳にラビは・・・
なぁ~! ストライクぅ~♡
は!! ダメだダメだ。ちょめ助はアクマさぁ
でも、かわいいさぁ~!
いつもの調子で女性にメロメロなラビに痺れを切らしたブックマンが蹴り飛ばした。
ブふっ、どわぁ~!!
「未熟者めが」
そんな二人に、リナリーは仕方がないわねぇ。と呆れて笑った。
ちょめ助は“悪”と書かれた
ちょめ助「伯爵様は日本を
クロウリー「そんあことが可能であるか。この国の政府はいったい何を・・・」
クロウリーの苛立ちを感じ取り、ちょめ助は
ちょめ助「日本人口の9割は、オイラ達アクマで、国の
クロウリー「なんと・・・」
リナリー「三百年も、そうやって・・・」
チャオジー「伯爵とアクマの楽園ッスね、まるで」
ちょめ助「この国に人間が安心して生きていけるところないんだっちょ」
ちょめ助の表情に影が落ちる。
「まぁ、それはオイラ達アクマにも言えることだっちょが・・・」
「ちょめ助、それってどういう・・・」
ことさ? と言葉が続く前に、ちょめ助は気配を感じ取り、ピタリと動きを止めた。
「!! 何かいる!」
「サチコ・・・」
「!! 川村!!」
仲間の姿に、ちょめ助は喜んだ。
「ちょっと、持ってるっちょ」
「『サチコ』って?」
誰?
「オイラのボディ名だっちょ。あれは仲間の川村。同じマリアンの改造アクマだっちょ」
「クロス元帥の・・・?」
ちょめ助は喜んで川村に駆け寄る。
「川村~!」
ちょめ助は涙ぐみながら、川村の肩を掴んだ。
「迎えに来てくれたっちょか? 川村。 助かったっちょ~♡ オイラも、そろそろヤバくなってきててぇ」
「っ、・・・ぅ、っ」
黙ったままの川村の様子に、ちょめ助は首を傾げる。
「川村?」
「っ、・・・ぁ、ぅ・・・っ!!」
川村は白目を向き、首が折れた。
「!! 川村!!」
「ちょめ助!?」
ちょめ助の悲鳴に何事か、ラビたちは驚く。
折れた首の間から、アクマの姿が飛び出した。
マズイ! これは!!
「隠れろっちょ!!」
ちょめ助は振り向き、駆けだす。
「早くしろっちょ~~!!」
状況が飲み込めず、ボサッとしている彼らに怒鳴る。
「提灯の明かりを消すっちょ!!」
ラビたちを
川村は蜘蛛の巣から逃れようと、身体をジタバタともがき声を上げる。だが、身体にかかった巣から逃れられない。
そこへ、階段の上から新しいアクマが現れた。
(ラビ)レベル3!?
(チャオジー)3体も!?
ちょめ助は真っ青な顔で、後ろにいるラビたちに注意する。
(ちょめ助)こ、呼吸するな。気づかれる。気配を出来るだけ、消すっちょ。
(ラビ)どういうことさ? あの川村ってアクマは・・・?
(ちょめ助)川村はお前らを迎えに来たんだっちょ。でも、あの三体のレベル3に捕まったんだ。もう、ダメだっちょ。
(ラビ)捕まった? アクマ同士でなんで・・・?
ラビの疑問も直ぐに解決した。
レベル3のアクマの1体が川村の喉笛に噛みついた。もう2体のアクマも腕に噛みつく。
その様子を陰で見ていた彼らに衝撃が走った。
(ちょめ助)
風に乗って匂って来た香りに、そのうちの1体が思わず顔を上げる。後方の
まさかな・・・
アクマは中断していた食事を再開した。
***
ようやくレベル3のアクマが居なくなり、階段を上る。途中に川村だった残骸が散らばっており、こみ上げてくる吐き気を抑え込みながら、避けて通る。
やっと登りきったと思っても、元がどういうものだったのかすら解らない肉片が
見た目だけではない。アクマの
これが続くのかと思うと、当分の間は食欲がなくなり、気持ち悪さから吐き気がこみ上げる。
「吐きそうさぁ。気持ちわりぃ」
「アクマ同士で共食いし合っているとはなぁ」
ゴクリと喉が鳴る。
イカンちょ。カラカラしてきた。
硬い表情をしているちょめ助にラビは声を掛けた。
「ん? どうしたさ? サチコ」
「ちょめ助でいいちょ」
「これからどうするさ?」
「しかたがないっちょ。オイラが江戸まで道案内してやるっちょ」
それに、あんまし、時間ないっちょ。迎えに来た川村はアクマに食われちゃうし。
ミィ・ツ・ケ・タ・♪
「げちょ!!」
高台に入るとアクマの気配が近くにあり、背筋が凍った。
「どうしたさ? サチコ」
「こんにゃろ。ちょめ助でいいって言ってんだろ!」
その名前、気にってんだから!
「あぁ、違う、そんなこと言ってる場合じゃないっちょ」
近くにアクマの気配が・・・
「あぅ!」
背中にネバネバした糸がくっついた。
「ちょめ助!?」
蜘蛛の巣状のそれは、もがいても取れる気配がない。
マズイ! コレはさっきの!!
「逃げるっちょ~~!!!」
「ちょめ助ぇ!!??」
蜘蛛の糸が身体に巻きつき、御堂の方へ引き込まれる。
『ヒハハハ。
レベル3がお堂の中から出てきた。
***
レベル3達は川村を食べ終わり、空へ上がった。
『(あの匂い。間違いない。人間の臭いだ。だが、こんなところに人間がいるのか?)』
階段の上った先にある
『(あそこで様子を見てみるか)』
レベル3は二体と別れてそこに降り立ち、石階段を上りきった付近に罠を仕掛ける。
『くくく・・・楽しみだぜ』
お堂の陰に隠れ、今か今かと待ち望んだ。
***
蜘蛛の糸を握りしめたレベル3のアクマは、引き寄せたちょめ助を足の下敷きにする。
『待ってて正解だったよ。まさかとは思ったけど、人間の臭いがしたからねぇ』
人間を観察する。
マントで姿を隠しているが、着物を着ていないところを見ると、この国の人間じゃねぇな。
『お前らどこから来た? この国の人間じゃねぇな。それに・・・人間のくせにどうしてアクマと一緒にいるぅ!?』
ちょめ助を
「ちょめ助!!」
人間の一人が大槌を振り上げる。
へぇ。弱い人間がアクマに
『いいねぇ。楽しませてくれそうだ』
「一匹か?」
『ああ』
「他のアクマはどうしたさ?」
『人間には解らないよ』
「?」
『・・・
そっと呟いた独り言は、足元にいるちょめ助には聞こえた。
そうっちょ。この渇きは、人間でないとダメなんだっちょ。
でも、殺したいわけじゃないんだっちょ・・・
オイラは改造アクマだから、ほんの少しだけ人間を殺さずにいられる“理性”があるっちょ。
でも、喉がカラカラなんだっちょ・・・
ぎゅっと唇を噛みしめ、耐える。
『久しぶりに人間をいたぶれるんだよ? 他の奴になんか、渡せないねェ』
『さぁ! はじめようか!!』
***
ギョロ!!
『!!』
木の上で休んでいた白いアクマは、左目の痛みに飛び起きた。
ギョロ、ギョロ
右、左と動き回る左目に、白いアクマは興奮した。
『なに? どこで遊んでるの?』
左目と共鳴するアクマがどこにいるのか知ろうと、耳を澄ます。
脳裏に見えるのは
そして、
『これは・・・にんげん?』
昨日、“共鳴”を通して見た人間によく似ていた。
『にんげん・・・人間か。・・・見たことないな』
海の方角で遠くに光が見えた。
それを見つけて、ニヤリと笑う。
『面白そう・・・』
***
先手必勝!
「火判!!」
地面に○火が現れ、蜘蛛アクマに炎の柱が上る。火柱は蛇となり、蜘蛛アクマに襲い掛かる。
痛くもかゆくもない様子にラビは舌打ちする。
「チッ、やっぱレベル3にゃ・・・」
『効かないよ!!』
蜘蛛アクマはラビに襲い掛かる。攻撃の予感がして、飛び逃げる。
逃がさない!
蜘蛛アクマは手を伸ばし、五本の指先から蜘蛛の糸が吐かれる。糸はラビの足に絡み付く。
「うわっ!」
糸を引き、ラビを残骸に叩き付ける。
「行くぞ!!」
次は、クロウリーが首元に噛みつく。
か、固い!!
なにこれ? 全然痛くないんだけど。これなら、まだ“できそこない”の方がヤりがいがあるなぁ。
『もういいかい?』
ダメだと分かると、クロウリーは
蜘蛛アクマは柔軟な蜘蛛の糸を巣の形をした固い金属へ変化させる。
何をするつもりだ?
クロウリーは警戒を強める。
蜘蛛アクマはそれを二つ作り、ブーレランのように投げた。
『そ、れ!』
蜘蛛の巣ブーレランは、クロウリーを襲った。足、わきばらを押さえられ、後ろに吹っ飛ばされる。
「うぉお!」
「クロちゃん!!」
「ラビ! クロウリー!!」
やられる二人に、リナリーは悲鳴を上げる。
『はい、はい! はいぃ!!』
ラビたちは蜘蛛の巣ブーレランを右、左と除け、正面ははじく。
全然襲ってこねぇな。
『ヤりがいないなぁ。もっと、楽しめてくれよぉ』
どうしたら、いいかねぇ。
『あ、それともぉ・・・』
糸を引っ張り、ちょめ助を引き寄せる。
『先にコイツを食った方がヤル気になるかぁ?』
「やめろぉぉ!!」
あはは。この反応。コイツはいいねぇ。
蜘蛛アクマはちょめ助の顔をペロリと舐める。
ひぃ・・・
こわいコワいちょ。
ちょめ助を巣に
「この!!」
「待て!」
「ジジィ!!」
何で止めるんさ!
「見ろ」
ブックマンに言われて、ラビはちょめ助を見る。
うぅ。もう、ダメっちょ。でも、これは好機っちょ。
行くっちょ、ラビ。ヤツがオイラに気を取られている間に逃げるっちょ!!
覚悟を決めた目だった。
「! ちょめ助・・・」
「聞けラビ」
「ジジィ!!」
「冷静になれ、ラビ」
「俺は冷静さ!」
なに?
「今逃げたとしても、直ぐに別のアクマに見つかるさ!ちょめ助の道案内がないとどのみち、江戸にはたどり着けないさ!」
こうするんさ!
「イノセンス第二解放。
『その技はさっきも試したはずだろ』
学習能力がない奴らだなぁ。
こっちに襲ってきた火の蛇は目前で方向転換した。
なに?
それは後方にいるちょめ助を捕えていた糸を焼き切った。
うわぁ!
こっち来た!
そして、天高く昇って消える。
あれ、熱くないちょ
助けてくれたことに嬉しくなり、ちょめ助はラビに飛びついた。
「ラビィ! 怖かったっちょ! 怖かったっちょ!!」
うえぇぇん。
「うわ! ちょ、こら、苦しい」
でも、
だが、これで・・・
『今のはちょっと、楽しかったよ。でも・・・糸なんか、いくらでも作り出せるんだよねェ!!』
糸が広がり、ドーム型に
『そろそろ、飽きて来たよ。終わりにしよっかぁ』
笑いながら蜘蛛アクマが近づく。
さぁて、誰から殺してやろうかなぁ・・・ん?
ドームの
二体のアクマがやってきた。
チッ、来ちまったか。
「へへ、やっと来たか」
ちょ?
「なるほど。さっきほどの火判は、糸を焼き切るだけが目的ではなかったというわけか」
「さっきのアクマが言ってたさ。他の連中にはナイショだって。エモノを独り占めしようとしてる奴がいるって、親切に教えてやったのさ」
三体が
「仲間割れ・・・」
見上げていたクロウリーは呆れた。
「同族を喰うような連中は、元々仲間でもなんでもないんさ」
おーい。こっちだっちょ!
少し離れたところでちょめ助の呼ぶ声が聞こえ、そちらを向く。
今のうちだっちょ。あいつら、オイラたちの事なんか忘れてるっちょ。早くするっちょ!
『楽しそうだねぇ♪』
「げちょ!」
『『『!!!』』』
急にちょめ助とアクマ三体は動きを止めた。
あ、あぁ・・・最悪っちょ。
ちょめ助はガタガタと震えあがる。
「ちょめ助?」
ラビはチラリとちょめ助を見た。ちょめ助は空を見上げていた。そして、三体のアクマ達も。
ラビはその視線の先にあるのもを見た。
***
三つに割れた帽子。
ハートのボタンを止めた水玉模様の服。
シマシマ模様の袖とズボン。
左右の色が反転したピエロ。
「あ・・・ぁ・・ぅ・・白い、アクマ」
「え? 白い、アクマ?」
白くねぇんだけど。
ちょめ助の怯えようはレベル3の比ではない。
やっと、逃げれると思った矢先にこれか。
ラビは身構える。
うまく、いかないもんさね。
『へぇ、これがニンゲンかぁ。初めて見た!』
新しいオモチャを見つけた子どものように、はしゃぐ白いアクマ。
人口のほとんどがアクマで占めている日本では、人間自体が珍しいのであろう。
いや。今、共食いしようとしてたさ。と内心、ラビはツッコむ。
ヒュッ
「!!!」
今まで俺たちを襲っていた蜘蛛のアクマが、一瞬で縦に真っ二つに割れた。
右と左に別れ、隣にいたアクマは悲鳴を上げた。それらは地面に落ちる。
『――― 誰が、なんだって? ―――』
その冷え切った声は背筋を凍らせた。周囲が氷点下になったように寒気がする。
コイツ・・・ヤバいさ。今までの中で、一番・・・
長髪のアクマ(
トンガリ頭のアクマ(
両極端なアクマの反応。
ちょめ。
な、に・・・ちょ
あれってアクマなんだよな?
そうだっちょ。白いアクマっちょ。ヤベーちょ。喰われるっちょ。
そっとラビはちょめ助に聞いた。ちょめ助はガタガタと震えながら答えた。
***
あーあ、折角、楽しい気分だったのに。台無しだ。
むしゃくしゃするなー。
オレを
白いアクマは舌なめずりした。
パクリと食べちゃおっ♪って・・・あれ?
襲い掛かる
あまい、あまい、いい匂い。
すっごく、おいしそう。
ぺろりと首筋をなめる。
「ヒッぃ!!」
「ちょめ助!!」
まるで・・・
***
白いアクマの注意がそれた瞬間にトンガリ頭のアクマは手に金棒を出現させ、白いアクマめがけて振り上げた。白いアクマはその攻撃をサラリと除け、一瞬でちょめ助に詰め寄った。
「は、早ぇ!!」
ラビたちには動きが全く見えなかった。
白いアクマはちょめ助の胸に顔を
ちょめ助は動かない。いや、動けないでいるのだ。
人間が極限の恐怖に
白いアクマはぺろりと首筋をなめた。
「ヒッぃ!!」
「ちょめ助!!」
『・・・みたらしみたい』
ちょめ「へ?」
ラビ「はぁ?」
み、みたらし? なんでちょ?
白いアクマはじゅるりと
『お前、なに? すっげぇうまそう!!』
白いアクマは目をキラキラさせて、ちょめ助を見る。
「ぇ・・・そ、そんなこと、言われても・・・」
全然、うれしくないちょ。てゆーか、抱き着かれてるだけでも、めちゃくちゃ怖いっちょー!
って、ぎゃーーーー!!
『っ~~! こっちを無視してんじゃねぇよ!!』
攻撃を除けられたからなのか、それとも相手にすらされていないことへなのか、金棒を手にしたアクマは怒って白いアクマの真後ろ(つまり、ちょめ助の正面)から、金棒を振り上げる。
もちろん、ちょめ助に夢中になっている白いアクマは気づかない。
次の瞬間に、殺さr・・・――― 金棒アクマは白いアクマの下敷きになった ―――・・・あるぇ?
白いアクマはちょめ助から手を離し、身体を回転させ、拳を太
ぐらついた体に、
『っ、かはっ!!』
クロちゃん、見えたさ?
見えなかったである。
すごいのぉ。
感心してる場合じゃないさ! ジジィ!
白いアクマはちょめ助に顔を向けた。
『おい、お前』
「は、はいっ!」
『レベルは?』
「え?」
『お前のレ・ベ・ル』
「れ、レベル2だっちょ」
『あれ? お前、レベル2なの?』
「そうだっちょ」
『ふーん。お前面白いね~。レベル3よりおいしそう、なんて♪』
白いアクマはちょめ助の顔を引き寄せて、もう一度味を確かめるように頬をペロッと舐める。
ひぃいい!! 今度こそ、
「ちょめ助を放すさ!!」
らびぃ・・・
「“ちょめ助”?」
白いアクマはラビをチラリと見て、ちょめ助に説明を求めた。
「ラビがオイラに付けた名前っちょ」
『へ~。
「ちょ?」
ちょめ助は、目をパチパチと瞬きし、何言ってるんだっちょ?と首を傾げた。
『オレもね、名前つけてもらったんだよ。“アレン”て言うんだって。
ん? エクソシスト? ラビは首を傾げた。
日本にいるエクソシストは俺ら以外に一人しかいないさ。
「え、マリアンに会ったちょか?」
『マリアン?』
なにそれおいしいの?
ちがうちがう。
「クロス・マリアン元帥のことさ」
『?? 会ってないよ?』
白いアクマ、いや、アレンにはまだピンときていないようだ。
「え、でも。エクソシストに会ったんだろ?」
『うん、会った』
「それなら、我々が初めて会った人間とは言えないである」
『何言ってんの?
「???」
完全に話がかみ合っていない。
それは、そうだろう。
白いアクマは、エクソシストが人間だと、この時点で認識していないのだ。
頭が痛くなってきたちょめ助は再度確認した。
「白いアクマ……いや、アレン」
『何? ちょめ助?』
「そのエクソシストって、赤毛に仮面を被った長身の男だったちょか?」
ちょめ助は更にわかりやすくするために、拾った木の棒で、簡単な元帥の絵を描いた。
特徴的な部分が良く描けた絵だ。
『うんうん。コイツ、コイツ。オレが会ったエクソシスト』
「やっぱ、会ってるさ」
「である」
『?』
アレンは首を傾げた。
『だって、コイツの名前が“エクソシスト”だろ?』
「「「!!!」」」
アレンの爆弾発言に言葉を失った。
ただ一人、認識の違いに薄々感づいていたちょめ助は、やっぱり。と肩を落した。
「俺らが人間じゃなかったら、なんなんさ?」ひそひそ
「エクソシストという生き物であるか!?」ひそひそ
「ちがう!違う!! この人の名前が“クロス・マリアン”よ!!」
リナリーは我慢できずに、訂正した。
『は? え?』
「なぁ、アレン。クロス元帥とどんな出会い方したんさ?」
『どんなって……―――』
***
アクマに気づかれることなく、道を歩くものに興味を持った。
オレは気づいているけど、他のアクマは気づいていない。すぐ隣を素通りしていく、アクマじゃないイキモノ。
この日本には生きた人間の方が珍しく、死人を連れたイキモノに興味を持った。
『ねぇ。お前はなに?』
声を掛けたからだろう。イキモノは一瞬でオレに銃を向け、金色に輝くその銃から銃弾が放たれた。
弾はまっすぐ俺の額に吸い込まれ、仮面に当たった。
ピシリとヒビが入る。二つに割れた仮面はカランと音を立てて、地面に落ちた。
少し伸びた前髪が風に吹かれ、顔が露わになる。
仮面が割れ、久しぶりに白と黒以外の色を見た。
赤だ。
真っ赤な髪が風に吹かれる。
血のような真っ赤な赤。
イキモノは銃を僕に向けたまま、目を丸くして固まっていた。
「……アレン?」
なつかしい、ナツカシイ。
“アレン”という音の響き。
どこかで聞いたことがある。どこで聞いたんだろう。
額から血が流れることも忘れ、首を傾げた。
“出来そこないのアクマ”
そう呼ばれるから、素顔が見られるのが嫌だった。
だって、
もし、コレもそう呼んでいたのなら、興味を引いたことも忘れて、殺していただろう。
それこそ息を吸うのと同じように、自然に。
でも、コレはそうじゃなかった。
オレを“アレン”と呼んだ。
とても懐かしくて、どこかで聞いたことのある名前。
そう。オレはここで初めて、音の響きが名前だと認識した。
初めて聞いたはずの音の響き。
自覚して、その名前にも興味が湧いた。
だから、もう一度聞いた。
「お前は何?」
「俺は―――」
***
『―――“エクソシストだ”って』
「って、それしか言わなかったんさ!?」
『うん』
「それじゃぁ、勘違いするのも分かる気がするっちょ」
常識が通じないアクマの中で育っている“白いアクマ”の認識が招いた事故に、ちょめ助は頭が痛くなった。
リナリー「それは」
「「「「クロス元帥が悪い(わ)(さ)(である)(ちょ)」」」」
クロスが悪いと言わせたかっただけなんだ。