時は2030年代後半。
かつて空想の産物とされた架空空間へのフルダイブゲーム、いわゆるVRMMOは遂に現実の物となった。

あらゆる企業がVRMMOの開発に勤しみ、乱立する時代。そんな時勢に突如として現れた1つのゲームがあった。製造・配信メーカー共に不明。
だが、プレイヤーは高みを目指す。

これはとあるゲームに魅せられた男の物語だ。

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椅子取りゲーム

とある一室。

少年・足宮カズヤは頭部にギアを付けて、起動する。

これから彼にとって負けられない戦いが始まる。

 

「今日こそ……ランキング1位を取らせてもらうぜ……!!」

 

これはとあるゲームに魅せられた男の物語である。

 

ー

 

時は2030年代後半。

かつて空想の産物とされた架空空間へのフルダイブゲーム、いわゆるVRMMOは遂に現実の物となった。

 

あらゆる企業がVRMMOの開発に勤しみ、乱立する時代。そんな時勢に突如として現れた1つのゲームがあった。製造・配信メーカー共に不明。

 

唯一分かる事といえば電子説明書に記載されたプレイヤー同士が闘い、決められた期間内にランキング1位になるシンプルなもの。

 

そしてこのゲームのプレイヤー間ではランキング1位になったものは『王座』を与えられるという噂が密かに流れていた。

 

他のゲームでは到達出来ない圧倒的フルダイブ感。加えて敗北すればアカウントが二度と作れないというルール。この二つがカズヤの心を満たしていた。

 

カズヤは仮想空間へとダイブしてゆく。

舞台(せんじょう)は無数の廃墟が立ち並ぶ戦場。

その地にガンドレットを身につけた戦士・カズヤが現れる。

 

「この日を楽しみにしてたぜ、ブリタニア仮面……!!」

 

カズヤの視線の先。折れた電波塔の下に待ち構える一つの影。

漆黒の衣装と自らの素性を隠すかのような仮面を着けた人物がそこに居た。

 

ブリタニア仮面。かつて放送されていたTVアニメのキャラクターをモチーフとするサーバーランキング1位。

今、カズヤが宿敵とする存在である。

 

「私が数ヶ月にわたって築き上げてきた地位までたどり着くとはな」

「ああ。オレは何でも1番じゃないとすまねぇタチなもんでよ、このゲームでも1位を取らせて貰おうってワケだ……!!」

 

カズヤはさながら格闘家のように構えをとる。

 

「さぁ、ケリつけようぜ!ブリタニア仮面さんよォ!」

「望むところだ。私もお前と決着を付けることを願っていた……!!」

「へっ、お互いサマって事か。なら……おっぱじめようぜ!!」

「「戦争、開始(ウォー・スタート)!!」」

 

今ここに1位の座を賭けた戦いの火蓋が切って落とされる。

 

「先手……必勝ッ!!」

 

カズヤは仮面の男へ向かって勢い良く疾走する。離れたスタート位置であるはずの距離は瞬く間に詰められ、今や目前まで近づこうとしていた。

 

――そう易々とは突破させるものか。

 

主人であるブリタニア仮面を護るように、突如として現れる影があった。カズヤの前に立ち塞がるのは3機の機人。

 

3色(トリコロール)のボディとアンテナを持ち合わせる戦士。

紫を基調とし、禍々しい口を持つ人造兵器。

真紅の如き赤と黒い翼を持ち、人類の進化を促す存在。

 

各々が手に携えているのはビームサーベル、朱の槍、戦斧(ハルバード)。

 

武器もそれぞれのヴィジュアルもかなり違い、世界観の統一の欠片もないがそんな事は問題ではない。

それぞれ武器を使い、カズヤに襲いかかる。

 

「アブねぇ……なッ!!」

 

白の機動兵器の一撃を躱した男は高く飛び上がり、かかと落としを脳天へと決める。巨人の頭部が吹き飛び、手に持つサーベルがこぼれ落ちる。

 

「焼き切れやがれ!!」

 

上空に舞ったビームサーベルの柄を蹴り飛ばし、

刃が胴体に突き刺さり、爆散する。

 

「█████████───────!!」

 

紫の兵器は廃墟の上を跳躍しながら、カズヤの前まで駆け抜ける。

カズヤは目先まで接近した槍を片手で受け止め、へし折る。それでも留まることを知らない人造兵器は咆哮を上げながら襲いかかるも、それすら遅い。

 

「るせぇなぁ……紫ヤロー!!」

 

真紅の戦士はブーメランの如く、手に持つ斧をカズヤに投げつける。

 

「三番煎じなんだよッ……!!」

 

振り下ろされる斧の一撃を臆すること無く避け、核となる部分を的確に破壊する。

3機の連撃を躱したカズヤはそれらを次々と粉砕し、再度ブリタニア仮面へと疾走を始めた。

 

「……ふむ。ならば、この手で行くか」

 

ブリタニア仮面はカズヤが自身に近づくのを視認し、手をかざす。その合図がスイッチとなり、廃墟に潜んでいた無数のロボットがカズヤを取り囲む。

 

「コイツら……!!」

 

ロボットの軍勢は主に近づく存在に向けて飛びかかり、機械の荒波を形成する。普通の人間ならこの波に溺れ、その中で永遠に沈むだろう。

……だが、この男は違う。

 

「そんなモンで、俺がくたばるかよォ!!」

 

息も出来ない程の鉄塊の波を掻き分け、抗う。

 

「うぉらッ!!」

 

荒れ狂う鉄の波の中、カズヤが振り上げた腕から旋風、否。竜巻が巻き起こり、機械の兵士達を飲み込みながら空高くへ舞ってゆく。竜巻の中で激しくぶつかり合う鉄の塊は互いの体を破壊する。一人の男によって巻き起こされた嵐は数多の機械を分解させ、鉄くずの雨が戦場に降り注ぐ。

 

「今度はザコばっかかよ!しゃらくせぇな!!」

「やはりこの程度では倒れないか……。だが……!!」

「な、なんだ……!?」

 

地響きと共に立ち上る黒い影。カズヤに破壊され、鉄くずと成り果てた兵士の亡骸はその地割れに呑み込まれてゆく。

 

「来(きた)れ、我が力の象徴――!!」

 

無数のコードが現れ、ブリタニア仮面を取り込みながら、その姿を形成してゆく。

今までのロボットとは比較にならないほどの兵器が、ここに顕現する。

 

『これが私の切り札(ジョーカー)、絶・界・王。

私が作り出した原点にして頂点の兵器!!圧倒的力……その身に受けるがいい!!』

 

刹那。絶・界・王の身体が眩い光に包まれる。

その眩さがカズヤの視界を奪い去る。

そして光は瞬く間に一筋の閃光となってカズヤの肉体を貫いた。

 

「がぁああああああああああ!!」

 

身体が焼ききれんばかりの熱を受け、カズヤは思わず叫び声を上げる。全身に激痛が走り、耐えられなくなった肉体は地面に膝を着けた。

 

『貴様との決着をつけるとはいったが、命までは取りはしない。降参を勧めよう、カズヤ。そして私の右腕として――』

 

「……ヘッ、ヤダね」

「……!!」

薄ら笑を浮かべながら、彼は自身の拳を天に掲げる。

 

「俺の夢を邪魔する奴は誰だって、叩き潰す!

ソイツが神サマだったとしてもなァ!!」

 

「……それでこそカズヤだな。だが、その身体ではまともに動けまい」

 

霊峰を思わせる絶・界・王の腕が動き、その巨腕をカズヤに向けて振り落とされる。

 

「さよならだ……カズヤッ!!」

 

カズヤを押し込むように叩きつけられる

地面に亀裂が走り、周囲の廃墟を倒壊させてゆく。

今ここで勝敗は決した……筈だった。

 

「勝者が表示されない……?」

 

僅かではあるがゴォン、ゴォンと何かがぶつかる音が彼の耳に入ってくる。

 

「何……?」

 

思わず自分の空耳を疑うも、その音は次第に大きくなり轟音と化す――!!

 

「壊す、壊す、壊す、壊す!壊す!壊す!」

 

自身の数十倍はあろう腕を己が拳のみで砕く姿にブリタニア仮面は戦慄を覚える。

 

「……本当に恐ろしい奴だ」

「ブリタニア仮面!!テメェを……ぶったぉぉぉおおす!!」

 

執念の咆哮は最早狂乱の叫びに近い。

 

「……最後に一つだけ聞かせて欲しい。貴様は何故戦う」

「言ったじゃねぇか。俺は何でも1番じゃねぇと気がすまねぇってな」

「……そうか。そうだったな」

 

ブリタニア仮面は何かを確かめたかのように操縦桿からその手を離す。

―その隙をカズヤは見逃さない。

 

「アンタは強ぇ。だから、コイツでキメてやるぜ」

 

「慟哭の……超粉砕拳(アルティメット・フィスト)ォォォォォォ!!」

 

これこそカズヤの必殺技。

彼が数ヶ月もの間、鍛錬し手に入れたものだ。

轟く必殺の拳は稲妻のような激しい一撃を放つ。

ブリタニア仮面の乗るコックピットごと絶・界・王を貫く。

 

「ぐぅぅおおおおおおおおお!!!」

 

WINNER カズヤ

 

勝者が表示され、絶・界・王からブリタニア仮面がこぼれ落ちる。

 

「……流石だぜ、足(・)宮(・)カ(・)ズ(・)ヤ(・)」

「何……?」

 

光の粒となって消えてゆくアバター。

その中に居たのは――。

 

「ジュン……なのか……!?」

 

ブリタニア仮面の正体。

それは現実の親友・ジュンだった。

 

「俺の好きなアニメ、知ってるだろ……?」

「……!!」

 

戦場に落ちたひびの入った仮面を再度確認する。

言われてみればそれは親友の家で見たあのアニメに出た仮面だった。

 

「ったく……。気づけっての……。逆にお前は名前も……言動も……現実(リアル)と変わらねぇな……」

 

ジュンの瞼がゆっくりと閉じてゆく。

 

「全く、お前ってヤツは鈍感すぎる……ぜ……」

 

「ジュン......オイ。目を覚ませよ……」

 

粒子となって消えていく。

 

(これじゃあまるで……死んだみてぇじゃねぇかよ……!!)

 

「Congratulation」

「Congratulation」

「Congratulation」

 

パチパチと乾いた拍手と共に3人の黒服の男がカズヤに近づいてくる。

 

「おめでトウございマス、足宮 カズヤ サマ」

「……!!テメェら、何モンだ!!!」

「私達ハ ガネル王国ノものデス」

「ガネル王国って言ったら……!」

「エエ。世界であの国に次ぐ、国土が小さい国デス」

「しかしながら、我等の技術力はどんな先進国でアロウト追いつけナイ……!!」

「勿論貴方の国モネ」

 

黒服達の言葉は続く。

 

「肉体を極メタ者ト軍勢を極メタ者」

「本当ニ素晴らしカッタ」

「どちらが勝ってもオカシクありませんデシタ」

 

「テメェらの都合の為にジュンは死んだのかよ!!」

 

カズヤは思わず黒服の一人の胸倉を掴む。

 

「殺したノハ貴方デス」

「……!!」

 

黒服の言葉に彼は動揺する。

親友を殺した事実は変わりようがない。

拳が離れた事で黒服は動き出す。

 

「次なる舞台(ステージ)へお連れシマショウ」

 

その瞬間、カズヤは眩い光に包まれた。

 

―――――――――――――――――――――――

 

視界が暗転して、俺の前には十数人の影がいた。

 

「あ〜ら、可愛い坊やじゃない♡」

 

無駄にエロい格好をしたパツキンの女。

ターバンを巻いた褐色野郎。

そして何処かの軍隊に居そうな服を着やがったムキムキの男。

一人一人が只ン者じゃねぇ。本能的にそう感じさせる。

コイツらを倒さねぇと玉座には座れねぇらしい。

 

「……上等だ。やってやろうじゃねぇか」

 

どんな相手にも負けねぇ。コイツらをぶっ倒して、俺はアイツの分まで王の椅子に座ってやる。

だってよ、それが椅(・)子(・)取(・)り(・)ゲ(・)ー(・)ム(・)だろ?

 

――終劇


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