テイルズオブゼスティリア 〜審判を超えし者の旅路〜   作:夢見草

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どうも!夢見草です。

全く扱えないテイルズをがんばって執筆しているのですが、これが難しく、特にキャラのかき分けが出来ずに、自分の未熟さを再認識しました。

今回は、本編の7年前の設定で行きます。とは言ってもプロローグ部分はこの話で終わりなんですがね。

因みに、スレイとミクリオ、アリーシャ、ロゼの歳がちょっと調べてもわからなかったので、本編開始時に17歳(ミクリオは人間の歳で)としました。(←オイ


Choice02: 物語の夜明け

「本当に良いのか?オリジン」

「うん。不思議だけど、彼の魂の在り様はかなり特別だ。僕でも浄化できない」

「……よもや、この様な人間もいるとはな……」

 

クロノスの、少しばかり感服の混じったその呟きに、オリジンは多少なりとも驚いた。

 

「珍しいね。君が人間を認めるなんて」

「これほどの輝きを見せられてはな……」

 

そう言って、他のどの魂よりも強く輝く魂を、クロノスは見つめる。本来ならあり得ない。

 

“無”を司り、魂の浄化を行うオリジンですら、扱うことのできない魂。それほどまでの、意思の強さ、信念、生きることへの執着心と言ってもいい。

 

人が生きてゆく中で、それほどまでに確固たる信念と自我を得ることは難しい。様々な困難、挫折を味わって、人はやがて自身の掲げる信条をなくし、日常と言う名の中で、自身の本来の自我をなくす。

 

ゆえに、何事にも揺らぐことのない信条と自我を持ち続けるその在り様の難しさを知っているからこそ、クロノスも認めているのだ。

 

「彼は強い人間だったんだね」

「であろうな。でなければ、説明がつかぬ」

 

オリジンは、コクリとうなずくと、その手を魂にかざした。やがて、その手がまぶしく光る。

 

「僕でも浄化はできない。でも、器を与えることはできる。彼には、数多に広がる世界へと旅してもらおう。ちょうど、うまく機能できていない世界があるしね」

 

ヤレヤレと首を振って、クロノスも同じように手をかざす。

 

「半人半精としてな。しかし、記憶までは完全に修復は出来ぬ」

「大丈夫、彼なら自分で取り戻すよ。勿論、僕達の力も扱えるようになる。僕達を認めさせた“ソルト”ならね」

 

やがて光が収まり、魂がまだあどけなさの残る人間へと変容した。

 

「やれやれ、これほどまでに我達をひっかきまわすとはな」

 

口調はとげとげしいが、クロノスの表情は穏やかだった。

 

「さあ、行っておいで!僕達の力を受け継いだ、無なる子よ!!」

 

オリジンが高らかに宣言すると、その人間は光に包まれながら大きく飛翔した。

 

***

 

草木は青々と生い茂り、まぶしいまでの太陽の光にあてられ、おおらかになびいている。

 

吹き抜ける風も心地よく、生命の営みがありありと感じられる“アロダイトの森”。

 

下界ではとうに失われ始めた“穢れ”なきこの神聖な場所で、

 

「今日はオレの勝ちだな!ミクリオ」

「いいや、ボクの勝ちだね、スレイ」

 

二人の少年が、イノシシのような動物―ウリボア―の死体の前で、子供ながらに何やら言い争いをしていた。

 

かたやくすんだ茶色の髪を無造作に整え、青を基調としたシャツに身を包んだ元気のよさそうな少年。

 

かたや、淡い空色の髪に、同色の民族衣装のようなものを身にまとった、落ち着きのある少年。対照的なこの二人の少年の名を、スレイとミクリオという。

 

「なんだよー、素直になれって」

「それはキミだろ?」

 

二人は言い争いをしているが、互いの表情は楽しげで、ギスギスとした感じはない。

 

むしろ、互いが互いを認め合っているように見える。そんな二人の姿は、当に古くからの友といったところか。

 

「だいたい、スレイは……」

「あーあ、また始まっちゃった…………」

 

ミクリオが語りだしたのを見、スレイは苦笑いしながら頭を掻いた。

 

「ん?」

 

ふと周りを見渡していると、スレイの視界の端に、あるものが映った。

 

「なあ、ミクリオ」

「つまり……って、何?」

「あれ」

 

スレイの指差す方向に、ミクリオも顔を動かす。

 

「あれは……人か?」

「だよな」

「あ、おい!」

 

突如、スレイが駆けだした。それを見たミクリオは止めようとするが、親友は歩みを止めない。

 

「ああ、もう」

 

少し悪態をついて、ミクリオもその後を追う。

 

「これは……」

 

駆け寄ったスレイは、驚きの声を上げる。

 

草原に横たわるように寝かされていたのは、スレイと同じくらいの年頃の少年だった。淡いクリーム色の、綺麗にまとめられたショートの髪が印象的で、肌もシミ一つない肌色。スッと通った鼻梁と形の整った眉に唇は、全体的に好青年になりそうな容貌だ。

 

「よかった、気絶してるだけっぽい」

 

規則的な呼吸をつづける少年をみて、スレイはホッと胸をなでおろした。

 

「どうだい?スレイ」

「うん、気絶してるだけみたい」

「人間……だね」

「そうみたいだ」

 

二人は、目の前に横たわる少年を人間と認識した。この世界には、“天族”と呼ばれる種族と“人間”とが暮らしており、基本的に霊能力が低ければ、人間は天族を見ることができず、声も聞くことはできない。

 

ミクリオが人間だと思ったのは、少年から霊能力があまり感じられなかったからだ。

 

「どうする?ミクリオ」

「それより見て、こいつ、何か持ってる」

 

ミクリオが指差したのは、少年の右手。よく見れば、確かに何かを大事そうに握っている。

 

「なんだろ……時計?」

「どうだか、それにしても、不思議な模様だ。何かの力も感じる」

 

型は懐中時計。色は鮮やかな翡翠色。その表面には、歯車のような模様が刻まれている。

 

それが、太陽の光に照らされ、キラリと光っていた。スレイは感じることはできなかったが、天族であるミクリオは確かに感じた。

 

この懐中時計は、明らかに普通のものではない、と。

 

「とりあえず、ジイジのとこまで運ぶ?」

「そうだね、今回ばかりはキミに賛成だ」

「よし!そうと決まれば頑張ろう!!」

 

幸い、アロダイトの森から二人のすむ村まではそう遠くない。スレイとミクリオは、それぞれが少年の肩を担ぎながら、ゆっくりと歩き始めた。

 

***

 

人の往来が激しい、何やら大きな駅の内部に、彼はいた。左手にはメモ帳が握られていて、右手に握ったペンですらすらと書きこんでいる。

 

目の前には、得意げに話す中年太りの駅員と、山吹きを思わせるパフスリーブジャケットに黒色のホットパンツ。茶に近いブロンド色の髪をまとめ上げ、その上から黒色のオシャレな帽子をかぶっていて、ぱっちりと大きなサップグリーンの瞳が印象的な、明るそうな女性。その女性が、負けじとメモをとっている。

 

「それでよ、煙がバーっと噴き出したかと思うと、アルクノアの連中がどこからともなく現れてよ――」

 

若干興奮気に話す男性は、淀みなく話を続ける。

 

これは……記憶?それとも夢?なら、目の前にいる彼女は誰?どうして、その一つ一つの仕草を、愛おしいと感じる?

分からない。幾ら考えてみても、目の前にいる彼女が誰だか分からない。

 

「今日は取材に協力してくれて、ありがとうございました」

 

一通り話を聞いた彼女は、元気いっぱいの声と共に、ぺこりとお辞儀をした。

 

「さーて、取材完了!いこ?ソルト」

 

うーんと背伸びをして、彼女は俺の腕を引っ張り始めた。

 

――ねえ、君は誰なの?――

 

その言葉は紡がれることなく、映像はそこでプツリと途絶えた。

 

***

 

「…………ど、…………れ…………」

「うん……けど…………」

「う、うん……」

 

何やら、断片的に聞こえてくる声で、ソルトは少しずつ瞼を動かし始めた。

 

「あ!起きたよ、ジイジ!!」

「そうかそうか、それは良かったのぉ」

 

ぼやけていた視界が、次第に鮮明になってゆく。そこでようやく、ソルトは自分が寝かされていることに気付いた。

 

「おはよう!よく眠れた?」

「わあ!!」

 

突然、ソルトの視界に現れたエメラルド色の瞳にブラウンの髪の少年に驚き、ソルトはあわててとび起きた。

 

しかし、覗きこんでいる少年に対して、ソルトは急に頭を上げたので……当然、ぶつかり合う。

 

「いってー」

「っつ!!」

 

ガツンッと勢いよく音を立ててぶつかり合った二人は、その痛みにデコを押さえて悶えた。

 

「ぷ…………く……はははは!」

 

それがよっぽど面白かったのか、淡いスカイブルーの髪をした少年が、腹を抱えて笑った。

 

「ここは……?」

 

デコを押さえながら、ソルトはあたりを見渡す。

 

石を積み上げて作られた壁、そしてその壁には不思議な模様が描かれている。

 

居間と思われるこの場所の中央には、天井からつるされた大ぶりの鍋が、囲炉裏で熱されている。どれも、ソルトが身に覚えのないものばかりだった。

 

「ここは天族の村“イズチ”じゃよ。名も知らぬ少年よ」

 

すると、そんなソルトの疑問に答えるように、居間の奥で胡坐をかいて座っている老人が声を発した。

 

「正確には、ジイジの家だけどね」

 

イツツ……なんて言いながら、デコをさすっているブラウン色の髪の少年が、付け加えた。

 

しかし、そう言われても、ますますソルトの疑問は深まるばかり。

 

「おぬしは、アロダイトの森で倒れていたのじゃよ。それを、スレイとミクリオがたまたま見つけ、おぬしをここまで運んだんじゃ」

 

つまり、オレは助けてもらったんだ…………

 

そう理解したソルトは、スレイとミクリオと呼ばれた二人の少年に向き直った。

 

「ありがとう、スレイ、ミクリオ」

「あれ?君、僕やジイジが見えるのか?」

 

ソルトがお辞儀をすると、ミクリオは驚きに目を見開いた。しかし、そんな疑問をされたソルトは、戸惑うばかりだった。

 

「うん……あたりまえだろ?」

 

しかし、スレイとミクリオにはそうでもないので、二人とも顔を合わせて目をパチクリさせている。

 

「うむ……おぬし、名をなんという?住んでいる所はどこじゃ?」

 

ふむとうなずいて、ジイジは尋ねる。

 

「俺はソルト。ソルト・イル・イヴァーノフです。住んでいる所は…………」

 

そこまでいって、ソルトははたと気づく。

 

「どうしたの?」

「いや、ええっと……」

 

記憶がないのだ。自分の名前以外、何も。まるで、ポッカリと抜け落ちてしまったかのように。

 

「まさか、記憶が思い出せないのか?」

 

まさかとでも言うような表情で、ミクリオがソルトに尋ねるが、そのまさかなのだ。

 

「うん……何も思い出せない」

「そんなことって……」

 

あまりの事実に、ミクリオは唖然とした。

 

「うむ……こまったのぉ……」

 

顎の髭をさすりながら、ジイジは思案を始める。やがて、うむと一つうなずくと、立派な眉を和らげ、やんわりと笑った。

 

「おぬし、ここに住まぬか?」

「え!?」

 

思わず、ソルトは聞き返す。

 

「本気かい?ジイジ」

「ワシらが見えるのなら、スレイと同じじゃしのぉ。少なくとも、穢れは呼ばぬじゃろうて」

「本当!?ジイジ!」

 

スレイは、思わず身を乗り出して尋ね返す。

 

「うむ。スレイもミクリオも、仲良くしてやるのじゃぞ」

「やったあ!オレはスレイ、改めてよろしく!!」

「やれやれ、仕方ないね。ぼくはミクリオだ」

 

そうして、二人は手を差し伸べる。本当に嬉しそうに笑いながら。そんな彼らにつられて、ソルトの手も自然と延びていた。

 

「ありがとう。ええっと…………」

「ジイジでよいぞ」

「ジイジ、ありがとう」

「なに、気にせずともよい。スレイや、ソルトを家に案内せい」

「うん、いこ!ソルト」

「ああ」

「ボクも一緒に行くよ」

 

そうして、三人は早くも打ち解けたようで、笑いあいながらジイジの家を後にした。

 

 

 

 

 

そんな彼らの後姿を、ジイジはしげしげと見つめていた。

 

「ホッホッホ。はてさて、どうなることやらのぉ」

 

ミクリオには感じ取れなかったのだろうが、ジイジはちゃんと感じ取っていた。

 

ソルトの内よりわずかに漏れる、霊能力にも似たナニカを。

 

「スレイもソルトも、天よりの定めに従うのじゃろう……」

 

そんなジイジの呟きは、パチパチと紅く燃え盛る囲炉裏の火にかき消された。

 

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