テイルズオブゼスティリア 〜審判を超えし者の旅路〜   作:夢見草

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気づいたらもうすぐでお気に入り件数が100件到達ということに驚いている夢見草です。いやはやまさかこんなに読んでくださる読者様がいるとは思ってもいませんでした。ありがとうございます。

今回は、イズチにてソルト達の日常をテーマに書いてみました。(うまく表現できているかは分かりませんが......)

それではお楽しみください。




Choice06: 彼の日常、いざなう夜月

「フーッ」

 

ゆっくりと、静かに息を吐き出す。感覚が研ぎ澄まされ、あたりの無駄な雑音が消えてゆき、己が自然と一体になっていくような……そんな感覚に陥る。狙うは一瞬にして最大の好機。その好機を、ソルトは木の枝に腰掛けじっと待っていた。一時間もたったのか、それともまだ十分も経っていないのか、時間の感覚が薄れてゆく中で、ようやくソルトの狙うエモノが姿を現した。

 

「ふっ!!」

 

短い声と共に、右手に持っていたロープダートを投擲、トスッと音がして、獲物であるベニソンの胴体に鉤が刺さった瞬間、ソルトは勢いよく木を蹴ると、そのまま枝にロープを引っ掛けたまま空中でバックフリップして地面に着地、ダートの持ち手を地面に突き刺す。ソルトの自重で持ち上げられたベニソンは木につるされ、そのまま絶命した。ゆっくりと起き上がり、両手を払う。あれだけ長く待っていたとしても、終るのは一瞬。狩りとは得てしてそんなものだ。これは命のやり取りでも同じ、少なくとも、ソルトはそう感じている。

 

「やれやれ、これで終わりか」

 

小さくため息一つ、懐から脇差しを取り出したソルトは、ロープを断ち切る。支えを失ったベニソンが、ドサリと地面に落ちる。

 

ごめんな

 

心の中でそう呟いて、ソルトはベニソンを担ぐ。ベニソンは、鳥類型の動物だが、その丸っこい胴体の割のは中々に素早い動きを見せる。なので剣なので狩るときはちょっと根気がいる厄介な動物だ。それを嫌ったソルトが編み出したのがこの狩り方。ループダートを使ったつるしあげ方法だ。欠点としては、一回きりでロープが使えなくなってしまうとこだろうか。

 

「んじゃ、帰るかな」

 

目的を果たすことの出来たソルトは、ベニソンを担ぎ直してイズチへと続く道を歩き出した。

 

***

 

狩りに行った……と言っても予想以上に獲物が早く狩れたので、ソルトは一時間ほどで帰ってこれたことになる。

 

「あら、もう帰ったの?」

「メイルか、まあな」

 

ソルトが振り返ると、そこにはライムグリーンの髪をポニーテールに纏めた髪がよく似合う天族の女性――メイルが居た。

 

「大きなベニソンね」

「だろ?少し分けてほしいのか?」

 

すると、メイルはクスリと笑って首を横に振った。

 

「いいえ、あの人間のために取ってきたんでしょ?」

「まあな」

「やっぱり」

「?」

 

クスクスと笑うメイルの意図が、ソルトには分からなかった。

 

「ソルトとスレイってああいうのがタイプなの?」

「はぁ?」

「あら、違った?」

 

手を頬にやり、流し眼であざとく笑うメイルは、誰もがドキリとしてしまうだろう。

 

「お姉さんとしては、可愛い弟達が悪い女性に引っかからないように心配するのは当たり前でしょ?」

「メイルはいつから俺らのお姉さんになったんだよ……」

「だて、二人とも小さいころは『メイルおねえちゃーん』ってすぐに私に抱きついてきたじゃん。あの頃は可愛かったなー」

「く……」

 

恥ずかしさで少し赤くなる顔を、ソルトはポリポリとかく。本当のことなので、何も言い返さない。が、この反応がおもしろかったのか、メイルは腹を抱えて笑っていた。

 

「冗談よジョーダン。ホント、ソルトったら可愛いんだから」

 

じゃあからかわないでくれと突っ込みたくなる気持ちを押さえて、ソルトは溜息をつく。見た目はソルトと同い年に見えても、天族と人間とでは生きる年数が違う。天族達は、人間達のソレよりもはるか久遠の時を過ごすことができる。口で勝てるとは思ってもいない。

 

「じゃあな、これを担ぎ続けるのもきついから」

「そう、部屋に可愛い女の子が居るからって、若気の至りを発動させちゃだめよ?お姉さん怒るからね?」

「ハイハイ、分かったよ」

 

これ以上からかわれるのも叶わないので、ソルトは足早にメイルと別れを告げた。

 

***

 

「ってな訳なんだよ」

「うわー、災難だったね」

 

苦笑しながら、スレイがご飯にマーボーカレーのルーを掛けてゆく。スパイシーなにおいがあたりに立ち込め、実に美味しそうだ。

 

「ちぇ、呑気なもんだ。皿とって」

「はい」

 

スレイが差し出した皿に、こんがりと焼けたベニソンの肉をおく、森でとったローズマリーなどのハーブをベースとしたスパイスを練り込んだ、ソルトの自信作だ。

 

「スレイはこっちの皿持ってよ」

「オッケー」

 

そうして、二人は次々と料理を運んでゆく。

 

「…………」

 

次々と目の前に並ぶとても美味しそうな料理を、少女はあっけにとられながら見ていた。

 

「さてと、食べますか」

「だね」

 

いただきます。と手を合わせて、ソルトとスレイは食べ始める。少女も、それにつられてマーボーカレーを手に取った。

 

「これは?」

「オレの自信作!!」

「大丈夫、毒とか入ってないから」

 

なにぶん、マーボーカレーなど口にしたことのなかった少女は、始めてみる料理の数々に戸惑っていた。が、自信ありげに胸を張るソルトに、少女は意を固くしてカレーを口に運んだ。次の瞬間、少女の表情がほころんでいった。

 

「おいしい……」

「だろ?」

 

口に含むと、まず色々なスパイスの香りが鼻膣を突き抜ける。それから、深みのあるコクと刺激的なスパイスの辛さが見事にマッチングし、何とも複雑な味わいがある。ピリッとは辛いが、舌を刺すような辛さではなく、寧ろそれが後を引く美味しさとなっている。少女が美味しく食べてくれていることに、作った本人であるソルトは嬉しく思いながらも、和気藹藹とした中で少女に尋ねた。

 

「ねぇ」

「ん?」

「君が住んでいる所って……どんなとこ?」

「……都」

「……都」

 

うんうまい。ソルトは自分が作ったベニソンのローストの出来に頷きながらも、その会話に耳を傾けていた。

 

「私が暮らしてるのは、ハイランド王国の都、レディレイク」

「え!?」

 

思わず、ソルトの手が止まる。レディレイクと言えば、彼にとってもなじみのある単語だからだ。

 

「レディレイク……って、聖剣伝説の?」

「知っているのか?」

「天遺見聞録にあったよ“湖の乙女の守る聖剣を抜いたものが、導師になる”って伝承があるんだよね」

「あと、水がきれいで街も素晴らしいって有名だよな」

 

二人して、それぞれが想像をふくらませ、目を輝かせる。その姿は、まるで小さな子供のようだった。

 

「……ああ、ソルトの言う通り、恵まれた水源をもつ都で、酒と祭りが好きな陽気な人々で溢れていた……」

「溢れていた?」

「……昔はそうだった……」

 

そんな二人とは裏腹に、言いにくそうに表情を陰らせる少女。心なしか、とても落ち込んでいるようにも見える。

 

「……下界の人々も大変なんだな…………」

「下界?」

「山を下りた先のこと。俺とスレイ、ここしか知らなくてさ」

「二人で……ずっとここに?」

 

驚きを隠しえなかった。少女からしてみれば、ここには二人以外誰も住んでいないのだ。ソルトの言葉が正しければ、二人は小さいころからここで暮らしていることになる。それは、どれほどつらい事なのだろうか。

 

「スレイやソルトこそ、大変な境遇だったのだな」

「ううん、そうでもないよ」

 

スレイが笑いながら首を振る。

 

「しかし……」

「まっ、“住めば都”ってね。さ、冷めないうちに食べてしまおうぜ?」

「そうだな……こんな美味しい料理を、冷めさせてしまってはもったいないな」

 

ソルトに言われ、少女は再び料理に手を伸ばした。スレイやミクリオ、杜の住人たち以外の食事、それはソルトにとって、どこか新鮮で違った楽しさがあった。

 

***

 

雑談を交えながらの楽しい食事を終え、少女をベットに寝かせたのを見計らって、スレイとソルトはスヤスヤと眠る少女を起こさないよう、ソロリソロリと家を出た。

 

「さむっ!!」

 

昼間でも標高が高いためか少し肌寒いこのイズチ、日もすっかりと落ち、満天の星たちが煌めく夜を駆け巡るその風は冷たく、ソルトは小さく身震いした。外にはミクリオが目をつむり、腕を組んで壁に寄りかかっていた。その隣に、スレイとソルトも無言のままもたれかかる。

 

「彼女にもっと色々聞いた方がいいんじゃないか?」

「やめとくよ」

 

小さく肩を上下させ、スレイが口を開く。

 

「君達が聞きたいことも、一緒に聞けるかもしれないけど?」

 

少し藍がかった、深いダークブルーの瞳を開け、ミクリオが聞き返す。

 

「それこそ悪いだろ?相当疲れているみたいだし」

「それに、ムリしてまで聞くこともないしな」

「名前も告げない相手に、随分な気づかいだね」

「……ジイジもミクリオも、少し勘ぐりすぎだって。それとも……妬いてるのか?」

 

気障っぽく笑うソルトに、ミクリオはすかさずひじ打ちをくらわした。

 

「ってーな」

「相変わらずだね、ソルトは」

 

こんなやり取りも、もう何度繰り返してきたか分からない。それくらいの長い付き合いだ。こうして茶化しあえるのも、三人がお互いを認め合っていて、なおかつよく理解しているからだ。だから、こんなやり取りに深い意味なんてない。気にすることもない。

 

「ジイジからの伝言」

 

ふたたび、ミクリオが目を閉じる。

 

「『いつあの者が穢れをもたらすか分からぬ。皆の平和な暮らしのため、一刻も早くあの者を下界に退かせよ』」

「……」

 

微妙に似ていないジイジの口調を真似て、ミクリオは淀みなく続けていく。分かってはいた。ジイジが彼女をこの地に長くとどまらせておくワケは無いだろうと。しかしそれでも、一抹の望みをかけていたスレイとソルトは、少なからず肩を落とした。

 

「『しかし、いたずらに人間を追いたて、かえって穢れを呼び起こしてしまうような事態は避けたい。それゆえ、出立の支度が整うまで待つ』」

 

そこで、二人はハッとなって顔を上げた。

 

「『急ぐのだぞ、スレイ、ソルト』だってさ」

 

少し得意げに笑って、ミクリオが二人を見やる。

 

「それだけ」

 

まさかこんな風になるとは思ってもいなかったスレイは、最初あっけにとられながらも、やがていつもの人懐っこい笑みを浮かべ、

 

「ああ!!」

 

元気よく家へと戻っていった。

 

「驚いたな……ジイジが許してくれるなんて」

「ソルトの一言で、ジイジも色々思うところがあったらしい」

「へぇー。悪いな、ミクリオ」

「別に、いつものことさ」

 

それもそうだと笑いあって、ソルトは凛々と輝く星達を見つめた。本当に、綺麗な夜空である。彼が小さいころから、何も変わっていない。

 

「………………」

 

そんな中、ミクリオは再び視線を戻すと、難しそうな表情で虚空を見つめていた。

 

――「ジイジ」

「分かっておるよ、ミクリオ」

 

それは、ソルトが珍しくジイジに反発し、スレイを連れて出て行った後のこと。ジイジはお気に入りのキセルでたばこを吸いながらも、神妙そうな顔つきで座っていた。

 

「あの子たちの気持ちは真っ直ぐで正しい。だからこそ……ワシは心配なのじゃ……」

 

はたしてそれは、何を意味するのだろうか。ジイジは何を思い、何に危惧しているのだろうか。ミクリオには分かりかねた。

 

「……そろそろかもしれんのぉ……」

 

ジイジの座る場所より反対側の壁、そこにかけてある或る物を見つめながら、ふぅ……と大きく煙を吐く。吐かれた煙草の煙が、ゆらりゆらりと宙を漂った。――

 

本当に、綺麗な夜だ。

 

ソルトは、少しづつ移ろいで行く空を見上げながらそう思った。こんな宵は、月を肴に物思いにふけるのも悪くないのかもしれない。しかし、それをするにはいささか寒すぎるようだ。

 

「さむっ、俺もそろそろ戻るわ。じゃあなミクリオ、風邪引くなよ?」

「そっちこそね」

 

左手を振って、ソルトも家の中へと入っていった。

 

「……さて、僕も帰るか」

 

踵を返し、ミクリオは一人帰って行く。

 

 

整然と輝く星達が、ひときわ強く光を放った。

 

 

 

 




この話で出てきたメイルという人物ですが、これは完全なオリキャラではなく、ゲーム内でも登場するイズチのNPCの女性の一人です。(性格は完全にオリキャラですが......)

ゲームをしている時に、たまたま女性NPCに話しかけていると、

「スレイってああいう娘が好みなの?」

的な事を言っていたのを覚えていたのが始まりです。

ベニソンに関しては、マーボーカレーのくだりの時にちらっと鳥の手羽先のようなものが映り込んだことから勝手に作ってしまいました。ウリボアとトナカイ(?)のようなものしかいない生態系とはいかに?と思ったことが始まりでもあります。

長くなりましたが、感想、意見や批判などがありましたら遠慮なくください。今後の執筆に生かしていきたいと思います。
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