テイルズオブゼスティリア 〜審判を超えし者の旅路〜 作:夢見草
そして、この前の《彼の日常、いざなう夜月》にてついにお気に入り件数が100件を突破しました!読んでくださった方々、本当にありがとうございます!!
さて、今回は日常編その二です。なかなか区切りのいい場所が見つからなくて......
三部作にするハズだった作品を一つにまとめるのはつらいですね。主に伏線とか(笑)
乾いた音と共に射出される、鉛のカタマリ。空気を切り裂きながら進む亜音速のソレは、やがてXXXの肩を貫いた。
「あっ…………」
小さく喘いだのは、ソレを行った男性。人の身長ほどもある大剣を肩に担ぎ、もう一方の手に握られた銃のバレルからは、白煙が立ち上り、あたりにコルダイトの焼けたニオイが充満する。ドサリッと倒れるXXXを、ソルトもXxーXも、撃った本人ですらもただ呆然と眺めていた。
「どうし……て……」
押し出された声は疑問で満ち溢れ、XxーXはフラフラと視線を移す。
「違う……今のは……」
微かに揺れる、XXXxXの瞳。それは、年は離れていてもかなりの年月を共に過ごしたソルトですら始めてみる姿だった。
「どうして!XXXxX!!」
普段の温和なXxーXからは到底想像できないほどの、荒々しい叫び。
「ソルトッ!!」
やがてその怒りは、押し黙ったまま立ち尽くすソルトへと向けられる。彼とは違い鮮やかで純粋なウルサン色の瞳。どうあっても、ソルトが持つことのできない瞳の色。その瞳には、確かな怒りと敵意で溢れていた。
「………………くっ!!」
それでも、ソルトの口元は固く結ばれるだけだった。そう望んでいたハズなのに、この結末を渇望していたのに、ソルトの心は、どうしようもなく震えた。
「だまれっ!!お前に……お前みたいな優等生に……俺達の何が分かるっ!!」
「分かるわけないだろう!!君達が抱えているものなんて!!!」
「理解しなくていい!!なんでも受け入れたような
「君だってそうだろうっ!!全てに絶望したみたいな
「お前のそういうところがムカつくんだよっ!!」
やがて、ソルトも声を荒げる。しかし、その声はひどくかすれていた。半ば、もうヤケクソだった。
「くそっ!」
“俺がやる”
チラリ、とXXXxXを見やり、剣先をXxーXに向けたまま、ソルトはもう一方の刀を抜く。
「君がっ!!」
「おとなしく消えろ!!」
二人は互いに駆けだし、XxーXの籠手とソルトの刀とが、激しく火花を散らした。――
今になってみれば、あれが最初で最後の、親友であるソルトとXxーXが、激しくぶつかり合った対立だった。あの時、ソルトもXXXxXもXxーXも、互いが自分自身のことで精一杯だった。XXXxXは母を故郷に返すため、そしていつまでも成長できないままの、非力な自分への苛つきに。XxーXは、XXを失ったことへの喪失感と、そんな自分との葛藤に。ソルトは、ここには存在しない本当の居場所のために。だから、XXXxXもソルトも、XxーXやXXXのことが憎かったワケじゃない。二人とも、決して忘れることも、消すこともできない
“XxーXとXXXを殺せば、エXXピXXに戻れる”
なんて見え透いた嘘にもすがるしかなかったのだ。迷いもあった。事実、ソルトはXXXが撃たれるその瞬間まで揺れ動く心に戸惑いと葛藤があった。しかしもう、止まれなかった。
「いい加減目を覚ましなよっ!!ソルト!!!」
「黙れ優等生っ!!」
何が正しいのか、もはやそれを図る術をソルトは持ち合わせていなかった。訳が分からなくなりグチャグチャに悲鳴を上げる心を無理やり押さえつけ、それでもソルトはひたすらに刀を振るった――
***
ジュー、シャキンシャキン、ジャー
「う……うん……」
何やら油が高温で弾けるような音と、金属がこすれるような音。全く別の異質な音でありながら、不思議とリズミカルに混じり合い、どこかコンチェルトのような響きにすら聞こえる。断片的に聞こえてくるその音で、少女はボンヤリと眼を覚ました。瞳に映ったのは、いつもの見慣れた上辺だけでしかない本質的に寒々とした天井ではなく、どこか古ぼけていながらも、暖かさと優しさが伝わってくる、そんな色合いの天井。窓からさす日の光も暖かく、同じ朝であるハズなのに、不思議とこちらの方が暖かく感じられた。ゆっくりと起き上がり、少女は寝室から客間へと向かった。大きなかまどの前では、何やらソルトがくすんだ茶色の肉のスライスを焼いており、美味しそうなニオイが立ち上る。ふかふかの絨毯の上では、スレイが自身の儀礼剣と、ソルトの刀の手入れをしていた。
「おはよう、よく眠れた?」
「ああ、おかげさまで。何か私に手伝えることはないか?」
「俺はないよ。スレイはある?」
「うーん、俺も大丈夫」
あたりを見回して、スレイが首を振る。
「そこに座っててよ、もうすぐ朝食が出来上がるし」
「了解した」
フライパンをくるっと回しながら、ソルトに促されるままに少女は丁度スレイの向かい側に座った。手持無沙汰に、少女は二人の青年を見つめる。ソルトは慣れた手つきで卵を片手で割ったかと思うと、次々と卵を割ってゆく。スレイは砥石で剣を研いでいた。少女も槍を手入れするために研ぎ方は心得ているが、スレイの研ぐその姿は、まるで熟練工の鍛冶職人のように洗練されていた。
「はい、お待たせ。スレイも座れよ」
「分かった。コッチも今終ったよ」
「サンキュー」
出来上がった料理が乗った皿をソルトは配りながらスレイに声をかける。ちょうどスレイも作業を終えていたので、キンッと剣を鞘に納めると、ソルト達の方へ座りなおした。
「これを……ソルトが?」
「まあ、ちょっとありきたりだけどね」
「まさか」
ふっくらと焼けたパン。瑞々しいサラダにカリッと焼かれたベーコンに目玉焼き。ゆらゆらと湯気が立ちこめるスープ。といった品々は、確かにありふれているものかもしれないが、どれもとても美味しそうだった。
「うは、ウマそう」
「じゃ、食べるか」
「だな」
それだけ交わして、三人は手を動かす。
「どう?」
「おいしいよ、とても。このパンは?」
「ああ、森で採れる胡桃とかその他もろもろの木の実を混ぜて作った自家製のパン。今朝焼いたばっかりだから、ふっくらしてると思うよ」
「本当だ。木の良い香りがする」
決してお世辞などではない。並べられた料理のどれもが、今まで少女が口にしてきたどの料理よりも美味しく感じられた。そんな少女の感想にそっか、と呟きながら、ソルトの表情が柔らかくなる。これならば、少女を喜ばせようと今朝早くから森に行って、木の実を採ってきた甲斐があるというものだ。
「君は、都に帰るんだよね?」
「そのつもりだ」
食事が一段落したところで、スレイが少女に尋ねた。コトリッとスレイがスープの器を置く。
「その準備のために、オレ達狩りに行こうかなって思ってるんだけど……キミもどう?」
「いいのか?私が一緒に行っても」
「寧ろ大助かりだよ、な?」
「だな」
コクリとソルトが頷く。
「そうと決まれば、さっさと食べようぜ?早く準備ができるようにさ」
「分かった」
ソルトに言われて、少女は手を動かす。パンを手でちぎると、とろりと半熟に焼けた卵の黄身に浸し、口に運ぶ。耳はクリスピーな食感でありながら、なかはふっくらとスポンジのようで、黄身とよくからみつく。あっさりとした味わいだが、自然がギュッと詰まったようなこのパンは、正に絶品であるといえよう。クリーミーなミルクベースのポタージュに浸してみてもおいしそうだ。そんな組み合わせを考えながら、少女はこの食事を心行くまで楽しんだ。
***
食事を済ませた三人は、それぞれが身支度を始めていた。ソルトは、腰にあつらえてあるベルトの鞘用の輪っかに刀を通し、首には珍しい不思議な結晶をあしらったアミュレットを掲げる。これはソルトが10歳になった時の誕生日祝いとしてジイジが作ってくれたもので、聞けば災いを退けるおまじないが掛けられているという。ソルトの瞳にも似た、鮮やかなヘーゼル色のアミュレットは、とてもよく似合っていた。
「きれいなアミュレットだ。それに、よく似合っている」
「ありがと」
そんな少女の素直な感想が、ソルトには嬉しかった。
「じゃあ行こっか」
スレイに頷き、三人は外へと出た。空は昨日と同じ変わらぬ快晴。吹き抜ける風に揺れる草々はまるで緑のカーペット。いつであろうと、この緑あふれる清らかな杜なのは変わらない。それを踏みしめながら、ふと少女が漏らした。
「ここは、少しも穢れていないのだな」
「ジイジが守ってくれているからね」
「ジイジ?」
聞きなれない単語に、少女がこてんと首を傾ける。当然、少女にはジイジの存在を認識できはしない。
「えーっと、気にしないで。こっちの話だから」
「そうか」
マズイと思って弁解したソルトに納得したのか、すこし頷いた少女を見て内心ほっとした。思わず、スレイに視線を移す。スレイもその視線に気づいたのか、苦笑いしながら頭を掻いていた。
「それに比べて…………」
複雑そうな表情で、少し憂いを含んだ少女のつぶやきを、ソルトは聞き逃さなかった。
はい、話の冒頭部分、記憶描写はあの凄まじいシーンですね、アレですよアレ。自分はプレイしていて目が点になりました。
過去のソルトはいったい何者なんだ?と思ってくれれば幸いです。(そもそも、自分がちゃんと描写できているのやら......)
アミュレット
ジイジがソルト10歳のお祝いにくれた、綺麗な首飾り。村の皆総出で作ったとか何とか。首を掛ける輪はここらで採れる素材を生かした綺麗な装飾が施されていて、その先端に六角柱状のヘーゼル色の結晶がはめ込まれている。この色は、ソルトの瞳と同じ色。災いを退け、邪悪なる心を押さえるおまじないがジイジによって掛けられており、曰く“清らかな者の絆と契りを強く結ぶ石”という。ソルトの大切な装飾品。
素材である結晶の材質や種類、名称などが一切不明の不思議な石。