テイルズオブゼスティリア 〜審判を超えし者の旅路〜 作:夢見草
前回までは《彼の日常》を一貫してたんですが、今回からこの第一章も大きく動くんで日常編はそろそろ終わりです。戦闘描写や術技に苦労して執筆が遅れてしまってすいませんでした。今回は、後書きに皆さんへの重大報告もあります。
それではどうぞ!!
「いたよ、ウリボア」
草陰にじっと隠れ、スレイが草を食べているウリボアを指差した。
「あれがウリボア……」
「アイツの肉はウマいし、燻製にしたら保存も利く良い素材なんだ」
ウリボアの外見は、どちらかと言えばイノシシなどの獣の類のソレだが、体型は小柄で、何処となく小動物を彷彿させるものがある。その愛らしさゆえか、キラキラと眼を輝かせている少女を可愛いなとか思いながら、ソルトが付け加えた。
「少々気の毒だが…………」
「やめとく?」
振り返り、心配そうに尋ねるスレイに、少女は首を横に振ると、決意したように槍の柄を強く握った。
「いや、現実は心得ている。それに、都では得られない経験だ」
「なら大丈夫だな。けど、無茶だけはやめてくれよ?」
「基本的に、突進してくる攻撃を警戒してて。結構早いから」
「了解した」
「よし、行こう!!」
ソルトの掛け声と共に、三人は一斉に草陰から飛び出した。三人の接近に気付いたのか、ウリボアは威嚇するように叫んだかと思うと、何処からともなく次々とウリボアが姿を現した。ざっと見て、五匹はいる。
「仲間がいたのか!!」
「問題ナシ!!」
張りきった声と共に、ソルトがウリボアへと躍りかかる。右の刀をウリボアの側面に滑り込ませ、次いで左の刀で斬り上げる。胴と頭部を薙がれ、ひるむウリボアに、ソルトは刀を引き戻しながら体をひねって蹴りを放つ。吹き飛ばされぎみに後方へと大きくはじかれるウリボアに、間髪入れずに追撃を放つ。右斜め上段への斬り上げの後、左で大きく横に一閃、最後に左右を合わせて十文字に斬撃を重ねる。
「絶風陣ッ!!」
高速の剣戟によって周囲の空気を圧縮、それにより紡がれる三つの真空の刃が、可視ぎりぎりのスピードを以てウリボアへと飛翔する。その致死的なまでに鋭利な刃を前に、ウリボアはなすすべもなく絶命。更に空力学の関係より発生した渦が隣にいたウリボアも巻き込み、続く斬撃によって同じく命を絶やした。
「すごい…………」
一瞬のうちにて二体のウリボアを屠ったソルトの剣さばきは、驚きを通り越して旋律すら感じられる。二対の刃を、まるで自分の手足であるかのように扱い、舞うように剣戟を繰り出すその姿は、洗練されていながらもその威力は絶大。武を心得ている騎士として、自然と槍を握る手の力がこもるのも道理だった。
「俺達も負けてらんないな!!」
「そうだな」
スレイが肉薄してゆくのを見ながら、少女は槍を下段に構え、姿勢を低くする。そのまま、目の前にいたウリボアへと一息に槍を突き出す。半分ほど引き戻した所で、上段、そして下段へとさらに乱撃を加え、穂先が次々とウリボアの体を穿ってゆく。決して軽くはない槍の描く軌道が、多少なりともブレていないことからも、少女の技量の高さが窺える。四撃目となる突きの後、持ち手を変えて左横薙ぎに払う。流れるウリボアと槍。
「魔人剣ッ!」
大きく右薙ぎに振るわれた槍から発生した衝撃波が、流れるウリボアの頭部を穿ち、絶命させた。
「ふぅ……」
小さく息を吐いて、力を抜く。が、それは自殺行為でもある。ウリボアは、一匹だけではないのだから。
「危ないっ!!」
スレイの張りつめた声。そこで、少女はようやく自分の迂闊さに気付いた。
“しまった!!”
慌てて槍を向けようとするも、ウリボアの突進には間に合わない。とっさに少女は身構える。
「瞬迅剣!!」
軸足で力の限り地面を蹴り穿ち、刀を突き出して疾風の如く突進する。なおも突進するウリボアの側面を、ソルトの疾風の突きが穿つ。力なくぐったりとしたウリボアを見、ソルトはゆっくりと刀を引き抜く。
「気を抜いちゃだめだ!!」
「すまない、ソルト。おかげで助かった」
「いいって、怪我はない?」
笑いながら、ソルトは刀を払って血を払うと、クルリと回転させて鞘におさめた。
「おかげさまで」
「ならよかった」
フワリと笑うソルト。少しだけ、少女の胸が高鳴る。
「大量だな」
「ああ、これだけあれば足りるんじゃないか?」
「たぶんね」
言いながら、スレイとソルトはウリボアの脚を縛っていく。
「君はこっち持ってくれる?」
「あ、ああ、分かった」
「?」
少女の様子を不思議に思いながらも、ソルトはロープを渡す。
「よし、これで終わり」
手を払いながら、スレイが立ち上がった。五匹のウリボアがそれぞれ縄でくくられている。
「このまま引っ張ればいいから」
「了解だ」
死んでもなお引きずられて行くウリボアがかわいそうにも感じられるが、それも仕方のないことなのだ。これが生きてゆくというと。普段何気なく口にしている食材のありがたさ、その尊さ。全て都にいたころには解り得ることのできないことだと改めて理解した少女の握るロープは、どこか少し重たく感じられた。
***
狩りを終え、無事家にたどりついた三人は、狩りで得た食材や素材などを加工するため、せっせとせわしなく手を動かしていた。スレイはウリボアより得た革にナイフを入れ、用途に沿った形状に切り分けてゆき、そこから革製のバックなどを作って行く。その手際は、随分と手慣れているものだ。ソルトは、逆さ吊りにされたウリボアの首筋にナイフを入れ、血抜きをしてゆく。そのまま関節に切り込みを入れていって、革をはぎ取ると、そのまま肉を部位ごとに切り分け、得た皮をなめしてゆく。
「ふぅ」
首をまわして、ソルトは息をついた。これで四体目となる解体作業。これが中々に根気のいる作業で、いくら慣れているとはいっても疲労を感じるのは仕方ない。まあ、この疲れも馴れたこの身にはなじみ深いものだがとソルトは思っているが。
「体調はどう?」
「大分いい」
スレイの問いかけに、少女は竈で揺らめく深紅の炎を見つめながら言った。その手には、ソルトがさばいたウリボアの肉を下ごしらえや味付けなどの処理を済ませ、剣で串刺しにしておいたものが握られている。竈火で燻製を作っているのだ。やがて、滴り落ちる肉汁が煙でいぶされ、立ち込めるいいにおいと共にジュ―と音を立てながら煙が立ち込めた。
「スレイ、煙が出てきたが」
「あ、ソルト頼める?」
「りょーかい」
手にしていたナイフを床に置き、ソルトは少女の横から手を添える。
「もう少し上げて……そう、そんな感じ」
「た、助かった」
手と肩越しから伝わる、ソルトのぬくもり。先程の高鳴りと相まって、どぎまぎしてしまいながらも、少女はなるべく平常を装ったまま言われたとおりに肉を火から遠ざける。すると、あれだけ夥しく立ち込めていた煙も、次第に収まっていった。それを見て、ソルトはそそくさと自分の持ち場に戻って行く。何故ここまで丁寧に付き添っているのか……燻製とは、肉をただ焼くのとは勝手が違う。最初は火を満遍なく通すために焙りつつも、或る程度したら煙のみで燻さなければ、失敗してしまう。それゆえ、火との距離の関係性や火力などにも気を配らなければならない……というのもある。だが、それにも増して二人が付きっきりになったのは、事の発端である少女の発言のせいだった―――
狩りを終え、大事なく無事に帰りついた三人。スレイとソルトはそのまま狩りで得たのもを加工などするための作業を始めようと、様々な準備をテキパキと始めていた。それをただじっと見ておくことが、どうしても少女には出来なかった。幾ら自分がスレイやソルトにとっての客人であろうと、二人が行おうとしているのは全て少女の旅の支度のため。それをまかせっきりにしていては騎士として人間としても無礼ではないか……そんな風に少女は思ったのだ。
「私にも何か手伝えることはないだろうか?」
「え?」
そんな少女の申し出に、二人の手が止まる。
「君は俺達の客人なんだし、ゆっくりしていていいよ」
彼らとて、少女を手伝わせる気などさらさらなかった。元々こういったことには慣れているし、こんな仕事を女の子にやらせるには忍びない。
“男は女に重荷を背負わせない”
とはメイルの談だ。気にしないでと口にする二人だが、ここで少女も引き下がるわけにはいかない。
「いいんだ、ぜひ私にも手伝わせてくれ」
「うーん」
そこまで言われてしまうと、スレイもソルトも言葉に詰まる。どうしたものかと頭を掻きながら考えていたスレイは、やがてふと顔を上げた。
「じゃあさ、ソルトの解体作業を手伝ってあげてよ」
「ちょっ!!」
「よろこんで!」
「いやいや、俺一人でも大丈夫だって」
「いいだろ?ソルトの方が重労働なんだし、人出は多いに越したことはない」
「それでも……」
「いいんだ、一緒に手伝わせてほしい」
ソルトが担当するウリボアの解体作業は、決して人にお勧めできる作業ではない。血なまぐさいし、何より気持ちの悪いものだ。何としても少女にはやらせたくなかったソルトだったが、それでも彼女の――――――
熱意のこもった
記憶の奈落の底に沈み、それでもなお見覚えのある/ダレカニ似テイル
真っ直ぐな目には何故か勝てなかった。理由は確かではないが、少女の瞳を見つめ続けていると、不思議と胸騒ぎがするのだ。諦めたように小さく肩を落とすと、ソルトは渋々承諾した。
「よし!では早速……」
声色を弾ませながら、少女がおもむろに槍を手に取る。
「えーと、それは?」
「見ての通り槍だが?肉を卸すのだろう?」
固まった。場の空気が、完全に。付け加えていうなれば、スレイとソルトの思考も。ハッと我に返り、二人は瞬時に顔を合わせる。
(なあ、あれって俺の聞き間違いだよな!そうだよな!!)
(うん、ソルトは間違っていないと……思う)
(じゃ、アレは新手のギャグか何かか?俺たちをからかってるのか??)
(ち、違うと思うよ?だってホラ、彼女の顔は真剣そのものだ)
チラリとソルトが少女の方を見やる。確かに言われた通り、少女に巫山戯ているような様子は見受けられなかった。
(じゃあアレが都での調理方法か何かか?)
(そうだったらちょっと凄いね)
(都って新鮮過ぎるだろ!)
そんなハズある訳ないのだが、何分ソルトもスレイも此処より外の世界の事は何も知らない。ソルトの中で、都に対する間違った認識と知識が固まってゆく。下界の人達はかくも斬新なのかと戦慄すら覚える始末。
ともあれ、流石は長年一緒に暮らしてきた二人だ。これくらいの意思疎通に、言葉など不要。視線だけで事足りる様だ。いや、或いはこの異常な事態だからこそ、成し得たのかもしれない。とにかく、あまりの突拍子さに二人の思考が追い付かないでいた。
「何か間違えただろうか?」
「いや、何でもないよ!そうだ!!キミには他のことを手伝ってもらうよ!!な、スレイ?」
「あ、ああ、そうだね」
結論としては、少女にはもっと簡単な事をやって貰おうということで一致した。槍での捌きなど、斬新すぎて何故か恐怖すら感じてしまったのだ。へんに上ずった声でまくし立てる二人の声に、少女は不思議に思いながらもスレイの説明を受ける。そんな彼女の後姿を見て、ソルトははたと思った。
“下界の人々ってこえー”
と ―――
とまあ、こんなことがあり二人は少女につきっきりで目が離せないのだ。しばらく、それぞれが奏でる作業音のみが木霊する。ジジジ……肉から滴り落ちる脂が、炎で燻されて煙が立ち込める。長時間煙と余熱で焙られたためか、肉からは余分な水分と脂が飛んでゆき、表面はカサカサになりつつある。成程燻製とはよく考えてあるものだと少女は素直に思う。こうすれば、肉内にある水分は抜け、長期の保存も利くようになるだろう。燻製は知っていても、その製法までは知らなかった少女にとって、これは大きな発見だった。と同時に、今でも淀みなく難しそうな作業をこなしてゆく二人に対して、僅かばかりの疑問が生じた。スレイもソルトも、外見からでは少女と年齢差が無いように思える。しかし、生活してゆくための知恵は少女と比べ物にならないほど物知りだ。ゆらゆらと揺らめ燃える炎を何となく眺めながら、少女はポツリとつぶやいた。
「スレイやソルトは、この杜にずっと一人と言ったが……」
「ん?」
「そうじゃないような気がする」
思い返すのは、この杜に入ってきてからのスレイの行動や、ソルトのあきれた顔。何となくではあるが、それがただの芝居や世迷いではなく、何か意味があるものに少女は思えてならなかった。
「二人がここを“杜”と言ったように、不思議だな。何か感じるんだ」
「………………」
ゆっくりと、スレイが振り返り同じように顔をあげたソルトと眼があった。
或いはそれは、少女にとってなんてことない発言だったのかもしれない。ただ思ったことを漠然と口にしてみただけ。しかしそれは、スレイとソルトにある種の“可能性”を抱かせるには十分だった。ナニカを感じる、と少女は言った。恐らく、自分の周りにいる天族の存在、あるいは少女の事を監視している天族達の視線を、少女は何となく感じ取っているのだろう。しかし、とうに霊能力を失った人間が天族の存在を感じるのは難しい。であるなれば、少女は少なくとも天族を感じ取れる程度の霊能力を持ち合わせていることになる。
“あの子ならきっと、何時か俺達と同じ光景を目にすることが出来る”
何の根拠もなく、そうジイジに言ったソルトだったが、あながち間違ってもいないのかもしれない。ソルトはそんなことを思いながら、再び手を動かし始めた。
アリーシャとミクリオとのフェイスチャットで、デザートを作るだけなのに槍をドヤ顔気味にかかげるアリーシャには面白みと共に可愛らしさが感じられました。
このヒロイン力を前にしても一時加入って......どうなってるんだろ?
この話の最後あたりの話は、アニメ版でのスレイの意味深な表情から
”これ絶対霊能力を覚醒させるフラグや!!アリーシャもカムイつかえるかも”
割とマジで思ってました。でも現実では違う......なら書けばいいじゃないということでこれからもこんな独自解釈が入ります。
それと、ソルトの操る技と術について、皆さんからの意見、要望などを元に決めていきたいと思うので、活動報告の所に常設のアンケートをおきたいと思います!詳しくはアンケートに書いておくので気軽にご意見を下さい!!感想なども常時募集中です!!
それでは、ここまで読んでくれてありがとうございました!!