お仕事が忙しくて色々とヤバイ時期ですが、なんとか上げる事が出来ました。
これからも2〜4日更新目指したいですねー
「見ツケタ・・・」
そう呟いた色白な少女。人間ならざる肌、人間ならざる雰囲気。杖を持ち頭には深海生物を思わせる帽子のようなものをつけている。
・・・ヲ級と総称される深海棲艦側の空母だ。
その金色の瞳には目の前の海は映っておらず、自身から発艦した攻撃機から見える風景が広がっていた。
そこにいたのは、足止めを任された艦隊の内の2隻。
どちらも巡洋艦クラスの大きさ・・・一人は見たこともないような艤装だ。
「ドンナ装備ヲ持ッテイルカ、ワカラナイ・・・」
しかしやることは変わらない。既に本隊は相手の先遣艦隊とぶつかり、そろそろ決着がつくかもしれない。
2隻だけの囮にしか見えないような部隊。最悪部下に任せて自分は突っ切ってしまってもいいかもしれない。
・・・だが、その考えはすぐに消した。
「ドチラニシテモ水底ニ・・・沈メルダケ・・・」
すっと杖を前に出す。実際に飛んでいる攻撃機には見えない。が、これが彼女の合図だった。
自分達の前方に広がった攻撃機群。統率された動きで雷撃の為に降下していく・・・
「巡洋艦クラス2隻ニ40機ノ爆撃隊・・・スグニ海ノ底ニ沈メテアゲル」
それが、どんな悪手かもわからずに。
それと同時に木曽の方でも既に攻撃機群を捕らえていた。
その数の多さに流石に舌打ちをする。
「・・・ち、ホントに大隊規模かよ・・・どうすんだよ、みらい・・・みらい?」
いっそ逃げるか?と声をかけようとして、やめた。
「敵攻撃機確認。80度、距離7マイル。敵機数40。主砲、短SAM砲撃用意・・・敵攻撃群、右翼を目標群α。左翼側を目標群βと命名。最短で迎撃する目標選択。選択完了。目標群α、5マイルまで接近、数18・・・続いて目標群β、170度6マイル・・・数22」
いつものみらいと違うその雰囲気に、思わず息がつまる。
いつものみらいは、にこやかで、優しくて・・・まるで太陽のようだとよく皆から言われていた。
が、今はどうだ。
目の前に浮かんだモニター。何かを指示しているのか口早に伝え、せわしなく目線が動いている。
その目つきはまるで険しい鷹のよう。すべての情報を逃さないとばかりに鋭い。
その表情は無表情。まるで戦場に感情はいらないと言わんばかりに、無機質だった。
「おい、みら「大丈夫だよ、木曽」い・・・?」
ようやくすべての事を終えたのか。いつもの雰囲気に戻ったみらいが、ちらりと木曽を見た。
そこに浮かんでいたのは・・・笑み。
そこには、絶対の自信が浮かんでいた。
そして木曽はこのとき気が付けなかったが・・・みらいは感謝していた。
昔。フネだったころ。似たような戦況になったことがあった。あの時は空母のみで、こちらも自分だけだったが。
皆に話した40機と1隻の空母。淡々と話していたその心の奥底で、みらいの心は煮えたぎっていた。
自衛官として、最善の選択だった。そのはずだった。けれども忘れていたのは、彼らの覚悟。
自分がまだ壊れるだけなら、どれだけ良かったか。5名の死者と12名の負傷者。それが代償だった。
もしも相手が。また人間か、はたまた艦娘だったのなら。また手加減をしていただろう。それは護衛艦としての避けられない宿命だ。
———だが。このとき。この場において。相手は亡霊で、罪もない人を襲う不埒物で・・・そして。自分のリベンジマッチといってもいいような状況で・・・みらいは『容赦』の言葉を切り捨てる理由を得た。
護衛艦としてではなく。仲間を、艦娘を。人類を『守る』という大義名分を得た。
心の中では分かっている。それはいけない事だと。たとえどんな大義があっても・・・力は振るってはならないのだと。
けれど・・・
「今、この場所、この瞬間だけは」
護衛艦としての誇りを切り捨てよう。守るだけではダメだと・・・あの時、あの瞬間で学んだのだから。
戦わなければいけない時もあると学んだのだから。
既に敵はこちらの攻撃範囲内———そう。
「———わたしの、独壇場なんだから」
ヲ級は不思議な艤装を身につけた艦娘が動いたことを見抜いた。
その手にあった単装砲が動きを見せたのだ。
しかし、ヲ級はそれに対してフンと一つ鼻を鳴らした。
「タッタ1門ノ砲デ、何ガデキル」
ヲ級は知らない。
その、『たった一門の砲』が。
「右対空戦闘・・・トラックナンバー2628、主砲・・・!撃ちぃー方はじめぇー!」
過去では考えることもできやしない、『未来』の速射単装砲だという事を。
ズドン、という響く音。
撃ち放たれた砲撃は、まるで吸い込まれるように攻撃機へと直撃。海の藻屑へと変える。
それは、1度ではない。2度、3度、4度!響くたびに同じように直撃。例え直撃でなくてもその寸前で爆発、その爆風に巻き込まれて攻撃機は撃破される。
「トラックナンバー2628から2631まで撃墜。新たな目標、210度」
みらいの持つ単装砲の砲身が動き、銃座もまた回転する。
みらいの号令を受けた単装砲は本当に機械なのかと思いたくなるような速さでほぼ逆側へと向き直る。
ズドン、と響く音。
マグレではない。コンピュータによる精密な射撃。イージスシステムを最大限に発揮させるからこその芸当。
横一列に並んだ攻撃機。まるで射的の的のように、撃ち落とされていく。
「雷撃隊ガ・・・!?ク・・・!」
驚くしかないだろう。
誰が思うだろうか。たった一門の砲だ。たった一門だけのはずなのだ。
誰が思うだろうか。その、たった一門の砲が。次々とこちらを撃破していくなどと。
———信じられるわけがない。信じてたまるか。
マグレに違いない、そう思い込むことで平静を保とうと、さらに待機させていた攻撃機を向かわせる。
一方のみらいは、平然としていた。あたりまえだ。これは彼女にとって全てが計算通りなのだから。
「・・・トラックナンバー2642、接近・・・まったく多いったらありゃあしない。なら———」
ここまで使わなかった、みらいの奥の手。使わず終わるのは悪手だろう。
『切り札』とは、切ることができてこその切り札なのだから。
「後部VLS、シ—スパロー発射はじめ・・・SALVO!」
みらいの左肩。コンテナ状のVLSから上がる噴射煙・・・
後にそれを見た木曽は語った。「まるであれは・・・意思を持ってるみたいだった。そう、まるで・・・海を翔けるツバメのような・・・」と。
「・・・!」
今度こそ、ヲ級は言葉を失った。
なんだ今のは。なんなんだこの相手は。
何がただの巡洋艦クラスだ。何がたった一門の砲だ。
相手はもっとバケモノだ。それこそ『姫』と言われても信じるだろう。何かを隠しているだろうと思った。だが、あんなものだと誰が思うか。
まるで、自らの意思を持ってこちらを害そうと狙う肉食獣のような機動。爆発し、一撃で攻撃機を粉砕した、白い魔弾。
「何ダ・・・何ガ起キテイル・・・?!」
いまだヲ級は、混乱を極めていた。
そんな状況を、木曽は最初から今まで、瞬きすらせずに見ていた。
そうして、理解した。
「・・・死だ。死が起きている」
放つたびにソレは命中する。放つたびにソレは敵を撃ち落とす。
まるで、ソレは死神の鎌。決して逃れ得ぬ死への片道切符。
「はは・・・本当にオレ、いらねぇじゃねぇか」
あの時、みらいが皆に言い放った一言。
事実だった。ここまで圧倒的な戦闘、もはや戦闘とは言えない。
独り相撲、子供と大人の喧嘩、象とアリの戦い・・・幾多の言葉が浮かんで消えていく。
そうして、理解した。
「・・・これが、21世紀の戦闘・・・!」
気がつけば、空を覆っていた敵の攻撃機は大部分が海の藻屑と変わり果てていた・・・
「敵機32機撃破確認・・・8割迎撃完了。これ以上は弾頭がもったいないし、近づいてきたら単装砲で撃ちおとそ、うん」
いつもと、何も変わらない。そんなみらいに思わず苦笑いになる。
・・・彼女にとって、ここまでは予定調和というわけだ。
「で、どうすんだみらい。攻撃機はどうにかなりそうだがまだ敵艦が残ってるぞ」
確かに足の速い敵機はほとんど残っておらず、たとえこちらを無視してあちらに行っても、まず対処できるだろう。
そして戦場に長い事いたため木曽は見抜いていた。この攻撃機を発艦した敵は、動揺していると。
故に、ここで出来れば空母を沈めてしまいたい・・・が。
その為にはそれを守っている3隻のフネを突破しなければならない。
この規模の攻撃隊だ。おそらく軽空母ヌ級ではなく、空母ヲ級のクラスだろう。
そうなればその直援が弱いわけはないだろう。イ級がいたとしても、1隻は重巡クラスがいてもおかしくはない。
巡洋艦クラス2隻で相手をするには荷が重い・・・そう、普通なら。
「勿論ぶっ飛ばすよ、木曽・・・もしかしてもうおなかいっぱい?」
「・・・まさか!お前が全部かっさらっていったせいでこちとら飢えてんだよ・・・!」
ここまで負けることを想像できない戦いが、今まであっただろうかと木曽は笑みを深める。
「行こうぜみらい。オレがいらうかわかんねぇけどついてくぞ」
「あはは、もうミサイルは極力使いたくないから今度は木曽にも出番はあるよ?」
「け、言ってろ・・・お前の力は見せて貰った・・・次は俺の番だな」
彼女達は敵をめがけて更に速度を上げる。手早く片付けて長門達へと合流するために。
そのころ。先遣艦隊へと急ぐ長門達。
秋月は置いてきたことにやはり不安を覚えたのか、しきりに後ろを向いている。
「・・・秋月、気持ちは分かるが今は集中しろ」
それに気がついた長門が窘める。が、どうしても秋月は不安をぬぐい去れないようだ。
「だって・・・だって2隻で4隻と、しかも攻撃機付きですよ!いくらみらいさんだって・・・」
・・・そのことは、長門も感じていた。例え60年後の艦船だったとして。はたして耐えきることができるのかどうか。
「大丈夫よ、秋月、長門」
そこで会話に入ったのは。以外にも加賀だった。
「な、何をもってそんな断言ができるんですか!心配じゃないんですか!?」
「ええ・・・あの子は絶対の自信を持って私達に告げた。勝つ自信があったということでしょう」
「そ、そうだよ秋月ちゃん!みらいさんには、最強のミサイル兵装があるんだし!」
ここぞとばかりに夕張がみらいの装備が優れていることをアピールしようとする、が・・・
「最強って・・・どの程度で最強なんですか?」
「へ?いや、あの・・・最強って言うのはね・・・えーと」
秋月からの思わぬ反撃で言葉が詰まってしまう。
夕張が答えられないからか、秋月がまた不安になったのか、眼尻には涙まで浮かんできている。
「———サジタリウス」
「・・・え?」
ぽつりとつぶやいたのは、やはり加賀。
「前にみらいに聞いたらそう言われたわ。空を飛翔し、追いかけ、そして撃破する・・・射手座の意味を冠する矢」
ふふ、と笑った笑顔は、どこまでも透き通っていて、みらいに対する信頼であふれていた。
「もしも。もしもみらいが言った通りの決して外れることのない、神の矢だというのなら———それこそ、あの子が言ったとおり・・・鎧袖一触よ」
最もみらいと演習を重ねたからこそ。自身を持って答えることができる。
そう。みらいが、自分の子達よりも劣る攻撃機に倒されてたまるか。
「・・・おしゃべりは終わりだ。見えたぞ!」
長門が指さす方向。空には黒煙が見え、砲撃の音すら聞こえる。
・・・もうみらいの方に戻る時間はない。覚悟を決めなければならない。
(だからさっさと倒して追いついてきなさい、みらい・・・でないと主菜がなくなってしまうわ)
だから、そっと。加賀はみらいに対して無事を祈る。
きっと大丈夫だと信じるからこそ。
「長門。先に攻撃機を飛ばします———全機発艦。一航戦の力を見せつけろ」
今は、自分の戦いに集中すると決めたのだった。
あとがき:
決して外れる事のない神の矢(厨二感
はい、ノリノリで戦闘シーン考えてたらこれでいいのか不安な私です。
見てて思ったかもですが、ぶっちゃければワスプ戦が元です。
イージス艦が遠慮なくやればまあ、こうなりますよね。
え?見つけた時点でミサイル先制攻撃で終わった?
み、みらいちゃんまだ深海棲艦見てないんでここで見ておきたかったって事でお願いします(震え声
おまけ:
とある昼下がり。
加賀との演習を終えたみらいは二人で昼食へと向かっていた。
「結局今日もしーすぱろーは使わなかったわね」
「仕方ないじゃないですかー。弾数には限りがありますし、司令官さんに聞いても妖精さんの解析が終わってないから作れないですし」
どこかむくれた加賀に苦笑いで答えるみらい。この会話は幾度もしている。
みらいにとっての切り札の一つ。対空の要、シースパロー。
それをまだ一度も使ってこないことで加賀はむくれているのだ。
勿論頭ではわかっている。
・・・いまだそれを使われなくても加賀はみらいに勝ててはいない。そんな彼女が言う切り札だ。使われたら自分なんてひとたまりもない。
だが、こうも思うのだ。
「・・・興味があるのよ。貴女が切り札という最強の一手に」
勝てるか勝てないかではなく。一体彼女の切り札とは、どの位置にあるのかという興味本意の言葉だった。
そう聞いて、みらいは少しだけ考えて。
「サジタリウス、かな?」
「さじ・・・?」
聞いたことのない言葉に思わず聞き返すと加賀の前を歩いていたみらいはくるりと向き直った。
「サジタリウス。加賀さんには射手座と言った方が伝わりますかね?その意味を冠した矢・・・とある作戦で違う弾頭使ったんですけど、そんな風に命名されまして」
そう言ってまた前を向き直る。
サジタリウス・・・射手座・・・なんというか、格好良く思えた。
「敵を逃さず空を駆けて撃破する、絶対に外れる事のない神の矢・・・なぁんて、ちょっと臭いセリフです、か、ね・・・?」
加賀が立ち止まった気配を感じてみらいはもう一度振り向いて・・・思わず言葉が消えた。
「・・・いいですね」←すっげーキラキラしてる
・・・なんというか、目を輝かせていた。
「いや、あの。加賀さん?わたしこれ結構恥ずかしいんで出来れば内緒に・・・」
「なんでですか?格好いいではないですか。しかし貴女が射手座、ですか・・・では私は弓の名手である那須与一を」
「あのなんかごめんなさい?!お願いだから忘れてぇっ!?」
※加賀さんは厨二ではありません。
ただこんな昼下がりもあると楽しいかなと。
例の如く妄想ダダ漏れでお送りしました。
PS、恒例のミス報告のお時間です。
みらいの左型→みらいの左肩が正解です。
佐武さん報告ありがとうございました。