ランスIF 二人の英雄   作:散々

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第172話 彼女の行方

 

-マジノライン-

 

「マリアさん。それで、マナバッテリーって一体何なんですか?」

「闘神都市の動力源。これに溜まった魔力を使って、闘神都市は動いていたの」

 

 マジノラインの地下へと落ちたランスたちは、巨大なマナバッテリーを前に話し込んでいた。マリアの説明を受けて納得しかけたシィルだったが、当時の事を思い出して更に疑問を投げる。

 

「あれ? でも、闘神都市って魔気柱が動かしていたんじゃ……?」

「流石シィルちゃん! 良い質問」

「(魔気柱の事まで……!? それでは、ランスさんたちは本当にイラーピュを……)」

 

 シィルの口から魔気柱という単語が出て内心驚愕するカオル。マナバッテリー同様、それは世間には知らされていない機密事項だからだ。闘神都市の戦いにおいて、ランスたちは八本の魔気柱を破壊する事によって闘神都市の機能を止め、墜落させた。

 

「魔気柱はあくまで魔力供給装置。その魔力は主に闘神ユプシロンとマナバッテリーに送られていたわ」

「ああ、そういや魔気柱を壊して闘神の自動回復機能を止めたんだったな。まあ、俺様ならそんな事しなくても十分倒せたがな」

「苦戦したくせに……」

「お前は脱出パーティーだったから見てないだろうが! どうせ、志津香に聞いたんだろ? あいつは話を盛ってるぞ」

「はいはい」

 

 マリアはユプシロンと直接対峙していないため、その強さは志津香からの又聞きだ。だが、話を盛っているのがどちらかは判っているようで、ランスの言葉に適当な相槌を打って話を続ける。

 

「そうね……判りやすく言うとマナバッテリーは心臓、ユプシロンは闘神都市全体に命令を出す存在だから脳ね。で、魔気柱は全身の血液を心臓に送り込む役目」

「判りにくいぞ」

「もう、茶々入れないで! それで、魔気柱とユプシロン、魔力供給と命令機能が無くなった闘神都市はその機能を維持する事が出来なくなって墜落したって訳」

「成程、そういう事だったんですね」

 

 ユプシロンと魔気柱の破壊で闘神都市を落としたため勘違いしていたが、実際に闘神都市の心臓部となっていたのはこのマナバッテリーだったようだ。合点がいったと深く頷くシィル。

 

「まあ、イラーピュで実物を見た訳じゃないから、これが本当にマナバッテリーかどうかは判らないけどね」

「しかし、だったら何で魔気柱を破壊させたんだ? これを破壊すりゃ済む話だったじゃないか」

「ランス。忘れてるかもしれないけど、あの時の私たちの目的は闘神都市の墜落じゃないからね」

 

 マリアの言うように、闘神都市の墜落はあくまでユプシロンを倒した副産物。あの時点でマナバッテリーを破壊する理由はランスたちにはないため、フリークもマナバッテリーの事は話題に出さなかったのだろう。

 

「ひょっとして……」

「ん? 何だ?」

 

 マリアがマナバッテリーを見上げながらポツリと言葉を漏らす。ランスはその呟きが気になったのか、何事かと問う。

 

「マジノラインを保持するのに必要な動力が魔力だとしたら……ひょっとしたら、マナバッテリーを使っているのかも」

「(……!?)」

 

 やはりそこまで考えが至ってしまったかと唇を噛み締めるカオル。それは、ゼスの中でも最上級の機密事項。

 

「でも、このマナバッテリーは止まっているんですよね?」

「ゼスにはいくつも闘神都市が落ちているから、その分だけマナバッテリーは存在するわ。まあ、墜落の際に壊れちゃったのもあると思うけど。それを使っているかもって事」

「なら、壊しておくか。稼働していないが、壊れたらゼスは困るんだろ?」

 

 ランスがマナバッテリーに剣の切っ先を向ける。

 

「えー、勿体ないよ。私、調べたい」

「知らん、知らん。せーの……」

「いけません!!」

 

 突如カオルが大声を上げ、剣を振りかぶっていたランスは思わずその手を止める。他の者たちもカオルがこれほど大きな声を上げるのは珍しかったため、一様に驚いていた。

 

「あ、すみません……ですが、それが本当にマジノラインで使用されている可能性があるのなら、破壊するのは危険です。マジノラインは魔軍の侵攻を止めている大事なもの。それが壊れてしまえば、ゼスだけでなく人類の危機に繋がりかねません」

「そ、それは怖いだす……」

「でも、動いてないんだよね?」

 

 プリマの問いにカオルが首を横に振る。

 

「あくまで今動いていないだけであって、ゼスがこれを運用している可能性はあります。例えば、いくつかあるマナバッテリーを順番に動かしているといった方法での運用」

「あー、ローテーションでの運用か。確かに有り得るかも」

「だとすれば、破壊するのはあまりにも危険。そう思ったら、つい声を荒げてしまいました」

 

 今のは嘘だ。ゼスはまだこのマナバッテリーを発見していないため、破壊したところでマジノラインは止まらない。だが、マナバッテリーはゼスの宝。動いていないとはいえ、みすみす破壊させる訳にはいかないのだ。カオルの説得が効いたのか、ランスが興味を失ったように剣を下げる。

 

「ふーん、こんなもんがな……まあ、動いてないならどうでもいいか」

「ランス隊長、本来の仕事に戻りましょう。今はブルー隊の救出が先です」

「うう……色々調べたいのに……」

 

 ランスよりもむしろマリアの方が名残惜しそうにしながら、一同はこの場所を後にする。その後、程なくして捕らえられていたブルー隊を発見したランスたちは無事に任務を達成したのだった。

 

 

 

-アイスフレーム拠点 本部-

 

「報告は以上だ」

「ご苦労様でした」

 

 拠点へと戻ってきたルークは先の任務の報告をウルザにしていた。隊長・副隊長であるサーナキアとセスナも同席している。

 

「済まないな。サーナキアを連れて行く程の相手ではなかった」

「いえ、用心に越した事はありません。アベルトは私が油断したせいで捕まったのですから……」

「ウルザ様……」

「そう気にする事はないと思うがな」

 

 落ち込むウルザをサーナキアは気遣うが、ダニエルはまるで心配した素振りを見せない。実の親子なのにだ。

 

「ダニエル……」

「そうだ、ルーク。お前に客が来ているぞ。あまり知らない人間を招き込むな」

「客?」

「がはははは! 今帰ったぞ!」

 

 ダニエルと話していると、本部にランスが入ってきた。どうやらグリーン隊も任務を終えたようだ。その証拠が、ランスの引き連れている男だ。

 

「ただいま戻りました」

「ああっ……アベルト……」

「アベルト! 無事でよかった」

 

 何食わぬ顔で拠点へと入ってくるアベルト。ウルザは感極まったように声を出し、サーナキアも歓喜の声を上げる。

 

「大きな怪我はなさそうだな」

「ルークさんにもご心配をお掛けしました」

「いや、無事なら何よりだ。すまないが、客を待たせているみたいなんで先に失礼する。セスナ、行くぞ」

「ん……」

「あ、ボクももう行こう。ウルザ様、失礼します」

 

 アベルトの無事を確認し、そのままセスナを引き連れて本部を後にするルーク。サーナキアも報告は完了していたため、シルバー隊の部下に会うべく共に本部を後にした。そうして三人が出て行った後も、ウルザはアベルトの帰還を喜び続けていた。

 

「アベルト……本当に、本当によく無事で……」

「はい、なんとか」

「傍に来て、アベルト」

「はい、ウルザさん」

 

 呼ばれるままスタスタと近寄っていくアベルト。ウルザはその手をそっと取った。温もりを直に感じる。本当に生きている。その事がウルザはただただ嬉しかった。先の作戦の失敗で多くの犠牲を出した。その中には、家族も含まれている。これ以上、近しい人間から犠牲を出したくない。

 

「本当に良かった」

「……貴女が……」

 

 ウルザにしか聞こえないような小さな声で、アベルトはボソリと呟いた。

 

 

 

-アイスフレーム拠点 広場前-

 

「そういえば、セスナはアベルトの事が苦手なのか?」

「…………」

 

 サーナキアと別れた後、待っている客人に会うべく拠点内を移動していると、不意にルークがそんな質問をしてきた。少しだけ驚いたようにその顔を見上げるセスナ。

 

「気付いてたの……?」

「なんとなくな。どこが苦手なんだ? そう悪い人間には見えないが」

 

 善悪問わず、冒険者とした多くの人間と接してきたルークから見ても、アベルトは特段おかしな人間には見えなかった。それこそ、セスナが毛嫌いするような人間には。セスナも説明が難しいのか、少しだけ言いにくそうにしながら答える。

 

「なんだろう……いつもニコニコしていて、あの人……怖い……」

 

 

 

-アイスフレーム拠点 本部-

 

「貴女が来ると思っていたのに」

「えっ……」

 

 思わず顔を上げ、アベルトを見上げるウルザ。

 

「僕ぐらい近しい人間が捕縛されたらもしかしてと思ったんですが……駄目でしたか……」

「アベルト……?」

「まあ、仕方ないですね」

 

 そう言いながら、アベルトはいつもと同じように優しく微笑む。だが、何故だろうか。その微笑みの奥に何か冷たいものをウルザは感じ取ってしまっていた。すぐに自分の気のせいだと思ってしまうような、ほんの僅かな異変。

 

「おい、いつまでウルザちゃんの手を触っている」

「ああ、そうですね。失礼」

「ウルザちゃんは俺様のものだ! むやみに触るんじゃない!」

「ほう、俺様のものか……」

 

 ランスとウルザの間に割って入るダニエル。今の言葉が癇に障ったのか、いつもよりも重い言葉をランスに投げる。

 

「帰れ」

「なにっ? 過酷な任務を終えた俺様に労いの一つも……」

「ご苦労だった。さあ帰れ。今すぐだ」

「ええい、欲しいのはじじいの労いなんかじゃないわ!」

 

 文句を言っているランスを無理矢理追い出すダニエル。本部の外まで押し出されたランスはずっと文句を言っていたが、ウルザは療養のためにこれから寝ると言われては折れるしかない。文句を言いつつも、本部から去って行く。それを見届けたダニエルが大きく息を吐いていると、ヌッと家の中からアベルトが出てくる。

 

「相変わらず、父さんはウルザさんにべったりだね」

「…………」

「そろそろ勘付いていると思うけど、僕そろそろ動こうと思っているから」

「っ……」

 

 声も無くアベルトを睨みつけるダニエル。だが、その表情はどこか苦しそうだ。

 

「ランスさんを追い出したの、僕と早くこの話がしたかったからでしょ?」

「…………」

「父さんはどうする? 僕としては一緒について来て欲しいんだけど」

「…………」

 

 何も答えず、ただ睨み付けるだけのダニエルを見てため息を吐くアベルト。

 

「まだ拘るの? 貴方はもう十分過ぎる程尽くしている。治療も完璧だ。それでも腑抜けのままなのは、彼女に責任がある」

「…………」

「今回の件で判っただろう? もう彼女は立ち上がらない。僕の窮地でも駄目だったんだ」

 

 いつもと変わらぬ口調で、されどハッキリとウルザを見限るアベルト。だが、ダニエルは何も答えない。一分ほど互いに見合った後、アベルトの方が先に折れる。

 

「ふぅ……判ったよ、もう少しだけここにいる。でも、そんなに長くはいないよ。次を探す」

「…………」

「次はもっと歯ごたえがあるといいんだけどなー」

「っ……」

 

 その言葉に如実に反応を示すダニエル。唇を噛み締め、更に苦悶の表情を浮かべながらアベルトを睨みつける。そのダニエルの反応を見て静かな笑みを浮かべながら、アベルトはコキコキと肩を鳴らす。

 

「あー、捕虜なんて慣れない事したから疲れちゃったな。僕も部屋に戻るから、ウルザさんによろしく」

 

 数日間捕虜になっていたとは思えないような軽い足取りでこの場を後にするアベルト。その背中を見送りながら、ダニエルは悔しそうに拳を強く握りしめるのだった。

 

 

 

-アイスフレーム拠点 広場-

 

「ちっ、ダニエルめ。悔しいから今晩もウルザちゃんのところに忍び込んでやる」

「ゆーびーん!」

 

 落ちていた缶を蹴り飛ばしながら文句を吐くランスの下に郵便配達員の等々力亮子が駆けてくる。

 

「ランスさん宛ですよー」

「おう、きっと俺様へのラブレターだな。どれどれ」

 

 手紙を受け取り、差出人を確認すると、それは留守番をしているあてな2号からであった。そういえばもしもの時の為に連絡先をシィルが送っていたなと思い出し、手紙の中身を確認する。

 

『ほったらかしにされてるれす いつまでもほったらかしれす クモの巣がはるれす れすれすれすれすれす』

 

「なんじゃこりゃ。おい、捨てといてくれ」

「うわっ、酷っ! あ、そういえば変な場所でランスさんを見ましたよ」

「変な場所?」

「ええっと、国境近くの……」

「ああ、マジノラインか」

 

 先のブルー隊救出任務の際、どうやら亮子に見られていたようだ。郵便配達員なら、マジノライン近くにいても不思議ではないだろう。

 

「はい、そうです。あんな場所で何をしてたんですか?」

「マヌケの救出作戦だ」

「おおー、格好良いー」

「ん? そうか?」

「はい! もっと聞きたいです!」

 

 亮子の言葉に気を良くするランス。ニヤリと大きな口を開け、そのまま話を続ける。

 

「そうか、そうか。なら話してやろう。俺様は救出先で国家機密を発見したのだ。流石俺様」

「ほほう?」

 

 その時、亮子の目が怪しく光った事にランスは気が付かなかった。

 

 

 

-アイスフレーム拠点 ルークの部屋-

 

「久しぶりだな、二人とも」

「久々の生ルークさんですかねー! これで勝つるですかねー!!」

「お久しぶりです、ルークさん」

 

 ルークの部屋で待っていた二人の来客。それはトマトと真知子であった。ルークの部屋の前で二人を監視していた隊員を帰らせ、部屋の中へと入ってきたルークは久しぶりの再会を喜び合う。因みに、セスナは先に詰所に向かわせている。

 

「それで、何故いる?」

「ワニランから来てるのがトマトと真知子だって聞いたから。ついでに志津香とかなみも誘っといたわよ」

「何故に?」

「修羅場ったら面白いから」

「なんないわよ」

 

 ペシッとロゼの足を蹴飛ばす志津香。部屋の中にはトマトと真知子だけでなく、何故かロゼと志津香とかなみの姿もあった。一度ため息をついてから、再度トマトと真知子に視線を向ける。

 

「わざわざ来てもらって悪かったな。手紙でも良かったのに」

「ちょっとそういう訳にもいきませんでしたので」

「ん……? トマトも護衛お疲れ様。大変だっただろう?」

「いえいえー! 真知子さんには指一本触れさせなかったですかねー!」

 

 真知子の言葉が気には掛かったものの、先にトマトを労う。自分の身を守ればいい戦いと違い、誰かを守りながら戦うというのは想像以上に大変な事を知っているからだ。トマトはこれまで守られる立場である事が多かった。そんな彼女が誰かを護衛する立場になる。冒険者を目指していた頃、ただのアイテム屋でしかなかった彼女を知っているルークとすれば、そんな成長が少し嬉しくもある。

 

「押し寄せるモンスターをちぎっては投げ、ちぎっては投げ……」

「そうなの?」

「ふふ。道中は基本的に安全な道を通ってきましたから、それ程モンスターとは出会いませんでしたよ」

「あー、真知子さん! ばらしちゃ駄目ですかねー!」

「あはは!」

 

 志津香の問いかけに笑いながら答える真知子。トマトが慌ててその口を塞ぐが、時既に遅し。かなみの笑いを皮切りに、部屋にドッと笑い声が響く。懐かしい雰囲気だ。

 

「でも、モンスターに指一本触れさせなかったというのは事実です。感謝しています」

「偉いぞ、トマト。本当に強くなったな」

「そ、それ程でもないですかねー」

 

 照れ照れのトマト。相変わらず表情が豊かだ。だが、いつまでも再会を懐かしんでいる訳にもいかない。真知子は用事があってここまでやって来たのだから。ルークがそう言い出すよりも先に、真知子の方から話を切りだしてくれた。

 

「ルークさん。用件は三つあります……と、その前にもう一つ。こちらはもうご存知ですか?」

 

 志津香の顔を一度見てから、真知子は持っていた道具袋からファイルを取り出す。その中に入っていたのは、ゼス美少女コンテストの小冊子だ。志津香の表情が変わる。

 

「それは……」

「……既にご存知だったみたいですね。ごめんなさい、情報が遅れてしまって」

「いや、俺がその情報を得られたのは本当にたまたまだ」

 

 志津香の表情の変化を見て既に情報を得ていた事に気付いた真知子は深く詫びるが、ルークがこの情報を得られたのは本当にただの偶然だ。コンテストの参加者であるコルミックと偶然再会しその冊子を見せて貰っていなければ、先に志津香に情報を回していたのは真知子であっただろう。

 

「今、由真さんにも連絡して裏を取っていますが……」

「多分必要ないわ。ほぼ間違いないもの……」

「そうなのですか?」

「…………」

「そうね。志津香の言う通りだわ」

「何の話ですか?」

 

 真知子の問いにルークは無言で頷き、ロゼも同意する。ルークと志津香、当事者二人が何かしらの理由で確信をしているのだ。これはほぼ間違いないのだろうと真知子も納得し、静かに頷いた。話についていけていなかったかなみとトマトに真知子は冊子を手渡す。パラパラと冊子をめくっていった二人だったが、あるページでその指が止まる。

 

「アスマさん……!? ラガールって、確か志津香の……」

「ナギ・ス・ラガール? アスマさんって四天王だったんですかねー?」

 

 目を見開くかなみに対し、トマトだけはまだ事態を飲み込めていないようであった。かなみの視線を受け、志津香はありのままの事実を口にした。

 

「ええ。十中八九、ナギは私の両親の仇、チェネザリ・ド・ラガールの娘よ」

「そんなっ……」

 

 絶句するかなみ。かつて死地を共に潜り抜けた仲間が、それも志津香に懐いていたアスマが、両親の仇の娘だったのだ。だが、自分がいつまでも動揺している訳にはいかない。本当につらいのは志津香なのだから。

 

「志津香、それじゃあ私も協力するよ」

「トマトも頑張りますですかねー!」

「ありがとう。でも、いいわ。あの男は……ラガールは必ず私が殺すから……」

「大丈夫なの?」

 

 それは、ロゼの確認。ナギの事は知っていたが、まだ志津香の心持がどれ程のものかをロゼは見ていなかったため、そのような質問をしたのだろう。ロゼのその言葉にはどれ程の意味が込められていたのだろうか。ラガールとの戦力差、ナギと戦うかもしれないという動揺、仇を見つけた志津香の感情。そういったものを全て含んだ上での質問であると感じ取った志津香はハッキリとその目を見ながら答える。

 

「大丈夫、冷静よ」

「…………」

 

 志津香のその答えを聞いたロゼはすぐにルークに視線を向ける。共に復讐を果たすという互いの関係を知っているからだ。

 

「何があっても俺が守るさ。必ずな」

「ふーん……じゃあ、これ以上私が口を出す話でもなさそうね。ただ、機は見極めなさいよ。相手は四天王の親。無理に特攻すればたちまちアウトよ」

「うっ……」

「志津香、特攻しようとしてたでしょ……」

「い、今は冷静よ」

 

 かなみのジト目に耐えられなかったのか、志津香はぷいと横を向いてしまう。確かに、博物館でルークが止めていなければ、今頃特攻していてもおかしくなかっただろう。

 

「それにしても、よくこの情報を手に入れられたな」

「私も偶然ですよ。ゼスについて色々と調べていたら、たまたま引っかかりましたので」

「ゼスについて? 何か調べてたんですか?」

「その話は後程。先に、私が直接この場所を訪れた理由をお話します。それが一つ目の用件です」

 

 かなみが疑問に思うのも当然だが、それは後だと言って道具袋から手紙を取り出す真知子。それは、ルークが真知子に送った手紙であった。ご丁寧に封筒までそのままにしてある。

 

「ルークさん。この手紙、どちらから出しましたか?」

「手紙? この拠点からだな。アイスフレームは協力してくれる民間企業も多くいて、郵便のやり取りも秘密裏に請け負ってくれているんだ」

「……どういった形で経由しているかは判りますか?」

「いや、俺は知らないな。ウルザに聞けば判るかもしれないが……」

「うんにゃ。ウルザも知らなかったわよ。その辺は相手方に任せてるみたい」

「チェック済みなの?」

「まあね。最悪の可能性を考えて……でも、真知子の反応を見るに、当たっちゃったかしら?」

 

 ルークよりも先にチェックしていたロゼに驚く志津香であったが、逆にこういった事はルークよりもロゼの方が慣れている事もあり先に気が付いたのだろう。AL教、特に司教の間ではそういった事は日常茶飯事だからだ。それ、即ち……

 

「この手紙ですが、何者かが先に中を読んだ痕跡がありました」

「……それは本当か?」

「はい。巧妙に痕跡を隠していましたが、間違いありません」

 

 カスタムの町でエレナから封筒を受け取った際、真知子はその僅かな痕跡に気付く事が出来た。情報屋として、そういった知識や経験を事前に持っていたのが幸いしたのだ。

 

「それじゃあ、あの郵便配達員……えっと、等々力さんでしたっけ? あの人が……?」

「断定は出来ないわね。流石にあの娘一人で手紙を全部配達している訳じゃないでしょ。郵便局で一度纏めて、そこから各配達員に渡される。国境を越えるなら、国境警備隊が中を改める可能性だってあるわ。今のゼスはピリピリしてるしね」

「トマトは判ってしまったですよ! 郵便局か、郵便配達員か、国境警備隊! その誰かが犯人ですかねー! おじいちゃんの名に懸けて真実はいつも一つですかー?」

「一つも容疑者が減ってない!」

 

 ロゼの言うように、アイスフレームが利用している郵便局だけを疑うのは早計だ。今のゼスはレジスタンス騒動でいつも以上にピリピリしている。国境警備隊が手紙を開けたという可能性だってあるのだ。

 

「しまった……私に届いた手紙に痕跡があったか、気付かなかったわ……」

 

 志津香が悔しそうに唇を噛む。志津香に出した手紙はこの場所からではなく銀行帰りにギルドから出したものであるため、それに痕跡があったかどうかが判ればある程度の絞り込みにはなった。だが、流石に志津香を責めるのは酷だろう。それ程巧妙に痕跡を消してあったのだから。

 

「とりあえず、ウルザさんには早急に伝えた方が良いですね」

「ウルザさん? 誰ですかねー?」

「ここのリーダーをしている女性です。それじゃあ、この話が終わったらすぐに伝えに……」

「いや……」

 

 それが当然だと思っていたかなみであったが、何故かルークは難しい顔をしている。すぐにはその理由に気付けなかったかなみだが、暫くしてその真意に至る。これでも隠密だ。こういった情報戦はむしろ自身の戦場でもある。

 

「まさかルークさん……ウルザさんを……?」

「可能性はゼロではないな……」

「そうね。外と繋がっている隊員がいないか、ウルザとダニエルが郵便配達員と繋がって逐一チェックしている可能性は十分にある」

「注意喚起をすべきか難しいところね。関わってなければ良し。気分は良くないけど、関わっていてもレジスタンスの長としては十分理解出来る行動な訳だし。でも、もしそれが本当で私たちの事を邪魔だと思われたら、除隊させられるかもしれないわね」

 

 志津香の事を思えば、下手に動くのは得策ではない。ラガールと戦う機会を得るという点では、アイスフレームは決して悪い環境ではないのだから。かといって、もしウルザも知らないのであれば大きな問題だ。こちらの情報が何者かに筒抜けの可能性があるのだから。

 

「(ひとまず、近い内にカオルには伝えておいた方が良いか? いや、カオルが王の命令で手紙を検閲している可能性も十分ある。まずいな、信用できる人間が少なすぎる)」

 

 ウルザとダニエルの事を信用する事は出来ない。先の共同銀行の一件がその思いを更に強くした。かといって、カオルの事を完全に信用できるかと聞かれれば答えは否だ。以前少し話した際にも感じたが、彼女はガンジーの狂信者。ガンジーが命じればその程度の事は簡単に行うだろう。郵便配達員を抱え込むのも、王が関わっているのであれば容易い。カマをかけようにも、何も知らない可能性があるとあってはそれも難しい。

 

「……暫くは様子を見よう。今の段階で犯人を特定するのは難しいし、下手に刺激したくはない」

「そうですね。幸い、こちらが情報を掴んでいる事はまだ気が付かれていないはずです。私が手紙を送っていませんから」

 

 真知子が直接訪ねてきた理由はこれだ。こちらが情報を掴んでいる事を相手に気が付かせず、逆にこの状況を利用して犯人を炙り出す。

 

「それじゃあ、暫くは私がウルザさんを監視しましょうか? ランスの護衛も頼まれているんで、完璧には出来ませんが……」

「……いや、先に調べて欲しい人間がいる」

「先にですか……?」

「アベルトだ。監視を頼めるか?」

「アベルトさんですか?」

 

 思わぬ名前が出てかなみはきょとんとする。志津香もその理由が判らないのか、眉をひそめて訪ねてくる。

 

「ダニエルの息子だから疑ってるの?」

「いや、そうじゃないわね。口ぶりからして、真知子がこの話をする前からアベルトの監視を頼むつもりだったんでしょ。どういう事?」

「セスナがアベルトの事を気にしていてな。なんだか怖いんだと。気のせいだとは思うが、セスナの事は信用しているから少し気になってな」

「怖い? アベルトが?」

「そんな感じはしませんけどね……」

「…………」

 

 やはりルーク同様、志津香とかなみもその意見には賛同出来ないようであった。ただ一人、ロゼだけが口元に手を当てて真剣に考え込んでいる。

 

「(怖い……そうね、少し判るかもしれない……)」

「とりあえず方針は決まりましたかねー! アベルトって人の監視をかなみさんがして、手紙の件はみんな口にチャックです! 顔に出さないようにしなきゃですよー」

「一番危なそうなのはトマトだけどね」

「なんでですかー!?」

「ふふっ」

 

 相変わらずトマトは場の雰囲気を変えてくれる。とにかく、方針も決まった事だしこれで一つ目の用件は終わりだ。続けて二つ目の用件だが、真知子は少し困ったようにしてから口を開いた。

 

「二つ目なんですけど……ごめんなさい、この用件はあまり聞かせられない話でして」

「あら、そうなの? それじゃあ退席してましょうか?」

「ごめんなさい」

 

 頭を下げる真知子であったが、かなみがそれを制止する。

 

「いえ、気にしないでください。そういう話もあるでしょうから」

「それじゃあ、トマトにアイスフレームの中を案内してるわ」

「かなみ、天井裏から覗いちゃだめよ」

「そ、そんな事しません!」

「かなみ、気配で気付くから止めておいた方がいいぞ」

「もう、ルークさんまで……」

 

 頬を膨らませるかなみを見て一同が笑う中、退出しようとする一人の女性に真知子が声を掛けた。

 

「すいません。出来ればロゼさんは残って頂けますか?」

「私?」

 

 

 

-アイスフレーム拠点 広場-

 

「それで、トマトたちはこの後どうするつもりなの? カスタムの町に帰るの?」

「いえいえ、乗り掛かった舟。トマトたちもレジスタンスをお手伝いするですよー!」

「危険……って言って聞くような二人じゃないわね」

「勿論です!」

 

 恋は盲目。二人の気持ちには当然気が付いている志津香は満面の笑みを浮かべるトマトを見て大きくため息をつく。対照的に、かなみは少し嬉しそうだ。

 

「なんだか、今までの冒険を思い出しますね。もう結構長い付き合いですし」

「トマトにもそんな丁寧な口調じゃなくて良いですよー。志津香さんと同じ感じで問題ないですかねー」

「そういうトマトさんも、独特ではありますけど結構丁寧な口調ですよ」

「一応客商売している身ですし、最低限の礼儀は弁えてるですかねー」

「……いや、あんた結構微妙よ」

 

 かつてその接客でランスやルークをどん引かせた経験もあるトマト。どの口が言うのかと志津香が呆れるが、トマトはまるで気にしていない。

 

「それで、どの隊に所属するつもりですか? ルークさんのブラック隊か、ランスのグリーン隊……」

「ブラック隊一択ですよ。何言ってるんですか?」

「い、いきなり真顔にならないでくださいよ!」

「最近こういう芸風も身に付けましたですかねー」

「芸風って……」

 

 この娘はどこを目指しているのかと少し心配になる志津香。すると、広場の向こうにランスの姿が見えた。噂をすれば影。あまり会いたくないのにと悪態をつきそうになった志津香だが、そのランスの横に立つ人物の姿を見て眉をひそめる。

 

「あれは……」

「等々力さんね」

 

 こちらも噂をすれば影。スパイ容疑の話をした直後のため、嫌でも身構えてしまう。等々力は話が終わったのか、ランスに手を振って去って行ってしまった。すると、ランスがこちらに気が付いて近寄ってくる。

 

「お、トマトじゃないか! がはは、判ったぞ。俺様に会いたくてわざわざ来たんだな?」

「違います、止めてください」

「おおぅ……」

「あ、ランスさんにも効いたですかねー」

「いや、それはもう良いですから」

「判ってるです。乱発は芸の賞味期限を減らすですかねー」

「全然判ってない!」

 

 まさかの反応にランスも驚くが、とりあえずトマトは放っておいて志津香が口を開く。

 

「ねえ、今何の話をしてたの?」

「ん? 俺様の活躍を話していただけだ。ブルー隊を華麗に救い出し、機密のマナバッテリーを見事探し出した武勇伝をな」

「なに言っちゃいけない事を簡単に喋ってるのよ!」

「ふん、何も問題ない。あいつはただの郵便配達員だからな、がはは!」

「(そうじゃないかもしれないっていうのに……)」

 

 志津香の怒声に気にした様子も見せないランス。もし等々力亮子がスパイなのだとしたら、少しまずい事になった。これは後でルークに知らせる必要がある。

 

「そんな事より、お前ら今からでも遅くないから俺様の隊に来い。勿論、トマトもな。いや、そうだな。ブラック隊を解散して全員来てもいいのだぞ。俺様は寛容だからな、がはは!」

「(とりあえず今は、さっさとランスから逃げるのが先か。はー、面倒臭い)」

 

 苦労人ポジションはかなみだけで十分。自分は出来るだけ傍観者の立場でいたいのだ。

 

「ねぇ、何か今酷い事考えなかった?」

「……別に」

 

 ぷい、とばつが悪そうにかなみから顔を背ける志津香であった。

 

 

 

-アイスフレーム拠点 ルークの部屋-

 

「ダークランスがいなくなった!?」

 

 皆を退席させ、ロゼだけ残したのはこういう理由だ。真知子の二つ目の用件、それはダークランスについての事。

 

「はい。ここに来る前、ルークさんの家にも寄ったんです。勿論、トマトさんは理由を付けてカスタムの町で待っていて貰いましたけど」

 

 ルークの現状説明や、暫く自分も家に寄れなくなる事を説明しにいった真知子であったが、フェリスから思わぬ事を聞かされていた。それは、ダークランスの失踪。ルークから手紙が届いた翌日、忽然と姿を消していたらしい。

 

「フェリスさん曰く、恐らく手紙を読んでしまったのではないかと……」

「何が書いてあったの?」

「レジスタンスの手伝いをするから、暫くは帰れないって事だ。それと、ランスと一緒にいる事も書いた」

「成程ね……今までルークが傍にいたから上手く感情を抑え込ませていたけど、手紙を読んでその抑え込んでいた感情が爆発したのね」

 

 ダークランスが暴走しないよう、日々その手綱を握っていたルーク。そのルークがいなくなれば、この展開は十分に考えられた。

 

「フェリスさんは、手紙の管理が甘かったと相当落ち込んでいました。戻ったらフォローしてあげてください」

「ああ、判った。俺も軽率だったな。ダークランスが読む可能性を考えるべきだった……」

 

 フェリスのせいだけではない。ルークは自身の脇の甘さを悔やむ。だが、いつまでも後悔だけしている訳にはいかない。今後の事が一番重要なのだから。

 

「ロゼ。前にも聞いた事だが、もう一度確認していいか? ダークランスが天使に見つかる可能性は……」

「フェリスに比べたらかなり低いわ。ハーフだから、天使の検知に引っ掛かり難いみたい。ダ・ゲイルに確認取ったから間違いなし」

「心配ですよね……」

「ああ、当然だ」

 

 ダークランスの事を心配しているのが目に見えて判り、真知子も心配そうにしている。見つかる可能性が低いとはいえ、決してゼロではない。それに、真名の事もある。以前にも話題に出たが、まだ誰の使い魔にもなっていないダークランスはその名が知られれば使い魔契約を結ばれ、その者の意のままに操られる可能性だってあるのだ。

 

「早く見つけ出して叱りつけてやらないと……」

「フェリスさんから伝言を預かっています。思いっきり拳骨かましてやれ、ですって」

「ああ、了解した」

「(すっかり親子ね……)」

 

 状況が状況なら茶化していただろうが、流石に空気は読むロゼ。

 

「目的は間違いなくランスだな」

「って事は、ここにダークランスが来るって事? 修羅場どころの騒ぎじゃないわよ?」

 

 この場所にはランスもシィルもマリアもかなみもいる。かなみにばれるという事は、リアにもばれるという事だ。それは洒落にならない。だが、真知子は首を横に振った。

 

「いえ、その可能性は低いです。ダークランスくんではこの場所は見つけ出せません。流石にレジスタンスの本部なだけあって、その情報は完璧に近いレベルで秘匿されていますから」

 

 それもそうだ。生まれてから数年の子供に簡単に見つけられるようなアジトであれば、とっくにゼス軍に潰されている。

 

「それにしても、本当に良くこの場所を見つける事が出来たな」

「手紙の消印から、大体の場所は絞り込めましたから。情報が何もない状態からでは難しかったですよ」

「それでも、国ですら見つけられてないこの場所を見つけたのは凄いでしょ」

「いえ……これは個人的な予想なのですが、この場所に気付いている人もゼス軍にはいると思います」

「どういう事?」

 

 真知子の思わぬ予想に首を傾げるロゼ。

 

「少なくとも、四天王の山田千鶴子氏は知っていてもおかしくありません。情報戦において、悔しいですが彼女は私よりも遥かに上です。そんな彼女が、私ですら見つけられたこの場所を未だに探し出せていないというのは疑問が残ります」

「……そうだな、二人になら話してもいいか」

 

 真知子の予想を無言で聞いていたルークだったが、何かを決断したのか静かに口を開いた。眉をひそめるロゼ。

 

「ん? 何をよ」

「真知子はまだ会っていないが、このレジスタンスにはカオルという女性がいる。ランスの部隊に所属しているんだが、彼女はガンジー王の側近だ」

「はぁ!? 王の側近!? かなみと同じって訳?」

「潜入工作ですか……?」

「そんな感じだ。だが、アイスフレームを崩壊させようとしている訳ではなく、どちらかというと期待しているみたいだ。それで、ガンジー王の命令で潜入しているらしい」

「何でそんな事知ってるのよ?」

「以前にガンジー王と会った事があるんだが、その時に彼女とも会っていてな。素性がばれていたから、隠すのは無理だと思ってあちらから話してきた」

「相変わらずの顔の広さね……成程、山田千鶴子はガチガチのガンジー派。そうであれば、アイスフレームの情報を掴んでいるのに何もしないのにも合点がいくわ」

 

 勿論、彼女が本当にアイスフレームの情報を掴んでいるかは判らないし、ガンジー王やカオルと繋がっているかも微妙である。あの王の事だ、千鶴子にも内緒で動いていても不思議ではない。だが、以前に千鶴子とも会った事があるルークが思うに、彼女は自分で物事を考えて動ける人間であり、同時に今の国を憂いている人物の一人だ。ガンジー王とは関係なく、アイスフレームの動向に期待して見逃していてくれている可能性もある。

 

「ですが、そうなると先の郵便物の件はますます難しくなりましたね。千鶴子氏がこの場所を知っているのであれば、どこかのタイミングで手紙の中身を確認する事は不可能ではありません」

「あー、もう、訳判んないわ。手紙の事は一旦忘れましょう。容疑者多すぎて名探偵の孫でも匙投げるわ」

「そうだな」

「ですね」

 

 ロゼの提案に頷く二人。下手にそちらに頭を使うより、切り替えて動いた方が良さそうだと判断したのだ。

 

「そうなると、ダークランスとはどこで再会するか判らないって事か」

「アイスフレームに所属しているのは知っていますし、その噂を集めてアイスフレームが現れそうな場所にやって来る可能性が高いですけど、現状では予想出来ませんね」

「せめてブラック隊の方に来てくれる事を祈りましょう。これも、これ以上はどうしようも出来ないわ」

 

 今すぐにでも保護したいが、こちらもこれ以上どうする事も出来ない。ひとまずあちらの動きを待つしかないのが現状だ。

 

「以上が二つ目の用件です」

「ありがとう。知らせてくれて本当に助かった」

「いえ……早く見つかると良いですね」

「ああ……」

「それで、もう一つあるのよね」

 

 そう、真知子の用件は三つのはず。最初の志津香のはイレギュラーのため、もう一つあるはずなのだ。ロゼに促され、真知子は話を続ける。

 

「ある意味、これが本題です。ルークさんに頼まれていた件ですから」

「判ったのか……?」

「はい……」

 

 ルークも三つ目の用件は予想していた。彼女がここに来たという事は、頼んでいた情報収集を済ませたからだと思っていたからだ。そして、真知子は重い口を開いていった。

 

 

 

-ゼス 女の子刑務所-

 

 女の子刑務所。ゼスの北西にある女囚を専門とした刑務所であり、比較的軽犯罪の囚人が捕らえられている。所長もゼス国内では比較的二級市民にも理解のある、というよりも法に携わる者として平等の意識が強い人物であり、二級市民だからといって不当な扱いをしない人物で名が売れていた。そのため、この刑務所は二級市民の囚人たちの間では、入るならばあそこに入りたいと評判の刑務所であった。そう、少し前までは。

 

「おら、ここがお前の独房だ。入れ!」

「へいへい。判りましたよ」

「それと、これが今日の夕飯だ」

「何だよ、牢屋の中で食うのかよ」

 

 十数人の女囚が詰め込まれた牢屋の中にまた一人新たな女囚が入って来る。連れてきた所員への反応を見るに、中々肝の据わった囚人のようだ。それが気に入ったのか、この牢屋のリーダー格である女が早速話しかけてくる。

 

「おやおや、元気なのが来たね。牢獄は初めてかい?」

「いや、少し前まで鈴宮刑務所ってとこに入ってた」

「軽犯罪者専用の刑務所。ゼスじゃ一番良いとこじゃないか。何でここに来たんだい?」

「いやー、何かエロイ目してた所員殴っちまってさ。素行不良って事で飛ばされちまったよ」

 

 渡された飯の配膳を床に置いてからやれやれと肩を竦める女だったが、それはどう考えても自分が悪い。というか、よくもまあそれだけ軽い処罰で済んだものだ。何かコネでもあるのだろうかと勘繰った女囚は、ある可能性を思いついてそれを問う。

 

「もしかして、あんた貴族かい? あるいは魔法使いとか……」

「まさか」

「しかし、あんたもついてないね……」

 

 奥にいた女囚も話に入って来る。ついてないとはどういう事だろうか。この女の子刑務所の噂を知っていた新しい女囚は首を傾げる。

 

「どういう事だい? この刑務所は評判良いんだろ?」

「少し前まではね。今は所長が変わって、そりゃ酷いもんさ。あれ、見えるかい」

 

 その女囚が指差す方向にあるのは、何やら備え付けの装置。その先には矢が置かれている。あれは恐らく、矢の発射台だ。随分と高い位置に置かれている。

 

「弓矢? 何でこんな場所に……」

「目は良いみたいだね。あれは新所長が置いたもんさ。あれで私達をなぶり殺しにして楽しんでいるんだよ」

「なんだって?」

「毎日二回。決められた時間に所員があの弓で私たちを撃ってくるのさ。何人に当たるか、そいつは生き残るか。そんな風に賭けをして楽しんでるんだよ」

「反吐が出るね」

 

 弓矢を睨み付けながらそう吐き捨てる新女囚。恐怖よりも先にそう言えるのなら大したタマだと、牢屋のリーダー格は更にその女囚を気に入る。そして、すぐ傍で静かに座っていた女囚に悲しげな視線を向けた。

 

「こいつを見ろよ。外では結構な事をしでかしちまったみたいだけど、この中じゃ一番の模範囚さ。囚人の中にも、こいつを嫌いな奴はいない。いずれ綺麗な体で出られるだろうって思っていたんだけどさ……」

 

 見れば、その女囚はところどころ傷ついている。あの矢によるものだろう。牢屋の中で怪我をしても、まともな治療など受けられはしない。痛々しい傷跡がそのまま残ってしまっている。

 

「元々、こいつはそんな動ける奴じゃないんだ。このままじゃいずれ急所を撃たれて死んじまう……」

「ちくしょう……新所長め……」

「皆さん、私はもう大丈夫ですから」

「アニー……」

 

 傷だらけの女囚が口を開く。どうやらアニーという名前らしい。

 

「私は外で決して許されない事をしました。これはそんな私への報いです。だから、これ以上私を庇って傷つかないでください」

「…………」

 

 アニーの言葉を聞いて新しい女囚が確認をすると、確かにこの牢屋の中にいる女囚たちはほぼ全員がところどころ傷ついていた。あのリーダー格の女囚もだ。

 

「あんたら……」

「やばい、そろそろ時間だ!」

 

 一人の女囚がそう言うと、全員に緊張が走る。そして、牢屋を狙いやすいよう高い位置に置かれた弓矢の装置が動き出した。見れば、先程まではいなかった職員が数名その場所に立っている。あいつらがこの趣味の悪いショーの当事者だ。

 

「ぎゃぁぁぁ!」

「上の階の奴が撃たれたみたいだね……そろそろこっちにも来るよ」

 

 牢屋はいくつもあり、奴らは順々に撃ってくるようだ。リーダー格の言ったように、弓矢の装置がゆっくりとこちらに向く。下卑た笑みを浮かべた職員も同時に見て取れた。そして、その矢の先にいるのは座り込んでいるアニー。

 

「アニー! 狙われてるよ!」

「っ……」

「なあ、避けるのは禁止されてないんだろ? それじゃあ、防ぐのはどうなんだい?」

「こんな時に何を……別に禁止されちゃいないよ! 別の牢屋には、どんな矢もその鋼の肉体で弾き返すタカって女囚もいるんだ。あいつらはそういった抵抗をむしろ喜ぶ。難易度の高い女囚は賭け金が上がるってんで、逆に貴重なんだ」

「へぇ……それじゃあ、ついてないあたしと違って、あんた等はついてるよ……」

 

 瞬間、装置から矢が発射された。アニーの脳天に真っ直ぐと進んでいく。

 

「アニー!」

「っ!?」

 

 死を覚悟して目を瞑ったアニーであったが、直後大きな金属音が鳴り響く。目を開けると、そこに立っていたのは新しい女囚。手には夕飯を乗せていたお盆を持っており、足元には矢が転がっていた。そんな中、一部始終を見ていたリーダー格の女囚が驚いたように声を漏らす。

 

「は、叩き落とした……」

「あたしがいる限り、あんた等が死ぬことはないからね」

 

 そう、この女囚は放たれた矢を手に持ったお盆で叩き落としたのだ。驚いている他の女囚たちをよそに、再度矢が放たれる。だが、その女囚は再びお盆でその矢を叩き落として見せた。偶然ではない。この女囚には矢がしっかりと見えているのだ。

 

「嘘だろ……」

「多分、ギリギリ避けられるか避けられないかってスピードに設定してあるんだろうね。こんな遅い矢、1000回撃たれても当たる気がしないね」

「あんた……一体……」

 

 呆然とする女囚たちを見回しながら、新しい女囚が自身の名を口にする。

 

「レジスタンス、シャイラ・レス。まあ、ドジ踏んで捕まっちまった身だけどな」

 

 

 

-アイスフレーム拠点 ブラック隊詰所-

 

「シャイラが女の子刑務所に!?」

「ああ、確かな情報だ」

 

 ブラック隊の面々が驚き、声を上げる。シャイラは行方不明だった元アイスフレームのエース格。生存は絶望的だと誰しもが思っていたが、その彼女が生きていたのだ。特に反応が顕著なのは、その彼女と相棒として渡り歩いてきたネイだ。

 

「本当に……シャイラ……生きて……」

「ネイさん……」

「…………」

 

 溢れだしそうな涙を堪え、パンと自身の頬を叩いた後ルークに向き直る。

 

「ごめん、泣くのは後にする。すぐにシャイラを助け出そう!」

「ああ、勿論だ」

「何だ、丁度良いな」

 

 すると、詰所の入口からランスの声が響いた。見れば、ランスとシィルとカオルの三人がそこに立っている。丁度良いとは一体どういう事か。

 

「どういう事だ?」

「うむ。俺様の次の任務先も女の子刑務所なのだ」

「本当なの!?」

「はい。無実の罪で投獄されている小説家のレッドアンさんを助けに行く任務です」

 

 身を乗り出すネイを見ながら、カオルがコクリと頷く。

 

「という訳で、シャイラは俺様が助け出してくる。まあ、大船に乗ったつもりで待ってろ」

「待って! 私も行きたい!」

「カオル。その任務、俺たちブラック隊も同行する事は可能か?」

「潜入任務なのであまり大人数は無理ですが、ウルザ様は認めてくれると思います。シャイラさんはアイスフレームの功労者ですし、死なせたくないと思っているはずです」

 

 グリーン隊には小説家の救出という任務がある以上、他の任務を加えるのであれば増員は当然の事。それも、ずっと行方不明だった元エースのシャイラの救出なのだ。ウルザは当然認めてくれるだろう。

 

「決まりだな。ランス、イタリアと同じように共同作戦で行くぞ」

「ちっ、俺様一人でも十分なんだが、まあいいか。おい、ネイ。足を引っ張るなよ」

「……ええ、気を付けるわ」

 

 いつもならランスに悪態でもついていそうだが、自身の気が逸っている事に気が付いたのか、素直に忠告を受け入れるネイ。いや、気合いが入っているのはネイだけじゃない。他の隊員たちも仲間の救出に自然と気合いが入る。

 

「次の目的地は女の子刑務所だ! 油断するなよ」

 

 ルークの声にしかと頷く一同。シャイラ救出作戦が始まる。だが、そこに向かっているのはルークたちだけではない。

 

 

 

-某所-

 

「おいおい、捕まったってマジか。って、こんな時にポンパドールは?」

「別任務中で、現場で合流さ。やれやれ、これだから女は困ったものだね」

「そう言うな。彼女たちは優秀な人材であり、共に理想を目指す我々の同士だ」

「て、提督の言う通り……」

 

 とある地下施設。そこに集うは、魔法使いを憎む多くのレジスタンス。身に纏うマントを翻し、高潔なる理想を掲げる狂信者組織。

 

「さあ、行くぞ。同士エリザベスを救い出すべく、女の子刑務所へ!」

「はっ!」

 

 その組織の名は、ペンタゴン。

 

 

 

-ゼス 治安隊本部-

 

「キューティ隊長。先方から許可が下りました」

「ありがとう」

 

 部下からの報告を聞き、礼を言うキューティ。ようやく許可が下りた。新所長になってからやりにくいが、これで警備に向かう事が出来る。

 

「ミスリー、準備は?」

「既に完了しています」

 

 ルークがこれから来る場所は判らない。だが、あの場所に来る可能性は決して低くないはずだ。あの場所には、シャイラ・レスが投獄されている。

 

「それじゃあ向かうわよ、女の子刑務所に!」

 

 

 

-ゼス ナガールモール付近の森-

 

「(……あの治安隊長の読みは悪くない。ルーク・グラントは女の子刑務所にやって来る可能性は十分にある。ラガール様に報告した上で、駄目元で僕も張り込んでおくか)」

 

 こうして、女の子刑務所に役者が揃う。

 

 

 

-マジノライン-

 

 そして、女の子刑務所とは無関係だが、もう一つ大きな動きがある。

 

「走りぬーけーろよ、ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃん! きーりーさーきーくん!」

「あ、郵便屋の姉ちゃん。そっちは魔物の世界だから危ないぞ!」

 

 マジノライン付近で全力疾走しているのは、郵便配達員の等々力亮子。その駆けていく方向は、あろうことか魔人界。それに気づいたマジノラインの兵士が見かねて声を掛けるが、亮子はそれに気付いていないのかスピードを落とさず、そのまま見えなくなってしまった。

 

「あーあ、大丈夫かね……」

 

 心配するマジノライン兵をよそに、かなり遠くまで走ってから亮子は一度振り返った。あちらからはもう遠すぎて見えてないだろうが、亮子にはまだあの男の姿が見えている。

 

「じゃあ、そろそろ本気パワー! はあっ!!」

 

 一度屈伸をした後、グッと膝に力を入れた亮子はそのまま大きくジャンプをする。それは、人間では有り得ない高さの跳躍。人間界と魔人界を隔てるマジノラインという壁を易々飛び越えた亮子は、そのまま超人的なスピードで駆けていく。あっという間にマジノラインの罠地帯を越え、更に森を駆けていく。

 

「したっ!」

 

 そして、森の奥深くまで来たところでその足を止めた。すると、木の陰からヌッと姿を現す黄色い影。

 

「ご苦労様です」

「ジーク様ー!」

 

 目の中にハートマークを作って駆けていく亮子。その先に立つのは、ジークと呼ばれた黄色い姿の化物。彼はケイブリス派に所属する人類の敵、魔人ジークだ。すると、駆け寄る途中で何かに気が付いた亮子はそのまま立ち止まる。

 

「あ、このままじゃいけませんね。へーんしんっ!!」

 

 そう叫んだかと思うと、亮子の姿がすぐさま変化する。いや、少し違うか。変わったのは服装だけであり、顔や体系、声や髪色など特徴的なところは何も変わっていない。

 

「えへへ、これでどこから見ても等々力亮子だとは判りませんね」

「え……」

「へ?」

 

 思わず互いに見合うジークと亮子。いや、等々力亮子などという人間は実際には存在しない。それはこの女、ジークの使徒であるオーロラが化けた姿でしかないのだ。

 

「オーロラ、落ち着いて聞きなさい。お前のは変身ではなく変装だ」

「えー、そんな事ないですよー。どこからどう見ても完璧な変身ですって。実際、全然ばれませんし」

「まあ、お前がそれで良いのなら良いですが……」

 

 何故こんな見え見えの変装に誰も気が付かないのか不思議でならないジーク。実は人間には絶対に気付かれないような変装だったりするのだろうか。魔人であるジークには判らない。

 

「それで、何か良い情報を得る事は出来ましたか?」

「はい! ジーク様、お耳を。マナバッテリーという物はご存知ですか?」

「いえ……ですが、言葉から考えるに、人間の魔力が関わっているものだというのは判ります」

「さっすがジーク様! その通りです。このマナバッテリーというものでマジノラインに魔力を供給しているみたいなんです」

「ほう」

「つまり、これを壊せばマジノラインは稼働停止。我が魔軍は侵入し放題なんですよー!!」

 

 これは想像以上に大きな情報だ。部下を信じてはいたが、これ程早く最も重要な情報を持ってくるとは流石に思っていなかった。

 

「オーロラ、それはどこにあるのか判りますか?」

「すいません、ジーク様。そこまではまだ……」

「いえ、気にする事はありませんよ。十分すぎる情報です。人間を利用して更なる情報を集める事は出来ますね?」

「はい、勿論です! それでは、不肖オーロラ。マナバッテリーの場所を……」

「クカカカカ……」

 

 それは、この幸せな時間をぶち壊す最悪の笑い声。明らかに不機嫌な顔で、ジークとは反対側の木の陰から出てきた使徒を睨み付けるオーロラ。

 

「何の用です?」

「ククク……成程、そういう事か。数百年も前の技術から未だに進歩がないとは、実に愚かだな……いや、あの男がそれだけ傑物だったという事か……何せ、この私を引き入れた程なのだからな……奴も間違いなく狂人だ……」

「一体何を……」

 

 訳の判らない事をのたまいながら不気味に笑う機械人形の使徒。思わずオーロラが声を荒げそうになるが、それを阻むようにその使徒は言葉を放つ。

 

「闘神都市だ」

「は?」

「ゼスにはいくつか落ちていたはずだ。その場所を探せ。そこにマナバッテリーはある」

 

 マナバッテリーを知る者は、ここにもいる。

 

 




[人物]
トマト・ピューレ (6)
LV 29/47
技能 剣戦闘LV0 幸運LV1
 カスタムの町のアイテム屋。真知子の護衛として共にアイスフレームを訪れ、そのままブラック隊に所属する事になる。カスタム勢のムードメーカーであり、戦闘力もかなりのもの。また、とっておきの隠し玉もあるらしい。近々お披露目の予定とか何とか。

芳川真知子 (6)
LV 5/15
技能 戦術LV1
 カスタムの町の情報屋。ルークから頼まれていたシャイラの所在を掴むだけでなく、手紙やダークランスの事も引っさげてアイスフレームを訪問。そのままブラック隊所属となる。インドア派に見えて、行動力はかなりのもの。因みに、手紙の異変に気が付く描写は163話のラストにちゃんとあります。
 ※才能限界、技能は連載開始当時のオリ設定であり、現在の公式設定とは差異が出てしまっております。いずれ現在の設定に修正予定ですが、今までの話の中で修正しなければいけない箇所がいくつかあるため、一旦修正は先送りにし、これまでの設定をそのまま使っております。真知子に限らず、他にもこういったキャラは複数存在しております。ご了承ください。

シャイラ・レス (6)
LV 12/35
技能 剣戦闘LV1 シーフLV1
 アイスフレーム戦闘員。先の任務失敗で捕縛され、現在は刑務所に投獄されている。軽犯罪者用の刑務所に入れられていた理由は次回説明予定。投獄生活の中では鍛える事もままならず、現在レベルはかなり下がってしまった。

あてな2号 (6)
LV 1/1
技能 弓戦闘LV1 ラーニングLV1
 フロストバインと真知子が協力して生み出した人工生命体。6章の出番は多分これだけ。

朝狗羅由真 (6)
 リーザスの情報屋。真知子と共同で色々と情報収集しているのだが、中々出番には恵まれない。

アニー (6)
 ジウの元町長。砂漠のガーディアン事件を起こし、投獄されていた。本人は深く反省し、また町の人たちからの嘆願やキューティの計らいもあって、軽犯罪者用の刑務所に入れられている。

オーロラ (6)
LV 22/38
技能 変身LV0
 女の子モンスターのライカンスロープ出身であるジークの使徒。ジークの命令で人間界に単身潜入し、マジノラインの情報を探っている。かなり危険な任務であるが、その何故かばれない変装能力を駆使し、見事なまでの成果を上げている。

等々力亮子
LV 22/38
技能 変身LV0
 謎の郵便配達員。一体何者なんだ……


[その他]
鈴宮刑務所 (ゲスト施設)
 ゼス国内で最も軽犯罪者向けとされている刑務所。比較的待遇は良いが、最近は現所長が病気気味で少し不安視されている。名前はアリスソフト作品の「鈴宮刑務娼館」より。

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