科学で魔法を始めよう 作:ロイ
キュルケとタバサの結婚式、それに伴い、ロイは自分達の撤退を始める。その為の準備は多い。女王の実権の移動、演出の準備、マリアの演技の練習などなど。
風石無力化の技術がゲルマニアの物だと言うのは既に全ハルケギニアが知っている。各国の行動を照らし合わせればそれが分かるだろうし、ロイも宣伝を怠った事は無い。ならばそれを全部女王個人の力で成し遂げた事にする。
現在、女王は力の使い過ぎで倒れたと言う事になっている。実際ではネオ・オーブでプロから演技の指導を受けてる最中だ。演技力の底上げが無理だが、ワンシーンに限れば何とかなる。今度は適当に威厳を示すだけでは駄目なのでみっちり鍛えてる。
演出用の装置と衣装はロイ自らが作成する。演出効果を十分に考えられるのはロイしかいない。さらに開放式の専用のチャペルも建設する。だが、ブリミル教にくれてやる理由はない。
その間にもトリステイン取り込みは順調で、これ以上関連書類が増える前に地名を変えたいところだ。国民から意見を募るのも悪く無いが早く変えたい。なので適当にギナに任せようとしたら「カトレア」なんて意見が出てきたので速攻で却下した。たまにお見舞いに行くのでギナはまだ諦めていないようだ。しかし、別れが直ぐそこまで来ているので、これはこれで哀れである。
なお、最終的にトリステインの新地名は「オロファト」。ネオ・オーブの影響を刻みつけるためにこの名前を残す。「オロファト」はオーブ首都の名前である。ちなみにネオ・オーブの首都は「ニューオロファト」です。
三ヵ月後。結婚式は盛大に行われる。最大国の宰相、王族と関係が最も深い貴族の結婚式としては相応しい。
さて、演出準備完了、化粧OK、ボソンジャンプシステム異常なし、結婚式が始まる。
その日、集まった観客は30万人に達する。当然、全員が式場を見れるわけではなく、式の前のパレードを見る人を含めて30万人だ。式場を見れるのは一握りだけである。
ここで倫理観の問題が出てくるが、祭りが楽しいのでそれはすっかり放って置かれる。
チャペルで祝詞を読み上げるのは女王マリア自身。今日の彼女は儚さをイメージして化粧をしている。実際、今にでも倒れそうな程であるが、病的な雰囲気はない。ロイが設計した衣装と相まって神聖な雰囲気を醸し出している。
全ての過程が終わり、当事者二人が退場する時、マリアは語りだす。ロイ達のとってはこれからが本番だ。
「6000年も人々を苦しめ、ブリミルさえ解決できなかった大隆起。その脅威が無くなった事を嬉しく思います」
憶測や捏造が含まれます。
「脅威から解き放たれたハルケギニアは繁栄を極めるでしょう」
「本当に…嬉しく思います…」
ここでちょっと涙を流す。周りは静かに聞いている。
「しかし、私は力を使い過ぎました。帰らねばなりません」
どこに帰るかはあえて言わない。ざわめきがあちこちと聞こえるが隠したスピーカーのボリュームを違和感を感じさせない程度に少し上げる。
そしてマリアの背中から神々しい六対の翼が現れる。勿論ただの立体映像ですが。
「お前達への祝福です」
そう言ってキュルケ達へ微笑む。そしてマリアが眩しい光を発し、収まる頃には両腕に赤ん坊が二人居た。赤い髪の子と青い髪の子の二人だ。
よく見ると所々タバサやキュルケの面影があるではないか。
タバサとキュルケは大事に赤子を抱える。
「お前達の子です、大事にしなさい」
余談だが、身体能力はガンダムファイターを目指し、頭脳は学園都市一位に向けてコーディネートしたので将来はとんでも無い化物になります。
そんな事を知らずに二人は感動して涙を流している。
「さて、ゲルマニアはお前達に託します。私は何時も見守ってますよ」
そして光を纏、天に消えていった。
辺りには静粛のみが残る。
ええ、聖人に祀り上げるパターンですよ。
その後の混乱は準備していただけあっていち早く収まった。
女王マリアを崇めるマリア教の設立。政教分離、上院と下院の設立。やることはいくらでもある。
王は居なくなったが、王の役職は寧ろそのまま象徴にする。実権は中央を抑える宰相、貴族議院たる上院、平民議院たる下院で分ける。選挙なんてのは無理なので、下院は各業界を纏め、そこから代表を出してもらう。
これは只の切欠だ。ロイ達が離れる時には蒸気エンジンをプレンゼントするつもりなのでゲルマニアの進み方はキュルケ次第である。
唯一の心配事は子供の教育に失敗して暗黒帝国に変身する事だが、あの二人なら大丈夫だろうとロイは考えてる、子育ての本も十分すぎるくらい残したし。
SIDE ロイ
一神教の壊滅は宗教戦争を呼ぶ可能性を創りだすが、それは今後の人次第だ。それにエルフと仲良くするのもマリア教の一大特点だ。自然を崇めろとも書いておいたが、変に生贄でも捧げるのは問題だからそこら辺は注意しないと。
それをどうやるかはキュルケが握る。まあ、問題ないだろう。それにキュルケにはゲルマニアの名を与えた。名目上ではツェルプスト−との縁は切れている。適当に自重すれば不満は出ないはずだ。
さて、残るはトリステインの捕虜処分、各重役の後継者選抜、新体制の安定。やることは全然減ってないな。
SIDE OUT
ネオ・オーブがその世界から消えたのはそれから一年後である。