岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】 作:雷鳥
レイナーレを連れて帰ったら凄い騒ぎになった。
「白ちゃんが痴女を連れて帰って来た! そういう趣味だったの?」
「そうか白野はそっち系なのか。お父さんとは逆のベクトルだが、応援するよ」
なんてヒドイ。なぜ家の両親は恋愛面でこうも残念なのか。
気が引けるが本当の事を言う訳にもいかないので、黒歌の妖怪仲間で怪我しているから連れ帰ったと言ってなんとか納得してもらった。
レイナーレをベッドに寝かせ、念のためにビニール紐で手と足を縛る事にした。その際に黒歌が悪戯っ子の様な悪い笑みを浮かべ、彼女の両手足を一纏めにして結ぶ。なんかドーナツみたいな円の形が面白かったので、携帯で写真に収めた。その様子を見て黒歌が爆笑していた。
暴れたらこれをリアス先輩経由で悪魔と堕天使の世界に拡散して貰おう。
「さて次は一誠か」
電話を掛けてしばらくすると一誠が電話に出たが、声に心なしか元気がなかった。
『で、どうしたんだ白野? 夜中に電話だなんて』
「いや、嫌な予感がしたからとりあえず電話してみたんだが……どうかしたのか一誠?」
『あ~うん……なぁ白野。もしも、もしもさ。自分を助けてくれた恩人と、自分が助けたいと思った相手、どちらかしか救えないとしたら……お前ならどうする?』
……本当に何があったんだ?
思い詰めたような声色で質問する一誠が心配になると同時に、この質問こそが今の彼を悩ませる問題なのだろうと理解し、既に自分の中では答えが出ている以上、偽り無く答えた。
「自分なら、今しか救えない方を救う。その後のことはその時に考える」
自分の即答に、一誠の息を呑む声が聞こえた。それからしばらく無言が続くと、一誠は小さな声で『そうだよな』と呟いた。
『そうだよな。部長には沢山の仲間が居るけど、アーシアにはきっといない。それにアイツ等と、人を平然と殺せる奴等なんかと一緒にいるなんて間違ってる。決めたぜ。俺はアーシアをあそこから連れ出してやる。あとはなるようになれだ! サンキューな白野。そうと決まったらさっさと寝て身体を治してやる!』
そう言って一誠は電話を切ってしまった。
しまった。結局事情を聞けなかった。
とりあえず明日にでも一誠に事情を聞くことにして携帯を仕舞う。
「一応目覚めた時の為に徹夜で交代して監視しようか」
「了解」
黒歌と今後の行動を話し合い、改めてレイナーレに視線を向ける。
「うふふ。アザゼル様~。シェムハザ様~グフフ」
「……この子想像以上に残念な子ね」
「そうだね」
二人でなんとも言えない表情で良い笑顔で寝言を呟くレイナーレを見下ろす。なんか生前戦ったエリザを思い出す。エリザも残念美少女だったからなぁ。あ、でもエリザはやる時はやる子だったから今のところ向うが上か。
結局レイナーレは朝になっても起きる気配が無かった。
いつものように朝食を摂って部屋に戻ってしばらく経つと、いつもと違って外行きの服を着た母さんがやって来た。もちろんレイナーレの身体は布団で隠して頭だけ出して普通に寝ているように見せているから、彼女がドーナツになっている事に気付く事はないだろう。黒歌の悪戯好きも困ったものだ。
「お友達の様子はどう? 私今日は町内会の主婦のみんなと旅行だから、もう出なくちゃいけないんだけど?」
ああそう言えばそうだった。それに父さんも今日は会社に泊まると言っていた。ふむ。ということは少なくとも二人の安全は確保されたわけか。
「心配だから看病しているよ」
「分かったわ。じゃあ学園には病気って事にしておくわね。白ちゃんファイト!」
「いや何が!?」
なぜか激励して母さんはイイ笑顔で去って行った。完全に誤解されている気がする。
「にゃはは。大丈夫、そんな事は『私が許さない』にゃん♪」
黒歌、語尾に『にゃん』を付けても目が笑ってないよ。目が。
こちらを物凄い鋭い眼差しで見詰める黒歌から目を逸らして溜息を吐きつつ玄関まで母さんを見送る。
さて、とりあえず一度起こすべきか。
部屋に戻ってレイナーレに声を掛けながら身体を揺する。
「おいレイナーレ」
「うぅ……ん? はく……のっ!? っていったあああぁぁぁ!?」
目蓋をゆくりと開けたレイナーレとしばらく見詰め合うと、彼女は昨夜の事を思い出したのか、自分がどういう体勢か気付かないまま身体に力を入れたせいだろう。盛大に悲鳴を上げた。
「ふふふ。御主人様を殺そうとした罰よ」
……何故いつの間にか元の姿になったんですか黒歌さん? そしてなんで全力で威圧してるんですか? こっちまで恐怖で震えるんですが!?
「ひっ!? な、何者よあんた!」
慣れている自分ですらビビっているのだ。直に叩き付けられているレイナーレは顔を青くし身体を震わせていた。縛られた格好のまま。
「黒歌。それじゃあレイナーレが質問に答えられない」
「ぶーぶー。御主人様は甘すぎるわ」
そう言って黒歌は威圧を弱めるが、その目は鋭くレイナーレを見据え続ける。
「はあ。とりあえず……昨日の晩の事は覚えているよな?」
「ええ覚えてるわよ。白野……あなた何者なの?」
レイナーレは青い顔のまま、それでも気丈にこちらを睨みながら質問に答え、そして今度はレイナーレから質問が返される。
「ただの人間」
「嘘付きなさいよ! 普通の人間に、そんな上級悪魔クラスの化物を従えられるはずが無いわ!」
「おお。一応その辺りの目利きはできるのね。ちょっと意外にゃん」
レイナーレの質問に答えるが、彼女は声を荒げながら唯一自由な首を激しく振って否定し、黒歌は感心したように声を上げる。
「あ~まぁほら、お互いの事はこの際脇に置くとして……このままだとレイナーレ、殺されるよ?」
「……あっ」
自分の言葉に一瞬訳が分からないといった感じに呆けるレイナーレだったが、自身の現状を思い出したのか、また顔を青くさせ、落ち着き無く視線を彷徨わせる。
「とりあえずなんで自分を殺そうとしたのかを教えてくれる?」
「……そ、それは」
「さっさと答えないと消し炭にするにゃん」
「わ、私の正体を知っているからよ!」
黒歌が手に炎を出して威嚇すると、レイナーレはすぐに答えた……ちょっとチョロ過ぎないか?
「レイナーレの正体を知っていると何か問題なのか?」
「……私と仲間はこの街である計画を行っていたわ。そして兵藤一誠がその計画に必要な重要人物と接触していたことが下僕の話で分かったのよ。ここまで来て計画を断念なんて出来ない。だから計画に支障が出る前に、あなたを殺して私の情報を隠匿しようとしたのよ」
……ふむ。一応筋は通っているか。
「なるほど。で? その計画の内容は?」
「はぁ? 言えるわけないでしょ!」
「殺すにゃん」
「ううぅぅ……分かったわよ話すわよ!」
無表情でさっきよりも強い炎を出してレイナーレに近付く黒歌。そんな彼女に完全にビビっているレイナーレは涙を浮かべながら計画の内容を話した。
計画の内容を簡潔にまとめると、レイナーレとその仲間は組織に内密に独自に動き、ある人物から神器を取り出してそれを自分自身の物にするつもりだったらしい。なんとも大胆なことだ。
「そんなことができるのか?」
「堕天使は他の陣営に比べて神器の研究が進んでいるのよ。とにかくその人物の神器は破格の能力なのよ。もっとも、抜かれた人間は死んじゃうけど」
……まじか。いや当然か。レイナーレは人間を見下している部分がある。人間の生死なんて、彼女からすればどうでもいい事なのかもしれない。
「……その人物の名は?」
「……アーシア・アルジェントよ」
確か一誠と知り合ったシスターか。そうか、彼女は『はぐれ』なのか。
「レイナーレ、もしその計画を中止するなら……仲間と一緒に見逃してあげてもいい」
「そんな、無理に決まっているじゃないの!」
「じゃあどうする? 一誠と君の下僕がもめた以上、グレモリー家は堕天使がまだ自分達の街にいることに気付いたはずだ。ここに残れば彼らに殺され、逆に一度でも揉めれば独断行動である以上、組織の連中に何かしらの罰を与えられる。でも今ならまだ問題も起きていない。多分逃げる最後のチャンスだと思うよ」
「因みに私はさっさと貴女を殺したいのだけどねぇ」
黒歌の言葉にレイナーレは小さな悲鳴を上げ俯いて口を閉ざしてしまう。正直以外だ。彼女のこれまでの行動を鑑みれば、すぐにでも頷いて逃げると思ったのだが。
「……どうしてそうまでして神器が、力が欲しいんだ? あんな光の槍だって出せるのに」
「……人間のあんたには分からないでしょうね」
そう言ってレイナーレは呆れたように笑って理由を説明しはじめる。
「そもそも私達堕天使は悪魔や天使のように人間の欲望や信仰による恩恵を得られない。完全に持って生まれた才能が優劣を決める世界なのよ。私はその中でも平凡な堕天使。そんな私が強くなるには、あの方々の役に立ち、一目置かれる為には、特殊な神器を奪うしかないのよ」
「……う~ん。レイナーレってさ。努力するのは格好悪いって思うタイプでしょ」
自分の言葉にレイナーレが訝しんだ表情をする。
「悪いけど、レイナーレの悩みなんて人間の世界じゃごく普通の悩みだよ。だから人間は努力するんだよ。諦めないで、それこそ何十年も」
「なっ!? 人間の一生と一緒にしないで! 私なんかが努力したって、あの方々に追いつけるわけ無い。いいえ。よしんば追いつけるとしても一体何千年かかると思っているのよ!」
「え? それの何が問題なの?」
レイナーレの言葉にそう返すと、彼女は固まってしまった。何かおかしな事を言っただろうか?
「だってレイナーレの実力は普通なんだろ? だったら強くなるのに時間がかかるのは当たり前なんだから、それだけの対価を払うのは当然だろう? まぁ、今回のように一気に強くなるために賭けに出るのも有りだとは思うけど……たいてい失敗した時は命を失うのがお決まりだ。で、レイナーレは既に賭けに負けてる」
そう。彼女が自分に破れ、正体がばれ、計画を暴露した時点で完全に詰んでいるのだ。
「さっきの提案は言ってしまえば賭けそのものを放棄する事で命だけは助かるといったものだ。もう一度、生きてやり直すなら、提案を受け入れて欲しい。もしダメなら……その時は悪いけど、自分は一誠とアーシアを優先させてもらう」
そう言って彼女の縄を解くように黒歌に頼むと、黒歌は呆れた表情で溜息を吐きながらも、縄を解いてくれた。
「……どういうつもり?」
「窓を開けておくから、進む道を決めたらそこから出ていきなよ。自分達はリビングで昼寝だ。昨日は徹夜で監視してて眠いからね」
「待ちなさい!」
そう言って部屋を出ようと立ち上がると、レイナーレが強くこちらを制止する。振り返ると彼女は真剣な表情でこちらを睨み、そして――。
「……体が戻らないわ」
――と訴えた。
「……マジで?」
その後三十分近く黒歌と二人でレイナーレの身体を揉み解す事になった。まぁ黒歌はちょいちょい強めに揉んで苛めているだけだったが。やれやれ、相変わらず最後まで締まらない娘だよ、この娘は。
と言うわけで計画が露見したので原作と少しだけ流れが変わります。まぁ具体的には戦う相手が変わるだけですが。
それと堕天使の設定はこの作品オリジナルです。アザゼルが人工神器作っているのも、弱い部下を強くさせる為にっていうのが本当の理由なんじゃないかな~と思ったので。(趣味と実益を兼ねている感じで)
さて、もう少しでバトル回だ。一誠と白野の見せ場まで頑張ろう。