岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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という訳で今回は小猫の過去回です。
正直どうしても原作での過去の小猫の立場に違和感を拭えなかったので。かなりアレンジしました。一応現在の小猫に至るような流れにはしたつもりです。



【小猫の過去】

 合宿三日目。

 

 今日はある程度魔法の基礎を学んだアーシアの強化方針について話し合う。

 

 アーシアには魔法を扱う才能があったようで、初日と二日で体内魔力の操作はある程度可能になったそうだ。因みに自分の魔術は教えていない。むしろみんなの前で披露したら朱乃先輩とリアス先輩に絶対に公の場では使うなと言われた。

 

 なんでも魔法とは土地や種族でその在り方が微妙に違うらしい。

 悪魔にとって魔法とは使えて当たり前の能力だが、人間からすると色々手順が必要なんだそうだ。

 

 まあちゃんとした魔法は師に教わるところから始まると言うからな。

 

 有名な西洋魔術はもちろん、ルーン魔術や錬金魔術だって、最初は必ず誰かに教わるものだ。でないとかならずミスが起きる。それくらい人間にとって魔法や魔術は扱いの難しい技術なんだそうだ。

 

 にもかかわらず。黒歌の協力があったとは言え、前世の魔術、この世界で言えばまだ世に出ていない新しい魔法体系を自分は確立してしまった。

 

 その事実がもしも過激な魔法使い集団にでもバレれば、身柄を拘束されて魔術の情報だけ奪われて殺されることもあるそうだ。

 

 二人の忠告をありがたく受け止め、今後は可能な限り魔術はバレないように使うことを約束した。

 

 おっと、自分のことはいいな。今はアーシアだ。

 

 思考がずれ始めたので話題を戻す。

 

「さて、自分が提案するのはアーシアの神器の強化だ」

 

「神器の強化、ですか?」

 

「ああ。アーシアの神器って、相手に接触するくらい近付かないとダメだろ?」

 

 自分の言葉にアーシアが頷く。

 

「でも実際触れなくても発動しているってことは、距離を取っても発動できるはずなんだよ。自分みたいに」

 

 そう言って机を挟んだ対面のアーシアの前に飴玉を出す。

 

「そう言えば白野は距離に関係なくお菓子を出せるわね」

 

「正確には視野の届く範囲ですね。距離が離れているから時間が掛かるという事も無いです。ただ、アーシアの場合は似たような能力ですが工程が違うので、自分と同じやり方ではダメだと思う」

 

「工程が違う?」

 

 一誠が首を傾げたので少しだけ説明する。

 

 自分の神器は発動・エネルギー変換・物質化という三つの工程が存在する。

 

 今のアーシアの場合は発動・発現という二工程しか存在しない。

 

「これが基本。で、自分が遠くにお菓子を出現させる場合はエネルギー変換の後に『出現座標設定』という工程が含まれる。多分アーシアがより効果範囲を広げるなら、自分を中心に治癒が発動する範囲を広げるのが一番だと思う。けど……」

 

「……それは危険ですわね」

 

 自分が言葉を濁すと、理由に気付いた朱乃先輩も渋い顔をする。

 

「どうしてダメなんですか?」

 

「小猫ちゃん、よく考えて。アーシアの神器の効果範囲に敵がいたとして、アーシアはその相手を癒さないと思う?」

 

「あ」

 

 小猫ちゃんがこちらが言いたい事に気付いて小さく声を漏らす。

 

 そう。アーシアは多分敵であろうと怪我した相手を無視できない。となるとアーシアの治癒範囲を広げるのは諸刃の剣でしかない。

 

「まぁそれでも敵が居ない場所でなら複数人を同時に回復できる訳だから覚えておいて損は無いと思う。でも今はより確実な方を練習しようと思う」

 

「練習ですか?」

 

「ああ。リアス先輩が言っていたが神器は持ち主の意志によって進化する。自分の能力もそうだったしね。だからアーシアの神器だって強くイメージすれば神器もその通りに進化すると思うんだ。と言うわけでアーシアには魔法を習いながら個人特訓で魔弾を飛ばす練習をして貰う」

 

「あっ! 解かったぞ白野。その魔弾を飛ばす要領でアーシアの治癒の力を飛ばすんだな」

 

 一誠の自信に満ちた回答にこちらも頷く。

 

「ああ。現状ではそれが一番確実だと思う。と言うわけなんだけど、いいかなアーシア?」

 

「は、はい! わたしも皆さんのお役に立てるように頑張ります!」

 

 真剣な表情で今まで黙っていたアーシアに話を振ると、彼女は凄い勢いで首を縦に振って両手に拳を握る。なんというか、子供が意気込んでいる様に見えて微笑ましい。

 

「さて、アーシアの個人練習もこれで纏まったし、それじゃあ今日の対人戦の組み分けを発表するわよ~」

 

 リアス先輩が立ち上がり、夜の対人戦の組み合わせが発表された。

 

 

 

 

「せい!」

 

「あっく!?」

 

 自分は小猫ちゃんの拳を回避し、勢い良く突っ込んできた彼女の膝裏に水平蹴りを浴びせて倒して距離を取る。

 

 今日の対戦相手は小猫ちゃんだった。今回自分達が戦っているのは林の中だ。障害物がある状況でも戦えるようにという配慮だ。

 

「う~ん。小猫ちゃんはまだまだ戦車の恩恵に頼りすぎてるかな。本来小柄な小猫ちゃんはもっと素早く細やかに動いて相手を翻弄する戦い方があってると思うよ。それと、本来攻撃は避けるものだから、極力くらわないように」

 

 多少の攻撃ではビクともしない故に、小猫ちゃんには攻撃に対する危険察知能力が低い。正直これは戦いに身を置く者として致命的だ。

 

 とりあえず自分と戦う時は駒の恩恵を消しているので、速力が祐斗以下の小猫ちゃんでは、自分に攻撃を当てることはできない。動きが大雑把だから疲れても避けられるしね。

 

「はい……」

 

「ところで小猫ちゃん。ちょっと踏み込んだ事を訊いてもいいかな?」

 

「はい、なんですか?」

 

 説明を聞き終え立ち上がった小猫ちゃんに、前々から気になっていた事を伝える。

 

「小猫ちゃんは妖怪からの転生だよね? どうして妖術を使わないの?」

 

「ど、どうしてそれを!?」

 

 ……あれ? もしかして隠してた?

 

 自分の言葉に小猫ちゃんは物凄く驚いたようで、目を見開きしばらく硬直してしまう。

 

 あ~そっか。みんなに浄眼の説明をした時は異質な存在を見分けるとしか言ってなかったもんな。

 

「自分の浄眼はね、相手の異質を見抜くから小猫ちゃんの妖怪の部分も見抜けるんだよ。だから朱乃先輩が堕天使からの転生なのも知ってる」

 

「……そうだったんですか」

 

「うん。だからかなぁ。どうして二人共本来の自分の力を使わないのかなって。もし使えるなら次のゲームでの戦いでもかなり有利になるのにって思ってさ」

 

 黒歌なんかは魔力・妖力という異なるエネルギーを平然と扱い、しかも合わせたりする。天才はやっぱり恐ろしい。

 

「……あの先輩、少しだけお話に付き合って貰えますか?」

 

 小猫ちゃんはそう言って不安げな表情でこちらを見上げる。

 

「いいよ」

 

 その場に腰を降ろす。小猫ちゃんも隣に座り、空を仰ぎながらぽつぽつと語り出した。

 

 

 

 

 わたしには年の離れた一人の姉がいた。

 物心ついた時から一緒だった、たった一人の家族。

 

 辛く苦しい生活でも、姉さまの笑顔が、温もりが、わたしを支えてくれた。

 

 ある日、一人の悪魔が姉さまに悪魔になる事を持ちかけた。

 

 当時の幼いわたしには解からなかったが、今なら解かる。姉さまは生活を保障して貰う代わりに悪魔となったのだ。

 

 悪魔になった姉さまとの生活は、当時はただ純粋に喜んだ。

 

 毎日得られる食事に暖かい寝床も与えられた。姉さまとは時々しか会えなくなってしまったが、それでも会いに来てくれた時はずっとわたしの傍に居てくれた。

 

 幼い当時のわたしは、幸せに浸っていたせいで見逃していたのだ。

 

 今思い返せば与えられた家に帰って来た時の姉さまは傷を負っていることが多かった。もっとも、姉さまはわたしがその傷について尋ねても――。

 

『にゃはは。強くなる為に修行してるんだから傷付くなんて当たり前よ白音』

 

 ――と言っていつものように明るく、そして優しげに笑うだけだった。

 

 わたしにとって姉さまの言葉は絶対だった。だからその言葉を信じた。

 

 あの日までは……。

 

 ある日、怖い顔の悪魔達がわたしが暮らす姉さまの主の別荘にやって来た。

 

 訳が分からないまま、わたしや屋敷に居た者達が全員捕まった。

 

 わたしは人間界で言う刑務所のような場所に連れて行かれ、そこで姉さまについて聞かされた。

 

『お前の姉は力に溺れて、暴走し、主を殺した。奴が行きそうな場所を教えろ』

 

 信じられなかった。

 

 だって姉さまは妹のわたしから見ても、所謂天才と呼ばれる部類の存在だったのだから。そして何よりも。

 

 姉さまはわたしを置いて行くなんてありえない!

 

 わたしは泣きながら姉さまはそんな事しないと叫んだ。だが実際に姉さまが仕えていた悪魔は殺されていた。わたしは結局そのまま拘留された。

 

 わたしは信じて待ち続けた。姉さまはきっと助けてくれると。姉さま自身がきっと自分の身の潔白を証明すると信じ続けた。

 

 そんな思いをずっと抱きながら、周りからの批難の声、罵倒に一人で耐えながら過ごす事になってから数日後に、わたしはグレモリー家に引き取られる事になった。

 

『辛い思いをさせてすまなかったね』

 

 そう言ってやってきたのは部長のお兄様であるサーゼクス様だった。

 

 正直、当時のわたしはお世辞にも愛想は良くなかったと思う。周りの声に神経をすり減らし過ぎたわたしは、殆ど感情を表に出さなくなっていた。

 

 グレモリー家に引き取れた時、わたしは姉さまについてサーゼクス様に尋ねた。

 

『君のお姉さんについては残念だが未だに見付かっていない。ただ討伐隊が深手を負わせたのは間違いないらしいから……正直どうなっているか……』

 

 大好きな姉さまが死んだかもしれない。

 

 その一言でわたしの心は……折れた。

 

 それからの数年は曖昧だ。おぼろげに覚えているのはリアス先輩が必至に話しかけてくれていた事くらいだ。

 

「――そして三、四年前にようやく今の状態にまで回復しました」

 

「……そっか。それで結局お姉さんは見付かったの?」

 

「……姉さまは一年前に死亡が確定されました」

 

 白野先輩が僅かに驚いたような表情したあと、すぐにこちらを気遣う視線を向ける。

 

 この人は本当によく目元に感情が現れる。

 

 わたしはどちらかと言えば感情の機微に疎い方だが、それでも白野先輩が何を思っているのかはなんとなく分かる。

 

 きっとそんな分かりやすい人だから、姉さまの事を話す気になったのかもしれません。

 

 なんと声を掛けるべきか迷っている白野先輩から視線を空に戻して理由を説明する。

 

「討伐隊が深手を負わせ、それから十年近く音沙汰がありませんでした。結果、姉さまは討伐隊との交戦時の怪我が元で死亡したと言うことで、事件は解決したという扱いになりました」

 

 結局わたしが何も解からないまま事件は終わってしまった。

 

「わたしも、もう姉さまは亡くなったと、自分自身を納得させました……それでも妖術や仙術を使おうとすると怖いんです。あの優秀な姉さまですら扱えなかった力を、わたしなんかが扱えるのかって」

 

「……なるほど」

 

 白野先輩は小さくそう呟き、溜息を吐いて頭を掻く。その表情は、どこか物憂げで、少しやり切れない感じに見えた。

 

「小猫ちゃん。とりあえず、いったん自分が言った事は忘れてくれ。わざわざトラウマを呼び起こして克服するよりは、今は技術を伸ばそう。今回のゲームを乗り越えればまだリアス先輩達とも一緒に居られるし、いずれ克服する機会も得られるさ」

 

 こちらを気遣うようにそう言って笑う白野先輩に、わたしは少し悩んだあと、小さく頷いた。

 

「そうですね。今は確実に強くなれる道を選びます」

 

 わたしも立ち上がり、昔を思い出して少し涙腺が緩みかけている為、無理矢理顔を引き締めて涙が浮かばないように堪える。

 

「よし、じゃあ続きをやろうか」

 

「はい」

 

 お互いに振り替えて立ち居地に戻る。

 

「――かに――した――かな」

 

 去り際に白野先輩が小さく誰かの名前をぼやいたが、風に吹かれた葉の音にかき消され、内容までは聞き取れなかった。

 

 急に重い話をしたから、白野先輩も戸惑ってるのかも。

 

 そうわたしは結論付け、自分が招いたこの場の空気を切り替えるために、わたしはいつもよりも大きな声で構えた。

 

「行きます!」

 

「ん! 来い!」

 

 わたしのそんな気持ちを汲んでくれたのか、白野先輩も表情を引き締め、大きな声で応えてくれた。

 

 その後、わたし達はしばらく組み手を行ってから別荘に戻った。結論から言えば結局わたしは白野先輩から一本も取れなかった。

 

 やっぱり今のわたしには新しい力に目移りする前に今ある力を鍛えた方が良さそうだ。

 




私はどうしても小猫が姉に不信を抱くのが納得できなかったのと、姉が罪を犯したのに原作だと小猫は捕まることなくその後も普通に生活していた感じに書かれていたので、そこもちょっと納得できなかったので、今回のような流れになりました。

あとなんで仙術教えなかったのかといえば、自分の妖力すら扱えないのに更に難しい技術を十日で修得するのは無理だろうと考えたためです。

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