岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】 作:雷鳥
試合が始まり、自分、小猫ちゃん、一誠、祐斗の四人で進軍し、途中で一誠と祐斗は運動場の方へと向かい、自分と小猫ちゃんは新校舎へと続く体育館に向かう。
朱乃先輩は単独で別行動、アーシア、リアス先輩は旧校舎で周辺で二人組で行動中だ。
「それじゃあ作戦通りに」
「おう。負けるなよ二人共!」
「一誠先輩が一番心配です」
「うぐ!?」
「はは。それじゃあ僕達も気を抜かないように頑張るよ」
一誠の力強い励ましを小猫ちゃんがツッコミで粉砕し、泣き顔の一誠を祐斗が苦笑しながら慰めつつ連れて行く。
今回のレーティングゲームの互いの拠点はこちらは旧校舎の部室で、向こうは新校舎の生徒会室となっている。
そして新校舎と旧校舎へと向かうには、体育館と運動場のどちらかを通らなければならない。そのため、進行ルートの要となるその二つの場所の安全を確保するためにそれぞれの場所へと向かっていた。
因みに校庭は論外である。隠れる場所もないしこちらには一誠と自分という空を飛べない足手纏いがいるため、空から狙い撃ちされたらその時点で終わる。
「あの、白野先輩」
「ん? なんだい?」
移動中に小猫ちゃんの方から珍しく話しかけて来た。
「この後少し時間を貰えますか? お聞きしたい事があるので」
「いいよ。でも今は戦いに集中しよう」
「はい。ありがとうございます」
何かを気にする彼女に改めて今が戦闘中であることを思い出させて気を引き締めさせる。
体育館正面は新校舎側なので裏口から潜入する。浄眼で確認したが、体育館内に魂は視えない。
鍵がかかっている可能性も考えたが、どうやら大丈夫なようで二人で気配を消しながら体育館にある演壇の裏側を進んでいく。
演壇の端から体育館内を探ろうとした瞬間、気配を感じて小猫ちゃんの方へと振り返る。彼女も感じたようで二人で首を縦に振る。
さっそくか。今のうちに魔術を使っておくか。
「『code:move_speed(C)』、『code:gain_con(D)』」
小声で発動させ、肉体の速度と耐久を上昇させてから、小猫ちゃんと一緒に演壇に姿を現す。
「あら、自ら姿を現すとは思わなかったわ」
こちらが姿を現すと体育館の中央にいた四人の内のチャイナ服を着た女性が不敵な笑みを浮かべる。確かリアス先輩が入手した資料によれば戦車の駒だったはずだ。
残りの三人の内、二人は同じ顔の双子で一人は一誠を倒した女の子、確かミラだったな。この三人は資料では確か兵士だったと記憶している。
「よく言うよ。自分達が入った瞬間に体育館内に気配がすれば、進入がバレたと思うのは当たり前だろう?」
こちらの返しに向こうは『確かに』と笑って返す。
「白野先輩は兵士を、わたしは戦車を相手にします」
「三対一か……出来る限りやってみよう」
アーチャーだったら『別に倒してしまってもかまわんのだろう?』とかいいそうだよなぁ。
皮肉屋な正義の味方と違って、倒せると断言できないあたりが、自分の力不足を感じさせる。
「無理しないで下さいね」
「小猫ちゃんもね」
二人で頷き合い、演壇を飛び降りて二人で標的に向かう。
チャイナ服の女性は拳法の構えを、ミラはやはり棍を、そして双子は、電動チェンソーを構え……マジか!?
「バラバラに引き裂いてやろうか~♪」
「というかバラバラに引き裂いてやんよ~♪」
おいおい運営! あんなのくらったら部位欠損するだろうが! あれか? 悪魔だからそのくらい余裕なのか!?
横に振られたチェンソーを屈んで回避し、そこを狙って放たれたミラの突きを更に体を捻って回避して腰のフォルダーから銃を抜いて発砲する。
「くっ!?」
「うわ! これ悪魔祓いが使う奴じゃん!」
「ぶーぶー! 女の子になんて危ないもん使ってんのよ!!」
ミラは棍で弾丸を防ぎ、双子は大げさにその場を飛び退きながらこちらに向かってブーイングしてくる。
「人間相手にチェーンソー振り回すお前らが言うな! それ避けるの凄い怖いんだからな!!」
避ける際に耳元でドルルルなんて駆動音が聞こえるからマジで怖い。
しかしやっぱり光力ってだけでも結構牽制になるもんなんだな。
銃をフォルスターに仕舞って今度は光剣を右手に持つ。左手は常に空けて置く。でないと相手の遠距離攻撃時に神器を発動できないからな。
光剣をその場で素振りすると、三人の顔に緊張が走る。
女の子の体を傷つけるのは不本意だが……覚悟はしてきた。
「バラバラにすると言うんだ……そっちもされる覚悟は出来てるんだよな?」
光剣を握った状態で上体を屈ませ、いつでも駆け出せる準備をする。すると三人はどうすべきか迷った表情を浮かべて動こうとしない。もしかしたら兵士の彼女達は光力を扱う相手と戦った経験が無いか、少ないのかもしれない。
まぁそれならそれでこっちも時間稼ぎが出来るというものだ。
「怯むな! 相手はたかが人間一人だぞ!」
隣で激しい打撃戦を行っていた戦車の女性が三人を叱責する。すると三人も数の有利を思い出したのか、表情を引き締めこちらに向かってくる。
やっぱりそう簡単にはいかせて貰えないか。
「はああ!!」
ミラが一直線にこちらに駆け、棍を突き出す。
その棍を身体を反転させつつ屈んで回避し、棍の先端が顔の横を通り過ぎた瞬間に、棍の柄を掴んで突進の勢いを利用してそのまま一本背負いの要領で、ミラを棍ごと投げ飛ばす。
「くっ!」
顔を顰めながらなんとか空中で姿勢を立て直そうとする彼女から視線を前に戻そうとした時、聞きたくも無い駆動音が響く。
「とった!」
「もらった!」
視線を逸らした一瞬の隙をついて、チェーンソーを振り上げた少女達が眼前まで迫っていた。
「せい!」
更に後方から棍が投げつけられる。
剣を仕舞って自分から棍の方へと後ろを向いたまま跳び、飛んで来る棍が自分の脇を通り過ぎる瞬間に柄を掴む。
「ええ!?」
「「うそ!?」」
驚きの声を上げる彼女達を無視して、掴んだ棍を大きく振りかぶり、目の前の双子のチェーンソー目掛けて思いっきり横薙ぎに叩きつける。
「きゃああ!?」
「ちょっ、うわああん!?」
叩きつけられた双子の一人がチェーンソーの重さと勢いに引っ張られて吹き飛び、横並びだったもう一人の双子にぶつかり、二人揃って吹き飛ばされる。
うん。兵士のスピードになら付いていけそうだな。
ここまでの戦闘で相手の三人の力量と自分の力量を鑑みて、速度の面なら自分に分があると判断する。
黒歌や祐斗のスピードに慣れたのが大きいかな。
それでもやっぱり頑丈だよな。それに戦いなれてる。
倒されながらもすぐに起き上がって防御体勢を整えた双子に感心と警戒を抱きながら、棍を遠くに捨てて銃を持つ。
どうやら遠距離攻撃の類は持ち合わせていないみたいだし、銃を主体に牽制しつつ、指示を――。
『朱乃が対象を捕らえた。プランBを発動するわ。二人共撤退よ』
指示を待とうと思ったその時、リアス先輩からその待っていた指示が送られる。
「了解」
「了解です」
思ったよりも早かったな。
小猫ちゃんが力いっぱい殴って戦車の女の子を吹き飛ばして距離を取り、そのまま近場の出入り口から体育館の外に出る。こちらも三人に向かって発砲しながら近くの出入り口から脱出する。
そして自分が外に出ると同時に、体育館全体を巨大な光が飲み込んだ。
「ぐおおおお!?」
あまりの一撃に余波を食らって軽く吹き飛ぶ。ちょ、もうちょい自分が離れてから撃ってくれもいいでしょう朱乃先輩!?
爆風に軽く飲みこまれた事に憤りを覚えながら立ち上がると、学園中にグレイフィアさんの声が響いた。
『ライザーフェニックスの『兵士』三名。『戦車』一名。戦闘不能』
よし。まずは作戦成功。
重要拠点ごとライザーの眷属を倒す。それが今回の作戦の一つだ。
小猫ちゃんを見つけ、そちらに向かうと、彼女もこちらに向かっているところだった。
「やったな小猫ちゃん」
「はい。作戦通りですね」
二人で喜びの笑みを浮かべてハイタッチをする。
――その瞬間、自分達の足元に魔方陣が浮かび――爆発した。
◆
「あっけないわね」
土煙が起こる中、わたしは冷笑を浮かべて眼下を見下ろしていた。
土煙が晴れると、そこにはライザー様を侮辱した人間と『戦車』の少女が横たわる姿があった。
「
二人を一瞥してライザー様のもとに戻る為に踵を返す。
「何かを成した瞬間の獲物ほど、狩りやすい獲物はいない。良い勉強になったでしょう」
「ええまったくですわ」
「っ!? ぐああああ!?」
突然聞こえた声と共に自身に振り注いだ雷の放流をもろに受け、成す術も無く地面に叩きつけられる。
(馬鹿、な!? あれだけの魔力の篭った一撃を放ってすぐに、これだけの魔法を放てるはずが、ない!?)
激痛の中、わたしは悠然と空からこちらを見下ろす同じ役割を持つ『女王』、姫島朱乃を見据えながら驚愕に目を見開く。
「ぐっ、早く涙を」
傷む体に鞭打って懐からフェニックスの涙を取り出した瞬間、腕に剣の柄の様な物がぶつかり、フェニックスの涙の入ったビンが弾かれて地面に落ちて割れてしまう。
「なっ!?」
視線を柄の飛んできた方へと向けると、そこには何かを投擲した姿で佇む倒したはずの人間の姿があった。
しかしその隣にいた筈の、戦車の少女の姿は無くなっていた。
「っ!? 上!!」
その事実に気付いて気配のする方、自分の真上の空に視線を向ける。
そこには自分に向かって落下してくるほぼ無傷の少女の姿があった。
「まさか最初から! この状況を狙ったというの!?」
そこでわたしはようやく気付く。はめられたのは自分だということに。そんなわたしに姫島朱乃は私が浮かべたものと同じ笑みを浮かべて見下ろしていた。
「ええそうですわ。あなたが蔑んだ人間の、白野君が考えた作戦ですわ」
「終わりです」
痛む体はすぐには行動できず、ただただ驚愕に目を見開くわたし目掛け、渾身の一撃が放たれた。
「がっはぁ!?」
少女の体格からは決して想像できない重い一撃を鳩尾に受け……わたしはそのまま意識を失った。
◆
『ライザーフェニックスの『女王』。戦闘不能』
異空間にグレイフィアさんの宣言が響き渡った。
流石に地面が爆発した時は焦ったな。事前に想定していなければやられていた。
グレイフィアさんの宣言を耳にしながら投げた柄を回収し、安堵の溜息を吐きながら作戦の成功を内心で喜ぶ。
作戦が成功した瞬間を狙う敵が居る可能性を考慮し、その相手を油断させて倒す。これが二つ目の作戦だ。
朱乃先輩が単独行動をしていたのはその相手を探る為だ。そして体育館を攻撃したのは、その相手が自分と小猫ちゃんの側に居るのを発見したからに他ならない。
もっとも、まさか女王が出てくるとは思わなかったけどな。
彼女は『爆弾王妃』と呼ばれるくらい爆発の魔法を得意とするというのはリアス先輩が冥界から持ってきたライザーの試合の資料で知っていたので、どのように爆発の魔法を使うのかは頭に叩き込んであった。そのお陰ですぐに回避行動を取れた。
あの爆発の瞬間、小猫ちゃんと自分はその場から大きく飛び退いてなんとか直撃を避けた。そして土煙を利用して相手から見えない内に自分は魔術で治癒し、小猫ちゃんはフェニックスの涙で怪我を治した。
そして地面に倒れてやられた振りをしてみせる事で、相手を油断させて、そこを朱乃さんが攻撃したというわけだ。
「白野君がエネルギー回復用のお菓子をくれたお陰ですわね」
「役に立って良かったです」
朱乃先輩が二度目の高威力の魔法を即座に使用できたのは自分が生成したお菓子の殆どを彼女に渡しておいたからだ。
「しかし貴重なフェニックスの涙を使ってしまいました」
「仕方ないさ。小猫ちゃんに回復手段が無いし、自分の回復魔術も、効果はたかがしれているしね」
直撃は避けたとは言え、やられた振りをする以上、ノーダメージで切り抜けることは出来ないと踏んで、あらかじめ小猫ちゃんと一誠にはフェニックスの涙を持たせておいた。
そもそもアーシアと行動を共にするリアス先輩には不要だしね。祐斗はその速度があれば上手く回避できるだろう。
この辺りにはもう敵はいないか。
気配と同時に浄眼を開眼させて魂を探索して周りに誰も居ない事を確認する。すると旧校舎近辺で爆発が起きる。
『ライザーフェニックスの『兵士』三名。戦闘不能』
「リアス先輩ですね。さすがに兵士程度じゃ滅びの魔弾には耐えられなかったみたいですね」
「ええ。そしてこれでもう兵士は一人。それくらいならリアスだけで問題無いですわ。わたし達は作戦通りに急いで兵藤君達と合流しましょう」
「「はい」」
朱乃先輩の言葉に小猫ちゃんと一緒に頷き、自分を先頭に三人で周りを警戒しながら急いで一誠達の元に向かう。戦局は終盤に差し掛かり始めていた。
と言うわけで油断したライザー陣営は大量にリタイア。
というか、原作でも相手の女王の情報は持ってるんだからこのくらいの警戒や作戦は立てて当然だと思うのよ。
【原作の技・装備解説】
『注意:効果の名称が略称で正式名が分からない物もあるのでルビは振っていません。申し訳ない』
装備名:『守りの護符』『身代わりの護符』
効果:『gain_con サーヴァントの耐久を強化・大幅強化』
解説:『物理的衝撃を遮断する結界が張れる護符』
『主人の身代わりに災いを引き受ける護符』
内容はまんまサーヴァントの耐久値を上げるスキル。身代わりの方が効果が高い。
本作品内では込めたエネルギー量次第で上昇値が変化する仕様です。
装備名:『強化スパイク』
効果:『move_speed 移動速度を上昇』
解説:『駆け走る猫がトレードマークの特殊軽量スパイク』
主人公の移動スピードを上げるスキル。ギルの移動時のガチャガチャの煩さも増す。
こちらも同じく込めたエネルギー量次第で上昇値が変化します。