岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】 作:雷鳥
「あ~みんなどんな水着かなぁ。楽しみだ!」
「イッセー君鼻血!? 妄想だけでホントに鼻血出す人なんて初めて見たよ!?」
「……昨日女性陣だけで買い物に行ったのは水着買う為か」
プールサイドで学校指定の水着だけ着て上半身を晒す男三人。一人は鼻血を出し、一人はそれに驚き、一人は片手無し……他人から見たらどう映るだろう。
今日は休日だがオカルト部が掃除をする代わりに今日一日プールを貸し切って遊べる事になっている為、その手伝いをお願いされた。
まぁ掃除と言っても藻が張り難い薬が使われているからそこまで大変ではない……小さい虫でキャーキャー言ってたのはリアス先輩とレイナーレくらいだろう。なんだかんだで他の人は無慈悲にさっさと駆除していた。あのアーシアですらやっていた。
『掃除中は虫への情けは無用ただし益虫は除くとシスターに教わりました』
まぁ病気とかの元にもなるし仕方ないね。運が良い連中は逃げられただろう。
そして掃除が終わり、女子を待っていること十数分……なんか紺色の桃源郷がやってきた。
「全員スク水とは意外」
「まあ、イッセー以外もいるし」
「白野君以外の殿方に肌を過多に見せるつもりはありませんわ」
そう言って現れたのは学園指定の水着を着たリアス先輩と朱乃。
「本当はもっと過激なのにしようと思ったのだけど、まぁそれは夏のお楽しみにね♪」
「ふふふ、白野君も楽しみにしていてくださいね」
……あれ? もう海かプールに行くのが決まっているのか?
楽しげに語り合う二人の会話に知らぬ間に夏休みの予定が一つ確定した気がした。
「……これはこれで圧迫された胸の躍動感が素晴らしい」
「気持ちは分かる」
イッセーがなんというか、物凄くイイ笑顔で拳を握って小さくガッツポーズを取る。そんな一誠の言葉に同じようにガッツポーズしながら頷く。
「お待たせしました」
「……イッセー先輩は相変わらずです」
次に現れたのはスク水を来たアーシアと小猫ちゃん。なんというか……二人を一言で表すなら――。
「王道は至高」
「然り」
自分の言葉に一誠が短くも感嘆を込めて答えてくれた。さすがはソウルブラザーである。
「ふ~ん。これが人間界の水着にゃん」
「もっとセクシーなのが良かったわ」
最後に現れたのは教師用の学園指定のワンピース型の水着を着た黒歌とレイナーレだ。
「……禁忌という名の甘美には叶わない」
「くっそ羨ましい! 羨ましいぞ白野!」
本来ならセクシー系の水着を好んで着そうな二人が、逆に大人し目の水着を着ることで彼女達の本来の裸体の魅力を底上げする結果となった。まさにギャップ効果!
「というか、やっぱ美人は何着ても美人だって事が証明された気がするね」
「「確かに」」
最後の纏めのように呟いた祐斗の言葉に男衆が頷いた。
「ごご、御主人様。放さないでね。放さないでね!」
「大丈夫だから」
バタ足しさせながらこちらを不安そうに見詰めてくる黒歌の手を引きつつ答える。
「意外です。姉さまにも苦手な事があったなんて」
「一緒に練習できて嬉しそうだね小猫ちゃん」
隣で同じく祐斗に手を引かれながらバタ足する小猫ちゃんが祐斗の言葉に頬を赤くさせる。
「すいません一誠さん」
「気にするなアーシア、誰にだって初めてはあるさ」
更に隣でアーシアの手を引くのは一誠……どうしても彼の発言がエロ方面に聞こえてしまうのは自分が悪いのだろうか?
「くっ。なかなかやるわねレイナーレ」
「ふん。伊達に毎日訓練してないわ」
「あらあら」
反対側のプールサイド側ではリアス先輩とレイナーレが勝負していた。朱乃先輩はそれを見ながら浮き輪に乗って優雅に微笑んでいた。
しばらくは泳げない組みと泳ぎの練習をしたあと、ビーチボールで水中バレーをしたり、競争したりと、みんなで今年初のプールを堪能した。
◆
「ふう。堪能したなぁ……ん?」
先程までの光景を思い出しながら、一足先に着替え終えた俺は集合場所の校門に向かう途中……そいつを見つけた。
校門の前で校舎を見上げる銀髪の男性。正直絵画や写真にでも収めて飾れば全員が全員足を止めるのではないかと言うほど、男性のその姿は絵になっていた。それくら……目の前の男はイケメンだった。
またイケメンか!
内心でそう叫んでいると、男性がこちらへと振り返って口を開いた。ヤバイ、口に出してたか?
「やあ。いい学校だね」
「あ。そ、そうですね。はは……」
内心焦りながら可能な限り爽やかに笑って答える。もしかして転校生かなんかか? でももうすぐ夏休みだし、もしかして若く見えるけど臨時の先生とか?
そんな事を考えていると男性がこちらの予想とはまったく違う言葉を口にした。
「俺はヴァーリ、今代の白龍皇だ」
男性、ヴァーリの言葉に自分が反応するよりも早く左腕がまるで脈を打ったかのような反応を見せる。
(ドライグ? まさか……)
(ああ間違いない。こいつが俺とお前の宿敵だ)
「初めまして。正直言えば前回の事件の時にでも邂逅できればと思ったのだが、まあ魔王が出てきた以上は仕方ない」
そう言って静かに笑うヴァーリ。そんなヴァーリの思惑が解からずに困惑しながらも、ドライグを宿した事による本能なのか、咄嗟にその場で身構える。
いや身構えた理由は解かってる。ヴァーリから放たれる静かな威圧感のせいだ。
ただそこに居るだけなのに自分はヴァーリとの間に致命的な力の差を感じ取ってしまった。
目的はわからない。だがもしも目的がドライグの言っていた宿命の対決だったりしたら……俺は間違い無く死ぬ。
相手の意図が理解できない不安と明確な死への恐怖で身体が強張る。
そんな俺の反応を見て、ヴァーリは不敵な笑みを浮かべる。
「そうだな。ここでもしも俺が兵藤一誠に魔術をかけるとしたら――」
そう言ってヴァーリはほんの僅かな敵意を放った。
次の瞬間――奴の背後から首元に聖魔剣を突き付ける木場が現れる。木場、わざわざ『騎士』の恩恵を使って駆けつけてくれたのか。
「……その手を下げて貰おうか」
木場の一言にヴァーリはしかし不敵な笑みを崩さずに手だけを下ろす。
「気概は買うが無理しない方がいい。手が震えているぞ?」
ヴァーリの言葉に、視線を祐斗に移せば、確かに祐斗はわずかに身体を震わせていた。
「……もっとも、あっちの彼には自分も驚かされているけどね」
そう言ってヴァーリが俺から視線をずらし、校舎へと向ける。それに続くように俺も視線を移し――一度だけ身震いする。
そこには今まで見た事が無いほどの真剣な表情でその手に青く光る札を構える白野の姿があった。
「彼もグレモリーの眷属かな? ここまでの鋭く射抜くような闘気を放たれたのは久しぶりだ。もし俺が兵藤一誠に触れていれば、彼は迷わずにあの奇妙な札を使っただろうね」
そう言って、ヴァーリは敵意を完全に収める。それを見届けても祐斗も白野も攻撃態勢を解く事はしない。そしてヴァーリもそれを気にする様子がない。
「だが少し安心した。どうやら敵との力量差を見極められるだけの実力はあるみたいだな。コカビエルごときを倒せないと聞いて不安だったが」
上から目線でそう口にするヴァーリ。本音を言えば言い返してやりたいが、奴から感じる力からグレイフィアさんが言っていた言葉が真実なのだと実感してしまった。
『白龍皇はコカビエルを圧倒しました』
そんな相手に勝てるのか?
「ふむ、唐突だが兵藤一誠。君は自分がこの世界で何番目に強いと思う」
……は?
言葉通りまさに唐突にヴァーリはそんなよく解からない質問を投げかけてきた。
「……少なくとも下から数えた方が早いのは自覚してるさ」
自分なりに質問の意図を考えてそう答えると、ヴァーリは首を横に振る。
「そう謙遜する事はない。少なくとも四桁台の前半にはいるだろう」
……それは喜んでいいのか?
あまりにも微妙すぎるヴァーリの答えに怪訝な表情をするが、当のヴァーリはこちらの表情が意外だったのか首を僅かに傾げたが、すぐに表情を戻して続きを口にする。
「この世界には強者が多い。知っているかい? 三陣営の幹部ですら、その実力は良くて二桁代だ。トップ10にすら入らない」
おいおいマジかよ。魔王、それもサーゼクスさんですら二桁台だって。
「だが一位は決まっている――不動の存在がいる」
「……それが自分だって言いたいのか?」
つまり力自慢か?
そう思って答えたが、ヴァーリは苦笑して肩をすくめる。
「いいや違う。君もいずれ解かるさ。それとリアス・グレモリー、兵藤一誠は貴重な存在だ。しっかりと育てておくといい」
ヴァーリがまた視線を俺の後ろに向ける。背後から足音が聞こえ、その音が隣で止まる。視線を向ければ不機嫌な表情で雄々しく立つ部長の姿があった。
「言われなくても。それで、堕天使の総督の懐刀がいったい何の用かしら?」
「そう警戒しなくいい。ただ俺もアザゼルと一緒で仕事以外の暇な時間に今度の会談の為に散歩していただけだ。もちろん、赤龍帝に運良く遭遇しないかと思っていたけどね。今日は本当にただの顔見せさ」
ヴァーリはそれだけ言って踵を返す。
「祐斗」
部長の言葉に木場が聖魔剣を下げて道を譲る。
ヴァーリが数歩進み、最後に一度こちらに振り返る。
いや、俺じゃない。
最後にヴァーリが見たのは白野だった。見れば白野はいまだに札を構え、鋭い視線でヴァーリだけを見据えている。
「ふ……」
ヴァーリは最後に小さく笑みを作って今度こそ俺達の前から去って行った。それを確認した白野が、ようやくその手から札を消す。
楽しい気分がいっきに沈む。
あれが、俺がいつか倒さなければならない相手。
自分の両手を見据えながら、俺の心に僅かな不安が浮かび上がっていた。
という訳で原作と違って紺色桃源郷でした。
いやね。多分リアスや朱乃の流れ的にこっちになると思ったんです。
黒歌とかの過激な水着は……原作の夏休み編で書くかもしれない。