岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

52 / 66
書いてて思ったこと、この作品で本編でここまでヒロインしているキャラと白野が絡んだのって初めてじゃね? でした(実はハーレムの三人との会話ってメインとは別口のサブイベ扱いなんですよねぇ)

たぶん彼が一番ヒロインしていると思う(笑)




【そして吸血鬼は人間の手を取る】

 気付けば世界が停止した。

 

「もう嫌だ。嫌だよぉぉ」

 

 ギャスパー君が悲鳴を上げて駆け出し部屋の隅で泣き始める。

 

 周りを見渡す。そこには先程の状況のまま、まるで精巧に作られたマネキンのように動かなくなった部員達がいた。

 

 ああ、これは……キツイな。

 

「なるほど。こんな光景が自分の意思と関係なく広がるのか、キツイ光景だな」

 

「……ふえぇ!?」

 

 周りの止まった光景を見回しながら声を上げると、ギャスパー君が物凄く驚いた表情でこちらに振り返った。

 

「どうして、だって僕の……」

 

「……能力の使用方法と発動条件が判っていれば対処しやすいよね」

 

 そう言って苦笑しながらエクスカリバーを後ろの腰に差して能力を解く。うん、どうやら初動さえ何とかできれば、彼の能力を防ぐ事は可能みたいだな。

 

 いや、今は彼が先だな。

 

 ギャスパー君の神器についての考察は後回しと、思考を切り替えてギャスパー君を怯えさせないようにゆっくりと近付き、彼の前で片膝を着く。

 

「……なあギャスパー君。これは自分の勝手な考えなんだが……君は本当は外に出たいんじゃないかい?」

 

 彼の『迷惑をかけたくない』という発言を思い出す。きっとジナコと一緒で長い間一人だったから自分に自信が持てずに卑屈になってしまっているのだろう。

 

 ギャスパー君はしばらく視線を不安気に彷徨わせたあと、俯いたまま口を開いた。

 

「……ぼ、僕も外に出れるなら、出たいですぅぅ。でも怖いです。外には怖いモノが多過ぎるんですぅぅ!」

 

 外には出たい。でも怖いのは嫌。そんな彼の臆病な叫びに自分は満足気に笑って彼の頭を撫でる。

 

「そっか。じゃあギャスパー君が今一番怖くて、一番なんとかしたいのは?」

 

「……僕は、この力を何とかしたいですぅぅ。もう嫌だよぉぉ。この力のせいでみんな怖がる。みんな嫌う! みんな止まっちゃう! みんな動かないうぅぅぅ!」

 

 泣き崩れながらそう叫ぶ彼の慟哭を、一語一句聞き逃さないように刻み付ける。

 

 ……多分。自分には彼の痛みの全てを理解できない。

 

 自分は持たざる者だ。故に持たない辛さは理解できるが、強過ぎるが故の辛さは理解できない。

 

 だから自分に出来るのは彼がどんな思いを抱え、どんな痛みを負い、そしてこれからどうしたいのかを全身全霊で理解しようと努める事だけ。

 

「……ありがとう教えてくれて。それじゃあ、それをなんとかしよう。自分が協力するよ」

 

「でも。でもでも……」

 

 涙目でこちらを不安気な表情のまま見上げるギャスパー君。そんな彼の瞳を、彼が最も嫌うその目をしっかりと見詰めて、誓いを口にする。

 

「――自分は君を嫌わない」

 

「っ!?」

 

 ギャスパー君が驚いたように目を開く。

 

「自分は君を恐れない。だから遠慮無く時間を止めてくれ。たとえ時を止められても……何度でも今回みたいにその呪縛を破って君に手を伸ばしてみせる。だから――」

 

 そこで一度言葉を切って立ち上がり、軽く屈んで手を差し出す。

 

「――どうか信じると言う気持ちからは……逃げないでくれ」

 

 もうジナコの時の様な思いをしない為に。

 

 そしてジナコに似ているこの子に、ジナコのような思いをさせない為に。

 

 今度は自分が底抜けに明るい破戒僧や、どこまでもお人好しな施しの英雄に代わって、手を差し伸ばす番だ。

 

「――僕は、僕は……っ」

 

 ギャスパー君が恐る恐ると言った感じに手を伸ばし、そして……彼の手が触れた瞬間に、しっかりと握り締めてゆっくりと彼を立ち上がらせる。

 

「ありがとう信じてくれて。これからよろしく、ギャスパー君」

 

「あうぇ。あの、よろしくお願いしますぅぅ」

 

 何故か頬を赤くして俯いたまま握った手をチラチラと見てくる。なんでこの場面でその反応?

 

「……ギャスパーってあれ?」

 

「なんで白野が前に?」

 

「ひっ!?」

 

 急にみんなが動き出して慌ててギャスパー君が自分の後ろに隠れる。

 

「……ずいぶん懐いたわね。『わたし達が止まっている間』に、何があったのかしら白野?」

 

 リアス先輩が目を細めて厭らしい笑みを浮かべる。さて、どこから説明しようか。

 

「リアス先輩にギャスパー君の能力については聞いていましたから対処していたんです。エクスカリバーの能力の『祝福』と『破壊』を使って」

 

 そう言って後ろの腰から鞘に収められたエクスカリバーを見せる。

 

「破壊って、セノヴィアが使っていた凄い破壊力の能力だろ? それでどうやって?」

 

「破壊ってついてるが、正確には『威力上昇』の効果なんだよ。で、『祝福』は聖なる気を纏って災厄を祓う効果。つまりさっき自分は『祝福』で自分を守り、その効果を『破壊』で上昇させたって訳だ。まあ、成功するかどうかは判らなかったが、これでギャスパー君の行使した力よりも強い力であれば、彼の能力の影響は少なくて済む事が解かったな」

 

 情報が欲しくて行った行為だったが上手く行って良かった。

 

「そのあとギャスパー君と約束したんです。彼の神器の制御に協力するって」

 

「そう。こちらとしては元々お願いするつもりだったからむしろありがたいのだけれど、本当にいいの?」

 

「良いも悪いも、彼は別に神器を制御できていない訳じゃないですから、たぶんそう時間は掛からないと思いますよ」

 

「「え?」」

 

 後ろに隠れていたギャスパー君と目の前のリアス先輩の声が重なる……え? まさか誰も気付いていないのか?

 

 一瞬、大丈夫かなこの子達と本気で心配になった。

 

 

 

 

 とりあえず場所をオカルト部の部室に移動した。ギャスパー君はまだ外と周りの視線が怖いのか、大き目のダンボールに入り込み、そこから恐る恐るといった感じに頭だけ出していた……捨て猫ならぬ捨てヴァンパイアである。

 

 ……今の彼を見たら吸血鬼の元ネタになったヴラドとエリザはどう思うだろう。

 

 エリザは嬉々としてイジメそうだ。ヴラドは……あ、彼の場合は宗教的にサーチアンドデストロイか。合わせちゃ駄目だな、うん。

 

 ダンボールに入ったギャスパー君に苦笑しながら、改めて彼の能力についての考察と今後の事を話し合う。

 

「まず彼の神器ですが、話を聞く限りではある程度は正常に機能していると思います。そうでなければギャスパー君が目を開けた瞬間にみんな止まっている筈です」

 

 そもそも暴走とは『勝手に動く』状態のことだ。特にこういった能力の場合は大抵力自体が本人の意思を無視して発動するものだが、ギャスパー君の場合、最初の方はちゃんとみんなと話していた点を考えると暴走しているとは言い難い。

 

「それはそうだけど。それじゃあ普段の無差別の発動はどうしてだい?」

 

 祐斗の疑問ももっともだ。だがその答えも彼と話を聞き、そして発動したタイミングを考えれば一つの仮説は立てることが出来る。

 

「これは仮説だが、ギャスパー君の神器は彼の感情に反応しているんだと思う。そして肝心のギャスパー君は能力を使用した事に気付いていない。そのせいで『勝手に能力が発動している』と、思い込んでいるんじゃないかと考えている」

 

「なるほど。確かに言われて見れば感情の高ぶりで発動する事が多かった気がしますわね」

 

 朱乃が感心したように頷く。

 

「理由は知りませんが、彼は過去の出来事の結果、多分防衛本能に従って『自動』で『視界全域』を止めるといった感じに無意識に神器を進化させてしまった。だから今後は『自分』で『特定の物』の時を止められるように、新たに神器の性能を上書きする。神器は宿主の意思でその使い勝手が望む形に変化するというのは一誠の赤龍帝の籠手やアーシアの聖母の微笑で証明されていますからね」

 

「なるほど。神器の特異性を利用するんですね」

 

 小猫ちゃんの言葉に頷き返し、ギャスパー君へと視線を移す。彼はまだ他人の視線に慣れていないのか、一度肩を大きくビクつかせると、顔を引っ込ませてしまう。

 

 その動作に苦笑しつつ彼が顔を出すのを待つ。おずおずといった感じに顔を覗かせた彼に、安心させるようにゆっくりと口にする。

 

 

「ギャスパー君。君にはこれから能力を使う感覚を体感で覚えて貰わないといけない」

 

「でで、でもでもどうやってですかぁ? 今までだって何も感じませんでしたぁ」

 

「……だったら余計に使って覚えて行くしかない。これは自分が仲間に言われた言葉の中でも結構気に入っている助言なんだが――」

 

『凡俗であるのなら数をこなせ。才能が無いのなら自信をつけよ』

 

「――ていう言葉がある」

 

「……なんかスゲー上から目線じゃね?」

 

「しかたない。実際凄く偉い立場だったし、何より言っている事は何一つ間違ってはいない」

 

 そう言ってみんなから改めてギャスパー君へと視線を向ける。

 

「ギャスパー君にはまず数をこなして自信を付けて貰う」

 

「うううう出来るでしょうか?」

 

「出来るまでやる」

 

「はうっ!? スパルタは嫌ですぅぅぅ! 優しくしてくださいいぃぃ!」

 

 ダンボールに完全に潜ってガタガタと震えながらもきっちり要望は言うのか。でも特訓自体は嫌だとは言わなかったなし、うん、一歩前進だな……というか意外と一言多いと言うか、実は毒舌タイプか?

 

「……相変わらず、ギャー君はへたれ吸血鬼です」

 

「うわあああああん! 小猫ちゃんがイジメるぅぅ!」

 

 溜息混じりにそう辛辣に告げる小猫ちゃん。それを受けてギャスパー君がますます泣く。

 

 ……意外と小猫ちゃんもSっ気が強いよなぁ。

 

 どこか泣いてるギャスパー君に対してこう、愉悦! みたいな表情をしている。今もなんかダンボールに近付いて軽く揺らしてギャスパー君の反応を楽しんでいる。

 

 まぁ同級生だもんな。あのくらいのじゃれ合いは普通か。

 

 自分も祐斗や一誠、最近では元次郎と居る時は色々と言い合っているし。

 

「……ねえ白野」

 

「はい?」

 

 二人の様子を微笑ましく眺めていると、真剣な表情をしたリアス先輩に声を掛けられた。

 

「ギャスパーの特訓に関してはあなたに一任したいの。その代わりに必要な物があるなら言って、出来る限り融通するわ」

 

「いいんですか?」

 

「ええ。元々ギャスパーはこっちに残る部員達に任せる予定だったの。わたしと朱乃は会談の件で、そして聖魔剣のことで祐斗は冥界に呼ばれているから二、三日空けてしまうの」

 

 なるほど。それは確かに心配だな。

 

「分かりました。それとこれは自分の要望ですが、ギャスパー君にもみんなと接するのに慣れて貰うために、彼の能力が安定するまではみんなで早朝訓練をしたいのですが、構いませんか?」

 

「ええもちろん。それじゃあ後で旧校舎の鍵とソーナに早朝登校の許可証を発行して貰うわね。ありがとう白野」

 

 こちらの提案に、リアス先輩は嬉しそうにお礼を述べながら快く了承する。あ、ついでに他の要望を言ってしまおう。

 

「それと、もしも先輩の実家にでも魔眼や邪眼封じの魔道具があったら持って帰ってきてもらえますか? それで神器の能力を抑えられるならそれも一つの手でしょう」

 

「……そう言えば神器だから無理だろうと決め付けてその手の事は調べていなかったわね。分かったわ。実家の蔵に何かないか調べてみるわ」

 

 やっぱり蔵があるくらいの大きな家に住んでいるのか。これなら少しは期待できるかな?

 

 とりあえずその日はリアス先輩と一緒に今後のプランを話し合って解散する事になった。さて、明日から少し大変だな。

 




ギャスパーの一連の流れはいっきに投稿したかったので頑張った。
因みに時止めの対処法は原作通りで、能力の考察は原作読んだ私の独自解釈です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。