岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】 作:雷鳥
ギャスパー君が再び引き篭もった事件から更に数日が経過した。
ちょっと思うところがあって元士郎に生徒会の仕事を手伝う代わりに彼の神器の力を借りてギャスパー君の訓練を続けた結果、やはり神器の力を吸い取って減らすと神器発動の感覚を感じるらしい。
もっとも力が低下している為、発動しても停止時間は縮むし対象次第では停止すらさせられないが、止める回数自体は大幅に増えた。
ただ根本的な解決にはならないんだよなぁ。
毎回元士郎に力を吸い取って貰う訳には行かない為、いずれは自力でその感覚を掴んでもらう必要がある。
たが元士郎の協力のお陰で仮定ではあるが、ギャスパー君が上手く神器を扱えない根本的な理由に辿り着く事はできた。
自分の予想が正しいならギャスパー君自身が一歩踏み出す必要がある。今日の会談の後にでも彼に伝えよう。
そう、今日はこれから三陣営の会談が行われる大事な日だ。
そんな大事な日に自分は何故かオカルト研究部の部室にいた。
「……なんで自分や黒歌、レイナーレまで出席しないといけないんでしょうか?」
「仕方ないわよ。三陣営のトップ全員からの呼び出しだもの。わたし達じゃ意見すら出来ないわ」
そう。何故か三陣営からお呼びが懸かったのだ。正直勘弁して欲しい。
溜息を吐きながら改めて頭の中で現状を整理する。
会談場所は駒王学園の職員会議室。そこにそれぞれの陣営の長が護衛と共にやってくる事になっている。
グレモリーは長であるリアス先輩と彼女の『女王』である朱乃。そして相手側の強い希望と部長の希望で一誠の三人が参加する。
シトリーは長である蒼那先輩と彼女の『女王』である真羅先輩の二人。
他のオカ研や生徒会のみんなは学園を覆う結界の警備としてやって来た天使や悪魔、堕天使達と一緒に防衛に充てられている。ゼノヴィアやイリナもこちらだ。
「にゃ~。寝不足はお肌の大敵なのに~」
「ちょっと黒歌、会議中に寝たりとか本当に勘弁してよね」
黒歌は猫の姿で、レイナーレは以前見かけた時に着ていたスーツをきちんと着て傍に控えている。自分は制服に、一応何かあった時の為に腰にエクスカリバーを帯刀している。
「ところでギャスパー君はどうするんですか?」
「さすがにまだ制御が安定していない彼を連れて行くわけにはいかないわ」
いや、むしろ一人にする方が問題な気がする……一応やれることはやっておこうか。
先に行ったみんなを見送り、部屋に置かれた大きなダンボールに寂しそうに引き篭もっているギャスパー君へと静かに近付いた。
会議室に入ると豪華絢爛な円卓が設置されていた。椅子が全部で六つ置かれ、北側に一席、西と東にも一席ずつ、そして南側に二席並んでいるものと、そこから少し離れた場所に一席置かれていた。
席にはご丁寧にネームプレートまで設置され、全員がそれぞれ自分の名前の席に着く。南側の揃って置かれた席にはリアス先輩と蒼那先輩の二人が、その近くの一席に自分が座る。
自分の膝の上に黒歌が飛び乗って丸くなり、背後にはレイナーレが待機し、同じく朱乃と一誠、真羅先輩がそれぞれの主の背後に待機する。
全員が座ってから程なくして魔方陣が三つ表れ、そこから四人の男性と二人の女性が現れる。
男性は全員知っている。サーゼクスさんとアザゼルとヴァーリ、そしてミカエルさんだ。
女性の方は一人はグレイフィアさん。最後にミカエルさんと一緒に始めて見る女性の天使が表れた。名前はガブリエルさんと言うらしい。
ウェーブのかかったブロンドに、おっとりした柔和で優しげな表情と雰囲気、そして包容力を形にしたかのような豊満な胸と安産型の大きくも整ったお尻。まさに天使のイメージをそのまま形にしたような女性だ。
ミカエルさんに同行している事から彼女も幹部の一人で間違いないだろうな。というか一誠とアザゼルが物凄くイヤらしい目で凝視してる。気持ちは分かるが時と場所を選ぼうよ。
そんな事を考えている内に全員が着席し、軽く自己紹介が行われるとサーゼクスさんが代表して口を開いた。
「さて、まずは我々悪魔陣営の要望を聞き、こうして集まって貰えた事に感謝する。さっそくだが、まずは前回の事件についてから話し合うとしようか。リアス、ソーナ」
「「はい」」
サーゼクスさんの言葉にミカエルさんとアザゼルが頷き、リアス先輩と支鳥先輩が立ち上がり資料を片手にコカビエル事件の説明が開始された。
「――以上が我々、グレモリー眷属とシトリー眷属、そしてこちらの人間、月野白野が関与した事件の詳細です」
最後にリアス先輩がそう締め、サーゼクス様が二人に着席の指示を送り、次にアザゼルの方へと向き直る。
「では次にコカビエルの処遇について、堕天使陣営から改めて説明を願う」
サーゼクスさんの言葉にアザゼルがやれやれと言った感じに肩を竦めて説明を始める。
「もう資料を送ったから知っているとは思うが、コカビエルは捕縛後、我々『神の子を見張る者』の軍法会議で『
必要最低限の説明をして席に座り直すアザゼルにミカエルさんが尋ねる。
「処置については理解しました。それでは今回の一軒はコカビエルの単独行動であり、組織としての総意ではない。そう言うことでよろしいのですね?」
「おう。つーかサーゼクスから戦闘中に奴が俺をこきおろしてたって説明はお前にもされただろうが」
「それでもあなたの口から直接聞く必要がありますから」
ミカエルさんの言葉にアザゼルは面白く無さそうに耳をほじる。
「やれやれ信用ねぇな。わーたっよ。んじゃ俺の口から言おうじゃねぇか――俺達堕天使陣営は悪魔、天使と和平を結びたいと思っている」
アザゼルの宣言に驚いてたのは一誠だけだった。やっぱりみんなある程度予想はしていたみたいだ。
「どうせお前らもそのつもりだろ?」
「……ええ。ですがその前に一つ気になる事があります」
「ああ。少なくともこの問題に答えて貰わないと堕天使とは和平を結べない」
「あん? なんだよ言ってみな?」
ミカエルさんとサーゼクスさんの険しい表情に、アサゼルは訝しんだ表情で二人に続きを促す。
「では訊くが、何故最近堕天使陣営は神器所有者の人間を集めているんだ?」
「ええ。『白い龍』を手に入れたと知ったときには強い警戒心を抱いた程です」
「なんだそんな事かよ。まあ研究の為つーのが半分。もう半分は自衛の為さ」
「自衛? 和平を結ぶつもりでいたのに自衛ですか?」
「ああ。つってもそれはお前らに対してじゃない。ある意味、今後俺達にっとてはもっとも邪魔になる連中だな」
そう言ってアザゼルが含みのある笑みを浮かべる。そんなアザゼルの姿に、サーゼクスさんは顎に手をやり、しばし考えたあとにある名を口にした。
「……『禍の団』か?」
「ほう。悪魔陣営も知っていたか」
「名前だけはな。上級悪魔の何人かに不信な動きが見られて調査している内にその名に辿り着いた」
「その様子だとアザゼルはその『禍の団』について既にある程度は知っているようですね」
ミカエルさんの言葉にアザゼルが頷いて答える。
「つっても、組織名と背景が判かったはつい最近だ。構成員は三陣営でも危険分子と呼ばれる者や和平に反対な連中が殆どだ。シェムハザによれば神器持ちの人間も多くいるらしい」
厄介な組織だな。確かにそんな存在を知ったら和平を結びたくなるのも頷ける。
そんな中、次に発したアザゼルの言葉に一部の者達が絶句した。
「組織の頭は――オーフィスだ」
「……オーフィス、彼が動いたのか」
「……まさか『
サーゼクスさんとミカエルさんが二人揃って神妙な顔で考え込んでしまう。オーフィスがどういった存在なのか知らなかったので念話で三人に尋ねると、朱乃が答えてくれた。
(無限を司ると言われている龍ですわ。龍神の中でも最強の一角と伝えられております。ただ文献では他者や物事への興味が薄く、次元の狭間を住処としていると記されておりました)
なるほど。そんな凄い奴が出てきたから三人とも神妙な顔つきなのか。
「どうだ? 俺が自衛の為の戦力を集めた理由も納得だろ? なんなら和平の証として神器の研究情報を提供してもいいし戦力を貸してもいい。ま、それはそっちもだろうけどよ」
アサゼルの言葉にサーゼクスさんが頷く。
「ああ。こちらも和平の準備は既に出来ている。戦力を集めていた理由も判明した以上、我々悪魔は和平を結ぶ事に異論は無い」
「ではわたしも。天使も両陣営と和平を結びます。もっとも、我々が提供できる物は少ないですが。正直情報や技術では完全に後れを取ってしまっていますからね」
「代わりに人間界じゃ一番動き易いし、色々と顔も効くだろ? ま、色々細かい事はこれから決めよう。まずは互いの状況を――」
和平が成立した瞬間に三陣営のトップによる状況確認や情報交換が行われる。というか正直内容についていけないからあとでやって欲しい。
とりあえず気になる単語や情報のみに絞って頭の中に叩き込みながら、膝の上で欠伸している黒歌と、胸元に隠れている『彼』を撫でて安心させながら、視線を巡らせる。
一誠は既に会議から思考が外れ、何故かリアス先輩のうなじを凝視していた……円卓だからその位置だとほぼ三陣営のトップの三人からは丸見えだぞ一誠。
更に視線を動かす。ヴァーリは端から興味が無いのか、壁に寄りかかって目を瞑っている。寝ては居ないようだが話も聞いていないようだ。
グレイフィアさんはいつの間に取り出したのか、ティーセットが乗った銀台車を出してお茶の準備を始めていた。それを見て、ガブリエルさんとレイナーレ、他の護衛メンバーも手伝い始めた。
「はい白野」
「ありがとうレイナーレ」
お茶を持って来てくれてレイナーレにお礼を言うと、彼女は嬉しそうに照れ笑いを浮かべたが、すぐに恥ずかしくなったのか慌てていつもの表情で戻ってしまう。
そんなレイナーレの様子を微笑ましく思いながら、淹れて貰った紅茶を飲みながら話し合いが終わるのを待つ事にした。
「さて三陣営の話し合いも良い感じに進んだことだし、ちょっと話を訊きたい奴がいるんだが、いいかい?」
情報交換がひと段落したところでアザゼルが急に話題を切り変え、こちらに意味有り気な視線を向けてくる。
「月野君がどうかしたのかい?」
「いやな、前にこいつと接触した時に気になることを言っていたからよぉ。こういう機会は多くないからな。今の内に訊きたい事があるなら聞いてやろうと思ってな」
アザゼルの言葉に他の二人もなるほど、と頷いた。
急に発言権が回ってきた事に驚いたが、せっかくの申し出なので、会議が始まってからずっと気になっていた事を尋ねる。
「じゃあとりあえず一番気になっている事から訊きますが……どうして神が来ないんですか?」
自分の一言に、場の空気が変化した気がした。
オカルト研&セラフォルー「「あれ私達の出番は!?」」
作者「カットです」
はい。という訳で会談前編です。テンポ優先したので原作よりも流れが早いです。
それと原作よりも人数を大幅に減らしました。個人的にトップ会談なのだからそれぞれの陣営のボスと護衛の副官一人居れば十分だし、学園を良く知る人物が警備しなきゃ駄目だろ。という判断ですこうなりました。