岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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ギャスパー回。久しぶりの別キャラ視点オンリーの回。




【そして吸血鬼は戦場へと走る】

 目の前を駆けて行く背中を見詰める。

 

 僕の脳裏に、今日までの出来事が走馬灯のように駆け巡った。

 

 

 

 

 僕を救ってくれたリアス部長が、僕の封印が解除されて外出の許可が上から下りたと教えてくれたが、数年間引き篭もっていた僕にとって、外はとても怖い所でしかなかった。

 

 大勢の人の視線が怖い。みんなを止めてしまう力が怖い。止まった世界を見るのが怖い。

 

 そんな僕の恐怖心から、僕はまた大切な人達を止めてしまった。

 

 けれどその日はいつもと違った。僕が停止させた世界でも動ける人間が現れたのだ。

 

 その人は驚き戸惑う僕の手を力強く握ってくれた。僕は始めて、停止した世界で誰かの温もりを感じることができた。

 

 その人の名は月野白野。僕の一つ上の先輩だった。

 

 先輩は僕の話をよく聞いてくれた。

 

 急かす訳でもなく。強引に迫るでもなく。僕のペースに合わせて接してくれた。

 

 何故かは分からないが、先輩と居ると凄く安心できた。そして僕は先輩の申し出を受け入れ、その日から神器の制御の訓練を開始した。

 

 

 

 

 先輩は僕の為に早朝と放課後の時間を割いてくれた。同じ部活の先輩である木場先輩の話では、訓練から得た結果を元に、お昼休みも僕のために色々と考えてくれていたらしい。

 

 先輩は特訓の最中、注意はしても決して怒らなかった。

 

 僕が時を止めるのを失敗しても、止める対象を間違えても、無自覚に発動させてしまっても、先輩はいつも笑って『大丈夫だよ』って言って安心させてくれた。

 

 

 

 

 神器の訓練を始めて数日が経ち、先輩との訓練のお陰で少しだけ自分に自信が持てたと思った。

 

 そんな時にリアス部長に依頼人と直接会ってみないかと提案された。僕は最初は拒絶した。けれどイッセー先輩の付き添いでいいからと強くお願いされ、何より僕自身も、少しだけ期待していたのかもしれない。もしかしたら上手く行くのではないか、と。

 

 ――結果は散々だった。

 

 あれだけ先輩と一緒に頑張ったのに、僕はまた神器を暴走させて依頼人とイッセー先輩を止めてしまった。

 

 僕はまた自分の殻に閉じ篭った。

 

 悔しくて悲しくて、どれだけ頑張っても自分には無理なんだと思えた。

 

 そんな僕をもう一度奮い立たせてくれたのも、先輩だった。

 

 『君の力は誰かを救う可能性を持った力だよ』

 

 『ただ君を助けたいと思った』

 

 ――嬉しかった。

 

 忌み嫌い続けたこの力に、意味を与えて貰えた気がした。

 

 思えば先輩はいつだって僕を助けてくれた。見ていてくれた。

 

 だからもう一度頑張ろうと思った。先輩が見ていてくれるなら頑張れると思えたから。

 

 

 

 

 僕がもう一度立ち直ってから数日が経ち、ついに三種族の大事な会議が開かれた。

 

 僕は……もちろん旧校舎に置いて行かれる事になった。

 

 僕はそれを仕方ないと思った。実際、会議に参加するのは部長さん達で他のみんなは警備に回される。力が不安定な僕では警備の役には立たない。

 

 イッセー先輩が一人でも寂しくないように色々ゲームやお菓子を用意してくれたことは嬉しかった。

 

 それでも……僕は悔しかった。役に立てないことが。

 

 そんな僕に気付いたのか、先輩は以前袋で顔を隠すと安心することを覚えていたのか、小さなダンボールを僕に被せてから言った。

 

『もしかしたら敵が襲撃してくるかもしれない。一人で居るのは危険だから一緒に行こう』

 

 そう言って僕に蝙蝠に変身する様に言い、蝙蝠に変身した僕に『透過』の能力を施して服の内側に隠して会議に参加した。

 

 そして先輩の危惧は当たり、僕がいたであろう旧校舎が襲撃された。

 

 みんなの話では敵、禍の団とかいうテロリストは僕の神器の力を狙っているかもしれないと言っていた。

 

 怖かった。神器を抜かれたら死ぬ。こんなところで死にたくは無かった。もっとみんなと一緒に居たい。そう思う度に、足が震えた。

 

 僕が恐怖で竦んでいる間に、戦いは始まった。沢山の人が戦っていた。

 

 その戦場に、僕を助けてくれた部長と副部長、先輩の次にいつも僕を気に掛けてくれるイッセー先輩が向かった。

 

 三人は口にはしなかったが、彼らの目は僕に『待っている』と云っているような気がした。

 

 そしてそれに続いて先輩が僕に血の入った瓶と神器の力を抑制する腕輪を手渡してくれた。

 

 僕はどうすればいいか分からずに、先輩に答えを求めた。

 

 けれど先輩の答えは『自分で決めろ』と言うものだった。

 

 それでも僕は答えられなくて、背中を向けて戦場に向かう先輩にあの日と同じように叫ぶように尋ねた。

 

 怖くは無いんですか、と。

 

 先輩は怖いと答えた。僕は怖いのになんで立ち向かうのか理解できなくて、ならどうして、と尋ねると……先輩は空へと手を伸ばし、力強く何かを掴むように拳を握りながら答えてくれた。

 

『自分が傷付く以上に、痛くて、苦しくて、悲しい事があるって事を自分はもう知っているから。だから傷付くと分かっていても、拳を握って、顔を上げて、踏み出すんだ。自分と、自分の大切なモノを護る為に』

 

 そして先輩は最後にこちらに振り返り――。

 

『大丈夫だよギャスパー君。君はもう……一人でも踏み出せるよ』

 

 ――そう言っていつものように優しく笑ってくれた。

 

 その笑顔を最後に背を向けて走り出す先輩が……ずっと自分を見守ってくれていた背中が……ひどく遠く行ってしまうような気がした。

 

 怖い。戦うのは怖い。痛いのも怖い。でもそれ以上に……。

 

 みんなが居なくなるのが怖い! 一人になるのが怖い!!

 

 嫌だ。もう置いていかれるのは嫌だ!

 

 胸の奥で何かが、あの背中を、あの灯りを追えと急き立てる。

 

 僕は涙目になりながらダンボールを外して腕輪をつけ、渡された瓶の血を飲む。

 

 血を飲み下した瞬間、身体に熱が巡り、思考が冴え渡る。

 

「僕は……僕も……みんなと一緒にいたい!!」

 

 五感がかつてないほどに研ぎ澄まされる中で、先輩の言葉を心の中で唱える。

 

『拳を握れ』

 

 震える手を拳に変える。

 

『顔を上げろ』

 

 涙を拭って顔を上げる。

 

『踏み出せ』

 

 そしてみんなが『待ってくれている』戦場へと、蝙蝠に変化して飛び出す。

 

「僕もみんなを守るんだ!!」

 

 

 

 

「ヒュ~。あのオドオドしたヴァンパイアの少年が、いっちょまえにイイ顔して出て行ったじゃねぇか」

 

 それにあの血を飲んだ瞬間に少年の力が増した。何かしたな白野の奴。

 

 にしてもあいつ。上手く誤魔化しやがったな。

 

 会議に参加していた連中、少なくともリアスとソーナ達の眷属、そして俺様はギャスパーが居る事に気付かなかった。

 

 黒歌のオーラを良い感じに利用しやがったな。

 

 白野からは聖剣と人外の気配は確かにしていた。しかし聖剣はこちらを警戒して、そして人外の気配は悪魔の物であり、膝の上の黒歌からこちらを警戒するように放たれていた為に彼女の物と勘違いした。いや、させられたというのが正しいだろう。

 

 これだから人間は面白くておっかねぇぜ。

 

「……大した者ですね月野君は。英雄の資質を備えていると言える」

 

 俺がそんな事を考えている横で、ミカエルの奴が頼もし気な表情で若い連中が戦う戦場へと視線を向ける。

 

「はっ。あいつが英雄? 無理無理、どう考えたって真逆だ。あいつは自分の大事なモンの為なら世界すら滅ぼすぜ」

 

 俺はミカエルの言葉にそう反論する。これでも色々な人間を見て来たからな、そこそこ人間観察には自信がある。

 

「だが彼のあの他者を惹き付ける魅力は得難い力だ。出来ることなら本格的に協力して貰いたいが、難しいだろうね」

 

 サーゼクスが心底惜しむような表情で溜息を吐く。

 

「あいつは自分のやり方を曲げられるような器用な奴じゃなさそうだし、アレでいいだろうよ。なんだかんだでこっちの頼みを聞くだけは聞いてくれるお人好しだしな」

 

「そうですね。我々に物怖じせずに意見できるのも、今後この街で問題が起きた時に頼もしく思います」

 

 今後この街は異種族に溢れる。それは俺達三人の共通認識だ。

 

 そんな連中の問題を解決したり支えになるのは、きっと白野のような現実の価値観に囚われない奴の存在だと俺達は考えている。

 

「さて、期待する以上は俺達もあいつ等の手助けをしないとな」

 

 校舎への攻撃が減ってサーゼクスとミカエルだけでも結界の維持は十分だと判断し、俺も加勢に行こうとしたその時、地面に魔方陣が浮かび上がる。この魔方陣は確か……。

 

「これは旧魔王レヴィアタンの紋章!?」

 

 おおそうだそうだ。てことは……今回の首謀者はあいつか。

 

 魔方陣から現れたのは胸元を大きく開き、スリッドが深く入った露出の高いドレスを着た眼鏡を掛けた女悪魔、魔王レヴィアタンの血を引く純潔悪魔のカテレア・レヴィアタンだった。

 

「御機嫌ようサーゼクス殿」

 

「カテレア……これはどういう事かな?」

 

 サーゼクスが探るように尋ねると、カテレアは挑戦的な笑みを浮かべて答えた。

 

「我々旧魔王派の殆どは『禍の団』に協力する事に決めました」

 

「はっ。ついに新旧魔王同士の確執もそこまでいったか」

 

 同じ組織の長として同情するぜサーゼクス。

 

 元々旧魔王派は戦争時に最後まで徹底抗戦を宣言し続けた好戦派だった。そのため現魔王とは主張がぶつかり合い、その結果旧魔王派は冥界の隅に追いやられたと聞いていたが、その立場を利用して色々と動いていたって事か。ホント、自分のトコもそうだが、どの陣営も敵が身内にいるっていうのは色々キツイぜ。

 

「何故だカテレア?」

 

「我々はただあなた達とは逆の考えに至っただけです。本来の神も魔王もいないのなら、新しく世界を作り直すべきだと、そう結論付けました」

 

「……神の不在をどこで知ったかはあとで追求するとしてだ。オーフィスの奴はそこまで未来を見通しているのか? 奴の性格を考えるとそこまで深く考えているとは思えないが?」

 

 俺が問い質すと、カテレアは俺を馬鹿にしたような笑みを浮かべながら答えた。

 

「彼は力の象徴として力を集結させる役割を担うだけです。彼の力を借り、世界を一度滅ぼして新たな世界をわたし達が創造するのです!」

 

 なんだそりゃ? やってる事は『強い用心棒が居るんだぜ』と粋がるその辺の小悪党と同じじゃねぇか。

 

「お尋ねしますがカテレア・レヴィアタン。あなたの言った世界の変革。それがあなた達『禍の団』の総意と取ってよろしいのですね?」

 

「ええ、その通り。今この世界を支配する法と理念を破壊し、オーフィスを新たな神として我々が新たな『システム』を構築し、世界を管理します。故に、あなた達はもはや不要なのです」

 

 ああ、駄目だわ。うん、耐えられん。

 

「ハハハハハ!」

 

「……何が可笑しいのですアザゼル」

 

 その顔に明確な怒りの色を浮かべてこちらを睨むカテレアに、俺は笑いながら言ってやった。

 

「これが笑わずにいられるかよ。御大層に色々言っているが、結局お前ら『禍の団』の連中は自分の現状が気に食わないからいっそ世界を壊そうぜって事だろ? 人間だってもっと我慢強いぞ」

 

 俺の言葉にカテレアが目を細めて殺気と魔力を溢れさせる。

 

「我々を愚弄するか! アザゼル!」

 

「愚弄? ああするね。お前らの陳腐で幼稚な目的なんて俺達からすれば傍迷惑もいいところだ。思い通りにならなくて当然なのにそれを良しと出来きず、その現状を打破しようと足掻きもしない。悪いがそんな連中に滅ぼされてやるほど、俺の命は軽くねーんだよ」

 

 俺も翼を広げてカテレアの魔力に対抗する。さて、さすがにここで戦うわけには行かないな。

 

「サーゼクス、ミカエル、俺がやる。きっちり結界を維持しろよ」

 

「カテレア……降るつもりは無いんだね」

 

「ええ。サーゼクス、あなたは確かに良き魔王ですが、最高の魔王ではなかった。故に我々は新しい魔王を目指します」

 

 カテレアのその言葉を合図に、俺とカテレアはヴァーリが空けた穴から外へと飛び出す。さて、いっちょ頑張るかね。

 

 実際、カテレア・レヴィアタンの実力は上位クラスだ。こういう性質の悪い連中に限って強くてしぶといのはどうにかして貰いたいぜ。

 

 内心で愚痴を漏らしながら、上空で俺とカテレアは激突した。

 




男の子なギャスパー君を目指した! でも絵的には女装のままだぞ(ダメじゃん!)

あと基本的にこの作品ではアザゼルはまともな部類です。原作見ちゃうと言ってる事が一部ブーメランだけど、でも他の二人の長に言わせるよりはアザゼルに言わせるのが一番説得力があると思った(なんだかんだで一番部下やその家族の為に裏で色々働いてるしね)

あとカテレアはアニメの絵が物凄く好みだったので……嫁入りさせるか心の底から悩んだ!

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