岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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【一つの夢が終わる時】

 ……無茶をするなぁ。

 

 人の事は言えないが、一誠の行動に共感を抱きながら自分はその瞬間を待つ。

 

 みんなは痛みによって絶叫する一誠を見守っている。

 

 一誠の体から稲妻の様な閃光が走り続ける。赤い龍と白い龍の力を得る。多分木場の聖魔剣を参考にしたのだろうが、一誠の場合は自分の肉体に宿すようなものだ。あの激痛はその為だろう。

 

 ……頑張れ一誠。

 

 必至に新たな力を得て、生還する為に足掻く親友を一瞥したあと、もう一つの戦いへと視線を向ける。

 

 そっちではアザゼルがいつの間にか黄金の鎧を纏っていた。どことなくドライグと似たような雰囲気を感じる。

 

 そして女悪魔とアザゼルが交差した瞬間――女悪魔の体が切り裂かれる。

 

「まだです!」

 

 女悪魔の腕が触手のように伸びてアザゼルの左腕に撒き付く。

 

「せめてあなただけでも道連れにします!」

 

「自爆か。しかもこの触手、呪詛まで流し込んでやがるな……仕方たねぇな」

 

 アザゼルは嘆息すると――躊躇い無く自分の左腕を切り落とし、持っていた光の槍をそのまま相手へと投擲した。

 

「そん……な……」

 

「左腕くらいくれてやるよ」

 

 フェイスを開けて余裕の笑みを浮かべるアザゼルを驚愕の表情で見詰めていた女悪魔だったが、すぐに体が灰となって崩れ落ち、消滅する。

 

 向こうは終わったか。

 

 一誠達の方へ改めて視線を向けながら自分も準備に入る。

 

 物質化制御(マテリアライズ)――心象接続(コネクト)

 

 ――武装――ギルガメッシュの黄金双剣――具現(ダウンロード)

 

 瞬間。頭痛が生じる。

 

 ぐっ。やっぱりサーヴァントの武器はキツイな。

 

 脳と身体に負担がかかる。出来る限りそれを抑える為に処理速度を落として時間を掛けて物質化制御を行い、投影する。

 

 黄金の双剣。名は無い。だがギルガメッシュは剣を使う時はこの剣を好んで使っていた。

 

 アーチャーの双剣とは違い、刀身部分が長く太い為、片手剣として十分に振るえることから単体でも使用していたのを覚えている。

 

 徐々に黄金の双剣が形を成すにしたがって体からエネルギーが消えて行く。

 

 ……みんなからエネルギーを貰っておいたお蔭でなんとかなりそうだな。

 

 脳と肉体の疲労は凄まじいが命を削る事は無さそうだ。

 

 そしてついに――黄金の双剣が形を成す。

 

「みんな、準備が完了した」

 

 全員にそう伝えながら顔を上げる。どうやら一誠の方も佳境だ。黄金の双剣の維持に集中しながら、残ったエネルギーを使って切り札である彼女を強化する。

 

「《code:gain_all(C)》」

 

 さて、あとは上手く行く事を祈ろう。

 

 

 

 

 激痛に叫び続ける俺とドライグ。それでも俺達は痛みに屈せず、そして……ついにそいつを仰する。

 

 自分の右腕が光り輝き、そしてそこには白い装甲に青い宝玉を宿した白い籠手が出現した。

 

「へへ、やったぜ。さしずめ『白龍皇の籠手(ディバイディング・ギア)』ってところか」

 

 疲れ果てた身体に鞭打って、新たな力を得た右手を構える。そんな俺の姿に、ヴァーリは心底嬉しそうに笑った。

 

「はははは! すごいぞ兵藤一誠! いいだろう。俺も少しばかり本気になるとしよう」

 

 そう言って奴は突然校庭の脇にある木々へと手を向ける。

 

『Half Dimension!』

 

 奴の宝玉から音声が響くと同時に木々の空間が歪み、一瞬にしてその付近の木のサイズが半分になる。

 

「これが禁手状態で使える白龍皇の能力『全てを半分にする力』だ」

 

「……はああああ!?」

 

 俺はそのあまりにもチートな能力に思わず叫んだ。ふざけんな! こっちは死ぬ思いでお前の相手の力を半分にする能力を得たって言うのに、今度は触れもしないでしかも物理的に半分にするだと!

 

「さあ勝負だ兵藤一誠!」

 

 打って来いと言いたげに構えるヴァーリに、もはや悩んでいる暇は無いと一気に飛び掛る。

 

「おおおおお!!」

 

 右腕を奴の顔面に叩き付ける。そして『Divide』という宣言と共に奴の力が半減し、すかさず左の拳をヘッド部分に叩き付けると、先程と同じように砕け散る。

 

「くっ。なるほど、自分で受けてみて初めてこの力の有用さを実感する。右で装甲を弱らせ左の龍殺しで追撃、中々のコンビネーションだ。さて、お返しだ!」

 

 ヴァーリが口元から軽く血を流しながら手を前に出す。

 

 嫌な予感がして咄嗟にその場を飛び退く。しかし足が間に合わなかったのか脚部の装甲が砕け散る。

 

「鎧が盾になって防がれたか。喰らっていれば左足を細められたんだがな」

 

「そんな不恰好になるのはゴメンだ――っ!?」

 

 急に力を失う感覚を感じてその場に膝をつく。

 

 まさか!?

 

『そのまさかだ……白龍皇の籠手を得るのに無茶をしすぎた……限界だ相棒。むしろ一撃入れるまでよく保てたと褒めたいところだ』

 

 ドライグがどこか無念そうにそう告げると同時に……赤龍帝の鎧が一気に霧散してしまう。

 

「ぐっくっそぉぉ!?」

 

 つけていた腕輪も粉々に砕け散り、左手の赤龍帝の籠手も気を抜けばすぐに意識と共に消えてしまいそうだった。

 

「……ここまで――」

 

 ヴァーリが口を開こうとした瞬間――奴の傍を三日月形の黄金の軌跡が走り、ヴァーリがそれを後ろに下がって回避する。

 

「ぐっ!」

 

「悪いが君からは意識を逸らさなかったよ! 例え『透明』でも君の気配は分かる!」

 

 地面が砕ける音と共に白野が金塊で作ったかのような文字通りの『黄金の片手剣』を振りぬいた姿で俺の前で膝を着く。

 

 どうやら先程の一撃はヴァーリの油断を利用した白野が、聖剣の『透過』と『加速』の力を使って奇襲したみたいだ。しかしヴァーリには初めから見抜かれていたらしい。

 

「そうだな。宣言通り……君にはここで悪魔に転生して貰おう!」

 

 ヴァーリがその手を手刀の形にして大きく振りかぶる。白野はもう限界なのか、持っていた剣は砕け、悔しげに項垂れるだけだった。

 

「くそ、やめ――!?」

 

 俺がヴァーリを睨み声を上げたその瞬間――気付けば吹き飛ばされていた。

 

「うわあああ!?」

 

「っ――!!」

 

 白野と一緒に吹き飛ばされ、地面を二転三転してようやく止まる。

 

「いっつぅ。なんだよ今の」

 

 急に目の前で何かが爆発したような強い衝撃を受けて吹き飛ばされた。

 

「くっ」

 

 隣で同じ様に身体を強く打ちつけ蹲っていた白野が痛みを我慢した顔で立ち上がり、そして土煙が舞う先程まで俺達が居た場所に向かって呼びかけた。

 

「黒歌!」

 

 黒歌? え、何? まさかさっきの爆発は黒歌さんの仕業なのか?

 

 白野が呼びかけると、爆心地の土煙の向こうに人影が浮かび、そして……黄金の軌跡が一閃すると同時に土煙が払われる。

 

「御主人様――勝ったわ!」

 

「……うおぅ」

 

 現れた黒歌さんの姿は、なんというか、喜ぶに喜べない姿だった。

 

 着ていた着物のあちこちが破けて胸は完全に露出し、下半身の下着も露出している。

 

 これだけだったら白野には悪いが眼福眼福となるのだが、彼女は身体は血で濡れ、足と手には酷い裂傷を幾つも負い、そこから血が滴り落ちていてとても痛々しい姿をしている。

 

 それでも、何故か黒歌さんは誇らし気な顔を白野に向け、白野は安堵の表情を浮かべながら、同じ様な表情で頷き、黒歌さんの元へと向かう。

 

 俺も後を追うように疲れた身体に鞭を打って立ち上がり、歩みを進める。黒歌さんの方を改めて見ると、彼女の元にはいつの間にかアーシアがいて、すでに治療を開始していた。

 

 そしてそんな二人を護るように他のグレモリーのみんなとゼノヴィアとイリナが護衛していた。

 

 というか、なんか地味にクレーターが出来てるじゃねぇか。

 

 彼らがいる場所は軽く陥没して小さなクレーターが出来ていた。

 

「――え?」

 

 そして近付いてようやく、忘れていた存在に気付いた。

 

 クレーターの中央。みんなが黒歌さんから護る様に警戒している先には、ヴァーリが横たわっていた……頭の無い状態で。

 

『――馬鹿な』

 

 驚愕の声を上げたのはヴァーリの相棒のアルビオンだった。そのありえないと言った感じの声色は、まさに俺とドライグの気持ちをも代弁していた。

 

 俺はまだ信じられずに、目の前の光景をただ見詰めることしかできなかった。

 

 

 

 

 地に伏し、フルプレートのヴァーリの身体が徐々に消滅して行く。

 

『一体何が起きたというのだ!?』

 

 背中の光る翼からアルビオンの困惑した声だけが響く。

 

 そんなアルビオンに、近くまで来た自分が答えた。

 

「作戦はいったって単純だ。お前達がずっと意識していた自分を囮に初撃を行い、お前達が避けた所をコードキャストで強化した黒歌が止めを刺す。それだけだ。まぁ、黒歌にはかなり無理して貰ったけど、そのくらいしないとお前達には勝てないだろうからな」

 

『馬鹿な。そんな……』

 

 アルビオンからありえないと言った感じの叫びが上がる。

 

「何をそんなに驚く事がある。彼女は仙術の穏行でオーラも消せて初動を覚らせず、魔力操作に長けているから魔力放出で一瞬でトップスピードまで加速でき、妖怪の身体能力による高い攻撃力もある。黒歌は間違い無く自分達の中では最高戦力だ」

 

 そう。初めから自分がヴァーリを討てるだなんて考えていなかった。浄眼でヴァーリがこちらを常に意識していたのも知っていた。

 

 だからこそ自分が『囮役』を買って出たのだ。

 

『だ、だがヴァーリの肉体をあんな簡単に斬り裂くなど、あの剣はなんだ!?』

 

「あれだって特別な能力は無い。ただの頑丈な『双剣』だよ。もっとも、技術の無い強者が剛腕に任せて振っても壊れない程のな。それだけだって立派な名刀だ」

 

 混乱気味に放たれるアルビオンの質問に淡々と答えて行く。

 

 そう。あの双剣に特別な能力なんて無い。ただ考えてみて欲しい。あのギルガメッシュが力に任せて『全力で振っても壊れない』のだ。それだけであの剣の強度の高さが分かるというものだ。

 

「お前達は特別に拘り過ぎたんだ。自分や一誠に集中し過ぎて、一番強い黒歌から目を放した……それがお前達の敗因だ」

 

 もはや消え掛けている光の翼にそう宣言する。

 

『負け……まさかこのような形で今代のドライグとの戦いが終わるとはなぁ』

 

『ああ、俺も予想外だ。だが白野の言葉通りだろう。俺達はお互いに意識し過ぎていた……立場が違えば俺がそうなっていただろうな』

 

 力ないアルビオンに、ドライグはどこか寂し気に返事を返す。

 

『ふっ。ドライグの主……こっちに来てくれ』

 

「お、俺?」

 

 呼ばれた一誠が困惑気味に自分を指差す。

 

『時間が無い。急いで私に右手で触れるのだ』

 

『相棒、俺からも頼む』

 

 二人のドラゴンに乞われた一誠がアルビオンの光る翼に触れる。すると一誠の右腕が白く輝き、そこには先ほど見た白い篭手が装着されていた。

 

『私の力を定着させた。進化することは無いだろうが有効に使うのだな……ではなドライグ』

 

『ああ』

 

 アルビオンはその言葉を最後に消滅し、ドライグは短くそれだけ返して沈黙する。

 

「……悪いなドライグ。お前達の宿命は理解するが……それよりも自分は自身の都合を優先する」

 

 彼の理想はいずれ人間界が戦場になる物だ。そんな物は許す訳には行かないし、自分を殺そうというのだから身を守るためにこうするしかなかった。

 

『仕方ないだろう、気にするな白野。それに我々の別れは一時のものだ。いずれまたどこかでアルビオンは復活し、また戦う事になるだろう』

 

「……ありがとう」

 

 許してくれたドライグに短くお礼を述べながら、物質化制御の維持を解いて周りを見渡す。どうやら魔術師達は全員倒しきったみたいだ。残ったのは死屍累々の光景と疲れたように蹲る友人達と戦士達。

 

 やっぱり戦いは好きじゃないな。

 

 確かに戦いや争いは時に人を大きく成長させるだろう。故に理解も、納得もしよう。

 

 だがそれでも――自分は決して受け入れたりなんてしない。

 

 これから先も、自分はこの矛盾を抱えたまま戦っていくことになるだろうが、それが自分で選んだ道だ。後悔は無い。

 

「……はあ。色々と疲れた」

 

 肉体的にも精神的にも疲れ果てた自分は、その場に座り込んで大きく息を吐いた。

 

「大丈夫か白野?」

 

「そっちこそ。無茶し過ぎだ」

 

「お前にだけは言われたくない」

 

 傍で似たように座り込んでいる一誠の言葉にそう返しながら二人揃って苦笑する。

 

「大丈夫にゃん、御主人様?」

 

「ああ、黒歌に比べたら問題ないよ。ただの打ち身と魔術の使い過ぎによる頭痛だ」

 

 今回黒歌には無理をして貰った。あのヴァーリを一撃で仕留めるには速さが何よりも必要だった。その為に強化を施した上で黒歌に足へのダメージを考慮せずに思いっきり魔力放出込みで踏み込んで貰ったのだ。

 

 腕の怪我は予想外だったが、急加速の中で無理矢理動かせば、まぁそうなるよな。やっぱり自分はまだまだ未熟だ。

 

「黒歌、無茶な願いを聞いてくれてありがとう。怪我の具合は?」

 

「ふふ。アーシアちゃんに治して貰ったから問題ないにゃん。何より御主人様の為に負った傷なら、わたしとしても誇らしいわ」

 

 治して貰った黒歌の腕と足には、いくつか傷跡が残ってしまっていた。しかし黒歌はその傷を愛おしそうな目で撫でるだけで自分を責める事は無かった。

 

「イッセー!」

 

「白野君!」

 

 大きな声と共に振り返ると、仲間達が笑顔で駆け寄ってくるのが見えた。

 

 これから色々あるだろうが……ま、みんなと一緒ならなんとかやっていけるだろう。

 

 そんな事を考えながら、一誠と二人で立ち上がって仲間の下へと足を進めた。

 

 

 

 

 眼下での戦いが終わり、俺は灰となったヴァーリの傍に降り立つ。

 

「……なぁ満足かヴァーリ、戦いの中で死ねてよぉ?」

 

 頭を過ぎるのはガキの頃のヴァーリの姿だった。

 

 どうやら意外と俺様もセンチメンタルな方だったらしいな。

 

 僅かに心を蝕む苛立ちと寂しさに頭を掻く。

 

 この事態は想定していなかった。それくらいの強さを、あいつは持っていた。

 

 だが、長いこと戦場に居なくて忘れていた。

 

「戦いに絶対は無い。忘れてたぜ」

 

 どれだけ強かろうが死ぬ時は死ぬ。それが戦いだ。ましてや今回、ヴァーリは完全に油断していた。

 

 ま、一番悪いのはあいつの考えを改められなかった俺だわな。

 

 大事な戦力であり『仲間』だった男に軽く黙祷を捧げ、俺はサーゼクス達の元へと向かった。

 

 生き残った俺達にはすぐにでもやるべき事が山のように残っている。だから悲しんでいる暇は無い。

 

 俺達三種族の新しい未来は、まだ始まってすらいないのだから。

 




はい。と言うわけで……彼の夢は終わりを迎えました。

実はかなり悩みました。基本的に私、原作キャラは原作で死んだキャラ以外は極力殺さないようにしています。ヴァーリも好きなキャラでしたしね。

しかし、この物語での現段階での白野とヴァーリの関係を考えると……たぶんこの流れがもっとも自然だと判断しました。

さらに決断の後押しの要因になったのは、ヴァーリが一誠達と本格的に共闘する理由がこの作品では存在しなくなるからです(つまり原作の後半のボスポジである黒幕の二人が出てきません)

以上の理由でこうなりました。成長した一誠とヴァーリの決闘を楽しみにしていた人は申し訳ない。

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