岸波白野の転生物語【ハイスクールD×D編】【完結】   作:雷鳥

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今回はオカルト部での一誠の神器覚醒の回です。



【オカルト部からの勧誘】

「なんじゃああああこりゃあああーー!?」

 

 本日二度目の一誠の驚愕の悲鳴を聞きながら、ソファーに座って朱乃先輩が淹れてくれたお茶を飲みつつ、先程までの事を思い出す。

 

 まずは一誠の事情からと、グレモリー先輩と一誠の話し合いが行われた。

 

 最初に一誠が尋ねたのはもちろん夕麻ちゃんについてだ。

 

 グレモリー先輩は一誠の状況から彼女を堕天使と断定したらしい。

 

 この時初めて知ったが、堕天使は最初から堕天使として生まれる者と、天使が自己の欲望によって堕ちた者の二種類が居る。大抵純潔の堕天使は後者で、前者は人間とのハーフが多いと教えて貰った。

 

 そしてグレモリー先輩は一誠が夕麻ちゃんに殺されたあとに自身が生き返らせた事を告げた。

 

 どうやら偶々デートの日に悪魔が願いを叶える為に配っている召喚用のチラシを貰っていた一誠は、死ぬ間際に強く死にたくないと願った為、グレモリー先輩が呼ばれ、その場で一誠を悪魔に転生させたらしい。

 

 もちろんそこには彼女の打算があった。そしてそれが一誠が狙われた理由でもあった。なんと一誠も神器持ちだったのだ。

 

 つまり、一誠は運悪く『神の子を見張る者』の連中の目に留まってしまい、一誠の神器が危ないかどうかを調べる為にレイナーレが派遣され、そして危険と判断されて殺された。といったところか。

 

 そしてここからグレモリー先輩の打算の話になる。

 

 なんでも悪魔は以前の天使と堕天使との三つ巴の戦争で純粋な種の数を大幅に減らしてしまったらしい。

 

 元々出産率が低いらしく、このままでは堕天使や天使に滅ぼされる可能性があると判断した悪魔達は素質のある他種族を悪魔に転生させて眷属を増やす事にしたんだそうだ。

 

 それはグレモリー先輩も例に漏れず。死に掛けた一誠を見て、状況から堕天使に殺されたと判断した彼女は強力な神器を持つ可能性のある一誠を下僕にするため悪魔に転生させた。

 

 そして今、夕麻ちゃんの一軒から少しだけ落ち着きを取り戻した一誠が神器のレクチャーを受け、初めて神器を出して叫んだと言うわけだ。というか出せるものなんだと初めて知った。

 

 一誠の手には手の甲に緑色の宝玉を付け、手首辺りまで赤く鋭角なフォルムで覆われた籠手らしき物が装着されている。

 

 そんな一誠の神器に対して、自分の場合は手の平からオーラのようなものが出てそれが形を成す。距離が離れた場所に出す時は、手の平と出したい場所に空間の歪みが現れ、手の平からオーラが空間に吸い込まれ、もう一つの空間の上に料理や飲み物が生成されて現れる。

 

「それが一誠の神器よ。一度出れば後は自由に出し入れできるわ……さて、それじゃあこちらも、もう一つの本題に入りましょうか」

 

 一誠からこちらに視線を移すグレモリー先輩。どうやらようやく自分を呼んだ理由を説明してくれるらしい。

 

「白野、あなたをこの場所に呼んで正体を晒した理由は……あなたを守る為よ」

 

「自分を?」

 

 首を傾げながら尋ねるとリアス先輩が頷いた。

 

「運悪く堕天使の痕跡消去を免れてしまったあなたに、一誠を殺した堕天使が接触して来るかもしれないわ。本来なら暗示で記憶を消すのが一番なのだけど……朱乃と祐斗が反対してね」

 

「そうなのか……みんなの記憶が消えるのは嫌だったな。ありがとうございます朱乃先輩。祐斗」

 

 二人のお礼を伝えると二人共嬉しそうに答えてくれた。

 

「うふふ。気にしないで下さい」

 

「そうだよ。僕もいきなり白野君に態度を変えられたら寂しいしね」

 

「まぁあなたなら私達の正体を知っても他言しないだろうし、今まで通り接してくれると判断して正体を明かす事にしたって訳よ。それと安全の為にこれを持っていて」

 

 そう言ってグレモリー先輩は一枚のチラシを机の上に置いた。チラシには『あなたの願い叶えます』という文字と魔方陣が描かれていた。裏面にはアンケートのような物が書かれている。

 

「もし堕天使と接触する事があったらそれで私達を呼びなさい。部室には一応私か朱乃がいるから、どちらかが駆けつけられると思うわ」

 

「分かりました」

 

 こちらがチラシを受け取るのを見届けたリアス先輩は、満足そうに頷くと口元に笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「ところで白野、あなたも神器持ちよね?」

 

「……はい。名前はさっき知りましたけど」

 

 黒歌に聞いて知っていたが、知っていると言うと黒歌の事を話さないといけないので、知らぬ振りをする。

 

「あら? 隠さないのね」

 

「だって先輩、顔が笑っていますよ。どうせ確信を持って言っているんでしょ?」

 

 そう答えるとグレモリー先輩が舌を出しながら、あらバレちゃった。とお茶目にウインクする。その仕草を見て一誠が顔を赤らめて、可愛い。と呟く。まぁ可愛い事は否定しない。

 

「この部屋には色々と防衛の為に結界が張ってあってね。一誠が来るから一応神器に反応する結界を起動しておいたの。そしたら一誠だけじゃなくてあなたにも反応があってビックリよ」

 

 なるほど。流石に悪魔の拠点だけあって色々と処置が施されているんだな。

 

「先輩の神器は覚醒済みなのですか?」

 

 搭城さんが少し興味を抱いた目でこちらを見つめながらそう尋ねてくる。思えば初めての会話な気がする。

 

「うん。ただ神器の事は今日初めて知ったから勝手に名前をつけて使っていたんだけど。能力はエネルギーを食べ物や飲み物に変換して相手に与える事で相手の生命力を回復する回復系だね」

 

「食べ物ですか?」

 

 首を傾げながら塔城さんが興味津々な目をする……可愛い。妹がいたらこんな感じだろうか?

 

「ああ。味から食感まで完全に再現できる。アレンジも可。こんな感じだね」

 

 そう言って神器を発動して、塔城さんの前の空の器に二切れの芋羊羹を出す。

 

「因みに温度は熱い物は温かい状態で、冷たい物は冷えた状態で出る。ある程度は冷めたり温まったりするけど、基本それが美味しく食べられる適温に保たれる」

 

「……では、はむ。んん~♪」

 

 芋羊羹を口に運ぶと塔城さんは幸せそうな表情で噛み締め。ずず~と緑茶を飲んで更に恍惚とした表情をする。

 

「確かに食べた瞬間に身体が温かくなって、力が湧いている気がします」

 

「へ~面白い神器ね」

 

 ついでとばかりに自分が今まで纏めた能力の内容を説明する。もちろん黒歌の事は内緒にしているのでいくつかの部分を意図的に省いた説明になるが、それでも基本的な事は変わらないので問題ないだろう。

 

「まるで聖杯の元になったケルト神話に出てくるダグダの大釜のようね。飢餓や病気を治す為に生命力や体力といったエネルギーを回復するってところが近いわ」

 

「ええ。ですから自分はこの能力を勝手にこう呼んでいました。『豊穣神の器』と」

 

「なるほど。なかなか洒落ているわね。ところで白野……あなたも悪魔になってみない?」

 

 グレモリー先輩が笑顔でなんか怪しい気配を放つ赤いチェスの駒を取り出す。確かこの駒の形は『騎士(ナイト)』だったか?

 

「それは?」

 

「これは【悪魔の駒(イーヴィル・ピース)】。色々効果はあるけど、今はとりあえずこれを使えば悪魔に転生させられるってことだけ覚えてくれていればいいわ。それでどうかしら?」

 

「いいじゃねーか白野! 一緒に悪魔になろうぜ!」

 

「いや軽すぎるだろ。そんな一緒にトイレ行こうぜ的なノリでは決められないって。というか、自分は人間のままでいいです」

 

 一誠の言葉にツッコミを入れつつグレモリー先輩の申し出を断る。そして黒歌が悪魔に転生できた理由も分かった。どうやらあれで悪魔になったのだろう。後で彼女から詳しい事情を聞くとしよう。

 

「そう。まぁ強制はしないわ。ただあなたも神器を持っている以上は気をつけなさい。教会で訓練された人間ならともかく、私達の世界は一般人では簡単に死んでしまう裏の世界だから」

 

「ええ。一応自分に変な力があると分かってから鍛えてはいますが、身の程は弁えています。でも、もしも自分の力が必要だったら遠慮無く言ってください」

 

 どの道見て見ぬ振りが出来ない性格だし……まぁ桜との約束があるから、無茶はしても無理はしない。

 

「……そうね。あなたの力が必要な時は、遠慮無く頼らせて貰うわ。あなたも、私達みたいな連中絡みで何かあったら遠慮なく頼ってね。私の下僕達の友達なのだから」

 

 少し含みのある笑みを浮かべてそう提案するグレモリー先輩。もしかしたらまだ自分の勧誘を諦めていないのかもしれない。

 

「ありがとうございますグレモリー先輩。みんな、ただの人間だけど、これからもよろしく」

 

「おう!」

 

「うん」

 

「よろしくおねがいします」

 

「ふふ。楽しくなりそうですわ」

 

 こうして自分は日常から非日常の世界へと本格的に足を踏み入れた。そして帰って黒歌に事情を説明しないといけないことに気付き、頭を抱えた。

 




と言うわけで白野は悪魔にならず、本格的な入部もしませんでした。
基本自由に動ける立場のままで居て欲しいので、どこかに所属させる事はしません。

そして部室の神器の感知系の結界は完全に独自設定です。いや、正直本拠地なのに防衛機能が手薄すぎる気がしたんですよ。原作だと壁や床に無数の文字があるという描写があるし『彼』も封印さているから、まぁそういう感知系の術式が書かれていてもいいかと思い、今回の形になりました。

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