もしも比企谷小町が姉だったら・・・   作:fate厨

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忙しくてアップが遅れました
申し訳ありません。誤字脱字がありましたら教えてください。


第4話

奉仕部部長になって一週間が経過した。

 この一週間は特に依頼もなく、時々平塚先生の手伝いをするぐらいだ。

 まぁ昼食をとる場所を探す手間が省けたのは良かった。俺の長年培った掃除技術のおかげで部室内のほこりっぽさはなくなり、そこで飯を食べるとまるでピクニック・・・とまではいかないがそれなりの気分で飯を食べることができる。

 そして、これから3年間はここは俺の部屋だ。俺の、俺による、俺のためのプライベートスペースだ!なんて思っていた矢先、太陽神ラーが俺の邪な心を見抜き、天罰を与えるがごとく、新たな新入部員が入ってくることになるのである。

 

 

 

 

 コンコンという音とともにドアが開けられた。

 こちらの返事を待たないノックなら、する必要がないと思うのですが、そこのところはどのようにお考えですか平塚先生。

 

「比企谷。邪魔するぞ」

 

 先日発売されたとあるラノベの新刊を閉じ、ドアのほうに目を向ける。

 そこに立っていたのは、俺の担任であり、この部活の顧問でもある女教諭。平塚静だ。

 また雑用だろうか。奉仕部なんていいながら平塚先生の奉仕しかしてない。もしかしてこの人最初からそのつもりで・・・

 思わずため息が出てしまった

「・・・それで今日は何をすればいいんですか」

 

「なんだその言いぐさは。まるで私が毎日君に、何かさせてるみたいじゃないか」

 

 まるでも何もその通りなんですけど。昨日も一昨日もあなたの雑用やりましたよね。

 

「まぁ今日はあれだ。君もずっと一人じゃ寂しいと思ってな。新入部員を連れてきてやった」

 

 何だそれ。すっげー有難迷惑。一人が寂しくない人種だっていることをぜひとも教えてあげたい。

 

「新入部員?どこに」

 

「うむ。雪ノ下。入ってきたまえ」

 

 その言葉をうけ、一人の女子生徒が入ってきた。

 平塚先生と同じくらいの長さの黒髪。年齢のせいか平塚先生のよりもつやつやしている。いや平塚先生の髪も素敵ですよ。容姿もほかの生徒とは一線を画していて、制服も同じものを着ているはずなのに、心なしか違うものに見える。

 粉うことなき美少女がそこに立っていた。

 雪ノ下というらしい女子生徒が平塚先生に向かって抗議の声を上げる。

 

「平塚先生。私は読書ができる静かな場所だと聞いてここに来たのですが」

 

 ああなるほど。平塚先生に騙されたんですね。かわいそうに。

 

「あぁ。この部活では彼は空気だから、読書をするにはうってつけの場所だと思うよ」

 

 先生、俺の目の前で俺の悪口いうのやめてくれませんか。

 

「この男と二人きりで読書なんてできるとは思えません」

 

 おいちょっと待て。俺がお前に何かするとでも思っているのか。そんなつつましやかな胸に興味はない。

 

「そこは安心していい。彼に刑事罰に問われることをする勇気はないよ。私が保障する」

 

 そんなこと保障されても全然嬉しくないんですけど。

 ていうかさっきから全然口をはさめない。心の独り言が多いな。

 彼女は少し考える仕草をしたのち、答える。

 

「・・・まぁ私もこの部活には興味がありましたし、しばらく参加してみて、今後のことは決めます。それでもよろしいでしょうか」

 

「ああ。それで構わない。それでは頑張ってくれたまえ。比企谷。雪ノ下」

 

 そういうと先生は、白衣をたなびかせながら颯爽と部室を後にした。やっぱりかっこいいな。

 女子生徒は先生が出ていったのを確認すると、教室後方から椅子を一つ持ってきて座った。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 沈黙が教室を包み込む。

 あれこういう時って俺から声をかけるものなの?それとも声をかけなくていいの?新入部員なんて全く想定していなかったからどうすればいいのかわかんない。いや想定しててもわかんなかったと思うけどさ。

 意を決して俺は雪ノ下に声をかけようと口を開く。

 

「・・・あの・・」

 

「それ以上近づいたら通報するわよ」

 

 いや怖い。怖いよ。ちょっと声かけようと思っただけで、通報宣言とかどんだけ俺のこと嫌いなの?ってかすでに3メートル近く離れてるんですけど。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

 びくびくしていた俺を見かねたのか、雪ノ下のほうから沈黙を破った。

 

「・・・あなた、名前は」

 

「比企谷八幡・・だけど」

 

「そう、私は雪ノ下雪乃。私もこの部活に参加する以上、やらなくてはいけないことはやるつもりなのだけれど、ここは一体何をする部活なのかしら。奉仕部という名前から判断するに、困っている生徒に奉仕をして助けるといったところだとは思うけれど」

 

「・・まぁ大体そんなところだと思う」

 

「思う?曖昧な答えね。あなた、ここの部長ではないの」

 

「・・そうだけど、実を言うと俺もよく知らないんだ」

 

「あきれた。自分の部活のことも知らないなんて、そんなことでよく部長なんてやってるわね。その様子だと、今まで奉仕なんてしてこなかったのではないかしら」

 

 なんだこの女。ホントむかつくな。奉仕ならしてたぞ。主に平塚先生に。

 

「沈黙は肯定とみなすわよ。まぁ部長がそんなに低脳じゃそれも当然のことね」

 

 こいつ。絶対友達いないだろ。断言できる。

 

「まぁ依頼が来ない間は各々、好きなことをしてていいそうだ。お前も静かに読書ができるし、そっちのほうがいいだろう」

 

「・・・そうね」

 

 納得してくれたのか、雪ノ下はそれ以上何も言わなかった。

 だが実際、雪ノ下のいうことは正しい。俺はこの部活のことを何も知らずに、ここの部長をしてていいのだろうか。今度姉貴に奉仕部のことを聞いてみるとするか。

 

「それじゃ、今日のところは私は帰るわ。今日は本も持ってきていないし」

 

「ああ。またな」

 

「ええ」

 

 そういうと雪ノ下は部室を出ていった。

 そろそろ俺も帰るかな。依頼もありそうにないし。

 部室のカギを締め、外に出る。廊下は部室と違い寒々としていた。

 明日からは雪ノ下も部室に来るのだろうか。俺のプライベートスペースは1週間と持たなかったな。

 かわいい女の子と放課後、部活で二人きりなんてシチュエーションをうらやましいなんていう人もいるだろうが、俺と雪ノ下の性格上、ラブコメなんて起きないのだろう。

 ラブコメなんて起きないとわかっていながら、明日から始まるかもしれない日々を想像して少しワクワクしてしまっているあたり、俺もまだまだ修行が足りない。 

 過去に何度失敗してきたかわからない。だから、今度こそ失敗しないために、俺は自分を戒めなくてはいけない。

 

 

 

 

 俺に青春ラブコメなんて存在しないのだと。

 


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