その男は面作りを生きがいとしそれを楽しんだ。
しかし人生はそう上手くはいかない物だ。
これは秦 時織の生を書いた物語だ。
これはそう長くは書きません長くて4話ですかね。このままじゃいつ書けるか分からない、と思って書いた次第です。
下手です。
主人公の元は秦 河勝といい実在した人物です。
それでは
遠い昔の都にある男が生まれた。その男は名を秦 時織という。
男は地位の高い家に生まれたため、不況の時代にもなんら不自由なくすくすくと育った。そしてよわいが10になるその時、もう直ぐ大人になると言うのに誕生日祝いに町に普段は忙しい親と出ることになった。少年になった男は親とたわいも無い会話をしながら歩いていると、不意にあるものが目に入った。
お面だ。
少年は面売りの店の前で中に並んでいるお面を目を輝かせながら眺めていると、それを見かねた親に成長の祝い代わりに一つ買ってもらうことになった。まだまだ子供だ、と笑われもしたらしい。
その後、少年は興奮気味に屋敷に帰り、気の高揚が冷めないうちに自室で閉じようとしない瞼を強引に閉じ、半ば無理かとも思ったがそうしている内に静かに眠りに付いた。
そうして翌日、開くことを拒むように霞む目をこすり頭が冴えない中すっかり昨日の高揚が冷めてしまったものかと思われたが、、そのお面が目に入るや否やすぐさまそれに飛びつき食い入るように眺めていた。少年はその時すっかりお面の魅力に魅せられていた。それ故少年は思った
いつか自分もこんなのが作りたい・・・と
それが後に自分を苦しめることになるとは知らずに・・・
嚆矢濫觴
『おーい、今大丈夫かー?』
「すまない。後にしてくれ」
『そうか・・・ほどほどにしろよ、時織』
「ああ、ありがとう」
扉越しの声が消えた後、部屋にはカリカリと言う木を削る音が静かに響く。お面に出会ってだいたい8年が過ぎた。俺は8年の間にいろいろなことを学んだ。と言うかほとんどは独学だがそれは時間の経過と共に納得のいくものになった。数年前によわい的には大人と認められ、役職も得たがそれをまともに果たせた記憶もなく部屋に籠って面を作っていた。
「・・・今日はこの位にしておくか・・・」
一応納得の行くところまで削り終え、ひとまず出来上がったものを深々と観察する。別に思い立って作業を中断した訳ではない。今日はいつも以上に湿気ているせいで木が膨張し自由にのみを入れることが出来ない。渋々面を作業台に立てかけていると、またもや扉越しに声がする。
『秦 時織様、太子様がお呼びです』
「わかった。今行く」
この女の言う太子とは豊聡耳 神子のことだ。いつも思うがあいつは信頼している奴にしか本名を教えていないらしい。だから一般民や位の低い者はあいつを聖徳太子と思い、そう呼んでいる。そこまでする理由はなんだ。
そんなことを考えるつつも、硬直仕掛けていた足を軽く伸ばし、部屋から出る。
「太子様は『例の』場所にいらっしゃいます。それでは私はこれで」
女はそう言うと、そそくさと廊下を歩いていった。
例の・・・、あそこか。
籠っていたせいで忘れかけていた記憶を何とか搾り出し、そこへ向かい足を進める。俺の立場上あいつを『あいつ』とは呼んではいけない、がすっかり馴染んでしまいもう変えることは出来ない。昔は友人という仲でそこそこ仲が良かったものの、よわいがあがるにつれ身分が目立ってくる。何せ今ではただの側近なのだから。
そんなことを考えながら屋敷を出る。ここからそう遠くない場所に建設中の場所がある。
あいつはそこにいるはずだ。
「それで、どうしたらいいんですか?太子様?」
立場と豊聡耳の命で太子様と敬語を使って呼ぶほか無い。皮肉っぽく言ったが豊聡耳は何枚もの紙切れと大工がせっせと働き絶えず音を出している方を熱心に見返している。聞こえていないのかと思い、もう一度声を発そうとしたところ豊聡耳は横目で自分を見ながら言った。
「私の部屋から書類を持ってきてください」
「え?俺がですか?と言うか今来たのに?」
「はい、あなたは部屋からでていないから肉体も衰えているでしょう。たまには体を動かすのも悪くありません。鍛えるのという名目も込めてよろしくお願いします」
「はあ」
「大丈夫です。直ぐに見つかると思います」
そう言われて渋々来た道を戻る。
別に俺が行かなくてもいいだろう。あいつの地位ならだいたいの奴に命令できるんだからわざわざ呼び出してまで行かせる必要は無いだろう。
などと心の中で愚痴りながら目的の部屋に入る。
「えーと、どこだ」
まず辺りを見回し状況を見るが、広かったであろうこの部屋も物が散乱し当初の広さは微塵も感じられない。見つかるのか、と一瞬気が遠のきかけたがそれらしき物が直ぐに目に入った。机の上にいかにもそれっぽい紙の束が置いてあった。あいつの言ったとおり直ぐに見つかったと安心しながらもう一度豊聡耳神子のところに向かう。部屋を出ようとした時、入った時は気づかなかったがふすまの上にいつかの俺があげたぼろぼろのお面が飾ってあった。そのことに嬉しさを感じながら部屋を出た。今更になりこれで合っているのかと心配になりその紙を見てみる。しかしその内容を見るといっそう心配になる。
「これで合ってるよな・・・?」
一人でぼそっとつぶやいた。その内容は何やら道教などと良く分からないもののことが書かれていてあの建設とはまったく関係の無いと思われるようなものだった。
もう一度とって来いなんて言われたらたまらないぞ、などと思いながら足を止めずに向かった。
「これです!!ありがとうございます!!」
何をそんなに感極まっているんだ、と思いつつも道中で見た物に対しての疑問をぶつけてみる。
「ところでその『道教』?とやらは何ですか?」
そう言ったところ豊聡耳は困惑したように目をそらした。そしてこちらをちらちらと見た後に小さく言った。
「それを聞いてあなたはどうするんですか?」
疑問を言っただけなのにいきなりそんなことを言われては返す言葉も無い。とりあえず、と咄嗟に思いついたことを言ってみる。
「べ、別にどうしようとかでは・・・」
そう言うと豊聡耳は今度は軽く俯き、考えごとをし始めた。何の返答もなくただただ突っ立っていると今度は顔を向きなおして言った。
「分かりました。あなたには言っておきましょう」
え。
と半分置いてけぼりになっており、話の趣旨が変わったせいか何を言っているのか分からずにいると豊聡耳はこちらのことは気にせず独りでに話し始めた。
「数日前に・・・ある来客がありました」
とにかく話しに食いつこうとして、今の話に言葉を返す。
「来客なんて誰からも聞いていませんよ?」
「ええ、その方は私が寝支度をしていると突然に壁をすり抜けてこられたのです」
「壁をですか・・・?」
何の冗談だと思ったが、豊聡耳の真剣な顔つきだった。ましてや相手が豊聡耳 神子となると信じざるを得なかった。どうしたらいいのかと冷や汗を流していると、それを尻目に豊聡耳は再び話し始めた。
「そしてその方は言いました。『道教を信仰する気は無い?』と」
「それでは仏教はどうするんですか?!」
これは大問題である。豊聡耳は仏教の第一人者であり、当の本人が実は違う宗教を信仰しているとなれば民衆の反抗を買いかねない。
「私もそう思い一度はお帰りいただきました。しかしその方はそれから毎日私の部屋に来ては道教の素晴らしさをお教え下さいました。そしてその素晴らしさに魅せられた私は道教を信仰することを決めたのです。この書類も本当はあるかどうか分からなかったんです。その方が置いておくと言っただけですから」
紙切れで感極まっていた理由に納得しながら、それとは別に焦りが生じる。
「それでは仏教をどうすると言う答えにはなっていません。まさかあなたは仏教や民衆をお捨てになる気ですか?」
「心配には及びません。ちゃんと考えてあります」
「そうですか・・・」
頭がいっぱいいっぱいになっていき話が飲み込めなって行く。とりあえずと話を終わらせる。
「俺にはそれがいまいち良く分かりません。しかし間違ったことだけはしないでください」
時織はそういって立ち去ろうとする。それを豊聡耳は少々焦りが混ざったような声で呼び止めた。
「このことは誰にも言わないでください・・・」
時織はなにも言わずそこから立ち去った。
それから少し時間が経ちあっという間に昼は過ぎ、夕方を迎えた。しかしそれだけの時間を要してもあいつの言っていることは容易には理解できず、今もどうするべきかと頭を悩ませている。部屋に籠もり再び面を削ることで心の暗霧を晴らしていると、またもや扉越しで声が聞こえる。
「時織。いるか?」
そう声を発したのは他ならない秦 時織の父秦 国勝である。急にどうした物かとも考えたがとりあえず話を聞くことにする。
「いるが・・・どうしたんだ?」
親相手の話だが今ではすでに位はこちらの方が上で遠慮する必要は無い。
「まず入っていいかな?」
時織は何も言わず立ち上がりふすまを開ける。すると国勝は何も言わずただただ悲しげな顔をして部屋に入ってきた。
「自由に座ってくれていいが面だけは踏まないでくれ」
その言葉の指すとおり地面のほとんどは完成された面で埋め尽くされてしまっている。そう言うと国勝はいくつか面を重ねてどかし、小さく場を作りそこに座った。そして自分の目をみて真剣な言葉を投げかけた。
「明日が何の日か分かるか?」
「ああ、覚えている・・・」
分かるも何も俺にとってはとても重要な日だ。数年前のことになる。勿論のことだが俺が生まれたと言う時点で親がいたことは明白だ。そして今目の前には父の国勝がいる。ここまでいえば誰もが察するだろうが、俺の母はすでに天へと旅立った。
その死因は自害だった。その時期のことはまだ少し幼かった俺の記憶にも焼きつくほどに衝撃的なことだった。目の前にいる国勝も今は裕福とはいえ苦しかった時期があり、母もその不況に押されとても疲れ果てていた。そんなときだった、不況が響き市民の反感を買ってしまって父は何日経っても帰って来ないという事態に陥ったのだ。母の苦も募り顔もどんどんとやつれて行き最後には小刀で脈を切った。それを見た俺は何処にも向けられない憎悪に包まれ虚無感に埋め尽くされたこともあった。後にその感情は別の物に変わり、国勝を憎むなどと言う思考にはいたらなかった。
これらの記憶に深々と浸っていると、それを呼び戻すように国勝は言った。
「俺は妻を守れなかった・・・お前らを放って置いたのだからそれこそ父としては最低だ・・・」
相槌も打たずにただただ聞いていると、国勝はまってろと唐突に立ち上がり何処かへ行ってしまった。何なんだと思いつつもその場所から動かずにいると、少しして通路の方からカツカツという音が響いてきた。その音は次第に近くなり部屋の前で止まった。目に入ったのは・・・国勝だ。
「それでどうしたんだ?」
そういうと国勝は背中に隠していた物を時織の目の前に突き出した。
「時織。お前にこれをやる」
そう言って渡されたのは刀とはいえない形のいわゆる剣だった。
「これは我一族に伝わる宝剣だ。おまえに守りたい物が出来たときそれで守ってやってくれ」
国勝はその言葉を残して部屋から出て行った。その後に剣を見て思う。
綺麗だ。
そしてこの剣は後に人の命を救うのだ。
いかがでしたか?楽しんでいただければ幸いです。
ちょっと後半は意識が朦朧としてて良く分かりません。
それでは。