幻次元ゲイム ネプテューヌ 白の国の不思議な魔導書 -Grimoire of Lowee- 作:橘 雪華
「うー」
うろうろ……
「……ううー」
うろうろ……うろうろ……
「……うううー」
「あ、あの、ラムちゃん……?」
「なにっ!?」
「ひぃ!?」
落ち着きなくうろうろし続けるラムちゃんを見かねて声をかければ、大きな声で返事されてびっくりしてしまう。
「あっ。ご、ごめんロムちゃん」
「う、ううん。大丈夫……(どきどき)」
びっくりしてどきどきしてるけど、大丈夫。すー、はー……。
ええと、それで……
「ラムちゃん、ちょっと落ち着こう……?」
「うぅっ。……でもだって、ディールちゃんとエストが帰ってこないなんて、絶対ヘンよ! ふたりとも強いのに!」
「だ、だからお姉ちゃんとかグリモワールさんも探してくれてるよ……?」
ディールちゃんとエストちゃんが出掛けてから一日が経って、それでも帰ってこないとふしぎに思っていた時、グリモワールさんから二人がゆくえふめいになったって聞かされて。
それからずっとラムちゃんはこんな調子。
「うぅー! わたし達だって探しに行きたいのに! おるすばんなんてー!」
「それは、そうだけど……できること、あるかな」
「……ぐむむむ!」
わたしだって……しんぱい。でも、できることもないから……
お姉ちゃん達に任せて、ルウィーでおるすばんするしか……
「ううぅー……!」
ディールちゃん、エストちゃん。どこに行っちゃったんだろう……
「ああ、いたいた」
「あっ、グリモワール!」
と、そこでふわふわりと浮かんだ本といっしょにグリモワールさんが帰ってきたみたいで、わたし達に声をかけてきた。
ラムちゃんはいち早く反応して、グリモワールさんの方へとことこ駆け寄っていって、わたしも後に続く。
「なにか、わかったの……?」
「んん。ええ、まあ。……一応?」
「なによ! はぎれ悪いわね!」
ラムちゃんが言うように、はぎれの悪い答え。
ううん……?
「みつかりは、した?」
「ですね〜。と言ってもエストちゃんだけで、ディールちゃんは依然行方知れずですけど……」
「どこで見つけたのっ!?」
思ったことを聞いてみると、エストちゃんを見つけはしたみたい。
でも、なにかあるから言いにくい……?
ううん、といろいろ考えてみている横で、ラムちゃんがグリモワールさんにつめよっていく。
「直接見たわけじゃないんですけどね〜、別次元に飛ばされたネプテューヌさんが、エストちゃんらしき人物を見たと」
「じゃあ……エストちゃんはネプテューヌさんと同じじげんにいて、もしかしたらディールちゃんも……?」
「恐らくは。まだ間接的に見つけたとの情報しかないので、これから調査して行かないと断定は無理ですけど」
「じゃ、じゃあすぐにでもその次元に……!!」
「ダメよ」
ディールちゃんとエストちゃんが見つかったかもしれない。
そんな事を聞かされれば勿論探しに行こうってなるラムちゃん。
だけど、グリモワールさんの後ろから来たお姉ちゃんに、それはダメと言われちゃった。
「お姉ちゃん! なんでよ!?」
「……正確には無理、ね。候補生といえど、女神が国を空ける事態は良くないことよ」
「でもネプテューヌちゃんだって!」
「ネプテューヌだって好きであっちの次元に行った訳ではないわ。それに……」
ううー、と唸りながら食ってかかるラムちゃんに、お姉ちゃんはいつもみたいにれいせいな言葉をぶつけていく。
お姉ちゃんがグリモワールさんに視線を向けると、グリモワールさんは申し訳なさそうな顔をして続くように話し始めた。
「はいー。私の力で次元を渡るとしても、それはマスター権限を持った方でなければ不可能なんですよー」
「ますたーけんげん? なによそれ?」
「えっと……ディールちゃんとエストちゃんじゃないとダメ、ってこと……?」
「ロム様正解〜。そういうことです。物質とかならまだしも、生物の次元移動って難しいものなのですよー」
「物質でも十分とんでもないことだけれどね」
「イストワールと時間を掛ければゲートを作れるかもしれませんけど、安定を考えるとなればどれくらいかかるかわからないんですよねぇ」
えっと……と、とにかく、グリモワールさんの力でもすぐに直接助けに行くってことは出来ないみたい。
……ぶっしつ。ものなら送れる……?
「……すぐ助けに行くのは無理でも、何かを送って助けることは、できる……?」
「あー。それならできなくも……お、いい事思いつきました」
思ったぎもんをグリモワールさんに問いかけてみると、何かを思いついたようす。
なんだろう……?
「ブラン様ー。禁書の本、ちょっと使っても良いです〜?」
「今の
「ですですー。折角ですし、ロム様ラム様にも手伝って貰おうかとー」
このままグリモワールさんがなんとかする……思いきや、わたしとラムちゃんの名前が出てきて思わず首を傾げる。
「手伝うこと……?」
「んっ、何? 手伝えることがあるなら言いなさい! はやく!」
「……危険は無いのでしょうね?」
「お力、と言うよりはお二人の魔力を使って
『作る……?』
グリモワールさんの企みが分からないその時のわたし達には、ただ揃って首を傾げるしかできなかったのでした。
はーい。場面変わってこちらエストちゃんよ。
こっちはと言うと、ネプテューヌちゃん達との邂逅から時は過ぎて、3年が経った。わーお! げんさくどーり! ってね。
まぁ原作通りとはいえこのままお話始めると「3年経ったら成長しちゃうんじゃ?」とか「間になにかなかったの?」とかあるからね、まずはこの過ぎた時の間の纏めから。
そうしないとお話に置いてかれちゃうから、しかたないことよ。
まず、あの後……ネプテューヌちゃんと遭遇してから少しして、グリモワールから連絡が飛んできたの。メタ的に言うなら場面変わる前のアレの後よ。
とりあえずそこでグリモワールとのパスを繋いだことで、女神の能力はある程度戻った。流石に下がったレベルはそのままだったけどね。
で、グリモワール曰く写本(よくディーちゃんが持ってたやつ)だけ送って魔力パスを繋ぐのはできるけど、自分が直接はちょっと無理だとかで、本だけ送ってきた。後で何か送るとも言ってたけど、あっちもあっちでばたばたしてるらしい。
もう一つはグリモとの連絡が取れて一年半くらいしてからだったかな。結局わたしはあの村を出た。
いや、なんかやらかしたとかじゃないけど、やっぱりディーちゃんを探すには色々見て回らないとだからね。とりあえず一番怪しい七賢人に関して調べ回るためにも、村でのんびりしてる訳にはいかなかったし。
そういう訳で村から出て、とりあえずプラネテューヌを拠点にギルドの仕事とかを受けてたりするんだけど……
「エストちゃん、今日は何するのー?」
何故か、
いや、何でかしらねほんと。確か村を出る時に「ボクも行くー!」とか言い出して、なんやかんやでわたしとイオンは女神ホテルなんかでも一緒に行動している。
わたしは着いてこなくていいし着いてこないでって(勿論マイルドな表現で)言ったのに、村長が「見聞を広げるにはいい機会だろう」だのほざくものだから結局連れていくことになってしまった。
ちなみにわたしのことは「ネプテューヌちゃんとあって幾らか記憶が戻った」って体で、少しバラしてる。プチ回想すると……
「……本当に着いてくる気なの?」
村を出る直前、結局着いてこようとするイオンに、わたしは何度目か分からない質問を投げかける。
「うん! もう決めたの!」
「うーん……」
けれどやっぱり帰ってくるのはそんな答えで、この時のわたしはどうにか諦めて貰えないかと考えて……
この村の人らは女神に好印象抱いてない事を思い出して、いっその事と打ち明けることにした。
「……今だから言うけど、戻った記憶からすれば、わたし女神なのよ」
「えっ?」
勿論、突然そんな事を言えば驚くだろうとは思ってた。最悪頭おかしくなったんじゃ? と思われても仕方ない事。
でもわたしはその場で
「……ほら、ね。村じゃ騒ぎになるだろうと思ったから黙ってたけど、記憶が戻った時に力の使い方も思い出してたの」
「──」
本当は彼女には打ち明けないままで済めば良かったと思っていた。
そんなに長くないとはいえ良くしてもらってたし……いやなんか愛玩的に可愛がられてた感じは否めないけど、イオンって身の回りのことそこそこ幽霊任せだし。
とにかく、嫌われるようなことはしたくなかったけど……だからって危険な事に付き合わせるのも嫌だ。
反応は、ない。流石のイオンも女神には着いていきたくなんか──
「──ふぉおお……!!」
……あれ?
「すごい! エストちゃん女神様だったの!? わぁ、浮いてる!」
「えっ? ちょっ、ひゃっ!」
思っていたのと真逆な反応を示したイオンは、キラキラと瞳を輝かせてわたしの身体をぺたぺた触ってくる。
い、いや、ここは軽蔑するなりで別れる場面じゃ……
「おぉぉー……こんなぴっちりな格好なのに戦って危なくないの?」
「う……そりゃ女神の加護で防御力の心配は……あぅ! ぺたぺたさわるなぁ!」
興味津々に身体を触られて、たまらず女神化を解除する。
「あぁー、戻っちゃった」
「そうじゃないでしょ!? もっとこう……『女神なんかと一緒にいられるか! ボクは帰る!』とか、そう言う場面じゃないの?」
「え? ボク別に女神様嫌いって訳じゃないよ?」
「え? あ、あれ……?」
イオンの反応にさらに困惑していく。
あれ、村長はあまり好きじゃないみたいに言ってたような……あれぇ?
「あ、でもふーちゃん達はあんまり好きじゃ無いのかも? ボクは女神様の事はいるってくらいでよくは知らないから、嫌いって訳じゃないよ?」
「あ。な、なるほど……?」
ええと、つまり少なくとも嫌ってるのはイオンを取り巻くゴースト達くらいで、イオン本人はそうでも無い、と。
……くっ、バラした意味が!
「エストちゃんが女神様だったのはびっくりしたけど、それはそれとしてボクはエストちゃんと一緒に行くの! もう決めたんだもん!」
「……はぁ、もう。なら好きにして……」
「うん! 好きにするー♪」
なぜだかどっと疲れたわたしはそうして、イオンの同行を許してしまったのでした。
……とまぁそんな感じ
まぁ、戦いじゃ助けられてはいるんだけども。なんだっけ……ハウリングギター? っていう、5pb.さん(彼女も一応戦えるらしい)みたいにギターでの音波とおともだちと呼ぶ
それはいいんだけど妙に戦い慣れしてる様な気がするのよね、気の所為かしら……
そもそも三年して外見変わってない時点で変か。
村長はそういう体質の子らしいとか言ってたけど、この子も色々謎だよね。
「今日はラステイションに荷物運び、だって」
「ふぉぉ、ラステイション! ボク初めて行くかも!」
「そりゃ、まだ建国されてそんな経ってないし。今まで特に用もなかったしね」
荷物をポケットサービス(何かと前時代的なこの世界でも一応使えるらしい)に突っ込みつつ次の目的を答えると、イオンは目を輝かせ始める。
ラステイション。この三年の間に新しく建国された新国家、治めるのはブラックハートを名乗る女神。
まぁ、ノワールさんよね。無事女神にはなれたのか。
とはいえ、閉鎖国家ルウィーからしたらまた新しい国が増えたなんて、どう思われてるやら。
「忘れ物とかない? 大丈夫?」
「えっとー……メンテ道具よし、予備のピックよし! うん! オッケー!」
「ん。じゃ、行きましょ」
戦闘用の道具や回復アイテムの確認を済ませ、わたし達はプラネテューヌからラステイションへと出発したのでした、っと。
さっと纏めたらこんな感じね。
で、今はプラネテューヌとラステイションの間、国境ってことになるのかしら? を進んでいるところよ。
「じゃかじゃか、っじゃーん! ふふーん、ボク達に敵はなーい!」
「はいはい。調子に乗って油断とかしないでよー?」
「はーいっ!」
自由に女神化できない状況だから、隣の国に行くのも一苦労。
街道なんかもまだ作られてないわけだから、こういう山道を歩いていかなきゃいけない。モンスターもそこそこいるし。
……それにしてはモンスターの数が多いような気もするけど。
「うん? エストちゃん、誰かが襲われてる!」
「えっ?」
気の所為かなぁ、なんて考えていると、イオンがモンスターに襲われている誰かを見つけたらしく、声をかけてくる。
言われてイオンの指さした先を見れば、確かに誰かが二人戦っている。というか、あれヤバそうなんじゃ。
「イオンは襲われてる二人の方に、怪我の回復とかしてやって!」
「はいはーい! エストちゃんは?」
「わたしはアイツの相手!」
「りょーかい! みんなー! エストちゃんと一緒に行ってあげてー!」
いつの間に取り出したのか、イオンがギターをかき鳴らすと影のような狼達──
うーん、便利な力だこと。
「まずは挨拶がわりの……ッ!」
ある程度近づいたところで手を翳し、風の魔法でモンスターの頭上へと高速移動。
そのまま不意打ち気味にモンスター目掛けて真上から火球を連射する。
「ねぷっ!? ここで助っ人!? でもナイスタイミング!」
「お姉さん達は少し下がって回復してー! 立て直すまでボクが守るよ!」
「わー、ありがとー。助かったねー、ねぷちゃんー」
聞き覚えのある声と名前が出たけど今は敵に集中する。
地面に着地して間合いを取ればゴーストウルフ達も飛びかかって行くけど、わたしの攻撃も含めて大したダメージになってるとは言い難い。
なんだって国境なんかにこんな奴がいるのよ、悪意を感じるわね……
「っつぁ!?」
とかなんとか考えている間も当然相手は動いていて、見た目と合わない速度で斧を振り下ろしてきた。
あ、あぶなっ。ますますその辺のモンスターとの力の差が開きすぎてるように思えるわね!
ゴーストウルフも攻撃してくれてるけど正直あんまり効いてなさそうだし、これは大分不味いかもしれないわね……!
「いつからハードモードになったの、よッ!」
「グアアアア!!」
「ひぃ!」
手に集めた魔力の氷剣で斬り掛かれば、相手は避けてもわかるくらい恐ろしい勢いで斧を振るう。
あんな斧で殴られたらスプラッター確定よ!
「だったら……ぇえいっ!」
剣を投げつけ、お次の手は雷魔法。
モンスターの頭上からズドォンッ! 雷撃を落とす。これなら流石に効いて──
「……無い! 盾!? どんな反応速度よ!」
ただ傷は負ってるみたいだしこのまま続けていけば……
……は? 何、治ってる? 何よそれ!!
「うぇえ、やっぱりさっき私とぷるるんが付けた傷も消えてる……こんなのチートだよ!」
「ずるいー」
と、回復したらしい襲われてた二人組が戦線に復帰してきた。
片方は見たことないけど、片方はとても見知った顔だけども。
「ってエストちゃん! なんでこんな所に!?」
「呑気に話してる状況じゃないでしょ! どうにかする方法考えてよ!」
「えぇぇ! そんな事言われたってねぷ子さん達も困ってたんだってー!」
驚くネプテューヌさんは放っておいて、魔法弾で牽制しながら観察を続ける。
ゴーストウルフが一撃で霧散する威力の斧に、盾。ダメージを与えてもじわじわ回復していく。
そんなモンスター、絶対どこかしらに弱点があるはず……! 無敵なんて認めないし!
「エストちゃんエストちゃん。あのモンスター、なんか変な感じがするの」
「変な感じ?」
二人組の応急治療を終えた(治療をと言っても魔法で回復させるだけだけど)イオンがわたしの隣にやって来ると、そんな事を伝えてきた。
変な感じ、ってなんだろう。ゴーストウルフしか感じ取れないような何かなのかな。
「うん。なんかこう……ヤなかんじ……」
「何よそれ……」
よくはわからないけど、とりあえず普通じゃないって事ね。
ふぅん、メンドーな。
「ネプテューヌちゃん、なんかないの!」
「無茶振りが来た! さっきまで変身して戦ってあれだからね、私もぷるるんも暫く変身は無理そうってことくらい!」
「有難くない情報をどうも! 平和ボケしてぐーたらしてたツケよ!」
「なんで知ってるの!?」
ともかくこの四人でどうにか切り抜けるしかないか……。
ネプテューヌちゃんの言うプルルンさんなる奴からは魔力を感じる。魔法使いタイプ?
え? なんでネプテューヌちゃんが弱くなってるの知ってるかって? グリモワールを通じて色々状況教えてもらったからよ。
「こうなったら……回復する暇も与えずに一斉に攻撃を打ち込む? 同時攻撃なら流石に防ぎきれないでしょ」
「うーん、ザ・パワーって感じの戦術。でも人数増えたしそれもありかぁ。ぷるるん、やれるよね?」
「えっとぉー、とにかくびりびりーってすればいいー?」
「うんうん、それで良いよー。私も久々にこっち、使っちゃおっかなー!」
ぬいぐるみ片手にほわーっと答えるプルルンさんと、拳銃を取り出すネプテューヌちゃん。
木刀とか刀で突っ込んでるイメージ強いけど、そんなの持ってたんだ。
「さてと、イオン聞いてた?」
「うんー、みんなでいっせーこーげきだね!」
「ならよしっ」
「……なんだろう、見た目と年齢が逆なんじゃないかって感じの組み合わせだね」
イオンに確認をとっているとネプテューヌちゃんがなんかぼそぼそ言ってる。
……子供っぽさはネプテューヌちゃんだって変わんないと思うけど。背もイオンと近いし*1
「それじゃあみんなでがんばろー! ファイトー♪」
「お、おおっ?」
「わぁー?」
強敵相手でも楽しそうに、イオンはギターをかき鳴らす。
すると応援の言葉通り、演奏を聞いたわたし達の身体が軽くなったように感じられて。
ネプテューヌちゃんとプルルンさんも驚いた様に自分の身体を見つめていた。
「行くわよ! それっ!」
まずは先陣を切るように、わたしがモンスターへと目掛けて駆け出しながら、手元に大きな手裏剣を召喚。
ぴょん、と小さく跳ねて身体を捻り、勢いを付けて手裏剣を投げた。
当然モンスターは盾で防御しようとする。けれど……
「私の弾丸は、地獄への片道切符! 一斉に浴びせちゃうよー!」
モンスターがわたしの攻撃に気を取られてる隙を狙って、ネプテューヌちゃんがモンスターの周りを回るように走りながら銃撃を浴びせていく。
意識外からの攻撃にモンスターは怯んでしまい、そのままわたしの手裏剣も防ぎきれずに直撃する。
「はぁーい。びりびり~!」
「みんなー、行っくよー! ばーんっ!!」
さらに間髪入れずにプルルンさんがぬいぐるみを構えると、魔法の雷が放たれる。え、あれが魔法道具……?
え、ええっと、その横からイオンが喚び出したゴーストを飛びつかせながら、地面から生えた黒い手に座ってギターをライフルみたいに構え弾き、電撃のような音波を放っていく。
「ガッ、ァァア……!!」
二人の攻撃で身体が痺れでもしたのか、その場で硬直するモンスター。
よしっ、このまま一気に!
「燃えろぉ!
戻って来た手裏剣ともう一つ召喚した手裏剣。
二人の手裏剣の刃に炎を纏わせて、再び投げつける。
燃え盛る刃が、無防備なモンスターへと襲いかかった。
「グガ、ァァアアアア……ッ!!」
モンスターが悲痛な声を上げる。あとひと押し……
「トドメの……一閃!」
そして、モンスターの麻痺が解ける間もなく、背後から太刀を構えたネプテューヌちゃんがモンスターを一刀両断。
連続攻撃に耐えきれなかったモンスターは地面に倒れ、消滅した。
「いえーい! ボク達のだいしょーりー♪」
「しょ~り~♪」
初対面同士だろうプルルンさんと上機嫌に勝利宣言をするイオン。
波長が合ったのかしら。
「んん?」
消滅は確認したけど一応警戒するようにモンスターのいた所を見ていると、地面に何か黒い物が落ちていることに気付く。
なんだろうこれ、黒……紫の水晶……?
さっきのモンスターの不自然な防御力または治癒力の原因かな。と黒水晶を拾い上げてみる。
「……ぅ……っ!」
──ああ! もう奴らがすぐそこまで来ている……!
──これも全部、コイツのせいよ!
ちが……違うよ……■■■、何もしてない……悪くなんか……
──黙れ! この疫病神が!
■■■……せいじゃ、ない……
…………■■■せいなの……? 全部……ぜんぶ……
……みんな、いなくなっちゃったね……
■■■、もうすぐ……
………………うん……言われた通りだった……
カミサマなんて……いないんだね……
「……っ!?」
な、何、今の……誰かの記憶、想い……?
ノイズみたいなのが酷くて聞き取りにくかったけど、最後だけヤケにハッキリ聞こえた気がする。
今のは、この水晶が……?
「エストちゃん、どーかしたー?」
「あ……な、なんでもないわ」
ぼーっとしてたわたしが気になったのかイオンが声を掛けてくるけど、わたしはなんでもないように返しつつ、水晶をしまう。
うぅ、もう少し警戒してればよかったかな……失敗失敗。
「……」
「……ホントに大丈夫? お腹すいたのー?」
「それはあんたでしょ」
「わ。バレたぁ。えへへー」
心配そうにしながらも自分の空腹をアピールしてくるイオンに苦笑いしながら、気を取り直す。
そういえばネプテューヌちゃん達は……
「やーやー助かったよー。でも何でこんな所に?」
と思っていたらあっちから声を掛けてきた。
「別に、クエストでラステイションに用があっただけ。たまたまよ」
「えー。そんな事言ってー「ホントに」……しょぼん」
本当に助ける気で通りがかった訳じゃないと伝えれば何故かしょんぼりされた。
まぁ、たまたまでも通りがかれて良かったのかもね。最悪ネプテューヌちゃん達がモンスターのバンメシになってたかもしれないし。
「……ま。気をつけてよ? 何かあったら大変なんだから」
「……ツンとしてたかと思えばそこはかとないデレ! エストちゃんも立派なツンデレだね!」
……。
「イオンー、行くよー。街まで行かなきゃご飯もないんだからね」
「わ、まってー!」
「無視はネプ子さんでも傷つくな〜なんて……本気の無視!? ちょ、待ってよー!?」
「ねぷちゃん置いてかないで〜」
変な事言ってくるネプテューヌちゃんはほっといて、イオンを連れてラステイションへと向かう。
それにネプテューヌちゃんとは目的が別に……そもそもネプテューヌちゃんって何でこっちにいるんだっけ? 聞きそびれたな……
「まあ、いっか」
どの道ディールちゃん探しとは別のことだろうし。
そう考えながら、騒がしさの増した道を進んで行くのだった。