音ノ木坂学院ラブライ部!   作:れみんとぅ

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ミツキ「前書きに来たはいいが、話す事がない」

僕「なら、この前本で読んだ事を試そうか」

ミツキ「ふむ」

僕「なんでもない言葉の語尾に"〜する勇気"ってつける」

ミツキ「なるほど」

僕「やってみ」

ミツキ「電車に乗る勇気」

僕「おお」

ミツキ「バク転する勇気」

僕「これはなかなか」

ミツキ「勉強する勇気」

僕「いいねぇ」

ミツキ「[ピーーーーー]する勇気」

僕「おいコラ」




花陽「ラブライブとは!」僕「出ました得意の長文台詞!」

 

生徒会室。今いるのはえりちとウチだけ。

えりちはパソコンの前に座り、μ'sの新曲『これからのSomeday』のPVを黙って見つめている。

 

ウチがリーダーについて言った後、色々比べてみたけれど結局みんな同じってことになって、そのまま穂乃果ちゃんがリーダー続投になったらしい。でも、釈然としない結論の割にやけにみんな納得した顔やったんよねぇ。

 

「…希は一体何を言ったの?」

 

「ウチは思ったことを言っただけよ」

 

不機嫌そうな顔でえりちは尋ねる。ウチはそれに笑顔で答える。

ここ最近、えりちはなんだかご機嫌ナナメ。彼女自身は隠しているつもりでも、ウチにはわかる。伊達に2年以上一緒にいるんやないもん。

 

理由は、予想に反してμ'sの人気が高まっていること、えりち自身の行動はほとんど効果がないこと。ウチが本人に聞いたらそう言っていた。

確かに、それもあると思う。でも、ウチからしたらもっと別の理由があるように見える。そう、最近えりちにとって変わったことと言えば。

 

「えりち、ゆうちゃんに構ってもらえなくてご機嫌ナナメ?」

 

きっとウチはニヤニヤしてたと思う。えりちはパソコンからウチに視線を移してしばらく見つめてくる。少し驚いて、でもすぐに表情を消してしまった。

 

「…なんでユウが出てくるのよ」

 

「ゆうちゃん最近μ'sと軽音部ばっかりで、全然えりちと一緒に帰ってくれないもんね」

 

「だから、ユウは関係ないでしょう」

 

人形のような顔でえりちは否定する。

でも見えてたよ?ウチが言ったほんの一瞬、マウスを持ってる右手がピクッと動いたの。えりちは顔でわからないと行動に出るもんね。

 

「ふふ、そんなに不安にならなくてもゆうちゃんはちゃんとえりちを気にかけてると思うよ?」

 

「会話が噛み合ってない上に変な誤解までしてるわね…」

 

ため息をついて、額に手をあてる。そんな仕草もえりちみたいな美人さんだと様になるっていうか、なんだか引き込まれる。

神様って結構適当にパラメーター振ってるんやないかな?なんだかずるい。

 

「希、別にユウがどうとかは関係ないわよ?生徒会の仕事も今は落ち着いているし、その仕事が無ければ一緒に帰ることもないわ」

 

えりちは嘘をつく時は目をそらす。今も、えりちの視線はウチではなくパソコンを見ていた。

 

「今頃女の子に囲まれて楽しそうにしてるんやない?」

 

「……………別に、ユウが誰といようと何していようと私には関係ないわ。興味もないし」

 

間。えりち間。長いで。興味ありまくりなのバレバレやん。

一見ポーカーフェイスで感情を隠すのが上手いように見えるけど、一緒に居てすぐにそのイメージは無くなった。えりちは顔に出なくてもかなりわかりやすい。

 

ともあれ、これ以上言うとえりちがいじけちゃうから、この辺でやめとこか。

 

 

◇◇◇

 

 

「すごい綺麗にできてますね!」

 

「撮影の時はかなり変だったのにね〜。ふふふ」

 

桜坂が感嘆の声をあげ、支倉が撮影時を思い出し笑い出す。

 

ここは軽音部の部室である。

μ'sの新曲PVは、軽音部の部員が協力して撮影した。今は編集し投稿された完成品を確認しているところだ。

 

曲のAとBメロに、それぞれ海未とことり、真姫とにこが歩きながら歌う場面があった。

当然、プロが撮影に使うような機材は持っていないため他のもので代用する事になったわけだ。

 

そこで思いついたのが、大きな荷物を運ぶために使う台車である。

使い方は簡単。ビデオカメラを持った人間を上に乗せ、彼女たちの動きに合わせ下がっていくというもの。まっすぐ下がるために意外と台車を引く人間が苦労したのだが、ミツキが奇跡的なセンスを発揮しクリアした。

 

確かに簡単だったし、撮影もしっかりできた。だが、周りから見た僕らはきっとさぞ滑稽なものだっただろう。慣れるまではどうしても、カメラに映る4人がにやけたりカメラを持っていた支倉が変顔をして笑わせたりと色々あった。

 

それでもきっちりと撮影を終え、僕、ミツキ、浅井で編集。PVを仕上げた。我ながらなかなかいい出来だと思っている。

 

「それにしても、よく学校が許可してくれましたね。こんなに飾り付けるなんて」

 

「…確かに、浅井くんの言う通りだと思います。どうやって許可を取ったんです?」

 

1年2人は、この映像の飾りの許可を取るのに苦労したのではと尋ねてきた。まあ、理事長に会ったことがない人間は当然そう思うだろうな。

 

けれど実はそれほど難しくない。

理事長は寛大というか、「楽しそうですね。いいですよ」みたいな感じで許可を出してくれたのだった。ついでに自分も手伝わせて欲しいとまで言い出したのだが、当日仕事の都合でダメだった。

ものすごく残念そうだった。「いっそすっぽかしてやろうかしら…」なんて呟いていたのでそれは僕が全力で止めた。

 

そんなことだから学院も…いや、やめておこう。

 

「いや、学院装飾したいんですけどーって聞いたらいいですよーって返ってきた」

 

「「軽っ!!」」

 

そう言われても、本当に雰囲気はこんな感じだったのだ。

 

あるきっかけで割と親しくさせてもらっている理事長だが、年の割に若々しい容姿(別に若作りだとか言いたいのではない)をしているので、独身だと思われがちである。

実際はことりがいるため、普通に考えて少なくとも三十路だが、その性格も若い印象を与える要因になっている。

 

具体的には、思いつきを即実行に移すのだ。慎重な性格のことりとは真逆である。いや、ことりが反面教師にしたのかもしれない。

前々からそうなのではとは思っていた。それが確信に変わっただけの話だ。

 

だってそうだろう。まさか()()()()()()()()()()なんて、思いついたとしてもまず普通の運営なら実行はしないはずだ。

それを実行してしまうあたり、理事長はちょっとおかしい、いやもう控えめに言っても異常。イミワカンナイ!である。

 

…誰かがくしゃみをしていそうだが、ともかくそういうわけでかなり性格が若い。

まあそれでこちらも助かっているのだから別に文句は何もないのだが。

しかし、別件で勘弁してほしい事もある。職権乱用という言葉がぴったりだ。

 

それは

 

 

『3年A組、荻野悠くん。理事長室までお願いします』

 

 

「…ユウさん、何したんですか?」

 

「言っておくが浅井、僕はなにもしてないからな?」

 

「先輩…」

 

「桜坂、そんな『そういう人だったんだ』みたいな悲しそうな目をしないでほしい」

 

私用で呼びつけるのに全校放送を使う(・・・・・・・・・・・・・・・・・)のは本気でやめてほしい。これを職権乱用と言わずしてなんと言うだろう。

これのせいで本当は真面目なのに僕を知らない人から不良扱いされるのを、何度説明してもわかってもらえない。

 

理事長曰く「本当は真面目ならいいでしょう?私も貴方が誠実な人だという事は知っていますよ」とのこと。

いやね、あなたが知ってるだけじゃダメなんですよ理事長。校内には噂というものがあってですね、結構な人数の下級生が僕を避けてるんですよ。不良だったらもう少し悪そうな顔してるっての。

 

ともあれ呼び出しをすっぽかすと来るまで何度でも呼ばれるので(ついでにちょっと拗ねるので)、僕は部室を出て理事長へと向かう。やれやれだぜ。

 

 

◇◇◇

 

 

「…あれ?なんでみんながここに?」

 

「ユウ先輩…呼び出されていましたが、一体なにをしたのですか?」

 

「なにもしてないからな?」

 

ああ…海未も桜坂と同じ目をしている…。僕はなにもやってないのに…。

 

理事長室前まで来てみれば、μ'sが全員扉の前に立っていた。

いかにも『偉い人の部屋』と言わんばかりの扉なので、尻込みするのはわかる。だが、別にこの扉は防音とかではないため、そこでなにやら話しているのは割と中に丸聞こえである。今頃理事長はニコニコと彼女たちが入るのを待っていることだろう。

 

「それはともかくとして、海未たちはなにをしにここへ?」

 

「それは私から説明しましょう!」

 

「は、花陽?なんかキャラ変わってないか…?」

 

そういえば凛から聞いたな…「かよちんはアイドルの事になると人が変わるにゃ」って言ってたっけ。つまり、今の花陽はアイドルオタクモードって事か。

 

「実はですね!今年の夏に“ラブライブ!”が開催される事になったんですよ!」

 

そう切り出し、花陽は熱く語った。

要約すると、最近のスクールアイドルブームを受け、かの動画サイトの運営がラブライブ!というコンクールのようなものを開催する事にしたそうだ。

参加資格は、サイトのランキング上位20位までのグループ。

 

現在μ'sは36位。活動開始から数ヶ月にしては快挙と言っていい高順位だが、まだ参加できるまでまだ上に16ものグループがいる。

ラブライブに出場できれば、まず間違いなくμ'sの知名度は全国レベルと言っていい。ついでに音ノ木坂学院の知名度もμ'sに引っ張られてかなり上がると思われる。

 

しかしそれには学校からの支援も必要(下校時刻延長や土日の練習時間、講堂の使用など)だと考えたため、まずは学校の許可を取るべきだとした。

 

しかし、ここでひとつ問題が発生。

言わずもがな。生徒会長、絢瀬絵里である。

 

ここまで一貫してμ'sの活動に否定的な彼女が生徒会長である以上、生徒会を通しての許可は難しいと考えたらしい。

別に僕が副会長なのだし、説得すれば生徒会からでも通してやれる。彼女たちは「これがきっかけで2人がぎくしゃくしてしまっては申し訳ない」と思ったらしいが、全く要らぬ心配である。今まで生徒会の事で衝突しなかった事はない。

 

ではどうしようかと考えた時、穂乃果が「じゃあ理事長に直談判しに行こう!」と言い出し、今に至るそうだ。

 

「ならさっさと入ればいいじゃないか」

 

「い、いや、でも、ね…?」

 

そこまでは良かったのだが、この扉を見て全員尻込みしてしまった、という事だろう。

しかし僕にとっては自分の家、ほどではないしろ勝手知ったるもので、この扉の前でも全く問題はない。彼女たちのビビりっぷりに笑いながら僕はノブに手をかける。

 

「はいはい、じゃ僕から行くよ」

 

「え!?いや、ちょっ」

 

「荻野悠、入ります」

 

焦る穂乃果を置き去りに、僕はためらう事なくドアノブを回した。ガチャリ、とどこか古ぼけた音を立てる。

そのまま扉を引き僕は普段となんら変わらず部屋へと足を踏み入れた。

 

そこに待っていたのは理事長と…エリーと東條だった。何故かは知らないが、2人も用事があるのだろう。

 

「ああ!悠くん!やっと来てくれた!また止まっちゃったのよ。私じゃ何をしたのかわからなくって、絢瀬さんを待たせてしまって困っていたの」

 

「…もういい加減、買い換えるべきだと思いますよ」

 

理事長と話すようになったきっかけとは、彼女の持つノートPCである。

数年以上前のモデルのため、その重さといったらないのだが(メモリ的にも物理的にも)、理事長はなぜかずっと使い続けている。しかし、いかんせん古いので、ちょっと複雑な事をさせるとすぐにフリーズしてしまうのだ。

 

偶然僕が副会長として書類を渡しに行ったタイミングでフリーズし、それを僕が立ち直らせると共に少しだけ軽くした。

それを見た理事長はとても喜び、事あるごとに僕を全校放送で呼び出すようになったわけだ。呼び出されるたび買い換えるべきだと進言してはいるが、毎回同じセリフでやんわりと否定される。

 

「そうなのだけど、長く使っていたらなんだか愛着が湧いちゃったのよ。だからできるだけ長く使ってあげたいなって」

 

そう、これである。

ここまでで大体察しはつくとは思うのだが一応言っておくと、理事長は機械オンチである。

僕がPCを『軽くした』と言っても単にゴミ箱の中を空にしたり、過去のデータを紙に印刷してファイルにまとめた後削除したりなど、慣れてしまえば誰でも手際よくできるような事だ。

 

しかし理事長にはそれができない。なぜなのか何度説明してもできない。「あの鳥頭め…」と家でこっそり愚痴ったのを覚えているくらいできない。

これはもうセンスがないんだな、と僕は早々に諦め、渋々ながらも毎度呼び出しに応じているのだった。

 

「…ユウ、何度も連絡したのだけど」

 

「あ〜、悪い。機内モードにしてたんだ」

 

僕を見るなりより一層不機嫌な顔になったエリー。その隣で、何やら東條がニヤニヤしている。僕がいない間に何か話していたのかもしれない。

 

「それより、まずは理事長のPC立ち直らせないとな。穂乃果、先に話済ませちゃいなよ」

 

「えっ?あ、はい」

 

作業開始。

予想通り、複雑な作業によるメモリ限界が原因だった。一旦強制終了からの再起動。その後にひとつずつやりたかった事を片付ける事にする。

 

「えっと、私たちμ'sで、ラブライブに出たいんです」

 

「ラブライブ?」

 

ラブライブと聞き、当然疑問を返す理事長。すると、

 

「それは私から説明します!」

 

再びアイドルオタクモードの花陽が熱く語る。始めはその勢いに気圧された理事長も、聞くうちに興味深げな表情に変わっていった。

恐らくOKだろう。あの顔になると大抵は許可が下りる。反対するとすれば僕の作業をムスッとして見つめる生徒会長だが、理事長が許可してしまえば関係ない。

 

しかし、許可するといってもタダではない事もまた多い。そういえば、そろそろ時期的に恒例のアレが近付いている。

一通り聞き終えた理事長が、ゆっくりと口を開いた。

 

「…いいでしょう。そういう事であれば、学校からも微力ながら支援します」

 

「本当ですか!?」

 

「ただし」

 

ほら来たよ条件。絶対アレだな。

 

「学生たるもの、勉学を疎かにするようではなりません。従って、今回の定期考査での赤点の回避を条件とします」

 

まあ、赤点くらいならちょっとやれば余裕だろう。僕は全く心配ないし。

そう思ってみんなを見た。すると、ある3人が愕然としていた。

 

「「「…あ、赤点回避…」」」

 

にこ、穂乃果、凛の3人だった。

確かに、この中ではおバカなイメージがあるが、赤点取るほどか…?

理事長も随分と低い条件を出したなと思いつつも、まあテストならなんとかなるかなと割と楽観的に考えたのだが。

 

「それと…」

 

まだあったのだ。赤点回避だけではなくまだ別の条件が。そしてそちらの条件の方が、ずっとずっと衝撃的だった。

 

「…この子の面倒を見てくれないかしら?」

 

そう言って、理事長は部屋の隅からケージを僕らの前に持ってくる。そこにいたのは

 

 

 

 

 

ニャー…

 

 

 

 

 

1匹の猫だった。

 

 




新たな試みを始めました。
そう、早起きです。
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