音ノ木坂学院ラブライ部!   作:れみんとぅ

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僕「野球ってさ、打席に立つ前に選手によって曲が流れるじゃんさ」

ミツキ「そうだな、巨人なら坂本がGReeeeNのキセキ、阿部ならEarth, Wind & FireのSeptemberとかな」

僕「もし自分が打席に立つとしたら、何を流すよ」

ミツキ「そうだな…パッと『これだ!』ってのは思い浮かばない…」

相川「2人で何の話をしているんだ?」

僕「いやな、野球で打席に立つならなんの曲を流すかと」

ミツキ「でもユウよ、女子にこんな話をして通じるんか?」

相川「なるほど…私はテレビで観る程度だが、自分の好きなアーティストが流れるのは嬉しいな」

僕「通じたぞ」

ミツキ「ホンマや」

僕「じゃあ相川、今シーズン現時点での坂本勇人の得点圏打率は?」

ミツキ「いやそれはさすがに」

相川「.315だったかな?」

僕ミツ「「こいつ詳しい奴だ!!」」

相川「そうか?」

ミツキ「じゃあ、今シーズン現時点でのセリーグ出塁率1位は?」

相川「ルナの.423だな」

僕ミツ「「めっちゃ詳しい奴だ!!」」

相川「そうか?」




希「ゆうちゃん、何か忘れてない?」僕「そういえば…」

 

 

 

「理事長、私は反対です」

 

エリーは険しい顔で理事長に詰め寄った。彼女は更に続ける。

 

「理事長は『学校のために学校生活を犠牲にするようなことはすべきではない』と仰いました。であれば…」

 

「そうね…。でも、いいんじゃないかしら?エントリーするくらいなら」

 

理事長は涼しい顔。自分の言ったことを忘れているわけではないだろうが、どこ吹く風、といった感じだ。

 

「…なぜ彼女たちの肩を持つんですか」

 

「別にそんなつもりはないのだけど…」

 

「だったら、生徒会も学校存続のために活動させてください」

 

「う〜ん…」

 

間延びした声を上げて、少しの間考えるように俯く。

…返ってくる返事は大体予想がついた。"学校存続のために"って時点でもうね。

 

「それはダメね」

 

「意味がわかりません…」

 

「そう?簡単なことよ?」

 

短い沈黙。険しい顔をしたまま、エリーは振り返り理事長室を出ようとする。

僕はその後ろ姿に、パソコンの手は止めぬまま話しかけた。

 

「エリーはさ、本当に意味がわからないわけ?」

 

「…何が言いたいの」

 

僕に対してだからか、彼女の雰囲気が一気に鋭さを増した。"敵意"とも取れるほどのオーラを放つ。

僕と東條と理事長以外の人間は皆、思わず体を強張らせた。

 

「学校のために学校生活を犠牲にするな、か。確かにその通りだな。そしてエリーはμ'sがそうしてると思ってる」

 

「その通りじゃない。学校存続のためにラブライブにエントリーするんだから」

 

「まずそこが間違ってる」

 

半分遮るように僕は言った。ますます険悪になっていくエリーとの雰囲気の中に晒されるμ'sのみんなには申し訳ない。花陽あたりがそろそろ涙目になりそうだが、もう少しだけ我慢してほしい。ごめんよ、あとでおにぎり奢るから許して。

 

「…何が違うっていうのよ」

 

「もう学校なんか(・・・)のためじゃないのさ。学校生活を犠牲にしてるつもりはない」

 

返事はない。どういう意味か、わかっていないのだろうか。

おいおい、ここまで言ってもわからないのか?エリーとμ'sとの違いが。なぜエリーはダメで、μ'sはいいのか。

 

彼女は黙って扉を開け放つ。僕はまた彼女を呼んだ。

 

「エリー」

 

彼女が立ち止まるのがわかったので、僕は言葉を続ける。

 

「最後に"楽しい"って思ったの、いつ?」

 

扉が閉まる音だけが、僕の耳に届いた。

全員の視線が僕に集まる。μ's全員が心配するような、それでいて抗議するようなのは、気のせいではないだろう。

 

「…大丈夫なのですか?」

 

海未に問いがどういう意味なのかはすぐにわかったが、僕はわざとらしく首を傾げてみせる。

 

「何が?」

 

「その…会長とは…」

 

予想的中。

前述した通り、生徒会の仕事に関しては今まで意見が一致したことは一度たりともないので、心配はいらない。

 

「大丈夫だよ。生徒会の事じゃいつもこんな感じだし。な、東條」

 

「えっ?あ、うん…そうやね」

 

珍しく、希はボーッとしていたらしい。僕に話しかけられ、肩を少し跳ねさせた。

海未はなおも心配そうに、更に僕に問う。

 

「しかし…これで関係にヒビが入ってしまうのでは…」

 

「ヒビ…?だとしたらもう粉末状になるレベルで粉々になってる気がするんだけど」

 

「…否定できんね」

 

なんとなく海未が、というかμ's全員がどう思っているのかわかって来た気がする。これまで色々な人間から異口同音に問われてきた勘違い。

 

「海未、何をそんなに心配してるんだ?」

 

「え…心配もしますよ。だって2人は…その…つ、付き合っているのでしょう?」

 

海未はなぜか頬を赤らめている。

本当にこの手の勘違いをする人間が多くて困る。その都度説明しても、大抵はどこか納得していない顔のままなのも困る。

 

「…僕ら、別に付き合ってないからね?」

 

「「「えっ」」」

 

全員が驚いている。あ、東條以外の全員が。

 

「そうだったの?」

 

「理事長もですか」

 

理事長もだった。しかしそこまで勘違いされるほど仲良いか?生徒会じゃいつも意見が食い違うし、昼飯一緒に食うわけでもないし、一緒に帰るっていっても生徒会の仕事があるときくらいだし。

 

「なんでみんな勘違いしてるわけ?そんなに仲良くしてないよね僕ら。現に今しがた険悪ムードだったし」

 

「…先輩、気付いてないんですか?」

 

「え?」

 

真姫が心底呆れているような顔をしている。腰に手を当てたポーズが、なんとも様になっていた。

気付いてないのかと言われても、まあ気付いてないとしか言えない。全く心当たりはないのだ。考えても仕方がないので、僕は彼女に続きを促した。

 

「気付いてないって、なにが?」

 

ため息ひとつ、真姫が口にしたのは僕にとって予想外の事実。そして、見過ごすことのできないエリーの問題点。

 

 

 

 

 

「悠先輩と希先輩だけ(・・)なんですよ。この学校の生徒の中で、生徒会長とまともに会話ができるのは」

 

 

 

 

 

「………。なん…だと…」

 

しばらくの間絶句し、やっと出てきた言葉もどこかで聞いたものだった。

あのコミュ障生徒会長め、まだ会話が成り立たないレベルで態度悪いのかよ。

 

昔から、具体的には小6あたりからずっと言い続けていることだった。

彼女は慣れていない相手への対応が悪過ぎるのだ。何かに誘われても「興味無いわ」なんて返し方をするもんだから、当然周りは物好きでない限り敢えて話しかけることはなくなっていく。

 

僕が初めて話しかけた時はロシア語しか話せなかったため、そして僕がロシア語で声をかけたことで驚かせたためにそんなリアクションはなかった。

しかし何をどう間違えたのか日本語が話せるようになってからは初対面の人に対しそんな態度になってしまうようになったのだ。

 

「あいつまだ直ってないのかよ…口を酸っぱくして言い続けてきたのに…」

 

「直る?」

 

「絶望的に不器用なんだよ、エリーは…。いわゆるコミュニケーション障害ってやつでな、初対面だったりあまり仲が良くなかったりする相手には知っての通りあんな態度で…」

 

その癖またやってしまったとヘコむので、慰めるこちらとしては面倒極まりない。悪気がないのは僕は知っているので、叱りにくい。

彼女自身も自覚はしているが、咄嗟に出てくる対応がもうダメなやつである。

 

「慣れてしまえばそこまで悪い奴じゃないとは思うんだが、いかんせん慣れるのが難しい」

 

「全然そうはみえないなぁ…明らかにμ'sを目の敵にしてるし…」

 

「それは単純に嫉妬してるんだよ。自分がやろうとしてることを、自分ができない方法でどんどん成功させているから」

 

穂乃果の呟きに僕が答える。同じ考えだったのだろう、他のメンバーも釈然としない顔になった。

志が同じなのにどうにもすれ違うのはいささか歯痒い思いもするけれど、エリーはかなりの頑固者。説得するには骨が折れる。

 

しかしいざそうなればその役を買って出るのは僕の役目なのだろうが、そうなることなく彼女自身が気付いてくれた方がずっと楽だ。他人が言っても聞かないので、ヒントを出し続けて否応無く自覚させるしかないのもまた、なかなか苦労しそうだが。

 

「とりあえず、部室に戻ろうか。ここでずっと話してても理事長の仕事の邪魔になるし」

 

「あら、私は全然構わないわよ?むしろ私も混ぜて欲しいくらい」

 

「仕事はいいんですか…」

 

「コーヒーでも淹れましょうか」

 

「至れり尽くせりだな…」

 

理事長はこう言っているが、僕らは遠慮して理事長室を出ることにした。というか仕事はしてください理事長。

猫のケージ片手に扉を閉めようとした時、僕はある事を思い出し、振り返った。

 

「そういえば、理事長」

 

「どうしたの?」

 

「この猫、名前はもうあるんですか?」

 

「ああ、言ってなかったわね。その子の名前は…」

 

笑顔で少し首を傾ける仕草は、ことりにもしっかりと受け継がれていたようだ。

ことりのような甘い感じはないが、理事長の仕草もまた魅力的に思える。大人の余裕、というやつだろうか。

理事長は一旦言葉を切り、間をおいて猫の名前を告げた。

 

「その子の名前は、初めて見たとき『にゅー』って鳴いたからにゅーちゃんって呼んでるわ」

 

「ネーミングセンスが若い!!」

 

 

◇◇◇

 

 

「…ユウ先輩、何を描いてるんですか?」

 

部室に戻って来ると、僕は大きめの紙と製図用のシャーペンを取り出す。

それに気付いた穂乃果が尋ねてきたので、手を止めぬまま答える。

 

「この猫…にゅーの小屋の設計図だよ。せっかくだし作ってやろうかと」

 

「ツクッチャウノォ!?」

 

「お、おう?どうした花陽?」

 

「あっ…いえ、なんだか言わなきゃいけない気がして…」

 

作るといってもそんな大層なものではなく、目指すは簡単な三角屋根の小屋。板を張り合わせてはい終わり、である。

中学生の頃に一度、マジなログハウスを作ろうとした事があるのでこの程度はお茶の子さいさいだ。ちなみにログハウスは扉を作ったところで飽きた。扉は現在、我が家の物置の扉として有効に活用されている。

 

「といっても、材料買って来なきゃいけないから今日は無理だな。それまでは…」

 

そこまで言った後、僕はある人物を見る。釣られて全員僕と同じ方向を見た。

 

「…真姫の膝の上とか?」

 

「かなり困るんだけど」

 

にゅーは今、部室内をウロウロと歩き回り、しきりに辺りの匂いを嗅いでいる。知らない匂いだらけだからだろう、どうにも落ち着かないらしい。

 

この部室にはアイドルグッズ(にこの私物)が大量に置かれているため、置いた本人であるにこは戦々恐々。にゅーをじっと睨みつけ、動きを追っている。威嚇する猫みたいだ、と言うと怒られそうだ。

 

「それにしても、猫にしては大きいし毛も長いよね、この子」

 

母親の予想だにしていなかった行動に一番驚いていそうなことりだが、逆に母親だったからもう慣れてしまったのか特に困惑した様子もなく笑顔でにゅーを見守っている。僕は少しだけ記憶を探り、どんな種類なのかを思い出してから彼女に言った。

 

「たしか品種はノルウェジアン・フォレストキャットってやつだよ。その名の通りノルウェー原産の長毛種で、スカンディナビア半島を中心とする北ヨーロッパの寒冷地でも平気だそうだ。

種類としての歴史はかなり古くて、雷神すら持ち上げられなかったネコの話とか、女神フレイヤが車を牽くためにネコを2頭使ったなんて話のモチーフって言われてる。ついでに、かの有名な一番大きな品種、メインクーンの祖先だとも考えられてるらしい」

 

我ながらかなり長いセリフをよく噛まずに喋ったなと思う。同時にことりは退屈していやしないかとも思ったが、幸い「へぇ〜」と感嘆の声を上げてくれた。

 

「ユウ先輩は物知りなんですね〜」

 

「感心したのはそこだったか…」

 

長毛種ということは、毛が抜けると凄まじいことになる。しかも今は初夏、毛が生え替わる時期なので更に大変なことになるだろう。

今日のうちに小屋の材料と合わせてトリミング道具も買い揃えたほうがいいだろう。ケータイのメモに買うものをリストアップしていくと、結構な数と値段になりそうだった。

 

「…下ろさないと手持ち足りないかなぁ…」

 

「え?下ろすって…もしかしてお金をですか?」

 

どうやら口に出してしまっていたらしい。穂乃果が聞き返してきた。

 

今時あまり珍しくもないだろうが、僕は自分の預金口座を持っていて、アルバイトで入る給料は全てそこに振り込まれる。

あまり使うこともないので結構な額貯まっているから、この程度痛くはないが、それでも予期せぬ出費というのは少なからず気分は沈む。

 

「うん。アルバイトしてるから、自分の口座持ってるんだ」

 

「おぉ〜アルバイト!」

 

「楽譜を作るのと、家庭教師をな」

 

その時、僕と話していた穂乃果を含む3人、にこ、穂乃果、凛の赤点組がガタッと音を立てて立ち上がった。音に驚きにゅーは身を竦めたが、またすぐに探索に戻った。

 

「…どうした?」

 

「「「助けてください!」」」

 

これだけでもなんとなくわかった。テストのことだろう。

赤点回避をラブライブにエントリーするための条件にされた以上、今回のテストである程度の点数を取る必要がある。

にゅーによってどこか緩んでいた空気が、現実の問題を思い出したことで沈んだ。ような気がした。

 

「にこはともかく、穂乃果には海未がいるし、凛には真姫が…って凛なんで隅っこで縮こまってんの?」

 

凛の声が聞こえたのは、部室の隅だった。動き回るにゅーを目で追いながら、心なしか悲しそうである。

 

今すぐ構いに行きたいが行けない、そんな感じだった。

 

「…凛、まさか猫アレルギーなのか?」

 

「…はい」

 

しまった。アレルギーの存在を忘れていた。

猫アレルギーは主にくしゃみ、鼻水、咳など風邪とよく似た症状が出る。

それだけならいいが、重度になると皮膚のかゆみや腫れ、最悪呼吸困難に陥り命に関わる。

 

「すまん、最初に考えるべきだった」

 

「いえ、凛はそんなに酷くないから大丈夫です」

 

凛の症状が酷くなくて幸いだった。ひとまず胸をなでおろし、にゅーをケージに戻す。不本意そうな顔をされたが、今日はこの辺で我慢してほしい。

 

「そんなことより助けてくださいにゃ!英語ができないんだにゃー!」

 

「わ、わかった。マズイことはわかったからそんなに迫ってくるな」

 

女子高生はなぜこうもいい匂いがするのだろう。いや僕が変態とかではなく。男子では例え同じシャンプーや柔軟剤を使ったとしても漂うのは男臭さである。

 

「穂乃果は数学が…」

 

「に、にこもちょぉ〜っと数学がぁ〜」

 

なるほど、いかにも赤点を取りそうな教科だった。

 

小学校で最高点を記録するのは算数、高校で最低点を記録するのは数学。数学はできる奴、できない奴がはっきりと別れ、度数分布も"フタコブラクダ"型になりやすい。

 

英語は、肌に合わない奴にとっては本当に辛い教科だ。逆に洋楽をよく聴いていたり、ハリウッド映画が好きだったりするとできることが多い。それは"訳無しでも聴き取れるようになりたい、読めるようになりたい"というモチベーションがあるからだと思う。

 

「…小学生の頃から知ってはいましたが、穂乃果…」

 

「す、数学だけだよ!小学生の頃から算数苦手だったの知ってるでしょ!?」

 

呆れた目の海未に涙目になって憤慨する穂乃果。小学生の頃からって…それはまずいんじゃないのかな。というわけで少しだけテストをしてみる。

 

2×9(にく)は?」

 

「おいしい!」

 

8×8(はっぱ)は?」

 

「苦い?」

 

末期だった。手遅れである。

どんな名教師だろうと、かのビリ○ャルの作者であろうと穂乃果は無理だと思う。

他のメンバー全員のため息が、部室を満たした。

 

「にこ先輩、成績は…?」

 

ことりの声に肩を跳ねさせ、にこは勢いよく振り返った。

 

「ににににこ?にこはぁ…」

 

「動揺し過ぎだろ…。いいよ言わなくて知ってるから」

 

「なんで知ってんの!?」

 

「教科書逆さまの時点でお察しだわ」

 

さすがに教科書逆さまはギャグだろ?ギャグだと言ってくれ。末期患者が2人とか笑えないぞ。

 

「だからユウ先輩!教えてくださいぃ〜!」

 

「だから迫ってくるな!近いぞ穂乃果!」

 

μ'sのメンバーと共にいるのは僕の精神衛生上とても悪い気がする。異性ということなど全く意に介さずゼロ距離まで近付いてくる者がいるのは由々しき事態である。いや、本当に僕が変態だとかではなく。

 

「…あー、もう仕方ないな…わかったよ。僕を中心に海未と真姫にも協力してもらって1、2年は大丈夫だろ。にこは…希、お願いできるか?あれ…希?」

 

「…えっ?あ、ごめん、どしたん?」

 

「いや、にこのテスト勉強、手伝ってもらえるか?」

 

「あ、うん!お安い御用やで!」

 

「助かるよ」

 

理事長室でもそうだったが、今日はなんだか希がボーッとしている。ついでに、気のせいだろうか、どちらも僕の方をジト目で見ていたような…?

 

「「じゃあ、明日から頑張ろう!!」」

 

「「…今日からな(です)」」

 

穂乃果と凛がハモり、それに対して海未と僕がハモった。最初の2人はグッタリと机に突っ伏す。海未は僕の方を見て、目が合うと赤面して逸らす。

 

この日から、赤点組のテスト対策週間(仮称)が始まったのだった。

 

 




自動字下げができなくなり申した。バグなのかなにか操作を間違ったかよくわかりませぬが、読みにくくなり大変申し訳ありませぬ。
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