音ノ木坂学院ラブライ部!   作:れみんとぅ

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希「ウチのスピリチュアルパワーをあなたに注入♪」僕「ぐわぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「あ、あの…」

 

「は〜い、もっと笑って〜」

 

「えっ?あ……えへへ?」

 

学院の中庭。

凛がビデオカメラを構え、ぎこちなく笑う穂乃果に向けている。その隣では、マイクを持った東條がいた。

 

「じゃあ決めポーズ!」

 

「えっ、えぇ!えっと…じゃあ…ほっ!」

 

凛に言われて彼女はガッツポーズをとった。すかさず東條がコメントを入れる。

 

「彼女が、音ノ木坂学院に誕生したスクールアイドル、"μ's"のリーダー。高坂穂乃果その人だ」

 

「はいオッケー!!」

 

途中で穂乃果はウサイン・ボルトの真似をしたりしていたのだが、そのノリは完全に運動部だった。

まあ、ダンスは全身運動だし、そういう意味では運動部と言っても間違いではないけれど。

 

「あの、これは…?」

 

ことりが疑問を口にした。しかし聞いていなかった凛が次は海未にカメラを向ける。

 

「じゃあ次は…海未先輩ね!」

 

「え…?あ、なんなんですか!?ちょ、ちょっと、失礼ですよ!いきなり!」

 

突然の事だったのと、彼女自身が慣れていないのもあってか手を振り回してあたふたしている。

 

「おぉ〜その恥じらう姿もいい感じぃ〜」

 

凛が海未の反応を面白がっている隣から、ことりへ希が説明を初めた。

生徒会の事なので、実は僕は前もって知っていたが言わなかった。理由は反応が面白そうだったからである。主に海未の。

 

「ごめんごめん。実は、生徒会で部活動を紹介するビデオを製作する事になって、各部の取材をしているところなんよ」

 

「取材?」

 

「ね!ね!面白そうでしょ!?」

 

凛は海未の反応を見るのが面白いだけなんじゃないのか…面白いけど…。

 

「最近スクールアイドルは流行っているし、μ'sとしても悪くない話やと思うけど」

 

「わ、私は嫌です!そんなカメラに映るなんて…」

 

ぷいっ、と顔を背ける海未。なかなか可愛いものである。

カメラに映るのを嫌がる女子高生は意外と珍しいんじゃないだろうか。みんなやたらと写真や動画を撮りたがるように思えるからな。

 

「なんてアイドルな響き…。オッケーだよね!海未ちゃん!みんながμ'sの事覚えてくれるし!」

 

「ちょっ、穂乃果…」

 

恐らく『取材』という単語に反応したのだろう。穂乃果は乗り気のようだ。

 

「そうね…確かに、断る理由はないかも」

 

「こ、ことりまで…」

 

なるほど、穂乃果にことりが加勢する事で海未は断れなくなるわけか。覚えておこう。

 

「取材させてくれたら、お礼にカメラ貸してくれるって」

 

凛が言った『カメラ貸し出し』は、僕がエリーに言って通したものだ。無論、何も言わないが。

僕の家にも数台ビデオカメラはあるけれど、台数が多いに越した事はないだろう。

 

「カメラがあれば、PVとかも撮れるやろ?」

 

「PV?」

 

プロモーションビデオ。楽曲に合わせて映像をつける事で購買意欲を掻き立てるためのものだ。

もっともμ'sの場合、当然自分たちを、そして音ノ木坂学院を知ってもらうためのものになるが。

 

「ほら、μ'sの映像ってまだ3人の時のしかないでしょ?」

 

「ああ!…あの動画、誰が撮ってくれたのかわからないままだし…」

 

僕は知っている。誰かさんがカメラアングルまできっちり考えつつ動画を撮っていた事を。そして、僕に協力させていた事を。誰とは言わないが、とても美人なクォーターだと言っておこう。

 

「海未ちゃんも、そろそろ新しい曲をやったほうがいいって言ってたよね?」

 

「うっ…」

 

ことりの言葉に海未が怯んだ。

言ってたのか。なら真姫と海未と僕で話を詰めていかないとな。作業開始は早いほうがいいだろう。僕の中の予定表に追加だ。

 

「決まりだね!」

 

「う、うう……もう!」

 

これはOKととって構わないだろう。穂乃果は身を翻し校舎へ向かって走り出した。

 

「じゃあ他のみんなに言ってくる!」

 

「あ、穂乃果!待ってください!」

 

「穂乃果ちゃ〜ん待って〜」

 

海未もことりも、穂乃果について行ってしまった。

ってあれ?凛もいない。いつの間についてったのか…本当に猫みたいだな…。

そうなると、残されたのは僕と東條だけ。するとにこにこしながら彼女が口を開いた。

 

「μ'sのみんなは名前で呼んでるんやね?」

 

「『他人行儀だ!』なんて言われてな」

 

「ウチは他人行儀でええの?」

 

「今までそうだったんだ、今更変えるのも慣れるまで時間かかるし」

 

「ええ〜そんなん不公平やん」

 

「なにがだよ」

 

むくれて顔を背けながら東條は言うので、こちらは顔がほころんでしまう。しかし不公平、というのは一体何に対してなんだろう。

 

東條とは高校1年の時からの付き合いだ。

エリーと初対面で普通に会話ができた、残念な事に唯一の人物である。幼馴染の僕を除いて。

不思議な雰囲気をまとい、なぜか擬似(・・)関西弁を話す。当時は疑問に思ったが、両親が転勤族と言われ納得した。各地を回っているせいで、口調がごっちゃになってしまったらしい。

 

「まあまあゆうちゃん、ちょっとウチのこと名前で呼んでみてや」

 

「いいよ、どうせ呼び方を変えるわけじゃないんだし」

 

「ええから呼んでって〜」

 

ふーむ。こうなるとこいつは引いてくれない、どうしたものか。と、僕はそこでひとつ思いついた。

 

きっと、東條は僕が照れながら呼ぶのを期待しているのだろう。彼女がニヤニヤしているのがその根拠だ。

そこで僕はカウンターを仕掛けることにする。逆に彼女を照れさせてやるわけだ。

 

具体的にどうするかというと。

 

「希」

 

「っ…ゆうちゃん?どうしたの?」

 

僕は名前を呼びながら、彼女の手を握った。ついでに息がかかるくらいの距離まで近づいた。

しかし東條はその程度で照れるような奴ではない。ここから更に踏み込んでいく必要がある。

 

「希。前から思っていたが、お前の髪の毛はすごく綺麗だよな」

 

「え?あの、ちょっと…////」

 

あれ、照れるの早くないか?もう少し抵抗というか、反撃が来ると思っていたんだけど…。東條って意外とそういう耐性は低いのか?

 

僕の我ながら歯の浮きそうなセリフに彼女の顔が赤くなる。しかし僕はやると決めたら徹底的にやる。

僕とてこれは多少恥ずかしいのだ。成りきらなければ僕の顔も赤くなってしまう。それでは意味がない。

 

「それに瞳も澄んでいて、見ていると吸い込まれそうだ」

 

「ゆ、ゆうちゃ…////」

 

「いや違うな。それどころか、希の全てが僕にはとても魅力的だ」

 

「っ…////」

 

ついに黙った。ここまで来ればもう引いてもいいけれど、面白いので続ける事にした。

それともうひとつ、正直言って照れる東條は普段と違いとても可愛い。普段が可愛くないというわけではなく、いつにも増して可愛い。可愛いったら可愛い。

 

「風に揺れる髪も、透き通った瞳も、何気ない仕草も神秘的な笑みも全部。僕だけで独り占めしたいくらいに魅力的に見える」

 

「ぅ、ぅぅ…////」

 

あ、これはちょっとやり過ぎたかもしれん。完全にフリーズしている。ついでに涙目だし。

 

「…東條?大丈ーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…一体何をやっているの?荻野くん(・・・・)?」

 

…Oh…生徒会長…

 

 

放課後です。

撮り貯めた映像を、希先輩が確認して欲しいということで私たちに見せてくださいました。

ちなみに、今は悠先輩、にこ先輩、そして花陽と真姫はここにはいません。

 

「これが、スクールアイドルとはいえ、まだ弱冠16歳。高坂穂乃果のありのままの姿であ「ありのまま過ぎるよ!?っていうかいつの間に撮ったの!?」

 

「上手く撮れてたよ〜ことり先輩」

 

「ありがと〜。こっそり撮るのドキドキしちゃった♪」

 

「えぇ!?こ、ことりちゃんが…ひどいよ!」

 

カメラには、普段の穂乃果がどれだけだらけているかが記録されていました。これでは面目も何もありません。

 

「普段だらけているからこういうことになるんです…。これからは…」

 

「さっすが海未ちゃん!」

 

私が穂乃果に注意しようとしている間に、どうやら私の部活中の映像を観始めたようです。

ちょ、ちょっと待ってください。嫌な予感がするのですが…。

 

「真面目に弓道の練習を…ん?」

 

「これは…可愛く見える笑顔のれんし「ぷぷぷプライバシーの侵害です!」

 

慌てて映像を止め、更に画面の前には手をかざします。まさか撮られていたなんて…!撮られていたなんて…!!

 

「よーし…こうなったら、ことりちゃんのプライバシーも…」

 

穂乃果が席を立ち、ことりの鞄の前に立ちます。そして、断りもせずにファスナーを開けました。

ことりが明らかに焦ります。普段からは想像できない顔をしています。ちょっと怖いです。

 

「ん…?これは…」

 

その瞬間、見たこともないような速度でことりはファスナーを閉め、鞄を背中に隠しながら部屋の隅まで下がりました。

そこまで見られたくないものがあったのでしょうか…?当然、穂乃果は疑問を口にしますが…

 

「…どうしたのことりちゃ「なんでもないのよ?」…いや、でも「なんでもないのよなんでも!」…」

 

ことりは食い気味に否定します。ここまで拒否されては、穂乃果も引くほかありません。しかし、なにが入っていたのか気になるようです。正直、私も。

 

「完成したら、各部にチェックはしてもらうようにするから、問題があったらその時に…」

 

「でも!その前に生徒会長が見たら…」

 

穂乃果の言わんとしている事はなんとなくわかります。想像もできてしまいます。

「あなたのせいで、音ノ木坂が怠け者の集団に見られてるのよ」くらいは言いそうですね…。

 

「…まあ、そこは頑張ってもらうとして…」

 

「えぇ!?希先輩、なんとかしてくれないんですか…?」

 

穂乃果は潤んだ目で懇願しますが、元はと言えば穂乃果がだらけているのが悪いのですから、自業自得です。

 

「ちなみにその辺の心配は要らないぞ」

 

「悠先輩!」

 

「ゆ、ゆうちゃん!?」

 

いつの間にか、扉のところに悠先輩がいました。いつから聞いていたのでしょう、面白がるようにニヤニヤしています。

 

…ところで、希先輩が顔を赤くして驚いているのはなぜなのでしょうか…。

 

「心配ない、とはどういう…?」

 

私の問いに、先輩はニヤニヤしたまま答えます。

 

「エリーには観せないからさ」

 

「そうなの!?よかった〜」

 

「僕と東條は観るけどね」

 

「「うっ」」

 

私と穂乃果の声が重なりました。まあ、あの映像はできるだけ見られたくはないですし。

というかアレはマズイです!なんとか見られないようにしないと…

 

色々考えを巡らせていると、思い出したように凛が声をあげました。

 

「そういえば!ユウ先輩は軽音部なんだよね?」

 

「そうですね…もうそちらの撮影は終わっているのですか?」

 

どんな姿が映されているのか、興味をそそられます。私の恥ずかしいところを見られてしまうのなら、私も見る権利はありますよね?

 

「まあね。面倒だったから最初に済ませたし」

 

「じゃあ今から見てみようよ!」

 

穂乃果に同意します。ことりも乗り気のようで、顔を輝かせていました。

しかし、カメラを持つ希先輩は少し渋りました。

 

「でも…一番に観たいのに…ウチまだ…ごにょごにょ…」

 

「でも」の後がよく聞き取れませんでしたが、悠先輩は構わないといった様子で彼女からカメラを受け取りました。

 

「きっと絶句するよ。みんな」

 

「そうなのですか?」

 

「うん。あいつの歌声はとても高校生のものじゃない。プロ顔負けだ」

 

『あいつ』とは誰のことなのでしょう。先輩はまるで自分がそうであるかのように、とても嬉しそうに笑っています。

 

なぜでしょうか。少しモヤモヤします。

いつか、私たちのこともこんな風に話してくれるようになるでしょうか。

 

いえ、違いますね。

そうさせてみせます。いつか、絶対に。

 

「え〜と…お、あったあった」

 

映像を探し当てて、悠先輩は再生ボタンを押しました。映し出されたのは楽器が置かれた部屋。おそらく軽音部の部室なのでしょう。

 

画面の中には3人。悠先輩と、確か…隣のクラスの支倉さんでしょうか。もう1人は私にはわかりませんが、リボンの色を見るに先輩のようです。

 

希先輩の声が入り、3人と話し始めました。

 

『もう撮ってるからね〜。せっかくだし、何かやってもらおうかな』

 

『やるって言ってもな…今は3人しかいないしできる曲は…』

 

『このメンツならひとつだけある。Rainbowならアコースティックだけでもできるはずだ』

 

『そういやそうか。じゃあ支倉、歌頼んだ』

 

『了解です〜』

 

『相川、パートは?』

 

『私がリズム、荻野がリードで頼む』

 

『了解』

 

てきぱきと準備が進められていきます。椅子が三脚立てられ、画面左に支倉さん、右に悠先輩が座りました。

 

『それじゃ4カウントでいくぞ…1、2、3、4』

 

アコースティックギターの旋律が聴こえてきます。聴き心地のいい、とてもいい旋律です。

 

そして、支倉さんが息を吸い込んで歌い始めました。その瞬間私は、いえ、先輩方以外は全員、言葉を失いました。

 

 

手のひらの上にそっとのせた

やさしさを あたためてそっと

 

口ずさんだ秘密のメロディー

歌ってよ 行くあてもないけど

 

 

どこまでも透き通る、青空のような声。今まで聴いたことのない、一瞬で魅了される歌声。

曲はBメロを過ぎ、サビに入ります。

 

 

いくつもの虹 越えていけるよ

ふたりで オーバー ザ レインボー

 

小さな光 星に願いを

叶えてよ きっと 青い鳥

 

 

曲の終わりは悠先輩のギターリフ。その指の動きや旋律もとても滑らかで、いつまでも聴いていたくなるようでした。

 

『……』

 

『…東條?なんか喋るんじゃないのか?』

 

『えっ?あ、ごめんごめん。聴き入っちゃって…』

 

画面の中では既に曲が終わり、希先輩がコメントしているところです。ですが…

 

「「「「…………」」」」

 

映像が終わっても、誰も何も言葉を発しません。まさに『絶句』です。

悠先輩が言っていたのは、こういうことだったのですね。本当に、同じ高校生とは思えない歌声でした。

 

天賦の才能、というものなのでしょう。私には到底真似できるものではありませんね。

 

「……」

 

「…悠先輩、どうして先輩がドヤ顔なんですか」

 

「え?今ドヤ顔してた?」

 

「ええ。猛烈に」

 

またモヤモヤが来ました。これは一体なんなのでしょう…自分の部活の事なのですから、誇らしいのは当然のはずなのに。

 

「…なんか海未不機嫌じゃないか?」

 

「そんな事はありません」

 

ええ。そんな事はありません。だって、それでは私が嫉妬しているみたいじゃないですか。

何に嫉妬するというのです。まだ悠先輩と関わり始めて日が浅いのに。

 

私が自分の中のモヤモヤに釈然としない思いでいると、部室の扉が勢いよく開かれました。

 

「にこ先輩!」

 

「はぁ…はぁ…取材が来るって本当!?」

 

肩で息をしています。かなり急いで来たようでした。質問にことりが答えます。

 

「もう来てますよ。ほら♪」

 

ことりの声に合わせ、凛がカメラをにこ先輩に向けました。

するとにこ先輩は、先ほどまでの振る舞いとは一転、あざとさ全開で話し始めます。

 

「にっこにっこにー!みんなの元気ににこにk「ちょっと前通るぞー」あんたねえ!今撮影してんじゃないのよ!」

 

遮るように、というか遮るためにでしょうか。悠先輩はにこ先輩の前を通り扉へ向かいます。

当然、にこ先輩は憤慨しますが、悠先輩はまったく悪びれません。

 

「どうせお前のとこは全カットだから関係ないよ。じゃ、僕は軽音部の方に行くよ。また明日な」

 

「ちょっとユウ!聞いてるの!?」

 

「はい!また明日!」

 

「無視するなコラ!!」

 

にこ先輩完全無視で穂乃果が手を振り、悠先輩は部室を出て行きました。

 

その後、撮り直しをしたり、凛が「ちょっと寒いかにゃ」とこぼして怒られたり。

 

外で花陽や真姫にもインタビューをしたり、穂乃果の家にお邪魔したりしたようです。

 

もちろん、練習の風景も撮りましたよ?希先輩曰く「迫力が違う」とのことでした。

 

そして、その時にふと希先輩が言ったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果ちゃんて、どうしてμ'sのリーダーなん?」

 

と。




体幹トレーニングのキツさを800字で表現したい。
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