どっちつかずの彼女(かれ)は行く   作:d.c.2隊長

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お待たせしました、ようやく更新でございます。

今回急展開、あっさり気味ながら約14000文字ほどあります。

そろそろ最初の辺りとの矛盾がないか怖くなってきました……やらかしていたら、ご報告くださいませ。

いつの間にかスマホ版で艦これ出来るようになってますね。思わず久しぶりと呟いてしまいました……ところで、マブラヴアプリスタートはまだですかね←


さようならイレギュラー

 空母棲姫曙と港湾棲姫吹雪が対峙する総司令室。睨み合っている2人は、未だ動かずに居た。先日戦った時は曙が勝利しているが、今回もそうなるとは……少なくとも、楽に勝てるとは曙も思ってはいない。

 

 目の前の吹雪は、姫級の殆どが持つ巨大な異形の艤装を持っていない。身体も、あの戦いの後に入渠していないのでボロボロのままだ。そんな吹雪に対して、曙は異形こそ吹雪に殴り飛ばされたものの動かすことに問題はないし、艦載機も補充してから使ってないので全機発艦可能……端から見れば、勝敗など決まっていると言える。それでも曙が勝利を確信出来ないのは、室内という狭いフィールド故のこと。

 

 艦爆にしろ艦攻にしろ、その攻撃方法の後には爆発が待っている。こんな狭い場所でそれらを使えば、まず間違いなく自分にも小さくない被害が出る……が、曙にとってそれはどうでもいい。彼女の目的はあくまでも善蔵を殺すこと、それさえ出来れば自分が傷付こうが沈もうがどうでもいい。

 

 しかし、吹雪の存在が邪魔になる。彼女の背後には曙が穴を空けた壁があり、すぐ側に善蔵がいる。曙が何か行動を起こせば、善蔵を抱えて逃げられてしまうことも充分に考えられた。吹雪は曙をやっつける等と言っているが、その目的は善蔵の守護か救出であることは明白、いざとなれば曙と相討ってでも彼を助けるだろう。そうなってしまえば、曙の目的は達せられない。彼女の“願い”は叶えられない。

 

 

 

 『……ここ、は? 私は……沈んだんじゃ』

 

 『面白そうな予感がしたので来てみれば……その姿、まるで深海棲艦みたいですねー』

 

 『誰!? ……あんたは、確か善蔵の部屋に居た……』

 

 『実に興味深い。確かに沈めば“転生”するが……しかし私はこんな姿なんて……やはり世界は、まだまだ不思議に満ちています』

 

 『何訳の分からないことを言ってんのよ! 何であんたが此処にいるの!? なんで沈んだハズの私は此処にいるの!?』

 

 『……イヤですねえ、私のことなんてどうでもいいじゃないですかー。で、す、が、貴女が此処に……貴方が沈んだ海上にいる理由と、貴女のその姿の理由には答えられますよ』

 

 『私の、姿? ってほぼ裸じゃない!? こっちみんなクソ妖精!!』

 

 『理不尽な……まあいいです。貴女、善蔵の“願い”は聞いたでしょう? 簡単に言えば、その“願い”のせいですよ。貴方の姿も……戦いが終わらないのも。沈んだハズの貴方が、今じゃその姿……もう分かるでしょう?』

 

 

 

 それは、曙が空母棲姫となったばかりの頃の記憶。その記憶を、曙は今でもはっきりと思い出せる。そして、喋り方がかなりイラッとする妖精が口にした言葉も、その後に自分が言った言葉も。自分が感じた絶望も、その後に湧いて出てきた怒りも。その感情のまま口に出た“願い”も。

 

 

 

 『本当に善蔵のせいだって言うなら……私があいつを殺すわ。いえ……私は、あいつを“殺したい”っ!! 私達艦娘を……私を裏切ったあいつを! 私を騙してたあいつを!!』

 

 『ふふふ……その“願い”、叶えてあげ』

 

 『いらないわ。叶えて貰うんじゃ意味がないの……私の意思で、私なりのやり方で、私の力であいつを……っ!!』

 

 『……ふむ、それもいいでしょう。頑張って下さいねー……私を楽しませる為に、ね』

 

 

 

 願いの成就はもうすぐなのだ。あと少しで、その命に手が届く。失敗すれば次はないと曙は考えている。建物や防衛施設が曙が居た頃と然程変わりなかったが故に、ここまで侵入できたのだ、失敗して逃げ帰れば、突貫工事をしてでも内部の構造を変えてくることは明白。何よりも、この時の為に長年戦力を集めて傘下に置き、ここまでの大襲撃を敢行したのだ……同じ作戦は、2度も使えない。

 

 失敗出来ない……故に、曙は慎重になる。万が一を考えてしまうから、動けない。それは守る側である吹雪とて同じ。何せ彼女は1度負けているのだ、先日の敗北が脳裏にちらついて善蔵を守れないのではないかという恐怖がある。同時に、この命と引き換えにしてでも守るという意思もある。故に、曙のあらゆる行動に対応できるように警戒していて動こうにも動けない。自分から突っ込んでその間に艦載機なり異形なりを善蔵にけしかけられたらそこで詰みなのだから。

 

 お互いがお互いの理由で動けない。しかし、時間が経てば経つほど曙は不利になる。善蔵の助けが来る可能性が限りなくゼロに近くとも、決してゼロではない。幾ら姫とは言え、流石に武蔵や日向達と戦えば敗北は必死なのだから。

 

 

 

 その可能性を考慮した曙が動き出そうとした瞬間、空いた壁の穴と窓の向こうから強烈ながら優しい光が室内を満たした。

 

 

 

 「っ!? な、なに……」

 

 「はああああっ!!」

 

 「っ……か、はっ……」

 

 それは、イブキが新たな力を得た光。その光に目が眩んだ曙の腹部を、隙を突いて近付いた吹雪の巨大な右手の爪が貫いた。吹雪が動けた理由は単純……壁に背を向けていた為に光が目に映らなかったからだ。善蔵を殺す為に対面していた曙だけが被害を受けたのは、当然のことだった。

 

 曙は痛みに耐えながら、視線を下へと向ける。吹雪の爪は、手首の辺りまで彼女の腹へと沈んでいる。当然、その巨大かつ長く鋭い爪は背中を貫通している。一目見て分かる程に致命傷……何しろ体の構造そのものは人間と然程変わりないのだ、内臓がやられれば死は免れない。長い年月を準備に費やし、この日に全てを賭けていたというのに……こうも呆気なく、一瞬で無駄になるのかと……血を吐きながら、曙は嗤う。

 

 (でも……只ではやられてやらない。戦いに負けても……勝負には、勝つ!!)

 

 「っ……まだ動けるの!?」

 

 吹雪を睨み付けながら、曙は己の腹を貫いている彼女の手を両手で掴む。その力は死の淵に居るとは思えないほど力強く、更に火事場の馬鹿力とでも言うのか吹雪の力をもってしてもびくともしない。

 

 「善ぞ……あんだ、だけは……ごろ、ずううううっ!!」

 

 睨む対象を善蔵へと変え、血と共に憎悪を吐き出す曙。その叫びに呼応するように再び異形が動き出し、その巨大な顎を開く。

 

 吹雪は止めるべく体を動かそうとするが、曙がそれを許さない。砲撃でも出来ればまだなんとかなっただろうが、先日から破壊されたままでこの場にはない。ならばと空いている左手を伸ばすが、やはり届かない。

 

 「善蔵さん!!」

 

 (殺っ……)

 

 

 

 『ふむ、君が曙か……やはり駆逐艦は皆年端もいかぬ少女の姿をしているのか……にしても、まさか初対面でクソ提督呼ばわりとはな。元気のいいことだ』

 

 『初勝利おめでとう、曙。ああ、勿論感謝しているとも……やれやれ、何を言ってもクソ提督呼ばわりされるようだな』

 

 『……今、クソ提督ではなく私の名を呼んだのかね? いやいや、悪いとは言わんさ……ニヤニヤして気持ち悪い? 酷い言い草だな……嬉しいのだよ。ようやく君が心を開いてくれた気がしてな』

 

 『曙……戦いが終われば、私の養子にならないか? これは他の艦娘にも聞いていることでな……曙や吹雪達を妻は気に入っている。無理強いはしない……考えてみてくれ』

 

 

 

 異形が善蔵に届く前の刹那、曙の脳裏に唐突に過去の記憶が甦ってきた。着任した始まりの日、そこから始まった大本営での生活、深海棲艦との戦い、仲間達との会話……そして、善蔵と過ごした日々。

 

 楽しくなかったと言えば嘘になる。軍艦時代の記憶故に善蔵に対してつっけんどんな態度だったことや信頼を築くのに時間が掛かったという事実こそあれ、決して嫌な日々ではなかった。養子の話も、解体やどこかの施設に預けられるよりも遥かに良かった……内心、善蔵を父と呼び、他の艦娘と姉妹となるのもいいだろうと思えるくらいには信用も信頼もしていたし、好意も抱いていた。それが壊れたのは……とある日、早朝の挨拶に行った時に扉越しに聞こえた善蔵と妖精……猫吊るしの言葉が原因だった。

 

 『戦いは終わらない……だと? どういうことだ!?』

 

 『イヤですねえ、貴方が“願った”ことでしょう?』

 

 

 

 ━ 海軍が必要となる為に……海軍にしか倒せない“敵”が欲しい。そして、その敵に最終的には必ず“勝利”出来るようにして欲しい、と ━

 

 

 

 それこそが善蔵の願い。それこそが今の世界の始まり。そして……極々一部の者しか知らない、世界の真実。扉越しに聞こえたその会話は、当時の曙に大きな衝撃を与えた。会話の内容が正しければ、戦いは永遠に終わらない。戦いが終われば、海軍は再び不必要となるかもしれない……無論、ならないかもしれない。だが“もしも”がある以上……戦いを終わらせられない。

 

 故に、世界に平穏は訪れない。永遠に深海棲艦という敵に怯え、海軍と艦娘に頼り続ける……海軍にしか、艦娘にしか倒せないのだから。“海軍にしか”と願ってしまっている以上、他の所に対抗する為の兵器や艦娘が行くわけがない。だから艦娘は海軍以外では扱えないし、本人達も従わない……“己の意思とは関係なく”。

 

 善蔵が話した、曙が僅かでも夢想した戦いが終わった後の暖かな時間など訪れない。沈んだ艦娘達が望んだ戦いに勝利することも、平和も有り得ない。だから曙は裏切られた気持ちになったのだ。

 

 (やっと……信じられるようになってきたのに……善蔵の子供になったら楽しそうだって思えるように……なって、きたのにっ!!)

 

 培ってきた信頼を、一瞬のうちに砕かれた。善蔵ならば信用できる……そんな思いを、土足で踏みにじられた。その反動があるがこその殺意。信頼した分、信用した分の敵意。ここまでそれらが膨らんだのは、それだけ信用と信頼をしていたからだ。

 

 そこまで思い返したところで、刹那の時間が終わりを告げて異形が善蔵の体へと届く。顔を横にして大きく開いた口は彼の体を左右から挟み込み、噛み砕こうとする。体が機械である以上死にはしないだろうが、逃げられなくなるだろう。そこに自爆覚悟で艦載機を爆破するなりすれば、曙の目的は達せられる。

 

 「ぐっ……!」

 

 「曙ちゃん! やめてえっ!!」

 

 「うる……ざぁい! ごい、ごぼっ……ごいづは、ごろず!! あんだも、知ってんでしょ! こい、づの“願い”!! なんであんだは、守ろうとずるのよ!?」

 

 顔を歪める善蔵と、曙に涙を流しながら懇願する吹雪。そんな吹雪が、曙は心の底から信じられなかった。何故なら、曙が善蔵と妖精の会話を聞いたその場に、吹雪も居たのだから。つまり、吹雪も曙と同じ会話を耳にしているのだ。だから曙には分からない……同じ話を聞いて、なぜこうも意見が別れたのか。理解出来ないから、血を吐きながらも曙は問い掛ける。なぜ? と。

 

 「善蔵さんは、知らなかったから!! 善蔵さんも、戦いが本当は終わらないって知らなかったから!!」

 

 「なっ……ぞんな、嘘が信じられると!」

 

 「だってあの時、善蔵さんは言ってた! “どういうことだ”って!!」

 

 「えっ……あ……?」

 

 吹雪の言葉を聞いて、曙の頭の中が真っ白になった。確かに、刹那の中で思い出した記憶では善蔵はそう言っていた。つまり、吹雪の言う通り……善蔵は、戦いが終わらないことを知らなかったのだ。

 

 だが、それがなんだと曙は言いたくなった。なるほど、確かに善蔵は知らなかったのだろう。しかし彼が願った内容も事実も変わらない。言うなれば、彼は今の世界を作り出した元凶。極論、数多の存在を殺した大量殺人犯と言っても過言ではない。

 

 「それに……善蔵さんが願ってくれなかったら、私達は生まれなかったんだよ?」

 

 それがどうしたと、曙は思う。確かに善蔵の願いがなければ艦娘も深海棲艦も生まれなかったかもしれない。現在の生を謳歌している者達にとっては、願ってくれてありがとうなどとお礼や称賛の声が出るやもしれない。

 

 だが、それでも曙は怒りが勝つ。生まれなければ良かったとは言わないが、生まれたことで世界は戦いの真っ只中にいる。国の為、人の為に戦い沈んだ艦娘達の頑張りや想いを無駄にしたと言っていい。今の曙では、とても“生んでくれてありがとう”等と口が裂けても言えないだろう。故に、曙はどれだけ会話を重ねても吹雪とは相容れないと結論付けた。自分では、吹雪のように思うことは出来ないのだから。

 

 「それに、善蔵さんは私と“約束”してくれた! “必ず平和な世界を取り戻してみせる”って!」

 

 それこそ曙にとってはどうでもいいことだった。そんな守れもしない約束がなんだと言うのか。目の前の異形に喰われそうになっている男が、そんな約束を本気で守ろうとしているとでも言うのか。いや、それ以前に……平和を壊した元凶がそんな約束をする資格があると思っているのか……曙は、そう口にしたかった。だが、口にすることは出来ない……そんな余裕もない程にダメージを負ってしまっているということもあるが、最大の理由は曙が思ってしまったからだ。

 

 

 

 善蔵ならば、その約束に本気で取り組んでいるだろうと。

 

 

 

 確かに裏切られた。だが、それでも今まで過ごした時間は……少なくとも、偽りではなかったことくらいは分かる。決して短くない時間を共に過ごしてきたのだ、善蔵の人間性や考えることなど理解出来る。何よりも、善蔵は分かりやすい人間だった。

 

 着任した艦娘は本気で歓迎してくれた。怪我して帰投すれば直ぐに入渠させてくれた。建造日には誕生日だと言って祝ってくれた。更には中々外出出来ない艦娘達の為にプレゼントまで用意してくれた。善蔵は元々、そういう人間なのだ。そうでなければ海軍の規模縮小に対し、部下達の為に頭を痛め、怒りを覚えたりしないだろう。そんな人柄だと知っていたからこそ、曙は信頼も信用も出来るようになり、養子もいいかと思い始めていた。

 

 (……あれ?)

 

 そこで曙は疑問に思う……“なぜ自分はこうも善蔵に対して殺意を抱いていたのか?”と。善蔵は自分を裏切った……そう考えたのはなぜだ? そもそも、なぜ自分はこんな姿になった? 沈んだことは覚えている……だが、自分はどうやって沈んだ? なぜ? なにが? どうして? 言われるまで気にならなかった、知ろうとすらしなかった疑問が湧いて出る。

 

 「曙……ちゃん?」

 

 吹雪の爪を掴んでいた手から力が抜け、曙が後ろに下がったことで彼女の腹部を貫いていた爪がズルリと抜ける。最早痛みすら感じていないのか、曙は顔をしかめることもなく背後の壁に背中を預け、ずるずると座り込んだ……その間も善蔵を挟んでいる異形が動かないのは、まだ殺意があるからだろう……それも、目に見えて弱くなっているが。

 

 「……あんたは……なんで、沈んだの……? 私は……なんで……」

 

 「……覚えてないの? 思い出せてないの?」

 

 吹雪の言葉に、曙は頷く。忘れていた、意識していなかった過去を思い出した曙だが、唯一自分が沈んだ理由だけが思い出せずにいた。覚えているのは沈んだ日……善蔵と猫吊るしの会話を聞いた当日であるということ。そして、会話を聞いてしまった後、曙はその場から逃げ出したということ。そこまでは覚えている。だが、そこからが思い出せない。

 

 先程までの曙なら、善蔵に暗殺でもされたのかと考えていただろう……が、今はそんなことは思えない。今の善蔵が必要ならば暗殺を厭わないことは知っているが、少なくとも曙が“曙”だった頃の善蔵はそんなことはしなかったのだから。

 

 ぐじゅぐじゅと生々しい音をたてながら少しずつ再生していく体を見ながら、曙は考える。何かがおかしいと。疑問に疑問が重なり、そこに不信感や違和感を覚え、混乱する。今の曙に正常な思考が出来ているのかも怪しい。そして、そんな彼女に吹雪は真実を告げる。

 

 「曙ちゃんが……私達が沈んだ理由は、逃げ出した先で深海棲艦と遭遇したからなんだよ」

 

 吹雪のその言葉で、曙は忘れていた記憶を思い出す。思い出した記憶は、曙にしてみれば赤面ものだった。

 

 善蔵と猫吊るしの会話を聞いた曙は善蔵が裏切ったと思い込んで負の感情に支配され、その場から逃げ出したのだ。体が覚えていたのだろう、艤装を取り付けてただその場から逃げたい一身で軍港から。言わば、突発的な家出のようなモノだ。

 

 同じように会話を聞いていた吹雪は、曙ほどショックを受けてはいなかった。曙と違って吹雪は善蔵を心底信頼していたし、養子の話も受けていた。故に、会話の内容よりも善蔵の声と反応に視点と思考を置くことが出来たのだ。彼女は曙よりも冷静だった、だから曙を追うことが出来た。

 

 逃げ出して、追い掛けて、立ち止まって、追い付いて……敵と遭遇した。海軍最強の第一艦隊、第二艦隊所属とは言え2人は駆逐艦……艦のスペックと多勢に無勢な状況では、どうしようもなかった。これが、曙が忘れていた沈んだ記憶、その真実。吹雪と善蔵が約束したのは、沈む間際の通信でのことだ。

 

 だが、それがなんだと言うのか。暗殺ではなく、沈んだ理由についてはむしろ自業自得と言えることは分かった。自分から聞いたとは言え、曙が知りたいのは自分が善蔵に殺意を向けるようになった理由だ。そうして再び思考に沈もうとしたところで……曙は善蔵の顔の横に浮かぶ猫吊るしの姿を見た。そして、その際にはっきりと見えた。猫吊るしが曙を、嘲笑しながら見ていたことを。

 

 (……あ……ああ……)

 

 曙の心に、絶望と怒りが再燃する。理解したのだ……己の殺意の理由に。何度も思い出していたではないか……その存在を、その言葉を。空母棲姫の始まりを、これまでの準備の手助けも、情報も、何もかも。そして“ソレ”は嗤っている。曙を見て……嗤っている。そして“ソレ”は……。

 

 

 

 ━ 今更気づいたんですか……バカですねえ ━

 

 

 

 はっきりと、声には出さずにそう口を動かした。

 

 「お"、ま"、え"え"え"え"え"え"え"え"っ!!」

 

 「きゃうっ!?」

 

 般若のような形相を浮かべ、血を吐きながら曙は吹雪を突飛ばし、善蔵へ……猫吊るしへと手を伸ばす。殺意の元凶へ、怒りの元凶へ。今まで善蔵へと向けられていた負の感情の全てが、猫吊るしへと向けられていた。

 

 そして、その手は届く。手のひらで覆ってしまえる程小さなその体を、曙は右手で握り締める。だが、文字通り命を握られているにも関わらず、猫吊るしはニヤニヤとした嘲笑を浮かべたままだった……まるで、無駄なことをと言わんばかりに。

 

 「死……ねええええっ!!」

 

 そうして曙は、猫吊るしを握り潰した。

 

 

 

 

 

 

 自分は夢を見ているのか? と、大淀は誰にでもなく問いたかった。何しろ、目の前で起きている出来事が現実であると信じがたかったのだから。

 

 身動ぎすれば、赤い噴水が上がる。呼吸をすれば、人型深海棲艦の首が飛ぶ。瞬きすれば、黒い集団が真っ赤に染まる。声を発しようとすれば、動いていたモノが動かなくなる。

 

 それはさながらバトル漫画のよう。速すぎて見えない……それは、以前の大規模作戦の時にも見た。だが、今のイブキはその速度を更に越えている……残像が見える程に。

 

 「これが……軍刀棲姫の本気……?」

 

 勝てる訳がないと、大淀は断じる。もしも正面から相対すれば、何も出来ずに全滅するだろう。例え距離を離していたところで、誇張なく一瞬で距離を詰められて斬られることは想像し易い。こうして言葉を発する間に、思考している間に、深海棲艦達はその数を減らしていっているのだから……それも、艦娘達が攻撃に加わっていた時よりも早く。

 

 イブキの姿こそ一瞬残る残像でしか見えないが、彼女(かれ)の両目の蒼い光のせいだろう……大淀の目の前には、蒼い光の線がさながらテールランプのように直線の軌跡を幾つも作り出していた。それが唯一のイブキの動きを知る為の痕跡である。そしてその軌跡は……戦場を余すところなく存在している。つまり、1分も経っていないにも関わらず、イブキは戦場をほぼ走破しているということだ。

 

 (これ程の速度……艦娘でも深海棲艦でも出せるハズがない……いえ、この地球上におけるあらゆるモノでも殆ど不可能です。まるで、彼女だけが違う時間を生きているかのよう……もしもその刃が我々に向けば、文字通り一瞬で終わるでしょうね)

 

 大淀が感じたのは、安心でも歓喜でも、ましてや希望等ではない。それらとは真逆の不安、恐怖、そして絶望である。過ぎたる力は恐怖しか生まないのだ。その“過ぎたる力”を間近で見ている大淀は、イブキと戦う可能性がある現状に恐怖している。もしもこの力が自分達に向いたらという想像に恐怖している。もう先程までのような“少なくとも今回は大丈夫”等という安心は出来なかった。

 

 追いかけられれば逃げられず、逃げられれば追い付けない。その手の軍刀の一撃はかわすことも受けることも叶わない。そんな相手が明確な味方ではない……その事実が、どれほど怖いか。

 

 チラリと、大淀は他の艦娘に視線を送ると、見えた表情は様々だった。唖然としている者、恐怖に顔を歪めている者、何故か恍惚とした表情を浮かべている者、何故かわくわくとした表情を浮かべている日向……そして視線を前に戻せば、そこにあるのは地獄絵図。

 

 斬られた深海棲艦から流れ出した血や中身によって真っ赤に、それを超えてどす黒く染まった海。あちらこちらに沈みきっていない深海棲艦の死体があり、中には中身が見えているモノすらある。その光景が広範囲に広がっており……海上に残る蒼い軌跡が、より禍々しさを感じさせる。

 

 「……早く撤退しなさい!!」

 

 立ち止まっていた艦娘達に向け、大淀は声を張り上げる。それによってようやく艦娘達は撤退を再開する……が、撤退ではなく帰投となるのは時間の問題だろう。何せ、撤退しろという一言を言う間にもイブキを深海棲艦を斬り続けていて、深海棲艦はその数を減らしていっている。数え切れない程居た筈の深海棲艦は、もう500にも満たない……そんな中で、数を減らしていないモノがあった。

 

 「まだ弾薬がある艦は上空の艦載機を!」

 

 【了解!!】

 

 それが、深海棲艦の艦載機。これはイブキにとっても仕方ないことだった。イブキは決して時間を止めたり姿を消したり出来る訳ではなく、あくまでも速度が常軌を逸しているだけである。跳躍する際の速度は速くとも空を飛ぶことも空気を蹴るなんてことも出来はしない為、落下する速度は自然に任せるしかない。跳躍は一方通行であり、跳んだ後の自由も効かない。

 

 イブキには刀身が伸びる軍刀があるが、これは伸びる速度が一定である為、現在のイブキの速度を維持しつつ使うことは難しい。伸ばしたまま使えば折れてしまう可能性もある。それ故にイブキは、極力跳ばずに海上を走り回りつつ両手の軍刀だけで戦わざるを得ないのだ。その為、どうしても上空の艦載機は放置せざるを得ない……と、大淀はそう考えた。

 

 だが、艦載機だけならば艦娘達だけでも充分こと足りる。元よりこの場にいる艦娘達は皆精鋭、動いている的に当てることなど容易い。それに深海棲艦と比べれば艦載機は遥かに脆い上に先程までの深海棲艦達と比べれば数も少ない……弾幕を張れば、充分対処可能な数だった。

 

 「っ……弾薬が、もう……」

 

 「私も弾切れ!」

 

 「ごめんなさい、私も……っ!」

 

 だが、それも弾薬が万全であればのこと。大半が補給の為に撤退を開始していた以上、他の艦娘達も補給が近いのは当然のことだった。粗方落としたとは言え、まだ艦載機は十数機程残っている。しかし、艦娘達には落とす弾薬がない。

 

 万事休す……そう思った矢先に、艦載機達の近くを蒼い軌跡が通った。その先にいるのは、当然イブキ。その姿を数分ぶりに見た大淀は何故? と疑問に思い、その後すぐにまさか、と思って視線を深海棲艦がいた方へと移す。

 

 そこには、水平線があった。影など1つ足りとも存在せず、あるのは黒煙とどす黒く染まった海……そして、灰色の雪雲。それが意味することはただ1つ。

 

 (ほんの数分、目を離しただけなのに……軍刀棲姫……貴女は本当に、敵にしてはいけなかった……)

 

 2000に及ぶ深海棲艦の、全滅。一時は絶望すら感じていた、勝つことなど出来ないと感じていた膨大な数との戦いの、呆気ない終幕。

 

 (正しく“化物”……総司令には、強く言わなければなりませんね……軍刀棲姫には2度手出ししないようにと)

 

 空中に咲く真っ赤な十数個の花火を見ながら、大淀は決意する。総司令の第一艦隊所属艦としては、それこそ内にある爆弾を使ってでも倒すべき相手なのだろう。だが、大淀にはもうそうする気はなかった。それはひとえに、イブキが海軍にとっての救世主であり、大恩人であるからだ。

 

 化物としか言い様がない強さに恐怖を感じた。だが、その前に大淀はイブキという存在を少しだけ知ったのだ……自分の思い人とどこか被る、その心と在り方を。だから爆弾は使わない。別に命を散らしたい訳ではないのだから。

 

 (さて……怖いことは怖いですが、艦娘代表としてお礼くらいは言わないといけませんね)

 

 着水したイブキを視界に収めつつ、大淀はイブキに近付く。その表情は無表情等ではなく……初めて善蔵と出逢った時のように笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 世界がモノクロに染まる……俺は今、そんな体験をしていた。世界は黒く、深海棲艦と艦娘は白い。だが、はっきり姿形、どんな表情をしているかというのははっきりと分かる。そして、あの時間が止まったかのような感覚が発動している……“攻撃なんて行われていないのに”。

 

 “感覚”は“自分に攻撃が迫っている時”に発動する、というのが俺の考えだった。だが、攻撃なんてどこからも来ていないのに発動している……気がする。まあこの際疑問点はどうでもいい。大事なのは、この世界は“感覚”と同じようなモノであり……そうであるなら、俺は相手が止まっている、もしくはとてつもなく遅くなっていても普段通りに動けるということだ。実際、大淀の周囲の深海棲艦を斬った時、まったくと言っていいほど俺以外誰も動かなかった。

 

 守れない気がしない……その言葉に嘘はない。本当に、今なら何でも出来る気がするんだ。この全能感というか高揚感というか……そう、まるで某大総統のかっこよすぎる戦闘シーンを見た時のような、まるで初めて好きな人に手料理を振る舞った時のような、まるで初孫をこの手に抱いた時のような、まるで、まるで、まるで……。

 

 (……? なんだ、今の記憶……)

 

 戦場を動き回り、深海棲艦を斬りながら考えていると、ふと脳裏を過った記憶に違和感を感じた。俺はこの身体になる前の記憶が全くと言っていいほどにない。だが、まあ多分一般人で男だったんじゃなかろうかと思っていた。

 

 だが、過った記憶は……記憶“達”には、まるで一貫性がない。アニメを見ていた記憶、誰かに手料理を振る舞っている記憶、しわくちゃの手で赤ん坊を抱いている記憶……その他にも、色々なシチュエーションが一瞬の内に過った。

 

 また1人の人型深海棲艦の首を斬り、1隻の深海棲艦を頭から……尻? まで一閃する。それらを何度も何度も繰り返しながら、俺はまた考える。この記憶達は何なのかと……そう簡単には答えなんて出ないが。

 

 (いや、そもそもこんなことを考える必要もないんじゃ? 俺はもうかつて自分に未練はないんだし)

 

 とは言え興味……というか気にはなる。まるで継ぎ接ぎのような、色んな場面をごちゃ混ぜにしたかのような記憶……前世の俺はどんな奴だったのか、気になるのも仕方ないだろう。思い出せないのがもどかしい。というか、全能感と高揚感のせいかどうにも考えが気楽になっている気がする……少なくとも、さっきまでの港湾棲姫との約束だとか、守りきれないだとか、そういうネガティブな考えはしなくなっている。

 

 しかも、思考しながらも動き回って斬りまくっていたせいか、あれほど居た深海棲艦が殆どいなくなっていた。拍子抜けだな……と思ったものの、よく考えてみれば俺がやっていることはボーっと突っ立っている敵をひたすら斬っているだけ……そう考えると、作業感が半端ないな。実際、今では作業に等しいし。

 

 だが、強くなったことでちょっとした弊害が出ている。それは“速すぎる”ということ。簡単に言えば、小回りが効かない。俺自身は普通に動けるとは言ったものの、その“普通”の基準が上がっているのか加減が出来ない……というより、俺自身が今の身体を使いこなせていない。だから無駄な軌道になってしまっている……とは言え、問題らしい問題は全くない。何せ、俺以外の動きは止まって見える程に遅いのだから。

 

 気付けば、深海棲艦はいなくなっていた……が、ふと大淀達の方へと視線を向ければ、空には艦載機が飛んでいる。深海棲艦にしか目が行っていなかったのですっかりその存在を忘れてたわ……が、別に問題ない。今の俺なら、充分追い付いて対処できる距離だ。

 

 (届くかは分からんが、空ならしーちゃんで……?)

 

 ふーちゃん軍刀を後ろ腰の左側の鞘に戻してしーちゃん軍刀を抜き、トリガーを引いて伸ばそうとする……が、ゆっくりとしか伸びていかない。何故? とは思うが、それを考えるのは後回しでいいだろう。ただ1つ分かるのは、今の俺の状態ではしーちゃん軍刀はナイフとしてしか使用できないということだ。

 

 ということに気付いた為、俺はしーちゃん軍刀を鞘に戻して再びふーちゃん軍刀を抜いた後にいつかのように跳んで擦れ違い様に艦載機を斬り裂いた。

 

 「……やっと終わったか」

 

 そう口にした瞬間、世界に色が戻って艦載機が爆発した音が聞こえた。物凄く長い時間斬りまくっていた気がするが……多分、10分も経っていないんだろうと思う。海に向かって落ちている時間が、酷くゆったりとしている気がする……これが時差ボケという奴だろうか。

 

 「軍刀棲姫」

 

 「……俺はイブキだ。軍刀棲姫なんて名前で呼ばないでくれ」

 

 そんな風に思いながら着水した後、大淀が何かの名前を呼びながら近付いてきた。そう言えば、俺は海軍ではそんな名前で呼ばれていたんだったか……が、俺には関係ない。俺には“イブキ”という名前があるのだから……名付け親は俺だが。

 

 「……分かりました。それではイブキさん……艦娘代表として、今回の御助力……感謝いたします。我々を助けて下さって、本当にありがとうございました」

 

 「……頭を上げてくれ。俺は恩人の頼みを聞いただけだ」

 

 感謝の言葉を述べながら頭を下げる大淀の姿に、俺は少し面食らっていた。敵である俺に頭を下げるなんてことは……まあ、想像していなかったから。精々言葉だけ、それも高圧的なモノだと予想していた。酷い想像ではそのまま俺対海軍の第2ラウンドが始まるものかと……負ける気はないが。

 

 だが……大淀がこうして頭を下げてくれたお陰で、彼女を守った時に聞いた言葉は嘘ではないんだと思えた。だから俺は……少しだけ、海軍に対して印象を良くしてもいいかなと、そう思えた。

 

 「本来なら表彰モノなんですが……貴女という存在を大本営へと招くことは出来ません。言葉しか貴女に返せないことをお許し下さい」

 

 「気にしなくてもいい。俺もすぐにこの場から去る」

 

 俺は海軍と敵対している身だ、そんな存在を本拠地に招くバカはそういないだろう。それに、俺は一刻も早くこの場から離れて仲間達の安否の確認をしに行きたかった。別れてから結構な時間が経っているし、戦いも激しいハズ……無事だと思いたいが、悪い想像は消えてはくれない。

 

 「……そうですか。敵である私が言うのもおかしな話ですが……お気をつけて」

 

 そう言って彼女は俺に向かって右手を伸ばしてきた……その目的は多分、握手がしたいということだろう。何度も言うように、俺と彼女は敵対している。別に握手せずに立ち去ってもいいんだが……たかが握手くらい、構わないだろう。

 

 「ああ……ありがとう」

 

 そう言って俺は、彼女と握手を交わすのだった。

 

 

 

 

 

 

 「やはり、彼女の“願い”は叶わなかった。それどころか、彼女は“願い”を叶えられるところまで行っておきながら叶えようとはしなかった。所詮は誘導した“願い”、私が叶えた訳でもないし当然と言えば当然の結果ですかねー」

 

 大本営の建物の屋根の上に、曙に握り潰されたハズの妖精……猫吊るしは居た。まるで握り潰された事実など無かったかのように、ソレは悠々とそこに居た。その視線は、先程まで戦闘があった海に……正確には、大淀と握手しているイブキへと向けられている。

 

 「まあ楽しめましたし、それは良しとしましょう。問題なのはあの軍刀棲姫という存在……あんなモノ、私は知らない。なんですかねー、アレ。私が“設定”した数値を遥かに上回る戦闘力……とても艦娘や深海棲艦が出せるモノではないんですが。そもそもアレ、艦娘なのか深海棲艦なのかどっちなんですかねー……っとに、イレギュラーな存在だ」

 

 大きな独り言は猫吊るし以外の誰の耳にも入らない。今の世界の“真実”を知らせる言葉は、猫吊るし本人にしか聞こえない。だが、猫吊るしにも分からないモノがあった。それこそがイブキ。どれだけ考えても、その存在は猫吊るしには分からない。“ずっと見ていたにも関わらず”。故に……イブキを“イレギュラー”と呼んだ。

 

 「調べたい……どうやって貴女が創られたのか。しかしそれ以上に、その存在は危険です。何しろ“分からない”というモノは、ありとあらゆる“可能性”を内包している。つまり、貴女という存在は“私にとって不利益をもたらす可能性”がある……」

 

 

 

 ━ 故に、貴女にはこの世から消えてもらいましょう ━

 

 

 

 【っ!?】

 

 猫吊るしがそう呟いた瞬間、その海域にいた全ての艦娘達と善蔵、吹雪、曙、イブキの背筋に同時に悪寒が走った。その中で最も大きな悪寒を感じたのは……大淀だった。

 

 「あ……ああっ……」

 

 その悪寒の正体は喪失感。自分という存在そのものが消えていくような感覚。今、大淀はその感覚を味わっていた。

 

 「なんで? 手が離れない! なんで!?」

 

 何かとんでもないことが起きる……そう感じて、大淀はイブキから握手していた手を離そうとする。だが、その意思に反して手は離れなかった。まるで、自分以外の意思が働いているかのように。

 

 「“自決用対深海棲艦内蔵爆弾・回天”……艦娘が扱う酸素魚雷のおよそ200倍の威力……その威力、どうやって捻り出していると思います? 答えは……“艦娘そのものを爆弾のエネルギー源として使っているから”」

 

 猫吊るしは人知れず語る。その忌むべき名を持つ非人道的な兵器、その真実を。

 

 「燃料弾薬を使う……なんて話ではありません。肉体そのものや流れる血潮、心、記憶、魂、その他諸々の文字通り全てをエネルギーとして“回天”は発動する。長く生きた艦娘程、強い艦娘程、その威力は高まる……酸素魚雷の200倍とは、今の大淀さん達が出せる威力のこと。元より命を賭けて発動するんです、塵1つ残らないくらい何の問題もないでしょう?」

 

 坦々と、まるで日常会話のように呟く猫吊るし。誰も見ていない、誰も聞いていない……だから本人以外の誰も知らない真実。自爆なんて言葉が生易しく感じる程の、真実。

 

 猫吊るしは嗤う。誰も真実に気付かないことに。ソレは嗤う。今の世界はこんなにも愉しいのだと。その存在は嗤う……イレギュラーが消え去る、その瞬間を思い描いて。何しろ“回天”を作ったのは猫吊るし……“遠隔操作”も当然、出来る。大淀が死ななくとも、大淀から爆弾を外さずとも……起爆出来る。宿主の全てを破壊の力とする、その爆弾を。

 

 「いや、イヤ! 善蔵さ……」

 

 

 

 「さようならイレギュラー……そしてさようなら、大淀。安心して消滅、して下さいね」

 

 

 

 そう呟かれた直後……大淀を中心に破滅の光が溢れた。




という訳で、まあ色々と詰め込んだお話でした。長い激動というのも良いものですが、勝負とは時としてあっさり決着が着くもの……吹雪と曙は某名無し対名無し戦を意識、イブキには無双してもらいました。イブキのモノクロ世界は、クロックアップ(カブト)かヘブンズタイム(イナイレ)みたいなモノと思っていて下さい。

今回になってようやく善蔵の“願い”が出ました。ハガレン的に言えば、フラスコの中の小人を産み出したあたりですかね。つまりは元凶を産み出した元凶、みたいな感じです。分かりにくい、展開が気に入らないという方もいるでしょうが、どうかご容赦下さい。



今回のおさらい

曙対吹雪、決着。こういうのを天に見放されたというのか。善蔵の願い、発覚。その願いの先にあるのは終わらない戦い。深海棲艦の対襲撃、終幕。主人公無双タグは伊達ではない。大淀、光になる。爆発オチはいい加減古い?

それでは、あなたからの感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)

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