どっちつかずの彼女(かれ)は行く   作:d.c.2隊長

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ここまでの御愛読、まことにありがとうございます。

これにて本作、どっちつかずの彼女(かれ)は行くは完結となります。蛇足のようなエピローグとなりますので、文字数少な目にさっくりと終わらせます。


エピローグ

 5年の時を経て再会出来たイブキと夕立。その後2人の元に戦艦棲姫山城と戦艦水姫扶桑が合流し、その後ろに控えていたタ級達と共に拠点へと帰ったイブキは、帰っていた雷とレコン、夕立に起こされた時雨と抱擁を交わし、皆が皆5年振りの再会に喜び、涙した。その後、イブキと夕立は自分達が居なかった間……5年の内に何があったかを聞く……それは勿論、海軍のことや世界のこと、仲間達がどう過ごしていたか等だ。その5年間のことを……少しだけ語るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 猫吊るしとの戦いの中で破壊された大本営。見る限り瓦礫の山だったその場所は、人間と猫吊るしの命令を受けなくなった妖精がすっかり元通り……否、深海棲艦の襲撃が2度起きたこともあり、更に防衛力や耐久性を高めた作りとなって甦った。勿論それは大本営だけでなく、各鎮守府も随時バージョンアップが施されていっている。

 

 海軍にとっても世界にとっても大打撃となった、総司令渡部 善蔵の死去。それによって空いてしまった総司令の席には、孫であり最年少大将でもある渡部 義道が座ると思われていたが本人はこれを拒否し、代わりに善蔵に次いで古参の提督である二条 源次が就くことになった。当初はやはり世間は善蔵と源次を比較し、不安を感じていたが2年経つ頃にはそのイメージを完全に消し去り、今では善蔵に負けず劣らずの総司令となった。

 

 源次が総司令となったことで、海軍には1つ信じられない規律が設けられる。それはサーモン海域の最深部への敵対意思を持って進撃、進入することの禁止である。深海棲艦を野放しにするのか、まさか戦艦棲姫の話を鵜呑みにするのかと多数の反対意見が当然出たが、それも源次の“軍刀棲姫とその仲間は敵対する意思がなければ敵対しない。それでも敵だから関係ないと言うのなら自己責任でやれ、総司令の儂は許可は出さん”との言葉に沈黙する。連合艦隊を敗走させた相手を個人艦隊で相手取ろうという勇気は誰も持っていなかった。

 

 深海棲艦の恐怖は今だ世界を覆っているが、その度合いは猫吊るしが居なくなったことでかなり緩和されたと言っていい。少なくとも、5年前に比べて深海棲艦による被害はかなり減っている。何故なら猫吊るしが居た時、定期的に深海棲艦に命令を送って海上に出ている艦娘や船、時には海外の陸地に向かって砲撃をさせていたからだ。しかし、本来深海棲艦は異形なら野性動物のように本能的に動くし、理性ある人型ならわざわざ攻撃したところでメリットがないのに陸地に砲撃などしない。よって、全体的に見て被害は減っているのだ。

 

 とは言え、50年以上続く敵対関係は今尚変わらない。減っていると言っても深海棲艦による被害は出ているし、海に出たり空に上がったりするのに細心の注意を払わなければならない。ただ、戦争……と呼ぶには少し戦いの規模が小さくなったのは事実だろう。未だに人類と敵視する深海棲艦は居る。だが……5年の間に、友好的な深海棲艦も少しずつ出てきた。どちらかが滅びるまで続くとされた敵対関係が、もしかしたら、奇跡的に和解という形で終わるかもしれない……そう思われる程度には。

 

 さて、この5年間の世界のことは少しだけ話した。ここから先は……この物語に登場した人物達のその後のことを、少しだけ語ろう。

 

 

 

 

 

 

 二条 源次。亡き善蔵に代わり海軍総司令の座に付き、生涯現役を掲げて世界の為に尽くす。また、海軍提督として初めて表立って深海棲艦と友好な関係を築き、長年続く戦争を和平での終結……その切っ掛けとなった人物となる。後に善蔵と共に海軍の英雄として歴史に名を残す。因みに、友好を結んだ深海棲艦は巨大な両腕とポニーテールの黒髪が特徴の美しく凛々しい女性の姿をしており、2人は涙を流しながら抱き締めあっていたという。

 

 永島 北斗。空母棲姫曙が起こした大襲撃により下半身不随の重症を負うが本人と部下の艦娘達の希望で提督を続ける。入院中に北上、鈴谷に想いを告げられて苦悩するが、後日鎮守府に送られてきた“ケッコンカッコカリ”の書類の内容と指輪を見て決心し、相手に指輪を渡す……が、艦娘側が人間の法律に縛られない立場を利用して“ジュウコンカッコカリ”の道に引きずり込む。このことを知った一部の提督達が真似しようとするが中々上手くは行かず、北斗はハーレム提督の名で呼ばれることになる。尚、周囲は羨むことはあっても蔑むことは決してなく、幸せそうな北斗達を見ては微笑ましく見まもっていたという。

 

 逢坂 優希。イブキ達の元に居る夕立、時雨と決別したことで一時情緒不安定気味になるが、白露を筆頭に部下の艦娘達に慰められ、思いやられて安定する。白露型艦娘を率いさせたら右に出る者は居ないと言われ、女性提督の中で最も情愛の深い提督として持て囃される。浮いた話が出ないことと白露型艦娘達と非常に仲が良い姿から“そういう人なのではないか?”と噂されるが、本人達は笑って誤魔化している。ただ、白露の左手には指輪があったとか無かったとか。

 

 渡部 義道。善蔵の実の孫、最年少大将等の肩書きとそれに相応しい実積もあって次の総司令にと請われたが拒否。その理由はまだまだ若輩者であることと、妖精によって世界が監視されていたという可能性に至ってしまったことでノイローゼ気味になってしまっていたからだ。いつ見られているやもしれないという恐怖は彼の心身を蝕んでいったが部下の艦娘達の愛情溢れる手厚い看護を受け、次第に改善していく。後にその内の1人と結婚を前提としたケッコンカッコカリをする。本人の目的である父の事件の真相を知ることは出来たものの、その理由については結局知ることは出来なかった。

 

 大和型戦艦“武蔵”。善蔵の忘れ形見とも言える彼女は大本営の建て直しに協力した後、源次に体内に爆弾があることを説明し、雲龍と元第二艦隊の生き残りである4人と共に姿を消す。後に日本から遠く離れた何もない海域で巨大な爆発が幾つか確認されるが、関連性も彼女達の消息も不明。ただ、時折艦娘の危機にふらっと現れては助けて去っていく2人組の女性が現れるようになったとか。

 

 伊勢型戦艦“日向”。打倒イブキを掲げて日々精進する武人系艦娘。事件の後にはその対象に夕立が加えられ、2人を打倒する為に己を磨き続ける。大和との関係は非常に良好で、同性でありながら熟年夫婦のような雰囲気を醸す。その空気に当てられたのか、彼女達の提督は結婚を考えることになる……その提督を虎視眈々と狙う艦娘達と提督がどうなるか、日向と大和は楽しげに見ていた。

 

 高雄型重巡洋艦“摩耶”。猫吊るしの事件の後、遠征を理由にサーモン海域へと度々向かっては鳥海、鳳翔、霧島、その他の仲間達と共にイブキを捜索する。その諦めない努力が実ったのか、事件から5年と数ヶ月を掛けてようやく再会することが出来た後も度々訪れてはお喋りしたり一緒に訓練したりと楽しい日々を送る。後に所属鎮守府にて最強の艦娘となった。

 

 駆逐棲姫“不知火”。事件後も南方棲戦姫の拠点で過ごす。イブキの生存を知った後は直ぐにその拠点に訪れ、お礼として手作りの菓子を振る舞った。そのことから夕立に敵視されるようになるが、本人は理由が分かっていない。南方棲戦姫、北方棲姫、矢矧との関係は良好のようで、今は姫としての在り方を南方棲戦姫から北方棲姫と共に学んでいる。

 

 

 

 

 

 

 暁型駆逐艦“雷”。炊事掃除洗濯何でもござれなロリお艦として拠点内の家事を一手に担う。そうして生活している内に元の鎮守府、海軍への未練が無くなった。甘やかし癖と甘えられたい願望は健在で、時折異形系深海棲艦の相手もしている。一番甘やかしたい、甘えられたい相手はイブキであるが、甘やかされたい、甘えたい願望の方が大きいらしく本人を見付けたら直ぐに抱き付きにかかる。その為、度々夕立とは対立する……かと思えば共同戦線を張っている。タ級の家事の師匠。

 

 金剛型戦艦番外“レコン”。レ級と金剛の意識が融合した彼女はイブキ生還後、今まで以上に活発的になる。拠点内ではイブキ、夕立と並ぶ切り込み隊長であり、姫級に匹敵、或いは凌駕する装甲と腕力で皆の盾となることも。普段は金剛の紅茶好きとレ級の好奇心旺盛さが出ており、イブキを誘ってティータイムしたりイブキを求めて動き回ったりしている。

 

 白露型駆逐艦“時雨”。最も速く世界の真相に気付きかけた艦娘。元々彼女は夕立と同じく優希の艦娘である彼女だが、窮地を救ったり肩を並べて戦うことはあれど海軍に戻ることはなかった。基本的に資材集めや情報集め等を行う縁の下の力持ちとして活躍しており、日常では夕立のサポートに回ることが多い。

 

 戦艦棲姫“山城”。イブキの生存を確認した瞬間部下が居ることも忘れて嬉しさからガン泣きしたお姉ちゃんっ子。海軍との交渉で拠点のある海域に浸入、及び敵対禁止を確約させ、それを破った相手には容赦しない。イブキ帰還後はしばらく夕立と共にイブキの側から離れることはなかったが、数日もすれば落ち着いて拠点のトップとして相応しい姿を見せる。現在は妖精ズと共に拠点の改造にハマっているらしい。

 

 戦艦水姫“扶桑”。元々山城の艤装の異形であったが日向達に破壊され、直す際に戦艦水姫として生まれ変わった彼女はいつも山城と共に居た。自分と同じく姉と慕われるイブキに対して思うことは特に無いらしい。仲が良い2人の姿を筆頭に仲間達、部下達の姿を見てほっこりするのが日課。雷と並ぶお母さんポジション。

 

 白露型駆逐、軽巡洋深海棲艦混合艦“夕立海二”。イブキを失ったショックから5年もの間眠り続けたが、起きたその日に再会することが出来た。それ以降はしばらくの間、文字通り片時も離れることをせずにイブキの側に居続ける。たまにイブキと共に南方棲戦姫の拠点に訪れては北方棲姫の遊び相手となっている。その時の夕立は、本当に幸せそうに笑っていた。

 

 

 

 イブキ。妖精ズが偶然開けた空間の穴から持ってきた異世界の魂を素材として産み出された存在。翔鶴の自爆によって本当に消滅しかけたものの妖精ズの機転でこれを回避し、彼女達によって5年の歳月を掛けて復活する。仲間達との再会後、会えなかった時間を埋めるように抱き締められ、しばらくの間は夕立を筆頭に皆が1分以上側を離れることをしなかった為、意識としては男性である為に理性が崩壊して色々と致してしまう。尚、それが妖精ズと彼女達の計画通りであることを彼女(かれ)は知らない。

 

 

 

 ……さて、これで本当にこの物語は終わりとなる。とは言え、この先も深海棲艦と人類の戦いは続くだろう。和平への切欠は所詮切欠でしかなく、戦争そのものが無くなるにはもっともっと沢山の時間が必要だ。しかし、その先を……未来を書くことはない。何せ、この物語の主人公は提督ではない。艦娘でもないし、かと言って深海棲艦という訳でもない。人類の敵ではない……しかし、味方でもない。

 

 この物語の主人公は、敵でもなく味方でもないが敵にも成りうるし味方にも成りうる……どっちつかずで曖昧で中途半端な存在。そんな彼女(かれ)が、愛しい者達と共に曖昧な未来に向かって……誰かに知られることなく歩き続けていく。

 

 ただ……それだけの物語。




改めまして、ここまでの御愛読、まことにありがとうございました。本作は私の別の艦これ作品の息抜きとして書いていましたが、そっちよりもずっと力が入り、投稿作品初の赤評価ということもあって完結させたい一心で続けてきました。更には初のイラスト、LINEでの応援等々も頂き、より一層その思いは強くなり、ようやくこうして完結することが出来ました。皆様からの感想、評価も嬉しかったです。

後日談、蛇足のような終わり方ではありますが、これ以降に番外編を書いたりすることはありません。せっかく番外編抜きで書いてきた作品なので、このまま番外編無しで終わらせます。

次回作については、完全に未定です。こうして書くことを趣味としている以上なんらかの作品は上げると思いますが、何の二次創作になるかはわかりません。でも憑依とか転生とか勘違いとか書いてみたい気もします←



それでは、今まで応援して下さった方々、本当にありがとうございました。あなたからの最後の感想、評価、批評、pt、質問等をお待ちしておりますv(*^^*)
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