見習い手品師が幻想を『魅せる』ようです   作:イクシード

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はい、初投稿です、イクシードです。

これから頑張っていきますのでよろしくお願いします。


現実から非現実へ
第1話 手品師の末路


「みんなー、凄かったねー!それじゃあ手品師のお兄さんに拍手しましょう!拍手!」

 

 

そう保育士の先生が子供達に言った瞬間、拍手の嵐が巻き起こる。もし自分に視覚がなかったのなら、それを本当に嵐が来たかと勘違いする程にたくさんの称賛を受け取った。自然と笑みが零れてしまう。

 

 

「お兄ちゃん凄かったよ!」「また来てね!」「バイバーイ!」

 

 

彼はにこやかな表情で一礼、子供達に手を振りながら教室を後にした。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄

 

 

 

「今回は本当にありがとうございました。」

 

「いえいえ、こちらこそありがとうございました。これからまた、他所へいかなくちゃいけないので、ここで失礼します。」

 

 

この保育園の園長さんにご挨拶した後に、見送ってくれる子供達に手を振りながら、次の講演場所へと歩き始める。

 

 

ふぅ………。

 

 

今回は良かったんじゃないかな。

 

 

 

 

 

沈む紅い夕日を背景に動く影が一つ。その影、いや、人物と擦れ違う人々は、羨望の眼差しか奇異の眼差しか、何にせよ、必ずと言って良い程その人物に視線を向けた。その様な反応をされる者の格好とは何だかとても興味をそそられないだろうか?

 

そそられなかったとしても、取り敢えずそそられた事にして欲しい。

 

その人物が着込むのはタキシードの様でタキシードではない。燕尾服と言われるような物だろうか、一般人は滅多に着る事が無いであろう黒服をパチッと着こなし、頭には白い横ラインの入ったこれまた黒いシルクハット、肩に鞄を掛け、右手には鳥の頭の装飾のついた少しお洒落なステッキと、何だか彼の回りだけ一昔前のロンドンへタイムスリップしたような格好をしていた。率直に言って、端から見たら不審者に見えない事も無いような怪しい人物。彼は何処へ向かっているのだろうか。それを知る者は、誰一人として居なかった...いや、興味が無いの間違いだ。

その不審者、もとい人物の名は「横井 昭人(よこい あきと)」。今年で17になる。上記から分かる通り、見習いではあるがマジシャンである。彼が何故マジシャンをしているのか。これを読んでいる皆様には全く関係ない事だが、まぁ聞いてもらいたい。今後の話に多大な影響をもたらす、かもしれないから。

彼がマジシャンを志した理由を知るには、13年ほど遡らなければなら………えっ?面倒臭い?そんなつれない事言わず聞いてくださいよ。さっき話が切れた所から再開しましょう。

彼がマジシャンを志した理由を知るには、13年ほど遡らなければならない。

 

 

 

 

当時5歳だった昭人少年は、友人は居たが、幼稚園以外では余り遊ぶ事などは無く、まだ小さいのに色々とつまらない子供だった。この年頃の子供達なら好みそうなヒーロー物だとかロボットだとか、そう言ったものにも全く興味を示さなかった。しかし、その彼の退屈な生活が終わりを告げる。

その日も特にやることはなく、暇潰しに(潰せる訳でも無い)テレビを見ていた昭人少年は、突然目を見開き輝かせた。

 

 

生放送のマジックショーの様子が放映されたのである。

 

 

当時世界を騒がせたマジシャンが、自分の目の前でマジックを披露する姿は、昭人少年に大きなショックを与えた。真っ二つになった人間が別々に動き出すこれまでに無い人体切断や、ステッキで少し頭を叩いただけで、まるでその行為によって気分を害され憤ったかの様に動き出す石像、フィニッシュは観客席に向かってマジシャンのシルクハットから飛び出す鳩の群れ。どんなトリックを使っているのか、いくら考えても思い付かない。ただただ見惚れた。

昭人少年は何を思ったか、台所で夕飯を作っている母親に向けてこう言った。

 

 

「僕、マジシャンになる!」と。原文ママですよ。ママだけに。

 

 

 

これが彼がマジシャンになろうとした理由。

おっと、お待ちを。まだ終わりません。そんなうっとおしそうにせず。

さあ、お次は彼がどうやってマジシャンになったか。

 

また、少し時を遡りましょう。

 

 

 

 

10年前。

成長した昭人少年はあれから毎日マジックの練習をしていた。そう、毎日。一日も欠かす事は無かった。トランプを使用するマジックはそれなりに出来る限りのようにはなったが、昭人少年はあの日見たような規模が大きく、派手な素晴らしいマジックをしたい願望があった。それを見た昭人少年の母親は昔の知り合いで、偶然にもマジシャンを副業で営む人物に、息子にマジックを教えてくれと頼んだ。

その人物は二つ返事でOKした。彼自身、弟子が出来ると聞いたら嬉しそうだった。

 

それはさておき。

それから本物のマジシャンにマジックを教えて貰える事を知った昭人少年は大いに喜び、母親の知り合いは仕事の空いた日には昭人少年の家に向かい、マジックを教え、その教えられた事に素直に昭人少年も応えた。副業といえど、プロのマジシャンに教えてもらった昭人少年のマジックの腕はどんどん上達していく。

そして15歳の秋、母親の知り合いが営むバー(こちらが本業)で拙いながらも、トランプを使ったマジックをやってのけ、見事マジシャンとしての第一歩を踏み出した。まだスタートラインに立ったばかり。あの日見たマジシャンのように日本を、世界を震わせることは出来ないだろう事は薄々感じていた。ましてやマジックだけで食べていこうなどとはこれっぽちも考えていなかった。

 

 

ある時保育園に呼ばれ、いつものように手品を披露していた時。握った硬貨が消えたりするくらいのちょっとしたネタだった。地味だった。やはりあのマジシャンには遠く及ばない。披露している間も、どこかやるせない気持ちで、心ここに在らずと言った感じだった。

ハッ、と正気に戻ると、目の前の子供達の歓声が昭人少年を包んだ。ありふれている、この子達でも種が分かれば直ぐに出来るだろうそんな手品を披露して見せただけなのに、彼らは無邪気に笑っている。キラキラとした瞳で、自分を見てくれている。それはどこか、10年前の自分と重なる様で。

そんな瞳に彼は心を奪われた。彼は気付いた。派手じゃ無いから何だと言うのか。あんな大舞台で何百、何千と言った人達を前に出来る日なんか、絶対に来ない。それがどうしたと言うのか。あの時テレビ画面の中で歓声を上げていた何千何百の人、目の前で今も隣同士で笑い合い、ただ純粋に楽しんでくれている彼ら。楽しませる事に何の違いがあると言うのだろう。

誰に下手くそと貶されようと、喜んでくれる人が要るならそれで良い。こんな奴のポンコツ手品でも楽しんでくれる人が要るなら、それで満足だった。

 

それから彼は、自己満足では無く、お客様を楽しませることを至上とする様になった。その姿勢は今も変わらず、今日までずっとそれを続けている。

 

 

 

ちなみに先程の講演は今話題に出たその保育園でやってきたもの。今向かっているのは市民ホール。ぶっ続けだ。

まあ、もうそろそろ着く。時間には遅れていない。大丈夫。

 

 

 

もうそろそろ着くだろうか。道を曲がると直ぐ見えてきた。職員用ドアからホールの中に入ると係員さんが待っていた。係員さんに案内され、舞台裏にスタンバイする。

自分が披露する前にも同業者さんがたくさんスタンバイしていて、少し張り詰めた空気だ。ん、入る合図のBGMが流れてきた。両手を振りながら舞台へ上がり、客席を見渡す。結構お客さんいるなぁ。緊張する。

よし、まぁいつも通りやろう。

 

 

 

~少年披露中~

 

 

 

うん、多分出来た。いやー、舞台からだとお客さんの顔が直ぐ分かるね。さっきも小さな子がスゴいって言ってくれてたがこちらまで聞こえてきた。嬉しくて泣ける。

係員さんや他の手品師の人達にも会釈し、ホールを出る。もう外は真っ暗だから、早めに帰る事にする。

彼は車の走る大通り.....ではなく、暗い路地裏へと入っていく。住宅と住宅に挟まれ、昼でも暗いであろうそこは夜の闇も相まって更に暗く、実際見たことは無いが、ブラックホールとはこの闇より暗いのだろうか、そうどうでも良い事を考えた。

 

 

「ここ暗くて怖いけど、家に近いんだよねえ」

 

 

誰かが聞いている事でも無いが、独り言を言うのは少しでも寂しさや恐怖を打ち消す為だろうか?本当に真っ暗闇でたまに植木鉢に躓くくらいだから一刻も早く抜け出したい。どんどん足を早める。

 

繁華街の明かりが先から漏れる。やっと出口だ。

ホッと一安心。

 

 

その時だった。

 

 

 

ドンッ

 

 

「あっ、ごめんなさ.....」

 

 

角から来た人物とぶつかってしまった。顔を挙げて謝ろうとすると、

 

 

「あン?なんや?ニイチャン?」

 

 

なんかバ○っぽい強面の男の顔が目に入った。腕に刺青とかしてるし、変なオーラ出てるし、何よりこの凄み。昭人は悟る。

 

 

この人達893だな。

 

 

「ゴラアァァァァ!おめぇ何兄貴にぶつかっとんじゃワレェ!」グシィ

 

 

ヒィッ、自分とぶつかった男の後ろから髪形が世紀末に出てきそうな程大変な事になっている若い男が締め上げてきた。

面倒なのに絡まれた。何か巧く脱け出す手は無いか。

その時、昭人の頭にあるアイデアが浮かぶ。

 

 

 

さあ問題だ!893に首を掴まれた状態からどうやって抜け出すか?3択-一つだけ選びなさい

 

答え①すんばらしいトリックスターの昭人は突如反撃のアイデアがひらめく

 

答え②友達とか知り合いがきて助けてくれる

 

答え③抜け出せない。現実は非情である。

 

 

 

答え③→

「じゃあ、ちょっと着いてきてもらおか?」

 

 

このまま指詰めとかかな。やだ怖い。誰か助けて。

 

 

答え②の場合

「おい、横井がなんか絡まれてるぞ」

 

「ホントだ。まぁ、アイツと話したこと無いし無視しようぜ」

 

 

そりゃないぜブラザー(初対面)。

 

 

 

 

友達が少ないって損だな。①しかないじゃんか。しかし、どうしたものか。

...良いことを思いついた。もうこれしかない。

 

 

「すいません、この手を見て貰えませんか?」

 

「なんや手グーにして」

 

 

そこっ!

昭人はビックリ箱の中身だけを手に隠し持っており、相手が自分の手を凝視した瞬間、それを解き放った。

 

 

ぼよよ~ん

 

 

「.....は?」

 

「..............」

 

 

あれ?ビビらない。

 

 

「嘗めとるんかゴラおい」

 

 

更に怒らせてしまったみたいだ。最後の手段、アソコでも蹴りあげてやろうか?でもなんかこの後バレたら傷害罪で捕まりそうだ。いや、でも今首掴まれてるし正当防衛になるだろうか?てかこう言う893の人達が警察にわざわざ通報とかするんだろうか。

もういいか、やろう、と思ったけど過剰防衛ってのもあると聞く。それでまた面倒臭くなりそうだ。良いよね、殺っちゃおう。OK、後は誰か何とかしてくれ。

 

 

「せいっ」

 

「ふごっ!?」

 

 

痛いのは分かるよ。俺も同じ♂だから。でも力が抜けた今がチャンス。踵を返して全力疾走。

 

 

「あっ、待ちやがれ!」

 

 

当然だけどみんな追ってきた。凄い大人数、気分はネズミ小僧だ。

さっきの路地裏に入り込む。こっちの方が足は速いみたいだし、このまま行けば。

路地裏から出て曲がり、一本越した大きな通りに出る。が、

 

 

「おい!居たぞ!」

 

 

他のルートからも追っ手が来ており、このままじゃ挟まれてしまう。格なる上は車道を通るしかない。

今はちょうど赤信号、急いで車の間をすり抜ける。

 

 

「待てやぁ!」

 

 

やっぱお構い無しに走って来るか。そのまま轢かれれば良いのに。そういえば向こう側にも小道があった筈なのでそこに逃げることに。

荒い息のまま小道に入り込んで、立ち止まって肩で息をする。見上げると逃げ込んだは逃げ込んだが、その路地は格子状迷路のようになっており、なんだか迷いそうな気がした。

しかし条件は向こうも同じ、ここならやり過ごせそうだ。

 

 

「どこ行きやがった、てめぇら早く探せ!」

 

 

それからは適当に走り回り、追っ手を撹乱する。

ふと気付くと目の前にはマンホール。

ここに入ったら流石に見つかりっこないだろう。いや、でも勝手に開けて良いのだろうか。まぁ良いや入ってしまえ。一人で問答しながら蓋を開け、中に入ろうとした。

 

 

「うぉ、暗い」

 

 

蓋を開けると、上からは穴が深くて中の様子は何も分からない。今は夜だが、その夜空より暗い闇だった。取り敢えずペンライトを出して行こうとそれを取り出し、中に入って蓋を閉め、梯子を降り始めた時の事だった。

降り始めてから10秒も経たないうち、

 

 

バキバキッ

 

 

と梯子が軋み始めた。まともに整備のされていない事に対し内心で市の職員に文句を溢したり、このまま進むと梯子ごと下へ落ちる危険性を考え、降りるのを一旦止める。しかしその時偶然か必然か、両手を置いていた箇所だけがスポン、と綺麗に抜け落ちた。

 

一瞬の浮遊感。

 

 

「あっ」

 

 

文字通り、あっという間にバランスを崩し、真っ逆さまに落ちてしまう。落ちる。もしこの時点でまだ高さがあったらどうなるだろう。死ぬんだろうか?もし、死ぬのなら死んだ後ちゃんと見つけてもらえるのだろうか?まさか、腐って臭いがし始めてからやっと気付かれたり、そもそも誰にも見つからずずっとここで死んだままとかはどうか勘弁してもらいたい。そう色々なネガティブな思考を繰り返していた。

 

 

 

 

おかしい、いくらなんでも落ち過ぎだ。

 

 

手が梯子から離れてからかなり時間が経っている。こんなに下水道までの穴が深い筈は無い。こんなに深いのなら、いつだったかニュースで見た外国の何処かに空いた大穴なんかより遥かに深いだろう。

こんなことをする暇まであった。 持っていたペンライトで落ちてきた上と思われる方向を照らしてみる。やはり暗くて何も分からない。しかし一向に地面に着かない。自分はどこに向かっているんだろう。このまま落ちて死ぬか。もう死んでて、地獄とか、あの世に向かってる途中だったりするのだろうか。

まぁどうせ死ぬなら後腐れが無いように振り返って下を一回見てみよう。スカイダイビングとかでもくるくる回ってるし、頑張れば出来るだろう。少し怖いけど勇気を出して、はい、1、2、3。くるりと体を回転させた。

 

視界が緑一色に彩られた。

 

 

え?

 

 

ゴッ!

 

 

昭人は不思議に思う暇もなく、顔からその緑に激突した。

痛みを感じる間も無く、意識がシャットアウトする。

 

 

生命活動を停止、死んだのだ。

 

 

 

 

 

 




嘘です。


あぁぁぁぁぁぁぁぁ!幻想入りさせる予定だったのに出来てないぃぃ!次の話こそは幻想入りさせますので次回もよろしくお願いします!
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