...頭が痛い。
ここは、何処だ?何がどうなった...。一先ず目を...覚まさなくては。
意識が混濁して何も考えられない。朦朧とした意識の中で必死に記憶を辿り、何故、自分がここに居るのか、そもそもここはどこなのか、それを導き出そうとしていた。
冷静になれ自分。ピンチの時こそクールになれとじいさんが言ってたじゃないか。...確か俺は祖父の顔を知らない。じゃあ、俺にマジックを教えてくれたおじさんの言葉だろうか。あれ?
と、そんなことを考えている内に意識がハッキリしている事に気付いたのは、5分後のことであった。
コホン...さて、まず周りを見てみる。自分が今いる所は、何処かの森の、多分木の樹洞の中だ。人一人入ってもかなりスペースがあり、今自分のお世話になっている樹木がかなり大きいことを物語っている。中から外を見てもまだ暗いから、さっきからあまり時間も経っていないはず。
そもそもなんで自分が今こんなところに居るのだろう。記憶を辿ると、そう、もう良い歳だろうに大人げなくみんなして追い掛けてきた893の皆様から逃げて、それでそれからマンホールの中に隠れようとして、梯子がすっぽ抜けて、落ちて、多分その時に気絶したんだろう。
でもここに居る理由に繋がらない。ここは何処なんだ?
....あの世か?あんな街中からこんな森の中にまで。一瞬で移動出来るものだろうか。
あそこまで深いマンホールだし、落ちたら普通なら確実に死ぬだろう。
それとも893の皆さんに拐われたとか。あのあと結局見つかって森に捨てられたみたいな、そういう事だろうか。そうならかなりマズイ事になる。野生の獣とかも居るかもしれない。かなり危険だ。連絡を取る為鞄からケータイを探る。
あった。盗まれてなかった、良かった。
正真正銘自分のものであることを確認、直ぐに家に連絡を取る。番号をコールし、スピーカーの部分を耳に当てる。
『お掛けになった電話番号は、電源が入っていないか電波の届かないところにあるため.......繰り返します。お掛けになった』
ダメだ、繋がらない。圏外って事はかなり山奥なのだろうか。ではGPSならどうか。衛星なら何処の空にでも浮いてるだろうし、それに賭けてGPSを起動する。
が、
「...は?」
GPSが反応しなかった。
えっ....私のケータイスペック低すぎ...!?なんてふざけている場合では無いのは当の本人が直ぐにでも分かることだった。
これは本格的にヤバイ。
そもそも、さっきの極道達が自分を見つけて、自分を遭難させるためにここに連れてきたのなら、ケータイや連絡を取れそうな物を奪う筈。いや、ここに連れてこられる前には既にリンチでもされて死んでいたかもしれないのに、そうなっていないということは、自分をここに連れてきたのは極道達ではない....という風に考えられるかもしれない。
ではもしそうだとするならば、誰が自分を、何の為にここに連れてきたのか?
やっぱり、あの世なのか。
色々な考えを張り巡らせてみたが、だからと言って納得のいく答えが出るかはその時にならなければ分からない。ここまで長ったらしく書くのは、つまりは答えが出なかったという事だ。
少しでも繋がり易くなる様にと外に出てみたが、辺りは真っ暗、月明かりでかろうじて少し先が見える程度、しかもケータイ、GPS、オール圏外。
流石にパニクる。
もう嫌だ。ひとまず樹洞の中に逃げ込んでどうするか考える。
このままここに残って朝が来るのを待つか?
しかし、もし野生の獣がいたりしたら...、と要らぬ想像をしてしまう。
それとも、歩いて人里を探すか?
かろうじてケータイに内蔵されていた時計のお陰で今の時間が判る。まだ人が起きているであろう時間だし、なんとか歩けば運良く車道とかに着く距離かもしれない。
今はこの案に希望を見出だすしかなかった。
樹洞から出て、辺りをペンライトで照らしながら見回す。やはり殆ど何も見えない。一番星とかがあれば方角が分かるかも、と思い空を見上げるも、枝の長い(それに比例してかなり大きい)うっそうと繁る木々がそれを許さない。それが作用してできる影がまたしても昭人の不安を掻き立て、精神を削っていく。その思いを振り払うように歩き始めた。極度の緊張状態と鈴虫の様な寂しい鳴き声しか聴こえずそれがまた不安感を掻き立てる。一つの音しか聞こえない、それ故に頭の中で音は反響し続け、頭がおかしくなりそうだった、正にその時だった。
「ぎゃっ!」
何かが顔に引っ付く。蜘蛛の巣だろうか。全く見えなかった。
周りの音に集中していた故に視界の異常には気付かずに歩いていた昭人は見事に蜘蛛の巣に引っ掛かり、顔に糸がへばりつき、精神的に沈んでいく。
やっとの思いで蜘蛛の巣を振り払ったが気分は最悪だった。早く家に帰ってシャワーを浴びたい。
そんなことを考えていれば、腕を這う小さな影に気が付かなかったのも納得出来る話だった。
蜘蛛は憤っていた。蜘蛛に憤りという感情があるかは知れないが、深い眠りを満喫していた時に自らの家を跡形もなく破壊し尽くされたのだ、怒らない訳は無い。その家を荒らした存在は蜘蛛の運命故、姿はよくわからないがとにかく巨大だった。しかし、畏れずそれに飛び掛かり今脚の感触からなんとか、破壊者の体に引っ付くことが出来たみたいで。早くコイツに復讐してやる。家を壊された怨みを今晴らす時、この牙の毒でもがき、苦しみ抜くが良い。そう言っているかのように蜘蛛は毒の滲んだ牙を振り上げ、破壊者の柔肌に突き立てた...筈であった。
何かおかしい。自分の身体の異変に気付く蜘蛛。今、自分は牙を憎きこの体に突き立てることが出来たのか?いや、そもそも、
今自分の身体は自由に動くのか?
すると自分の8本の脚全てが全く言うことを聞かない事にやっと頭が追い付いた。
蜘蛛には認識出来ない。自らの身体が脚を着けたその肌に沈んでいっていることに。蜘蛛は知らない。脚の動かない理由がこの破壊者の影響であることに。蜘蛛は気付かない。自らの理性がどんどん消えかかっていることに。
蜘蛛は沈んでいく。自分は何処へ行くのだろう。そこには何があるのだろう。皮肉にも、自分の憎む家荒らしと同じ事を考えながら、蜘蛛の意識は薄れていき、とうとうそれは消え去った。
うなじの近くが少し痒かったが、直ぐに治まった、何だったのだろう。今持ってないけど一応○ヒが欲しい。
当の本人は蜘蛛とは違い、自らの体におこった異変に気付くよしもない。そのまま、歩き続けた。
フクロウとか鳴いてるし、ここ本当に何処なんだ。
月は、毎夜明るく夜を照らす、今日でさえも。突然の事にあたふたする少年を少しでも励まそうとでもしているのだろうか。それとも...
彼がこの世界にやって来た事を歓迎しているのかもしれない。
はい、投稿終了です。
次の話でやっと東方キャラを出せるので楽しみです!
次回もよろしくお願いします!