そこにある花   作:待兼山

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悩み

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蓉子は前回、祐巳に貰ったアドに連絡入れるのに格闘していた。

どう切り出せばいいのか、日にちを決め、行く。とだけにするのか、その前にそれを口実にするか。

自身でもわかっていた。

今まで、会うことで悩んだことなんてなかった。

 

同性。

気安く、見繕える言い訳なんていくらでもある。

でも、嫌われたくない。蓉子は祐巳に。

何も始まってもないのに、ただ、同窓会的な催しをする場所確認の体を前面に出せばいいのに。

そうため息を蓉子が零した時、触っていたスマホが震えた。

 

「やほー、聖さんですよ」

呑気な声が、通話キーをタッチした途端聞こえる。

「...もしもし、非通知じゃない限り、わかるわよ」

蓉子は少し、苛立ちを隠さずに聖に言う。

「あれ~、今日アレ?」

聖は火に油を注ぐ。

「あんた、本気で訴えられるわよ」

強い口調で、聖の今後を示す。

蓉子は切ろうかと考えている時に、あぁ。親友たちとまた行けばいいのだと思う。

「ねえ、聖。江利子も誘って、祐巳ちゃんの店に行かない?江利子も今なら、少し余裕があるらしいから」

聖は少し不満さを出しながらも、

「江利子も知ってるの~?なんだかな~。江利子への連絡は蓉子がしてよ~」

蓉子が積極的に動くのを好ましく思い、

「祐巳ちゃんへの連絡も、蓉子が?」

茶化しながら目的の一つを見破る。

「...私がするわ。聖はイタメ扱いされるだろうから」

見破られたことが面白くなく、蓉子独特の言い方で茶化し返す。

「んじゃ、お願いね。日にち、決まったら連絡お願いね~」

お互いに、電話開始と終了間際では声のトーンが違う。蓉子と聖はそんな自身に気付かないまま。

 

 

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祐巳は、蓉子より連絡をもらって、誰からなのかと考える前に分かった。

真面目さが出ていて、少し気恥ずかしさを感じられるような文章。

ただ、日にちぐらい入れてくれないと、『レッドナイト』のバイトの子らに伝えられないではないか。

そう、普段見せない表情で拗ねる。

誰も居ないからこそ、外せたのか蓉子からの連絡で嬉しくなったのか祐巳にも分からなかった。

表情変化にしても、祐巳は分かってなかった。

 

 

 

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昼は冬の気配を潜め、春の匂いをさせる。

夜には冬がまた支配し、人間たちは戸惑いながら帰路に着く。

そこに、気だるげな和風美人とやり手クールビューティが居たら、少しでも良く見せようと思うのが人間の性。

そんな様を見て、江利子は

「ほんと、人間って単純よね。」

気だるげな印象を倍増させるように蓉子に言うともなく呟く。

「昔から、聖は時間を守らなさすぎるわね」

江利子の皮肉には慣れたもので蓉子は、話を変える。

「あんなのほっといて、さっさと祐巳ちゃんに会いにいきましょう」

江利子が蓉子の腕を取ろうとした時、

「江利子~、それはないんじゃない?」

聖が遅れてやってくる。

江利子が言い返そうとするが、蓉子が引き取る。

「あのね、早く行きましょう。ギャラリーを集めたければ二人でして頂戴」

聖と江利子は顔を見合わせ、

「おひーさまに会いたくて仕方ないんだ~」

とからかう。

蓉子は頬を赤らめ、何も言わずに歩き出す。

 

 

 

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『ブルームーン』に入店したものの、三人は目当ての人物を見つけられず蓉子に問う。

「ちゃんと伝えたの?舞い上がって日にち忘れたとか...」

無いと分かりつつ、初恋とも言える親友に普段しない失態もあり得ると聖と江利子は考えた。

蓉子が抗議をしようとした時に、

「いらっしゃいませ。祐巳さん、遅れてきますよ。もう一つの店、開店作業してから来るそうです。」

男性スタッフが、三人におしぼりを手渡しながら伝える。

「あれ、そうなんだ。よくわかったね」

聖が面白くなさげに、気になるところを拾う。

「聖、態度に出すぎよ。ごめんなさい、知らせてくれてありがとう」

蓉子がお礼と謝罪を口にする。

「いえいえ、祐巳さんに綺麗な三人が来られたら伝えてくれ、と言われたので」

祐巳が居ない中、本当に適当に料理を選び、乾杯を三人はした。

 

 

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祐巳は『レッドナイト』ではなく、薄汚れた中華料理屋に国籍・年齢不詳の老人と居た。

蓉子に伝えれた時間の一時間前には『ブルームーン』に居たが、呼び出された。

「ところで、ユミ。小笠原の娘関係を探ってるらしいな」

老人は麺を啜りながら穏やかに聞く。

祐巳は、どいつもこいつも小笠原と最初に言うのか理解出来ないまま、

「はい、まあ、個人的な色々です。長老」

長老と呼ばれた老人は、嘲りと愛おしさをミックスさせながら

「ユミ。お前の立場がわかってるのか。闇、闇、闇の中でしかお前は生きられん。お前の母親が死んだときに教えただろう?」

祐巳に現実を突きつける。

「分かってます、長老には良くして頂いてます。報いれる人間でいれるよう、今後も精進します」

祐巳は無機質に、あぁ。自分は光射す場所には行けないのだと思い出した。

例え、祐麒がいつもお前を幸せにすると甘ったれた言葉を吐こうが、小林が仮初めの生活を用意しようが。

長老の跡目を継ぐ事を、母親が麻薬中毒の末、廃人化した時に交わした。

既に、遺伝的の父親は死に、稼いでも母親を見放しながらも祐巳の金を目的にしていたクズばかりでどうにもならなかったあの日に。

直接的に手を長老も祐巳も汚してない。

情報操作、それが妥当な言い方、で主犯格的なものがメイン。

祐巳は、若い世代や日系人、微妙な外国人に通じており、長老は才能を喜んでいる。

 

(森はカオスだけれど、町に戻るには御嬢さんは知りすぎたのかな)

祐巳は『ブルームーン』に足を向けながら、童謡を口ずさみながら思った。

 

 




ニューキャラというかオリキャラをいれたのでタグなどを追加します。
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