そこにある花   作:待兼山

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サブタイトルは前話と違いますが、続きです。




偽り

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祐巳は三人の空いたグラスや皿をキッチンに下げに来た。

その時、携帯が震えた。

生まれて初めて、全てが煩く感じれた。

説明のしようもない蓉子への気持ちも、長老への恩義も、呼吸することも。

静まらない携帯を取り出し、通話キーを押す。

 

 

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祐巳がキッチンに消えた時に、江利子が

「聖の言う通り、誘えばいいじゃない。別に、お持ち帰りするのが目的じゃなくてお知り合いになりましょって」

何でもないことのように言う。

「そ、そ。同性だから使える切り札は使わなきゃ損だよ、蓉子くん」

聖が後押しする。

「そう簡単にいかないわよ。祐巳ちゃんの都合もあるんだし」

蓉子は二人にきっぱり言いながら、現実は甘くない、もっと仲良くなるには七人で集まった後にしようと考えていた。

「そうかしら、少なくともどうでも良いお客さんではないわよ、私たち。だからこそ、三人に均等にきっかけという手札があって、

チャンスを使えるのよ?蓉子」

江利子は、理論さを醸し出しながら蓉子を煽って楽しむ。

「蓉子、たまには息抜き感覚を楽しまないと。」

聖は声音は便乗しているかのように、表情・瞳は真剣に蓉子に語る。

蓉子が話そうとした時、祐巳がドリンクと共にやってきた。

「もしかして、タイミング悪かったですか?」

申し訳なさそうに言う。

「ううん。しょうもない会話してただけよ、気にしないで」

蓉子は優しく言う。

聖、江利子にお代わりを手渡し、祐巳は蓉子に尋ねる。

「お冷も本当にいりません?」

その問いに江利子が

「酔ったのは違う理由だから気にしないであげて。」

くすくすと優しく答える。

「蓉子は、強いからね。」

聖も茶化して言う。

それから思い出話をし、三人は店を出た。

 

 

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祐巳は『ブルームーン』の営業終了まで勤務した。

いつもピークタイムだけか、営業終了までしかヘルプには来ない。ぎりぎり回せるが、ターゲットを考えるとゆとりある人員を置かないと

生き残れないから。と、オーナー・店長・祐巳は考えたからだ。

「お疲れ様ー。こうちゃん、まな、後よろしくー。店長、お先に」

正規のメンバーに声をかけ、祐巳は半地下の店から地上に出る。

「お疲れ様、祐巳ちゃん」

思ってもいない人物が声を掛けてき、祐巳は時を止める。

すぐに、動かし、

「水野さん、どうなさいました?忘れ物とか...」

祐巳は三人の退店後、確認をしたことを思い出しながら聞いた。

「ううん、なんだか祐巳ちゃんともう少し、お話したくて。予定、あるなら約束だけと思って」

少し、少女のように震える声もそのままに、蓉子は伝える。

祐巳は、優しく迎えた。

「予定、ありませんよ。上手く回せてるって、連絡あったから」

その言葉に安心して、蓉子は普段の自分を取り戻し、

「良かったわ。ちょっと距離あるけど、食事も出来る店があるんだけど。」

窺うように祐巳を見る。

「ぺこぺこなんで、ぜひとも。」

蓉子の意をくみ取り、向日葵のような笑顔で答える。

 

 

/

どうしてこうなってしまったのか、祐巳は考えるのも面倒になり、フィットする枕に頭を沈める。

蓉子の部屋、送る送らないの押し問答を繰り返した、自身と違う環境はおとぎ話を聞いてるようだった。

逆からの再生をしていると水を取りに行っていた蓉子が戻ってきた。

「急に...色々と...急に、こうも感情の通りに、思うままにしてごめんなさい」

言葉と理性が同時進行となってるのか、蓉子は歯切れも悪いまま言う。

祐巳は、ああ。一夜の過ちってやつかと納得して

「謝らないでください。私も、少し飲み慣れない場所だったから」

と、気遣い優しく伝える。

蓉子が持って来た水のペットボトルとグラスに注意を向ける。二人分注いでると、

「この、傷、どうしたの?さっきも...気になったのだけれど。」

祐巳の脇腹からお腹、臍近くにまで達する傷に蓉子は軽く触れる。

祐巳は、ただ、水を蓉子に手渡し軽く笑う。

「ありがとう。言いたくないなら、気にしないで」

祐巳の笑みが拒絶かもしれないと感じ、蓉子は自嘲的に笑う。

触れられない傷なら自身にもあるではないか、と。

聖も江利子も私も、それで何度諦めてきたか。そう思っていると、

「これは...昔、小学中学年と高学年の時に。私の家、母子家庭で疲れていた母親の不注意ってやつです」

まるで熱を出した、と言うかのような調子で言う祐巳に違和感を感じ、眉を寄せ、

「それにしても、ざっくり深いわ...気付かれるのが、遅かったのかしら」

仕事柄、傷の度合いも書類や調べたりするため、蓉子は深く聞く。

「母が寝入ってたから。記憶、曖昧なんですよね。気付いたら白い部屋、カーテンや小声で会話する周囲でしたから」

思い出すように、綺麗な瞳は透明度が高くなる。

それに蓉子はさらに惹かれる。

守りたくなり、これからも関係が変化しようが気持ちに変わりはしないと感じた。

「そう、辛かったわね...これは、頑張ってた証拠なのね」

愛おしく、慈しみを出し、指で触れ、唇を落とした蓉子に祐巳は呆気にとられる。

一夜限りではないのかと、次、同窓会をしに店に来る時はただの、店員と常連候補の客ではないのかと。

 

(この人の考えることがわからない。そして、この人に対する気持ちも。長老に警告を出され、祐麒からの連絡、小林の心配そうな顔。

考えたり処理したりと増えるのに、それを止めてしまう気持ち。わからない)

二度目のセックスを終え、祐巳は思いながら眠りに落ちていった。

 

蓉子も祐巳も、お互いに何年ももしかしたら、死ぬまで痕に残る傷があると知らない。

いや、祐巳だけは自身の力からわかっていたが。

その触れられない場所があるから、偽りを繰り返し、疲弊しては傷ついてるとは分からなかった。

 




ちょっと急展開ですね...
まあ、ご都合主義の穴だらけ設定で、解釈してくだされば幸いです。
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