そこにある花   作:待兼山

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カケ

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国に報告する書類や経理に渡す書類の最終確認をしながら、志摩子は聖が訪ねて来た日をふと思い出す。

会社関係の意向と捉えられても良いように、来客リストにサインをしていた。

非営利だから、飛び込みの形でも窓口を広くしている。

それに、その日は聖を知っているスタッフが応対した。

(織りなす模様は、色すら分からなくなるばかりなのかしら。次に集まる日から、私たちは青空をあの場所に射すことで色を見れるのかしら)

志摩子の実家、宗教観、仕事柄、抽象的に考えを重ねていく。

そうすることで、触れられない場所への思考を守ってきた。何を感かえていたのか、と問われても抽象的な考えを咄嗟に伝えても分かりはし

ないから。

乃梨子、自身の妹は鋭いから問いただす。その結果、そうする事を身に着けれた。

妹への罪悪感よりも、仲間を想う気持ちが優先されてしまう出来事。

寂しさは感じれた、それでも仲間を。

深くなりかけた時、事務所にスタッフが戻ってきた。志摩子の事務所番は終わり、お昼休みになる。

 

 

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聖と江利子は珍しく、二人で遅すぎるランチをしていた。

江利子が見つけた、昔からある定食屋。うどん、そば、定食、丼ものなんでもござれの早い、うまい、適正価格。

江利子は良く通い、大将やおばちゃんに孫や娘のように扱われている。

「蓉子は祐巳ちゃんとあの日、過ごしたみたいよ」

江利子は天麩羅に店こだわりの塩をつけ、ゆっくり味わいながら聖に言う。

「ほー。蓉子もやるねぇ。うん、美味いっ!」

聖は料理にも江利子から伝え聞いた蓉子の話にも関心する。

「こんな時間なのに、かつ丼とそばって。聖の胃がどうなってるか知りたくなるわ」

江利子は蓉子の口調を真似て、聖に言う。

「いや、江利子に真面目キャラは似合わないからね。最後まで、蓉子は」

二人は、蓉子の話題はどうしても本人が居ないと、真面目に話してしまう。

「それは言ってなかったけれど、そうよ。声のトーンが違ってたから」

江利子は、言ってる意味わかるでしょう?と、聖に笑いかける。

「うんうん、蓉子はもっと積極的になってグイグイ祐巳ちゃんを繋いでおかないと」

聖はいつか見た、カウンター男を思い出す。

そして、祐巳の向日葵のような笑顔を。

江利子も祐巳の笑顔を思い出し、頷く。

「そうね、蓉子は押しに臆病な時があるから。ところで、皆で集まる時に二人はどうするのかしら?」

今度の集まりを話題にされ、聖は一旦咀嚼に専念し、

「どうするも、蓉子は初々しさを出すだろうね。小姑祥子から頑張って祐巳ちゃんを救う、とかして」

ニヤリと聖は笑う。

「ふふ、そうね。祥子は気付くでしょうね、大事なお姉さまが盗られるって。甘えん坊だから」

江利子も、想像できることに笑う。

箸を、天麩羅に運ばし、

「由乃ちゃんとも仲良くしてくれるかしら?祐巳ちゃん」

気だるげな元々の顔を、憂い顔にし真剣に聖に聞く。

「大丈夫、あの蓉子を惚れさしたんだから。」

安心させるように、不安な顔を隠そうともしない親友にして、悪友に笑顔で返す。

「そうね、由乃ちゃんとのやりとりも見てみたいわ。志摩子や令との、やりとりも」

安心からのため息を吐き、これからの楽しみに二人は食事を再開し、過ごす。

 

 

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祐麒は道に迷った老人に案内をし、お礼に喫茶店でごちそうになっていた。

「いや、しかし助かりました。お若いのに親切にありがとうございます。」

丁寧に、年配の人間にここまでされ、祐麒は少し戸惑いを覚える。

「いえいえ。世の中、助け合いですよ。少し違いますが、明日は我が道ですから」

愛想良くしながらも、良く分からないことを言う。

「はははっ。そうですな、うん。確かに、あなたもいづれ辿る道ですな。私も、辿った道ですからな」

笑顔で、そう話す老人。

「すいません、語彙や知識が足りなくて。」

苦笑いを貼り付け、祐麒は詫びる。

「いやいや、気になさるな。これから増やしていけば良いではありませんか。日々、勉強。」

老人は嘲るわけでもなく、励ましを言う。その言葉に、ハッとなる。

「日々、勉強。ですか...」

それは祐巳に進路を相談した時に励ましに言ってもらった言葉だった。

「ええ、日々、勉強。です。ご存じですな、福沢 祐麒さん。代々、政治家を輩出する柏木一族で、現在、小笠原 祥子夫の優の秘書。

目の前が、老人にしか祐麒は焦点は合わなくなる。それなのに、聴覚はクリアに雑音を拾う。

対象に、老人は好々爺の仮面を捨て、『長老』の顔になる。

鋭く獲物を絞る、猛禽類の目つき。

声は、数年ぶりに再会する、年若い知り合いに会った親しみさ。

表情と態度は、有無を言わせない威圧感を。

 

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