「ところでさ、祐巳ちゃんていくつ?」
つまみや軽食の類が一頻り揃い、寛ぎながら近況や思い出話が一段落し、祐巳が皿を下げたりお代わりを持ってきた瞬間に聖が聞く。
「聖、いくら同性でもデリカシーをもちなさいよ」
「佐藤さん、こてんぱんですね」
蓉子の言葉に、祐巳が合わせる。
「よくそれで、部下がついてきてくれるわね」
江利子も、祐巳に空いたグラスを渡しながら言う。
「ひどッ!三人ともそっち側か!江利子さえも」
聖が抗議を上げる。楽しそうに。
「そっちがどっちか知らないけど、ピッチ早すぎない?」
蓉子が慣れた手つきで聖と自身、江利子の皿に料理を取り分け大皿を下げれるようにする。
「水野さん、ありがとうございます。歳は、30になりました」
大皿とグラス2個を器用に持ち、答える。
「へー、祐巳ちゃんて不詳よね」
新しいグラスに口をつけ、江利子が興味深げに言う。
「志摩子や由乃ちゃんと同じ年か~」
蓉子の言葉を目に見て、流し聖が言う。
「聖のそういうところがオヤジくさいのよね」
蓉子も流されると分かってるからこそ、言う。
「確かに、水野さんの仰るとうりかも」
祐巳も3人とずっと知り合いかのように、気楽に笑い言う。
「祐巳ちゃんは、笑うと場を明るくするし、いると調和するわね。」
江利子が、新発見した子どものように無邪気に言う。
「ほんと。3人でこんな学生時代のような会話ひさしぶりかも」
聖が急に真面目になり、今日の会合がいつもと違う点を指摘する。
「そうなんですか?いつもは仕事関係とか?」
祐巳が驚いたように言う。
「そうね...いつまでもあの時のままでは、いられなかったからかしら」
蓉子が、ぽつりと零す。
「蓉子...」
江利子、聖が複雑に言う。
「三人は高校時代からのお友達ですか?」
祐巳が意図せずに、明るく言う。三人の胸中にある感情、思い出を吹き消すように。
自身の発言に反省しながら、蓉子が代表し、
「ええ、私は中学からこの二人と。江利子と聖は幼稚園からだっけ?」
「そうよん。心温まるエピソードが最初だけどね」
聖が、茶化しながら江利子に含ませ笑いを送る。
「あら、子どもは純粋な興味を覚えるものだわ」
江利子は、それをあえてかわしつつも、意思表明とも取れることを言う。
「こんなとこで、大人げないことはしないで頂戴」
蓉子はまたか、と投げやりに。
「なんだか羨ましいですね~いいなぁ」
祐巳はクスクス笑いながら、下げたものをキッチンに渡しに行く。
そのまま、新規客や常連客、オーダーに慌ただしく立ち回る。
/「ほんと、蓉子の言う通り、ずっと私たちこんなの久しぶりよね...」
江利子が、グラスを弄りながら、零す。
「うん...会っても、なんだか濃くするためってのかな」
聖も、さっきまでと違い、日常の疲れを取り払うように言う。
「そうね、これが私たちが可愛い妹たちの為に選んだ先なのよね」
蓉子が二人だけに分かるように言う。
「そう、由乃ちゃん。由乃ちゃんを思う令の、親友を想う祥子、居場所を造り上げる手伝いをした三人のために志摩子。
そんな四人の」
江利子がらしくなく、自嘲的に笑う。
「江利子、まだ気にしてんの?自分だけがあの時にに、って」
聖は少し、怒り気味に江利子に問いただす。
「そうね...たらればは嫌いだけど、やっぱり、ね」
弱々しく、目を伏せながら感情、思いを吐き出す。
「あのね、江利子。私たちは、あの時。妹たち、親友への想いがあったからなのよ。これからも忘れないで頂戴」
きっぱりと、聖の気持ちの代弁と自身の想いを口にする。
「ありがとう、聖、蓉子。」
先ほどとは違う笑顔を二人に向ける。
三人の心は一緒の思いか、別なのか...
そこへ、江利子が調和すると評した祐巳が向日葵のような笑顔をいっぱいに近づいてくる。
「佐藤さん、水野さん、鳥居さん!普段勤務してる店の後輩から、差し入れあったんで口直しかデザートしません?」
「お?どこの?」
聖がいち早く、祐巳の相手をしだす。
そんな聖が面白くなく、初対面の祐巳への表せない、決して嫌ではない感情を胸に蓉子が
「いいの?祐巳ちゃんに持って来てくれたんでしょう?」
二人のやり取りが面白く感じたのか、祐巳の笑顔に見え隠れもないからか江利子が
「店ロゴもないのね?手作り...?」
「ええ、その子の彼氏が見習いで勤務してる店でも隠れメニューであるんです。ここでは三人だけに、特別」
悪戯っ子のように祐巳は笑いながら、一口チーズケーキを取り皿に移す。
「へー。シンプルだね~」
聖は関心しながら、蓉子は少し嬉しそうに、江利子はちょっと意地悪に、
「令の手作りやこだわりの店がある私たちに合うかしら?」
プラスティックスプーンで半分にし、口へ。
「もちろん、品評してください。」
祐巳は三人の言葉を我が事のように待つ。
少しばかり、蓉子は面白くなく感じ、
「そうねぇ...お酒の後にはいけるけど、普段なら物足りない...かな」
「蓉子、辛口。まあ、あんまり甘いの好きではない私にはいけるけど。忘れやすいかな」
聖が、申し訳程度に伝える。
「確かに、令のほうが作り手よりもあと一歩を考えるわね」
独特の言い回しで江利子が纏める。
「ありがとうございます。令さんって方は凄いんですね!」
祐巳はメモに書き込みながら、はにかんだ。
「一度、食べてみたいです」
それに江利子が自慢げに、
「一度食べたら、こだわりの店以外と令特製しか食べたくなくなるわよ?」
「江利子、そうかもしれないけど、言い過ぎよ」
笑いながら、蓉子は否定もしない。
「祐巳ちゃんは甘いの好きそうだよね?」
聖は令の特製お菓子リクエストの為にしっかりリサーチを。
「ええと...昔はあんまり食べれなかったんですけど、最近はその彼氏さんに夢中な後輩の...」
その言葉に三人は
「もしかして、毎回食べさせられてるの?」
吃驚しながらも、笑顔で。
「内緒ですよ?!元ヤンで怒ると恐いんですから!」
慌てて、祐巳は言葉を出すが三人が言外にした気持ちを否定もしない。
「可哀想に~。慰めてあげるから仕事終わりにどう?」
聖がおちゃらけながら、祐巳に顔を近づける。それを蓉子が嫌そうに、
「聖、冗談だろうけど訴えられるわよ」
祐巳へ近づきすぎた聖の顔にドリンクメニューを突きつける。
江利子は二人の変わらない掛け合いを見ながら、
「そういえば、さっき祐巳ちゃん。昔は食べれなかったってアレルギーとか?」
「そうではないんですけど...」
その時、キッチンとフロアの常連客、お会計が重なり祐巳は慌てて三人に謝りながら戻る。
そのまま、祐巳とは上手く話も出来ないままお開きにしないといけない時間になる。
「また、いらしてくださいね?」
祐巳は三人の上着や預かっていたものを渡しながらはにかむ。
「もっちろ~ん」
聖が答える。
「凄い楽しかったわ。また、ぜひとも」
聖の言葉に、江利子・蓉子も頷く。
三人の背を見送りながら、祐巳は思う。
どうして、出会ってしまったのか。自分の全てを否定したくなる、そして、自分の過去を慈しみ愛してあげたくなる。
これから先を、自分の未来を夢見たくなる。それは初めての感情。
むしろ、自分を念頭に置いて考えた事に驚く。
続けて第二話です。
これで、序章的には完了なのか。
もしかしたら、手を加えます。
2015・0212、サブタイトル訂正