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小林はなんとか叔父貴や幹部連に言い訳を正当化し、車を走らせた。
祐巳と親友にして、恋敵の祐麒の為に。
ただ、一緒に居られたら良かったあの頃をバックミラーの景色と共に流しながら。
『俺はさ、数学にしか興味がない。社会に出たら、良くて中間管理職だな。だったら、親が忌み嫌う祖父母の仕事のコネでなんとかソッチの世界
に潜るよ。福沢、どっちが祐巳に受け入れられるか勝負だ』
そう言ったあの頃から、祐巳は小林にも祐麒にも無関心だった。
たまに見せる、向日葵のような笑顔。
その向こうはいつも、無かった。小林はそう思った。
祐巳が調べろ、と言った三人や交友関係で思い当って、考えた瞬間に失恋したと感じた。
(俺も、福沢も。負けたんだ。祐巳は一緒に歩んで欲しかった、何もなくとも一緒に。)
だから、早まるな。そう、念じながら『ブルームーン』のドアを開けた。
「小林か。今日は、大事な日でしょ。いいの?」
祐巳は小林の登場に驚きもせず言う。
「てめっ、何考えてんだよっ。福沢煽って」
小林は感情のままに、そして、自身のベルトを外し蓉子や令、聖、江利子の手を制し、祐巳の患部にきつく巻く。
「もう少し、優しくしてよ...」
祐巳は苦笑いをし、言う。
「小林くん...?どうして」
祥子が祐麒も顔見知りでありながら、小林もなんでここに居るのか処理が出来ないまま聞く。
「小笠原さん、私が祐麒の父親の女だった頃に知り合ったんですよ。私に出会わなければ、誰もこんな結果にならなかった」
祐巳は自力で立ち上がりながら言う。
「駄目よっ。傷に障るわ。」
蓉子が切羽詰まり止める。普段からは考えれない姿で。
「いえ、長老がタダでは死なないことぐらい分かってますから。それに、島津さんに言われましたから」
脂汗が出ながら、向日葵のような笑顔を浮かべる。
「小林、皆を外に。多分、ガスかなんかで爆発か火事を起こさせるようになってる」
小林に向けて言う。
「なら、肩を貸させて頂戴。」
祐巳の言葉に、蓉子は仕事での態度を取る。強制力を持たせる言い方をし、拒めないように。
「お願いします」
祐巳は素直に、ただ一言伝える。
店の入り口が近づくと祐巳はまた、口ずさむ。
「だから、なんでそれなのよ」
由乃は祐巳に、仮面のない顔で言う。
「これ、昔、熱を出して、眠れなかったときに母親が歌ってくれたの。だから、知らない間に口に、でちゃう」
蓉子に完全に寄りかかってた祐巳はそう、言う。
そして、一人また一人とドア潜り、蓉子と自身だけになった時。
小林が蓉子と二人、祐巳を支えようとしに振り返った時。
「蓉子さん。なんで御嬢さんにくまさんは注意したのに、おっかけたのかな?」
そう言いながら、蓉子をドアの外に押し出した。
蓉子は前のめりになりながら、振り返り、
「祐巳っ、何考えてるの!」
そう叫んだ。
「小林、来させるなっ!蓉子さん、もし、私が福沢祐巳でリリアンに通ってたら、こんな結末じゃなかったかな。」
言いながら、祐巳は初めて本能以外のところから涙を溢した。
そして、店のガスと店外の空気と触れ合い、爆発した。