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あれから季節は夏を迎えた。
私は、日常に平気な振りをして戻った。
聖や江利子とそれで何度も喧嘩した。
祥子にも泣かれた。
でも、平気な振りをしたかった。
祐巳が居ない事実、その真実。
感情がないと言った、祐巳が最後に見せた涙。言葉が祐巳が生きてたことを思い出させる。
触れあったあの日、あの傷が嘘ではないと、私に突きつける。
だから、蜃気楼のような現実を過ごす。
まるで、デジャブのような日。
祐巳に初めて出会ったあの日のように、聖と江利子とで食事。
違うのは気遣う、空気が少し混じってることと、場所。
そこに、歓迎せざる人間が近づいてくる。
聖と江利子が目敏く、睨み警告を出す。
「なんの用かしら?あなたみたいな人間はここでは歓迎されてないわ」
江利子が敵意を、
「そうだよ、柏木にこっぴどくやられたんだろ。」
聖が祥子から柏木さんに伝えられた制裁を思い出させる。
「ええ、もちろん。今日は、祐巳のお使いで来ました。これを」
まるで紳士のように、距離を保ちテーブルに置く。
「何これ。」
江利子が眉を寄せ、訊ねる。
「祐巳が、郵便で送ってたみたいです。分かってたんでしょうね、この事が。だから、あなた方の秘密を祐巳は一人で更に失くしたんですねきっと」
これで用は済みましたからと、小林くんは踵を返す。
私は今日初めて、小林くんに話しかける。
「祐巳はっ、なんて書いてるの?」
こみ上がる想いのままに言う。
「知りません。見るのは、気が引けましたし。あなたは、僕の最大のライバルにして敵わない存在です。」
そう言うと、小林くんは一旦、口をへの字に曲げた。
「俺が、俺と祐麒が望んてた存在に、やすやすとなって。最後まで気にかけられて、女々しさ満載の悔しい気持ちですよ」
最後は笑いながら、言うとそのまま出て行った。
あの後、どう帰り着いたか分からない。
思い出すのも忘れ、逸る気持ちで封を切った。
化粧も服を着替える行為ももどかしく思い、そのままに。
まだまだ、梅雨が明けた夏は終わらない。
全ての過去を照らしながらも、生きてるものを唸らせながらも。
向日葵のように、夏にしか出会えないものがある季節は。
私は向日葵のような、あの笑顔を忘れないように。
聖、江利子、祥子に感謝しながら現実にきちんと戻ることにする。
祐巳が夏の向こうから、私を呼んでいる。
例えを出した、初めて泣いた祐巳ではなく。拙いながらも、私に感情を出ししたいと望む、一人の女性として。
もう、苦しまなくていいんだよ。と、私たち七人のあの時の何もかも物的に隠滅した祐巳が呼んでいる。