蓉子は祥子の為に開かれている誕生パーティに参加している。
高校在学時から続く、姉妹関係であり、お互いに良き相談相手だからかもしれない。
聖、江利子、令、志摩子、由乃ちゃん。
それに、私たちと入れ替えに入学した祥子の妹の瞳子ちゃんに志摩子の妹、乃梨子ちゃん。
それだけが純粋に、心からのお祝いを込めているだろう。
祥子の夫、優はどうかは知らないが。
瞳子ちゃんの親戚にあたり、祥子の家と元々交流のあった柏木家と婚約を聞かされたのは...あの後だっけ。
「蓉子~」
物思いに耽りかけた所に、聖の呑気な声で意識を切り替える。
聖は祥子を伴いながら、余所行きの笑顔とも私や江利子、志摩子に見せる笑顔の入り混じった顔をしている。
祥子はどちらかというと、安堵の多い笑顔か。
「お姉さま、お疲れになられまして?」
「まぁ...ね。凄い顔ぶれよね。聖や江利子、志摩子にはチャンスでしょうけど」
横にいる聖に、多少の皮肉とも言われようと遊びだけの年齢ではないと含ませる。
「蓉子らしい心配ありがとう。名刺、切れたから私は止めたのだよ」
からからと、余所行きを緩ませた笑顔をみせる。
「呆れた、多すぎるほど持って来なかったんでしょう?」
「うん、新規開拓は地道に。顔ぶれ的に、祥子と柏木野郎に媚び売りたい奴らでしょう」
聖は、声を潜めて自身の会社を誇りながら、参列者を非難する。
祥子は、聖の言葉に肯定のような顔をしながら
「先ほどまで、聖さまの会社に興味を抱かれた重役と少しお話してたんですのよ」
「今度、聖さまがその会社に訪問なさる約束を取り付けるとのこと。私がきちんと証人でいましたから。」
安心なさって、お姉さま。と、祥子がフォローをする。
「そ、そ。やるときはやる、佐藤 聖です」
聖は、呑気に言う。
「あなたは昔からそうよね。無理に拡げる仕事ではないしね」
蓉子は柔らかさを身に着けた二人に、自身の余所行きさを解かせながら笑った。
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由乃は姉の令と共に、令の姉、江利子と会話をしていた。
二人といると、包まれているというか冬の日に毛布に包っている感覚になる。
ずっとこのままなんて出来ないことは分かっているから、リミットまで甘えれる。そんな気分になれる。
特に、江利子在学時よりも、今は、江利子に甘えてる気がする。
姉の令は剣道家としても、警察の後方所属としても忙しい。江利子も会社トップだから比にならないが。
江利子はいつも、忙しさを感じさせない。
自分も、新聞・週刊誌・ファッション雑誌とこのご時世に生き残っている会社の秘書課主任だから忙しさは並ぶかもしれない。
「由乃ちゃん、疲れたかしら?」
色々と考えていると、江利子が少し心配げにしている。
「大丈夫です。なんだか、皆に、七人に会うのってひさしぶりだな~って」
江利子らしくもなく、心配顔をさせたことへの焦りから慌てる。
「そうですね、聖さまや蓉子さまにはあまりお会いしませんし。志摩子は由乃づたいだし、乃梨子ちゃんや瞳子ちゃんなんて全く」
令がふんわりと柔らかく同意する。
「そうね、考えたら時代を担ってるのよね。大小あれど、山百合会から世界へ。かしら」
気だるげに、昔のようにとも見極めきれない抑揚で少しの皮肉を。
「お...お姉さま、それはなんでも...」
「言い過ぎかしら?これくらいないと、生き残れないわ」
優しすぎる妹に、少しの刺を見せる。
「そうですわ、お姉さま。優しすぎるぐらいでしたのに」
由乃はからかいながら、江利子を支持する。
楽しそうな二人に微笑みながら、令は、
「二人が楽しかったら、いいです」
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「お姉さま、蓉子さま。挨拶が遅れて申し訳ありません」
志摩子は、祥子が離れたと同時に傍に来た。祥子が離れる前から向かっては来ていたのだが。
結果的には、そうなっていた。
「あ~、志摩子。久しぶり。元気にしてた?」
聖は安心しきって志摩子に声をかける。
「ええ、お姉さまもお元気でしたか?」
志摩子は昔と変わらず、ふんわり微笑む。
「元気、元気。悩んでも、女の子と志摩子の笑顔があれば元気になる」
本心とも冗談とも取れる言葉を聖は言う。
「そうでしょうね、全く聖は」
蓉子は呆れつつも、適度な距離を保つ親友の姉妹観に微笑ましく感じる。
ちらほらと、帰途に着く参列者を眺めながら蓉子は、祐巳の笑顔を思い浮かべる。
会話の端々で、チラつかせる彼女の人との距離の取り方。
それを感じさせない、良い意味の温かみ。向日葵のような笑顔。
誰にでも触れられたくない場所はある。
聖、江利子、令、祥子、志摩子、由乃ちゃん。
私たちは共有した悪夢がある。
一人で抱える人たちもいる。
自身の仕事柄、多少見てきた。聞いてきた。
それが、私たちのように変化をもたらしていることも。
聖、江利子は自分たちの妹が祥子やそれぞれの妹たちと談笑しているのを見やり、蓉子に目線を移す。
蓉子は元々の性格から、一歩引いた見方をしていた。
だから、あの時、誰かが冷静にならねばならない時に。
気丈にも、率先した。
自分たちは、自分たちでいられた。言い方は悪いが、蓉子あっての今。
聖も江利子も、蓉子に幸せになってほしいと思う。
仲間の幸せをいつも見守ってきた、蓉子は愛車を法定速度に収めながら走らせながら思う。
聖や江利子に対しては特に、やれ失恋やお金目当てだと分かったときは飲み明かしてきた。
二人とも、リリアン女学園という特殊環境やちやほやされてきたせいか、少し目が曇りがちなのだ。
そこまで考えて、蓉子はふと祐巳のことを考えた。
向日葵のような笑顔、ふんわりとした雰囲気。
ただ、戸惑いもあった。
何故、カフェ・バーの店員で、初対面の彼女を気にかけるのか?と。
2015・0212
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