そこにある花   作:待兼山

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オモイ

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祐巳は普段、『ブルームーン』や系列店、お酒を飲みだした世代向けのバーで働いている。

そこでは、頼りにされているし、何より、オーナーの知り合いからの紹介だから自然と社員役割のようにバイトには思われている。

オーナーは、ギャンブル狂いで祐巳の知り合いから借金をしている。その知り合いとは、やくざ。暴力団。

経営は上手くこなせるが息を吸うごとく、ギャンブルをする。

そんなオーナーに祐巳は、何も思わない。

他のバイトの子や店を切り盛りする店長たちは様々な感情を祐巳に零すが、祐巳は上辺の言葉を言う。

同調、共感、支持。

祐巳は、人と付き合っていきだしてからそれを身に着けた。

 

「なあ、祐巳。俺たちはいつまで、こうしてしか会えない?」

店内の喧噪のなか、店の雰囲気とは少し似合わない男が祐巳に話かける。

なんでもないように、祐巳も周りにかき消される声で男に言う。

「だめだよ、ここに来ちゃ」

「だって...どうして、簡単に会えない...?」

男も携帯を弄りながら、思いを吐き出す。

「私は祐麒を高みに上らせてあげるって約束したでしょう」

男、祐麒に反論の余地を与えないかのように言い放ち、場を離れる。

祐麒は、何も言わずビールを飲みきり、席を立つ。

 

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店を出た祐麒は、ネオン・テールランプ・喧噪の上にある空を見上げる。

(俺は、上に行きたいのかな。昔は、ただ、祐巳と穏やかに生きていきたいと願ってた。

その過程で、権力地位とかがあっただけなのに。あんな親父が全部悪いんだ!)

祐麒は、そう心を真っ黒に、染め上げた。

 

 

祐巳と祐麒は姉弟だ。

世間一般とは、かなり事情は違う。異母兄弟であり、同学年の年子。

二人の父親が、婚約者がいながらに祐巳の母親と遊び付き合い、孕ませた。

認知はしなかったし、生活費の面倒も見なかった。結果、祐巳の母親は家を勘当された。

祐巳が小学校入学時までは、家が生活費、家賃の仕送りはされた。

小学校入学した途端に途絶えた金銭援助で、祐巳の母親は男に媚びを売る生活をしだした。

元々、子どもに愛着が湧かなかった母親は、完全に祐巳に気を配らなくなり、小学中学年のある日、祐巳を売った。

完全に、手放したわけではなく、当時付き合っていた男が裏児童ポルノの話を持ちかけてきた。

祐巳は生存本能から抵抗をした。

それはかえって、男たちを喜ばせた。臨場感がでる、変態どもに高く持掛けれる、と。

学校でも存在に、厚みがなかった祐巳はただ、この世は無慈悲で成り立っていると覚えた。

それからは、心を凍結させて生きてきた。

 

片や、祐麒が幸せな家庭で暮らしていたかというと違う。と祐麒は強く否定するだろう。

先祖代々、土地を所持していた為、コネがコネを呼んでいった建築関係の仕事があったから不自由はしなかったが。

いつもいつも、父親は暴力をふるった。母親にも、祐麒自身にも。

それが、ある日母親と車で出かけた日に事故で死んだ。泣いてばかりいた母親と共に。

 

すでに祐巳とは、出会っていた。何度か父親の事務所で、偶然に。

感情の窺い知れない、綺麗な瞳をしている。そう、祐麒は思った。

一目惚れだった。

父親は、お前の姉だ。法的にではなく、種的にな。と下品に笑った。

ガツンと、頭を殴られた気分だった。

 

 

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祐麒が出て行っても祐巳は何も感じなかった。

いつも通り、常連客やバイトの子との会話をこなしていった。

一旦、店が落ち着くと祐巳は休憩に入った。

ふと、『ブルームーン』で出会った蓉子のことを思い出した。

(名前、水野さん...だっけ。綺麗な人だったな、佐藤さんやたしか、鳥居さんも綺麗だけど...)

ただ、闇の中で生きてきた祐巳には、珍しいことだった。

(たぶん、会話や垣間見た、違和感のせいだろうね。生きている世界が違うからこそ)

普段では取り繕うこともしない、それが蓉子を思い出し、紡いだ瞬間にした。

気持ちを切り替えるために、祐巳は店長に

「ごめん、アレになった。早退、帰るわ」

と、言い支度して店を後にした。

祐巳に向かって店長は抗議していたが。

 

店を出た祐巳は携帯を取り、電話をかける。

「もしもし。気になることある。いつものところに、明後日21時」

相手がどうとか気にせず、通話を終了させ歩き出す。

 

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