そこにある花   作:待兼山

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君を
発見


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祐巳はランチ用のグラス、食器を磨いたりしまったりしていた。

その前のカウンター席に、やり手サラリーマン風の男が座っている。

「この前、先輩の奥さんの誕生パーティがあった。さすが、小笠原と柏木の名だけあるよ」

掛けていた眼鏡を外し、男は皮肉る。外したことにより、男の瞳が只のサラリーマンではないことがわかる。

そうだとしても、祐巳は動じないし何も感じない。

「そうなんだ。さすが、天下の旧財閥さま?」

男の言葉に、向日葵のような笑顔で皮肉に同調する。

「ああ、何もかも次元が違う」

男は、祐巳の笑顔に柔らかい顔つきになる。

「で、気になることってなんだ?」

 

二人は傍から見れば、ただの常連客と店員に感じる。

一スタッフたちもたまに来る、お客さん。その程度の雰囲気。

会話も、BGMやなんらかの音消しがなければしない。しても、どうとでも取れたり、中身のない会話に混ぜている。

祐巳の話が一段落したとき、

聖と蓉子が入店した。

 

 

 

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聖と蓉子は前回の席よりも少し奥まった、カウンターを背にするような席に着いた。

祐巳は入店とともに、笑顔を向けてきた聖と、少しはにかみと苦笑いが入り交じった顔の蓉子を優先するように足を向ける。

「こんばんわ、佐藤さん水野さん」

おしぼりを手渡しながら、笑顔を向ける。

「こんばんわ~祐巳ちゃん!」

聖は入店前の蓉子とのやり取りのせいか、ニコニコとしながらもおちゃらけさは控えめに。

「こんばんわ、祐巳ちゃん。手を止めさせてごめんなさいね?」

蓉子は祐巳が食器をしまいこむのを確認しており、詫びる。

「謝らないでください、お客様優先は当たり前ですし。もう終わりましたから」

祐巳は何でもないし、あなた達は特別だと感じさせるように言う。

「佐藤さんはビールで、水野さんはどうします?シャンディガフにします?」

先ほどの言葉に厚みを出すように、ドリンクを訊ねる。

「やっぱり、祐巳ちゃんはすごい!一回でおぼえれるなんて」

聖は本当に関心して言う。

「綺麗な人たちは様になって、自然と目にいきますし覚えちゃうんですよ」

照れたように感じさせるように、祐巳は言う。

二人のやりとりと、綺麗と言われたために蓉子ははにかみながら、

「一杯目だけ、生ビールを頂くわ」

聖がそうこなくちゃ。と言わんばかりに笑い、祐巳は触れずに

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

と、去る。

 

 

「噂をすれば、か」

カウンターの男がドリンクバーに行く祐巳にだけ聞こえるように言う。

祐巳は何も言わず、表しもしない。

カウンターの男は祐巳、蓉子、聖の行動を目につかないように観察をしていた。

ドリンクが渡ってから、料理オーダーから揃ったあとも。

早計だと思いつつも、~なのであろうでも思ったことがあった。

それを脇にやるように、カウンターに戻った祐巳に

「帰るよ。結果は、ちょっと先だ。連絡くれ」

と、祐巳以外聞き取れにくい言葉を残し去った。

 

 

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「さっきの男、ストーカー?だったら、この水野蓉子さんにおねだりして助けてもらいなさい」

聖が、少しだけ真剣に祐巳に伝える。

聖もまた、入店時と去り際だけだが観察をしていた。

蓉子は呆れながら、

「早とちりは命取りよ、聖。でも、困ったことあれば乗るから、遠慮せずに言って頂戴」

と、積極さを出す。

聖は、そんな蓉子の新しい顔に軽く口笛を吹きたい気分だった。経験上、吹いたら軽くはたかれるからしなかった。

「違いますよ~、勤務している店の常連の知り合いなんで良く、立ち寄って下さるです。」

苦笑いしながら祐巳は二人に告げる。

「そういえばさ、祐巳ちゃんの普段のお店ってどこ?」

聖が蓉子の為に、口実を作り出す。

「多分、佐藤さんや水野さんは煩く感じますよ。」

祐巳は自身が勤務する店、『レッドナイト』を思い浮かべ苦笑いしながら言う。

「ゆっくり会話って雰囲気ではないですし...」

蓉子は、自身がどう積極的になろうか思いあぐねる。

聖は横目で蓉子を見やり、

「教えてよ~、蓉子もさ、祐巳ちゃん気に入ったみたいで会いたいんだって」

聖の言葉に流石に慌てる蓉子。

「ちょっと、聖!」

それに対して、悪戯っ子のような顔で聖は

「プライベートな時に、まだ二回目の人間に相談に乗るなんて流石、蓉子でも言わないじゃん」

蓉子はため息をそっと吐き、祐巳を窺う。

「綺麗な人に言われたら、日本語かわからなくなりますね。」

あえて、的外れなこと言い、聖を笑かせた。

「祐巳ちゃん、いいっ!あははははっ、やばいっ」

祐巳は恥ずかしげに、蓉子は呆れつつも聖に感謝と祐巳への認識を深めていた。

そろそろ...と帰宅をしようかという時、ずっとここの新人であろうスタッフに付きっきりだった祐巳が戻ってきた。

「佐藤さん、水野さん。良ければ、これ、アドです。」

他意のない、向日葵のような笑顔でメモを渡される。

二人とも一瞬、呆気にとられる。なんとか再起した蓉子が訊ねる。

「いいの...?」

「ええ、スタッフの子とかにも内緒でお願いします」

祐巳が場を乱す行為をしていると仄めかす。

「それに、楽しいですし。よかったら、鳥居さんもまたぜひお誘いしてくださいね?」

どうとでも取れる言葉で、祐巳は締めくくる。

 

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